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個性豊かなスーパーヒーローたちの人間ドラマと
痛快アクションから目が離せない話題のアニメーション
『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』
尾崎雅之エグゼクティブプロデューサーインタビュー

 東京アニメアワードでテレビ部門優秀賞を受賞し、漫画家・桂正和がキャラクター原案を手がけたことも話題になったアクションアニメ『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』が大阪ステーションシティシネマほかにて公開中。スポンサーロゴを身につけて戦うという個性豊かなスーパーヒーローたちの人間ドラマと痛快アクションから目が離せない話題のアニメーションだ。本作の公開にあたり、尾崎雅之エグゼクティブプロデューサーが来阪した。

 

 本作は、特殊能力を持つ “NEXT”たちがヒーローとして企業のスポンサードを受けながら活躍し、生活している巨大都市シュテルンビルトを舞台に、ベテランヒーロー“ワイルドタイガー”こと虎徹と、生意気な新人エリートヒーロー、バーナービー・ブルックスJr.との凸凹コンビが繰り広げる等身大の人間ドラマが描かれている。実際のスポンサーロゴを身につけたビジュアルや企業に属するヒーローたちの、ある種の異色さが話題を呼んでいるアニメーションだ。まずは、『TIGER & BUNNY』の成り立ちについて聞いてみるとー

 

尾崎雅之エグゼクティブプロデューサー(以下、尾崎):僕はこれまで、『ケロロ軍曹』などファミリー層が中心のアニメを手掛けることが多かったので、もう少し高い年齢層向けのアニメで、どうせやるならオリジナル企画でチャレンジしたいと思ったんです。それで、TV版の監督のさとうけいいちさんと田村プロデューサーと3人で企画案を練り始めました。監督からヒーローものをやりたいと言われたんですが、アニメで深夜という時間帯にヒーローものを普通にやっても、ほとんど見てもらえないだろうと思ったんですよね。だから、アニメから遠ざかっている方や、普段アニメを見ない人でも見ようと思えるフックを用意しようと思い、まずは、見ている方が感情移入しやすいキャラクターにしようと考えました。普通のアニメだと、10代の男の子を主人公にしたものが多いと思うんですが、あえてこの作品の主人公である虎徹は、奥さんはいないけど子どもはいて、髭をはやしたおっさんというかなり定石からは外れたキャラクターに設定しました。でも、社会に出て何年も経って、いまは恵まれた環境にいないけれど俺はまだやれる、と思っている主人公なら共感してくださる人も多いだろうと。彼らはみんなヒーローとして組織に属してスポンサーロゴを背負って戦うわけですから、組織に属することによるしがらみや、スポンサーの意向に従わなければならない大人の事情などをリアルに描けば、共感してもらえるんじゃないかと思ったんです。

 

 では、現実に存在する名立たる企業ロゴがヒーローたちのコスチュームには付いているが、それが目的ではなく、組織に属することによるしがらみや、スポンサーの意向に従わなければならない大人の事情を描くことに付随したものだったということだろうか。

 

尾崎:そうですね。同時並行的にそこに行き着いたというのが実際のところで、ビジネス的に成立させるために主人公の設定を考えたわけでもないですし、資金的理由でスポンサーロゴを入れているわけでもありません。人間臭い、等身大のヒーローを描こうと思った中でリアルなヒーロー像を思い浮かべると、プロ野球選手でもサッカー選手でも、それなりの年齢になっても現役を続けている人って勇気を与える存在だと思ったんです。彼らは、どこかの組織に属するアスリートで、ユニホームには企業のロゴが入っていますよね。それで、企業に属するアスリートをヒーローになぞらえれば、面白いドラマが生み出されるんじゃないかと。せっかくスポンサーロゴを背負うという設定にするのであれば、実際の企業に営業をかけてみれば面白いんじゃないかと思って、様々な方々のご協力を仰いでアタックしてみたら成立してしまった、というわけです。それでも、有名原作のアニメではないので各社さんのご担当の方は苦労するんじゃないかと思い、その後押しになればいいかと考えて、2010年の秋に、最もビジネス色が強いと思われる日本経済新聞に全面広告を出させていただいたんです。

