祝・ポール・マッカートニー大阪公演詳細決定!
その前哨戦にもうってつけ『爆音スクリーニング@クラブクアトロ』
boid代表の樋口泰人インタビュー
&洋楽好きにオススメしたい映画情報
9月17日(火)、18日(水)、19日(木)の3日間、梅田クラブクアトロにて、ピンク・フロイドの代表曲「エコーズ」をフィーチャーしたサーフィン映画『クリスタル・ボイジャー』(72)。ケミカル・ブラザーズのFUJI ROCK FESTIVAL '11のライブ・ドキュメンタリー『DON’T THINK』(12)。そして、ポール・マッカートニーが「ポール・マッカートニー&ウイングス」として活動していた時代、1976年に米国シアトル・キングドームで行ったライブ・パフォーマンスを収めた『ロックショウ』(80)を爆音で上映する『爆音スクリーニング@クラブクアトロ』が開催される。
同会場で爆音上映を行うのは6月に続いて2度目。「ライブハウスの音響構造、それにサウンド・オペレーターは普段から爆音を出している人たちなので、これまでの上映施設とはまた違った効果が生まれる」と話すのは、爆音上映を主宰するboid代表の樋口泰人氏。梅田クアトロでは特にドラムのキックをはじめとする低域の音がよく出るため、6月のクイーン『ハンガリアン・ラプソディ』上映の際には「放っておくと低音が暴れてしまうくらいで、コントロールにかなりの工夫が必要だった」という。
『クリスタル・ボイジャー』は東京では人気が定着、爆音上映の“殿堂入り”を果たしているが、浸透するまでには時間がかかったそう。というのもこの作品、2部構成のような作りになっており、主に前半は同作でカメラマンもつとめるサーファー、ジョージ・グリノーがヨットを作る姿などを静かに追うドキュメント、後半はほぼ空と海、太陽と波だけが映し出される一風変わった構成の79分。水中カメラの名手、ジョージ・グリノーが背負ったカメラで撮影した映像に、クライマックスではピンク・フロイドの20分を超える「エコーズ」が丸ごと重ねられ、観る者にサイケデリックな視覚・音響体験をもたらす。そのインパクトの大きさは、既に何度も観た上で「エコーズ」の流れる“23分だけ”を観に来る観客がいたり、過去の爆音上映で鑑賞したECDが後にアルバム『CRYSTAL VOYAGER』を作り上げたというエピソードからもうかがえる。高域から低域まで音のレンジが広いライブハウスでの上映で、自然の光と色彩と「エコーズ」との調和、波と音のうねりがどこまで増幅されるかが楽しみだ。
『DON'T THINK』は、東京・吉祥寺バウスシアターの上映時の異様な盛り上がりが話題を集めた1本。劇場にも関わらず観客たちが立ち上がり踊り出した姿を、別の観客が撮影してツイッターへ投稿、それが拡散されたのも人気の高まりの一因と思われるが、樋口氏に熱狂の度合いを訊ねると、初日からどんどん客足が伸び、リピーターも多かったらしい。通常なら「10本売れたらいいくらい」のビールの売り上げは最も多い時で200本を記録。完全に“クラブ化”した現象は、樋口氏の目には不思議なものとして写ったようだ。「もちろん音を大きくしているし、爆音向きの作品だから“この音だったらダンスするよね”とは予測していましたが、踊りに来て下さいと言った訳ではないし、意図せず知らぬ間にそういう事態になっていたんです。バウスのスクリーン前にあるステージに上って踊り出す人まで現れた。張り付いたスタッフは止めるのに必死で、彼らにとっては映画を上映しているというよりライブ警備をしているような感覚。俺ももう呆れて、何これ!? って思ったくらい(笑)」と振り返る。さらに「ケミカル・ブラザーズのライブ演奏っていわゆるロックバンドの生演奏と違い、ほとんどプログラミングされたものだから、本人たちに凄いことをしているというミュージシャン然とした雰囲気がないし、彼ら自身もそれを見せない。なおかつ映像を見る限り、2人にはオーラがない(笑)。ステージでも素っ気無いのに、2人がスクリーンに映るとやっぱり盛り上がるんですよね。オーラがないことがオーラになっているのか、その普通さに対して感極まって泣いてる人さえいるのが不思議でならないんです。俺が今まで見たことや経験したことのない光景。まるで映像が勝手に音を出して、お客さんたちが盛り上がっているところへ“神様”が何の気なしに様子を見に顔を出して、それを発見したお客さんがまた大喜びしているようにも見えました。この不思議さは、ちょっとまだどう整理していいのか分からない」とも言う。アーティストをメインに映す一般的なライブ映像と異なり、会場全体への俯瞰的な視点を持つ作品への観客の熱狂ぶりはたしかに興味深い。「現代思想系の人たちにもこの光景を見てほしいと来場を呼びかけました。“現代”というものを考える上でも面白いだろうし、一方で劇場のお客さんは単純に喜んでニコニコ。俺はもう何度ハグされたことか(笑)」。様々な方向から楽しめ、また多幸感溢れる夜になりそうだ。当日のクラブクアトロは前方の椅子を取り払い、存分に踊れるスペースを設ける予定だが、「東京は自然に盛り上がったけど、果たして大阪ではどうなるか、まったく読めない状態。上映前に一杯呑んで気分を温めておいてもらえたらちょうどいいかな」とアドバイスも。
