インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 『きいろいゾウ』 原作者・西加奈子インタビュー& 出演者・宮﨑あおいと向井理が登壇した舞台挨拶レポート

『きいろいゾウ』
原作者・西加奈子インタビュー&
出演者・宮﨑あおいと向井理が登壇した舞台挨拶レポート

 注目の女性作家・西加奈子のロングセラー小説を『ヴァイブレータ』、『余命1ヶ月の花嫁』などで男女の様々な愛の形を描いてきた恋愛映画の名手、廣木隆一監督が映画化したラブストーリー『きいろいゾウ』が、2月2日(土)より大阪ステーションシテシシネマほかにて公開。“いつか、この小説のツマ役を演じてみたいです”と小説の帯に寄せていた宮﨑あおいと、雑誌でおすすめの一冊としてこの小説を紹介していた向井理が、木々や動物の声が聴こえる不思議な“ツマ”と、背中に鳥のタトゥーがある小説家“ムコ”に扮し、さまざまな出来事を乗り越えながら愛し合うことの痛みや喜びを知っていく夫婦役を好演している。そこで、原作者の西加奈子にインタビューを行った。

 

――宮﨑あおいさんも向井理さんも、もともと原作のファンだったらしいですね。
 
「成り立ちとしてこんな幸福なことはないですよね。今、原作ありきの映画は多いけど、最初から「好きやった作品」って言ってもらえることってすごい稀有やし、幸福やなって思う。映画は、宮﨑さんと向井さんが思う、それぞれのツマとムコを新しく作ってくれた感じがしてます。だから原作に寄り添うというよりは、もともと好きでいてくださった世界を自分たちで再現してくださったというような印象があります。」
 
――原作の映画化に対して、作家は「映画は好きなように、むしろ違うように表現して欲しい」という方が多いですよね。
 
「それは当然やと思います。絶対小説でしか出来ないということを作家は全力でやるべきやと思うし、みんなやってると思うんです。でも、映画になったら映画監督はそのアンサーじゃないけど映画にしか出来へんことをやってくださってるから。廣木さんに見せ付けられたというか「これが映画やぞ」と言われた感じがして嬉しかったです。原作に忠実ってよく言われてるけど、うちはいい意味で全然違うと思う。映画にしか出来ない素晴らしいことをやってくださったから嬉しいです。」
 
――具体的に感じた映画にしか出来ないこととは?
 
「例えば、ふたりが水道の所で手を殴るシーン。原作は、感情に寄り添ってなるべく丁寧に書いたつもりなんですけど、映像では光の加減でこのふたりの関係に暗雲がさしてるのが分かるんですよね。蛇口のワンショットで不穏って分かる。それは映像でしか出来へんことやし、心象を語らせなくても宮﨑さんや向井さんの表情でどんだけ苦しいかが、数秒で伝わるというのは映像の一番強いところやと思う。あと、出てくる料理も。ちくわを煮てるやつが出てて、それで経済力が分かりますよね。何食べてるかで、その人となりが分かる。そこは小説の中でも大切にしてたところやから、そういうだいたいの値段も分かる、ふたりが食べてそうな献立を考えてくれてることに感動しました。」
 
――出来上がった映画を観て最初に何を思いましたか?
 
「書く時って着地点も分からず、どういう意図で書いたかとか覚えてないんですけど、映画を観て改めて答え合わせが出来たようなところがありました。すごくシンプルな“3組の夫婦の話”やったんやというのに気づいて。とにかく逃げ道のない狭い世界で向き合うしかない、ふたりだけの帝国を築いている夫婦の話を書きたかったんです。それで、映画のふたりを観たら「そのものやなぁ」と思いました。関西弁もね、ちょっと大阪弁とちゃうなってとこもあるけど、それもふたりだけで通じる言語が出来てるみたいでした。それで、書きたかったのは「まさにこういうことやったな」と思いましたね。」
 
――そんな夫婦を演じた宮﨑あおいさん、向井理さんそれぞれについての感想は?
 
「宮﨑さんは、とにかくツマそのものでした。原作を好きって言ってくださってたことが、体感として分かりました。スズメバチに刺されて泣くシーンとか「うん、こういう感じやと思う」って後で納得させられましたね。向井さんは、あんな男前で王子様みたいな人やのに、映画で観たらちゃんと泥臭い人になってて。それがすごい嬉しかったです。」
 
――登場人物に自分の投影はあるんですか?
 
