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「実在する人物を真似て、尚且つ自分の中で消化して演技する
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を参考にしました」
『終戦のエンペラー』昭和天皇役、片岡孝太郎インタビュー

 第二次世界大戦終結直後、日本統治のためにやってきたマッカーサー元帥と、彼から戦争責任に関する調査を依頼されたボナー・フェラーズが、終戦直後の混乱した状況下で“真実“を求めて奔走する姿を描いた歴史サスペンス『終戦のエンペラー』が7月27日(土)より、大阪ステーションシティシネマほかにて公開。マッカーサーに扮する名優トミー・リー・ジョーンズが本作のプレミア上映のために来日した際「優れた俳優であり、非常に入念な準備をしていた。同時にときに大胆で、恐れを知らない俳優だ」と敬意を表した、昭和天皇役の片岡孝太郎にインタビューを行った。

――天皇陛下役のオファーをもらったときは、どのように思いましたか?
 
「2年前、歌舞伎の巡業で四国にいるときにオファーの連絡をいただきました。お話をいただいた時点では、海外の映画とだけ聞いていて、後から何役でオファーをいただいたのか知ったんですが、さすがに大変な役だな…と思いました」
 
――オファーは本作のキャスティング担当、奈良橋陽子さんからということですね。
 
「以前出演しました、スティーブン・スピルバーグ監督の『太陽の帝国』の時もそうでしたが、キャスティングの担当の方からオファーを頂いて、それからオーディションを受けました」
 
――オーディションを受けるためにどんな準備をされましたか? 役作りで気をつけた点は?
 
「僕らの知っている晩年の陛下ではなく、戦前・戦中・戦後のニュース映像や写真など探し、何度も拝見しました。それで、姿勢や独特の歩き方などに気をくばりましたね。あと、細かな仕草や下の歯が少し見える表情など。だけど、あまり誇張しすぎてモノマネになってはいけない。ちょうどその頃、メリル・ストリープがサッチャー(英国初の女性首相)を演じた『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』という映画が上映されていて、実在する人物を真似て、尚且つ自分の中で消化して演技するというところでかなり参考にしました」
 
――トミー・リー・ジョーンズが来日した際に「優れた俳優であり、非常に入念な準備をしていた。同時にときに大胆で、恐れを知らない俳優だ」と孝太郎さんのことを話されていましたが。
 
「彼はとても日本好きで京都に来たらいつも泊まる旅館があるんです。今回、そこの石鹸とタオルを僕からプレゼントしたので、それを“入念な準備”とおっしゃっているんでしょう(笑)!」
 
――トミー・リー・ジョーンズとの撮影現場でのエピソードは?
 
「彼は大学で歌舞伎を専攻するほど歌舞伎に興味を持っていて、歌舞伎大使になってほしいくらいです(笑)。「次の公演はいつだ?」とか聞かれました。いつか、某缶コーヒーのCMで共演できればいいですね(笑)。あと、撮影中には僕のカメラテストが多かったのを見て、トミーさんが監督に「彼に何度も同じことをさせるな」と怒ったことがあり、びっくりしました。最初は怒っている意味が分からず、僕の演技をダメだと怒っているのかと思いましたが(笑)。撮影現場では監督よりトミーさんの方が大きな存在感を放っていましたね(笑)」
 
――今作のオファーがあったのは2年前、平成中村座への出演と重なっていたのでは?
 
「父(片岡仁左衛門)は、以前から「求められる役者になれ」と言っていました。歌舞伎の世界に限らず、必ず主役を張ってないといけないわけではなく、この役はコイツに演じさせたいと思われる役者になれと。しかし「歌舞伎の舞台に穴を空けるべきではない」と今回の映画出演には反対もしていました。しかし、最終的には「のりちゃん(故・中村勘三郎の愛称)に任せる」と言われました」
 
――勘三郎さんへのお気持ちを聞かせていただけますか?
 
「やはり、完成した作品を観ていただきたかったです。撮影中に一度日本に戻ってきて、この役と同じ丸メガネをかけてヒゲも生やした状態で会いに行ったことがあり、「(昭和天皇に)似てる、似てるよ!」と言って喜んでいただきました(笑)」
 
――歌舞伎の世界とは違う現場の面白さは感じておられますか?
 
「普段はせまい世界でやっているので、それとはまったく違うメンバーの様々な演技を間近で見れる。特に今回はトミー・リー・ジョーンズという子供の時から観ている俳優の演技とはどういったものなのか。そこで歌舞伎をベースに演技を学んできた僕の演技が通用するのかというチャレンジでもありました。テレビも映画も舞台も自分を試す場所でもあると思っています。歌舞伎役者なので年間通してこの時期はこの劇場というのが決まっていますが、その中でオファーをいただきまして、いいお話でしたらこれからもお受けしたいなと思っております」
 
――最後に、ご挨拶を。
 
「この映画は今月、27日(土)公開、現在出演中の七月大歌舞伎は28日(日)まで。両方見ていただければ幸いです」



(2013年7月23日更新)


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片岡孝太郎 プロフィール(公式より)
かたおか・たかたろう●1968年、京都府生まれ。十五代目片岡仁左衛門の長男として生まれる。屋号は松嶋屋。73年7月、歌舞伎座「夏祭」の市松で片岡孝太郎を名のり初舞台。新世代の若女方として、江戸・上方の枠を越えてめざましい活躍を見せる。94年名題昇進。関西・歌舞伎を愛する会奨励賞、眞山青果賞、大阪舞台芸術奨励賞(歌舞伎部門)など受賞。テレビや映画での活躍も多く、スティーヴン・スピルバーグ監督『太陽の帝国』(87)に特攻隊員の少年として出演したのを皮切りに、映画では

Movie Data




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『終戦のエンペラー』

●7月27日(土)より、
大阪ステーションシティシネマほかにて公開

【公式サイト】
http://www.emperor-movie.jp

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/161669/