『ロックショウ』は、セレクトの経緯が他の2作と若干異なる。爆音上映されるのは初めて、なおかつ樋口氏は公開時に見逃しており、「俺が観たくて上映します! 爆音上映には時々そういうケースがあるんです。見逃したのが悔しくて(笑)」。音楽映画であり、ポール・マッカートニーならきっと大丈夫だろうという長年の“勘”に基づくセレクトだそうだが、意外なのはロック評論家の肩書きも持つ樋口氏が、ここ数年でようやくポールの魅力に目覚めたことも影響している点。ポップスとしてビートルズのシングル曲はずっと聴いてきたものの、「アルバム単位で聴くことのないまま、聴いたつもりで大人になってしまって。それで大人になると、もう今さら恥ずかしくて聴けないよねと思っちゃって(笑)」。ところが、音楽評論家の湯浅学氏と開催しているレコード鑑賞イベント『アナログばか一代』を通してビートルズ、及びポールの作品を聴き込むと「やっぱりほんとに面白いんですよねえ。…今ごろ何を言ってるんだ? という話なんですが(笑)」。続けて、豊かな音楽性を映画に例えて「ストーリーそのものではなくて、画面が持っている色使い、編集の面白さ、ストーリーを支えるそれら背景の部分の広がりがものすごくて、それに一気にやられてしまった」と語ってくれた。いずれ爆音上映でいい音できちんと観たいとタイミングを狙っていた作品だけに、「来てくれる方と一緒に楽しみたいです」。ポール・マッカートニーの11月に大阪・京セラドームで行われる来日公演の詳細も決定(10/5(土)より一般発売 ※詳細は
コチラ)、その前哨戦にもうってつけといえそうだ。
映画ファンからの人気を集める爆音上映。音量の大きさだけでなく、丹念なセッティングにより繊細な音響まで立体的に浮かび上がるのも見どころ/聴きどころ。『爆音スクリーニング@クラブクアトロ』では、まだ経験したことのない音楽ファンにもそのダイナミクスを体感してもらいたい。
(取材・文/ラジオ関西『シネマキネマ)
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『ストラッター』 ←イチオシ!
失恋とバンド解散に同時に直面したロッカーの青年の姿をスタイリッシュなモノクロ映像で映し出す。ダイナソーJr.のJ・マスシスが手掛けたスコアやロック好きをくすぐる様々な要素が散りばめられた超オススメ作。
●シネ・リーブル梅田にて上映中
10月5日(土)より、京都みなみ会館
近日、神戸・元町映画館にて公開
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(C)2012 Alison Anders and Kurt Voss |
あらゆるものを楽器に見立てて音楽を作り出す音楽テロ集団と、生まれつき音痴で、音楽嫌いの警察官の追走劇をユーモラスに描く。街中で繰り広げられる奇想天外なテロ・シーンに注目だ。
●9月20日(金)まで、シネ・リーブル梅田にて上映中
10月19日(土)より、神戸・元町映画館にて公開
ビートルズの大ファンでもあるシンガソングライターのセス・スワースキーが、8年の歳月をかけて完成させたロード・ムービー風のドキュメンタリー。ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンやジョン・ヴォイトら数々の著名人や関係者のインタビュー、秘蔵映像を交えて、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの知られざる素顔に迫る貴重な1作。
●10月5日(土)~11日(金)、シネマート心斎橋にて1週間限定公開
たった二枚のアルバムで音楽シーンを席巻し、多くのミュージシャンに影響を与え続けているストーン・ローゼズ。そんな彼らが、解散から15年の時を経て、2011年に再び活動を始めた姿を追ったドキュメンタリー。シェイン・メドウズが監督を務め、再結成ライブのパフォーマンスやその舞台裏、未公開映像も交えて、伝説のバンドの素顔に迫る。
●10月19日(土)~25日(金)、TOHOシネマズなんばにて連日21:00より1週間限定公開
1983年のデビュー以来、数々の傑作、ヒット作をリリースし続けるメタリカが、映画のために行ったライブパフォーマンスを撮影した素材と、彼らの音楽からインスパイアされたドラマ映像を融合した3D映画。『プレデターズ』のニムロッド・アーントル監督がメガホンをとり、ドラマパートでは『クロニクル』のデイン・デハーンが主演を務める。
●11月22日(土)より、109シネマズ箕面(IMAX3D版)ほかにて公開
(2013年9月15日更新)
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