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現場もハードロマンチッカー!? 
今まで観たことのない切ない暴力で魅せる問題作『ハードロマンチッカー』
遠藤要、石垣佑磨、グ・スーヨン監督来場会見レポート

 『偶然にも最悪な少年』のグ・スーヨン監督が、松田翔太とタッグを組んだ青春バイオレンス映画『ハードロマンチッカー』が11月26日(土)より梅田ブルク7ほかにて公開される。原作は、ケンカにあけ暮れる在日韓国人の若者を主人公にした、監督による半自伝小説で、松田翔太が金髪オールバック&ヒゲ姿で主人公のグーを熱演。永山絢斗、渡辺大、中村獅童、渡部篤郎など共演陣の豪華さも話題となるとともに、とことんまでハードさを追求した作品となっている。本作の公開に先立ち、主人公のグーと敵対する高校のボクシング部OBのパク・ヨンオを演じた遠藤要、そしてグーに恨みを持つイー・パッキに扮した石垣佑磨とグ・スーヨン監督が来阪、また本作の関西限定CMに出演しているガリガリガリクソンが松田翔太になりきって会見が行われた。

 

 本作は、山口県の港町・下関に暮らす在日韓国人でフリーターで、顔は広いが誰ともつるまない一匹狼のグーがある日、後輩が起こした事件を機に暴力の連鎖に巻き込まれ、事件を解決しようとすればするほど朝鮮人や警察、ヤクザから追われる運命に…という物語。まずは、会見前に関西限定CMを撮り終わった後のガリクソンの楽屋に3人がサプライズで登場し、ガリクソンをびびらせた後ということで、「松田翔太です(笑)。役作りで50kgぐらい今より体重が落ちていたんですが…。普段テレビに出ている時は眼鏡をかけているんですが、今回は眼鏡を外してばしっときめています」と挨拶したガリクソンに対しての3人の苦笑で会見は始まった。まずは、先ほどのドッキリの段取りなどについて聞いてみるとー

 

監督:ぶっつけです(笑)。

 

遠藤:びっくりさせてくださいって言われたんですけど、「どうする?」って言ったまま何も決まらなくて、そのままぶっつけ本番でした。

 

石垣:結局、何を言っていいのかわからないままでした(笑)。 

 

ガリクソン :怖かった~。すぐ非常口を探しました…。

ロマンチッカー_photo.jpg

 と、ガリクソンはかなり本気でびびっていたよう(笑)。しかし、暴力の連鎖の中で生き抜いていくグーに扮した松田翔太になりきったガリクソンに、お笑い界で生き抜く方法を聞くと、こんな上から目線の返答が。

 

ガリクソン:映画に関する質問だけでお願いします(笑)。今の時代は売れるとすぐ消えてしまうので、僕は売れずに生きていきます。東京に行くと売れてしまうということはわかっているので(笑)。東京には行かずに地元密着型でいこうと思っています。

 

 さすがに、このコメントで監督をはじめとする3人も爆笑、和やかなムードに。本作には、会見に出席している遠藤要や石垣佑磨はもちろん、松田翔太や永山絢斗、そして金子ノブアキに渡辺大と、ガリクソンがびびってしまうのも仕方ないほど、かなりイカツイ個性的なキャストが揃った作品となっている。

 

監督 :個性的というよりは、今まで自分が観た様々な作品の中で自分が好きだと思った役者さんや、この人にやってもらいたいと思った人を選んでいます。だから、オーディションもしてないんですよ。今回の映画は、ほぼほぼお願いしたとおりになりましたね。役者さんたちの演技力や個性もありますが、他の映画で見ることができないような演技を見せてもらいたかったので、そこは気にしていました。でも、みんなのポテンシャルが高すぎて、スタッフが負けちゃうぐらいでしたね。

 

 監督が語るように、松田翔太をはじめ男だらけのキャストたちは、実にイキイキと男くさい芝居を披露しているが、3人は本作の魅力や見どころをどのように捉えているのだろうか。

 

遠藤:この映画は、言葉では伝えられない苦しさが画面一面に出ている映画だと思うんです。それを表現するために、撮影に入る前から監督と何時間も何時間も話し合って、ワンシーン丸々カットしたりしてましたし、それぐらい思い込みがあるので全部が見どころだと思っています。でも、松田翔太くん演じるグーとの“いもや”での対決シーンはアクション練習の時から時間をオーバーしてまで練習しましたし、色々話し合って、みんなで作り上げたシーンなので、あのシーンは特に見どころだと思っています。

 