 

 スポンサーロゴを身につけて戦うヒーローものという設定もなかなか珍しいが、もうひとつこの作品が珍しかったのは、脚本を実写の映画やテレビドラマを手がける西田征史が務めていることだ。今や、『妖怪人間ベム』や『怪物くん』など人気TVドラマや大ヒット映画を手掛けるようになった西田だが、『TIGER & BUNNY』の企画が始まった頃は、まだ知る人ぞ知るというような存在だったはず。なぜ、西田征史に脚本を依頼したのだろうか。

 

尾崎:企業に属するヒーローで、人間臭い等身大のバディものを描こうという方向性は決まったものの、誰に脚本を書いてもらおうかとなった時に、監督から「アニメのライターじゃない人を使いたい」という希望が出て来たんです。それは、ヒーローものであると同時に、テンポの良い会話劇をやりたいと思いもあったからです。それで、実写や舞台で活躍されている作家さんを色々と検討しまして、監督から「是非西田さんに」ということで、映画界の知人を介して紹介して頂いた西田さんにオファーを入れさせていただきました。そうしたら、たまたま西田さんも等身大のヒーローを描くことに興味をお持ちで、当初はスケジュールの都合でお断りされたんですが、最終的には引き受けてくださいました。そしてキャラクターデザインの原案を桂正和先生に引き受けていただき、僕たちチームにとってはようやくそこから『TIGER & BUNNY』が始まったという感覚です。

 

 のように、紆余曲折を経て深夜とはいえTVで放映され、USTREAMで同時配信されるや、瞬く間にファン層も広がり、“タイバニ”という愛称で通じるアニメとなった。ここまでヒットする自信はあったのだろうか。

 

尾崎:ここまでヒットするという確証はなかったですが、プロジェクトを統括する人間の責任として、ヒットすることを確信しておこうと思って自分で自分を信じさせていました(笑)。ここまで広がればいいとは当然思っていましたし、ここまで広げるつもりで制作の田村プロデューサーとともに頑張ってきましたが、ここまで急速に広がったのは想定以上でした。数年前までは、仮にヒットしたとしてもここまでの成長スピードは考えられなかったと思うんです。やっぱりTwitterが出てきたことによって、広がる速度もすさまじいものがありますし、『TIGER & BUNNY』は今の世の中だからこその成長曲線だと思います。それに関西では、MBSさんが放送してくださっていましたが、関西以外ではたくさんの局で放送されるわけではなかったので、USTREAMで同時配信を行いました。USTREAMはTwitterと連動して、書き込みながら視聴することができるので、こういった一風変わった作品にすごくマッチしたんだと思います。『TIGER & BUNNY』に登場するキャラクターは、ちょっと“変”なビジュアルですし、人って変なものを他人に言いたくなるじゃないですか。それをすぐに共有できるUSTREAMで同時配信したことが、ここまで急速に育った一因じゃないかと思います。

 

 最後に、ファンの方なら誰もが気になる今後の展開について聞いてみるとー

 

尾崎:色々と考えてはいるんですが、そのうちのいくつかは僕の頭の中にしかない状態だったりします(笑)。サンライズとしては中長期的なビジョンで考えていますし、息の長いコンテンツであってほしいので、改めてファン層を広げるためにも、初めての人でもこの映画を見れば『TIGER & BUNNY』がわかるという入門編のようなものを今後の展開の礎にしたいと考えて、今回の劇場版の製作を決断しました。まずは、『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』をご堪能いただきたいですね。さらにこの先には、劇場版2作目も控えています。これらのアニメーション展開を軸に、様々な“NEXT PROJECT”を用意して飽きることなく楽しんでいただけるよう、製作委員会一同で頑張って参りますので、これからも応援していただければ幸いです。




(2012年9月27日更新)


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尾崎雅之エグゼクティブプロデューサー

Movie Data



(c)SUNRISE/T&B MOVIE PARTNERS

『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』

●大阪ステーションシティシネマほかにて上映中

【公式サイト】
http://www.tigerandbunny.net/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/158676/