「特にないですけど、うちはムコさんの目線に近いです。ムコは作家ですよね。だから、客観的に周りを見るところがあって、ミューズじゃないけどそんな風にツマを見てる気持ちが分かる。うちもツマがそばにいたら目が離されへんやろなぁと思うし、憧れを持って書いた感じです。動物が喋るとことかも理想で。それがリアリティーがないとか言われたりするんですけど、小説なんやからどうせゼロから作るんやったら、自分がこうであればいいなと思うことを全部書きたくて。」
 
――では、この映画に出てくる3組の夫婦の女性は理想の女性を描いてるということですか?
 
「生きるのは苦しいと思うけど、丸腰っていうのに憧れます。変に技術とかスペックとか付けようとするじゃない? 着物の着付け習ったり(笑)。うちは、習い事とかはせーへんけど、ひとりでも生きていけるように自分にどんどんオプションを付ける癖があって。恋愛しても全力で取り組まへんとか。それがないから、この3人の女性は、ものすごく素直な人なんやろなと思って。いろいろ苦しんでるやろうけど眩しいというか。しかも、守ってくれる人が近くにいるっていう。本当に憧れというか。美しく思っちゃうんですよね。」
 
 
 関西弁でフレンドリーに話す姿がとても印象深い彼女は、とても映画好きらしく(一番好きな映画は『クルックリン』(94/スパイク・リー監督)とのこと)、映画を分析する目もかなり確かなものであることがインタビューからも分かるだろう。「女性(ジーナ・ローランズ)がちょっと精神的に弱くて、それを男性(ピーター・フォーク)が支える。その形がわたしの理想で憧れの夫婦像」と語り、『きいろいゾウ』に影響を与えた映画として『こわれゆく女』(75/ジョン・カサヴェテス監督)を上げた。そんな彼女も「本当に素敵な映画」と太鼓判を押した『きいろいゾウ』。是非、劇場でご覧いただきたい。



★『きいろいゾウ』舞台挨拶レポート★

kiiroizou_舞台挨拶1.jpg

ツマ役の宮﨑あおい&ムコ役の向井理が登壇した
『きいろいゾウ』舞台挨拶レポート
サプライズゲストの登場で会場も大盛り上がり!
 
 大阪ステーションシティシネマにて2012年の年末に行われた『きいろいゾウ』先行上映会は、人気俳優、宮﨑あおい&向井理が登壇するとあって、チケットは即完売。ふたりの登場に、プレミアチケットをゲットしたファンは大歓声をあげた。そして、まずは宮﨑から挨拶「とても大好きな原作なので、この作品の中に自分が入れたことをとても光栄に思います。」と原作への愛を語った。続いて向井は「この映画は三重県で撮影した作品です。ロケーションの力にも助けられて素敵な作品になったと思います。」と作品への自信を見せた。
 
 そして、初共演となったおふたりにお互いの印象を聞くと、宮﨑は向井に対して「シュッとして、隙がないイメージだった、でも現場では全然シュッとしてなくて、ムコさんのイメージのままでボーっとしてました(笑)。」、向井は宮﨑に対して「ずっと鼻歌歌ってたり、変な絵を描いたりしてました(笑)。」と、観客の知りえないお互いの裏の顔を暴露。また宮﨑はツマを演じる上で前髪の長さで心境の変化を表現、「前半は眉毛のちょっと上くらいなんですけど、後半は前髪が立っちゃうくらい短く、大変なことになっています(笑)。」と、見落としてしまいそうな重要ポイントを語った。また、舞台挨拶の後半では、サプライズゲストとして、ツマの子供時代を演じた本田望結(みゆ)ちゃんが登場し、ふたりへ似顔絵のプレゼント! 可愛いサプライズに宮﨑と向井だけではなく劇場内が温かな雰囲気に包まれた。

(2013年1月31日更新)


Check
西 加奈子(原作者)……1977年、イラン・テヘラン生まれ。大阪育ち。2004年に「あおい」(小学館刊)でデビュー。05年に刊行された「さくら」(小学館刊)が、本屋大賞のノミネート作に選ばれ、単行本・文庫併せた累計が40万部を超えるベストセラーとなる。「きいろいゾウ」は、06年3月に小学館より単行本として発売になり、8月には「絵本 きいろいゾウ」も刊行、以降、ロングセラーを続けている。他の作品には、織田作之助賞を受賞した「通天閣」(06/筑摩書房刊)、「こうふくみどりの」(08/筑摩書房刊)「こうふくあか

Movie Data




(C)2013西加奈子・小学館/「きいろいゾウ」製作委員会

『きいろいゾウ』

●2月2日(土)より、大阪ステーションシティシネマほかにて公開

【公式サイト】
http://www.kiiroizou.com/

【ぴあ映画生活】
http://cinema.pia.co.jp/title/160805/