石垣:僕は、最初に脚本を渡されてどの役をやりたいか聞かれた時も、実際に自分が演じたイーパッキを演じたいと思ったんです。それは、映画の最後のシーンにこの映画のテーマとなっている「俺らの生きる場所はない」という彼の台詞があったからです。それに、久々に台本にときめきましたね。これはすごいと思いました。グー監督のオリジナル作品ですし、テレビドラマの映画化とかではない、本当の映画を作ったと思うんです。それに、素晴らしい俳優さんと一緒に参加できたことも良かったと思います。

 

監督:役者さんたちが僕の言うことを聞きやしないんですよ(笑)。がんがんアイデアが出てきて、脚本がどんどん変わっていくんです。オチさえも変わって、アクションもまるっきり変わりましたし、下手すると役者さんのポテンシャルに負けてしまいそうでした。僕は元々、脚本はあくまで設計図で、実際に演技をしてもらって、それを120%、200%になるようにしていくという珍しいタイプの監督なんですが、今回は役者さんがいきすぎるぐらいやってくれたので、逆に僕が何もしなかったぐらいです。他では見られない役者根性を見せてもらいましたし、彼らの演技はどこを見ても面白いと思います。その割には、怪我は最小限でした(笑)。

 

遠藤:僕は、折れてはないですけど、あまりにも感情が入りすぎて手首を捻挫しちゃいました(笑)。

 

ガリクソン:こわ~。

 

監督:カットできないぐらい、ずっと殴り続けてたからいつ終わるんだろうと思ってました。

 

ガリクソン:どうかしてますよ~。

 

 3人がそれぞれ熱く語ってくれているように、本作はキャストやスタッフ全員が本気で取り組み、とことんまで“リアル”を追求した熱さが、観ている我々にも伝わってくるほど、暴力も痛みも切なさまでもがリアリティたっぷりに描かれている。そこがなんといっても、ただ“暴力”を扱った映画との決定的な違いなのだ。

 

監督:ほんとはみんな、喧嘩なんてしたくないんですよ。でも、しょうがなしに巻き込まれて、男の子のちょっとしたプライドで、ここでいっとかなって思って喧嘩になっちゃうんですが、それだけだとどうしても向こうの世界になっちゃう。でも、街ではそういう人たちとすれ違っていたりするんです。飲みに行って、ちょっと揉めて大喧嘩になっちゃうかもしれないという、自分たちの生活に触れるギリギリのリアリティ、そこの危機感を持ってほしい。今までの“暴力”を扱った不良映画は、かっこいいんですけど、みんな遠くの世界の出来事なんです。今回の映画は、あるかもな~っていうギリギリのリアルを描きました。そこで知っていれば、バーチャルで体験しているので、喧嘩をしても殺したりしないと思うんです。でも、全く知らなかったら興奮して訳がわからなくなっちゃって、大変なことになる可能性もある。痛い、ってことがちゃんと伝わる映画になっていると思います。殴ったり、痛いということを演技で表現して、痛さを伝えて、その痛みがかっこいいんじゃなくて、切なかったり、辛かったりすることを口には出さなくても感じてもらえればいいと思います。

 

 そんな監督の思いを、「何も言わなくても役者さんたちはわかってくれていた」と監督は話すが、実際にギリギリのリアルを追求した本作の撮影現場に入っていたふたりは、監督の思いをどのように受け止めていたのだろうか。

 

遠藤:監督との話の中で、外見的には髪の毛を金髪にしたり、15cmぐらい切ったり、そういう役作りはしましたが、気持ちに関しては最初からフラットな状態で入っていました。監督が本当に自由にさせてくれましたし、監督が僕らの才能を最上級まで引き上げてくれたからこそ、リアリティを出せたんだと思います。ここまでの作品になったのは、完全に監督の腕ですね。

 

監督:ありがとうございます。

 

石垣:今までやってないことをやってみようと思いながらやっていたからこそ、リアリティを出せたと思います。後は、共演者からパワーをいただけたことですね。監督には、本当に自由にやらせてもらったので、有難かったです。緊張感はありましたが、自由にやらせてもらいました。

 

遠藤:でも、自由にやりすぎて美術さんには怒られました(笑)。壊してはいけないものを壊しちゃって。美術さんが「やってらんねぇよ」って言ってましたから。現場もハードロマンチッカーでしたね(笑)。

 

 最後は、一堂大爆笑で会見は終了した。ラストの遠藤のコメントが物語るように、自由の中にも緊張感が漂う、まさに“現場もハードロマンチッカー”だったからこそ、厳しさや辛さがスクリーンから伝わってくる、久々にとことんまでハードボイルドを追求した問題作の登場だ。




(2011年11月25日更新)


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Movie Data



(C)2011「ハードロマンチッカー」製作委員会

『ハードロマンチッカー』

●11月26日(土)より、梅田ブルク7ほかにて公開

【公式サイト】
http://www.hard-roman-ticcer.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/156987/