ホーム > インタビュー&レポート > 「テトリスでいう長い棒を待っている感じ(笑)の お芝居をしました」(星野) 『箱入り息子の恋』 星野源、夏帆インタビュー
――最初に脚本を読んだ時の率直な感想は?
星野源(以下、星野):どんどん変な話になっていくのが面白いなと思いました。チラシやビジュアルのイメージは可愛い感じですが、もともとの脚本も出来上がった映画も可愛いだけではなく、どんどん健太郎が崩壊していって…、なんか“変”なんですよね(笑)。ファンタジーのような設定でもありますが、ちゃんとラブシーンも描いていて正直だし、リアルな部分もあって面白い映画だと思いました。
夏帆:すごく面白いと思いました。でも星野さんもおっしゃっているように“変”なんですよね(笑)。最初にいただいた本から現場で足されたシーンもありますし、最後の奈穂子の家でのシーンも現場でかなり変わりましたが、とにかく健太郎と奈穂子が可愛くていいなと思いました。
――箱入り息子、娘から自立していく登場人物のどんなところに気を使って演じられましたか?
星野:健太郎に関しては自立というより、やっぱり“崩壊”という言葉が似合う感じがします。ある意味、彼は自立していると思うんです。ちゃんと仕事もしているし、慣れ合わないし、親に迷惑もかけないし。そこから人の迷惑をかえりみずぶつかっていくことを覚えていく。それまでのギューッと自分のポリシーに閉じこもっていた感じからの開放感が大事だなと思いました。
夏帆:この役を演じるに当たって、彼女と同じような盲目のかたに何人かお会いしたんですが、わたしがお会いした方はみなさん自立されていました。待ち合わせ場所にもひとりでいらっしゃいますし、ひとり暮らししているという方もおられました。お仕事をされていた方もいますし、何でも自分で出来るんです。そういった意味では、奈穂子は親元にいて自立していませんね。途中ひとりで外に出るシーンもありますが、ほとんどひとりで外に出たことがない中で、健太郎との出会いで変わっていく。そこの変化が奈穂子を演じる上ですごく大事だなという気持ちで演じました。
――盲目の役を演じる上で気をつけたことは?
夏帆:目が見えないお芝居ってすごく難しいんです。見えてないように演じようとしても、まぶしかったら目を閉じてしまいますし。だけど今回は奈穂子が「目が見えない」ことに捉われ過ぎるのも良くないなと気をつけていました。どうしても目が見えないお芝居を意識してしまって自分の頭がそっちに行ってしまいがちになったんですが、健太郎との関係性や気持ちの面を大事にしようと。もちろん盲目の女性の役をきっちり演じるのも大事ですが、そこだけではないと思い演じました。
――星野さんは健太郎にご自身との共通点はありましたか?
星野:健太郎と僕に共通する部分というのはそんなになくて、一から役を作っていくというイメージでした。健太郎はダメなやつでは全然ないんですよね。彼自身は筋が通っている人だけど外側から否定されてしまっている。中と外でズレがある主人公なんですよね。だから気持ち悪い演技で笑わせようとかはせず、筋が通っている真面目な人が崩れていくというような順番で役を作っていきました。
――以前、某バラエティ番組で夏帆さんが星野さんを注目のアーティストとして紹介されていましたが、共演してみてご感想は?
夏帆:最初に星野さんを知ったのはアーティストとしてではなく役者としてでした。実は、役者としての印象の方が強いです。今回、御一緒出来て本当に嬉しく思います。
星野:そのバラエティ番組の時はそんなにお話出来なくて、しっかりお話しするのは今回が初めてでした。夏帆さんは、テレビとか映画とかで観ていたイメージ通りな面ももちろんお持ちなんですが、現場では堂々とされていて佇まいが媚びてない。どこかどっしりとカッコイイというイメージに変わりました。
――両親役の方々とは現場でどんなお話を?
星野:平泉さんがムードメーカーで。本当に楽しい方でした。森山さんも優しくて、いい両親だなあって思いました(笑)。
夏帆:わたしは黒木さんの娘役が3度目なので、撮影の合間に話を聞いていただいたりしてました。黒木さんが現場にいらっしゃるとホッとするというか、何でも預けられる感じがしました。
――監督からの現場での指示は?
星野:監督の中に明確な健太郎像がある中で、今回は自分自身で役をしっかり作りたいと思っていたので、その擦り合わせみたいなものを現場に入る前の本読みの時などにしっかりしました。だから現場ではあまりなかったかもしれません。順撮りではないので、気持ちのバランス加減については少し監督と話しました。どこか想像の余地を残して、気持ちに少し隙間を作ってお芝居しているような感じでした。テトリスでいう長い棒を待っている感じ(笑)。だから完成した映画を観た時は気持ち良かったです(笑)。
――星野さんは初主演ということで、今までの作品とは気合いの入り方が違いましたか?
星野:今までやってきたお芝居のやり方とは違うことがしたいと思っていたんです。去年1年は音楽でもそうなんですが、とにかく殻を破るというのがテーマで、違う自分になると言うか。今までは自分と役に共通点をなるべくみつけて自分の中から絞り出すという作業が多かったんですが、そうじゃない今までやってないことをしたいなと思って。自分の思いみたいなものは入れず役をどう作っていくか、役に体を貸すというか。そういう感じに出来ればいいなと思っていたので。すごく集中して健太郎像を作って入れ込んで演じました。
――恋をして変わっていく健太郎と奈穂子ですがご自身は恋をすると変わりますか?
夏帆:絶対、影響されない! と思っていても、いつの間にか少しずつ影響されている感じです(笑)。
星野:僕も影響されると思います。大なり小なり。なるべく変わりたくないとは思いますけどね。
――では、最後にこの映画をどのような人に観てほしいですか?
星野:この映画は両親同士の話でもあるので、お子さんがいる人にはグサグサくるという話を聞きます。子を持つと親の気持ちも分かりますもんね。僕はどうしても健太郎と奈穂子の話に意識が向いてしまいますが、幅広い世代に楽しんでいただけると思います。よろしくお願いします。
夏帆:よろしくお願いします!
(2013年6月 7日更新)
●6月8日(土)より、テアトル梅田、
なんばパークスシネマほかにて公開
[2013年/日本/キノフィルムズ]
監督・脚本:市井昌秀
音楽:高田漣
主題歌:高田漣 feat.細野晴臣「熱の中」
出演:
星野源/夏帆
平泉成/森山良子/大杉漣/黒木瞳
穂のか/古舘寛治ほか
【公式サイト】
http://www.hakoiri-movie.com/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/160747/
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https://kansai.pia.co.jp/invitation/cinema/2013-06/hakoiri-movie.html