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“オトコマエ”な大泉の魅力に溢れたハードボイルドな探偵映画
『探偵はBARにいる』大泉洋、橋本一監督インタビュー

 日本推理作家協会賞受賞に輝く東直己の人気シリーズ『ススキノ探偵シリーズ』の第2作、『バーにかかってきた電話』を息もつかせぬ展開とダイナミックなアクションで映画化したサスペンス『探偵はBARにいる』が梅田ブルク7ほかにて公開中だ。北海道最大の歓楽街、札幌・ススキノを舞台に、探偵の“俺”が夜な夜な通うBAR「ケラーオオハタ」にかかってきた、謎の女“コンドウキョウコ”からの1本の探偵依頼の電話から始まった、様々な事件に潜む謎に挑む“俺”の姿を描いた本作の公開2日目に、主人公の探偵に扮した大泉洋と橋本一監督が来阪した。

 

 主人公の“俺”に扮したのは、今や北海道を代表する俳優となった大泉洋。ユニークさと渋さ、さらにはかっこよさと正義感が同居する“俺”という独特のキャラクターを見事に自分のものにしている。そんな大泉の魅力が遺憾なく発揮された本作のもうひとつの魅力は、なんと言っても札幌・ススキノという北海道一の歓楽街が舞台であるということにある。そのススキノに対するふたりのイメージとは?

 

監督:ススキノにはそれまで行ったことがなくて、この映画のために2年前に行ったのが初めてだったんです。とにかく雪がすごくて。第一印象は、「ここまで大きな歓楽街が雪まみれになるってすごいな」でした。後は、道が凍っているので、ここを走ったら面白いだろうなというのが最初の印象でした。実際、僕は着いた早々転ぶだろうなと思っていたら見事に転びましたし。 

 

大泉 :僕にしてみたら、ススキノはほんとに子どもの頃から行ってたところ。たしかに夜の街で、お酒を飲むという一面もありますけど、色んなお店があるんですよ。オシャレな洋服屋さんもありますし狸小路っていう商店街もあれば、デパートもあって、普通に(北海道に住む)誰しもが行くところなんです。そういう当たり前の場所を舞台に、映画を撮ってもらえてすごく嬉しかったです。だから、逆に映画を観て、ススキノは改めてかっこいい街だと思ったし、監督が言ったように、これだけの歓楽街に雪がたくさん降って真っ白になるっていうのは、映画になって初めて綺麗だと感じましたね。札幌に住んでると、雪はそこまで歓迎するものじゃないですから。除雪も大変だし、特に撮影をしていた今年の雪は、雪害って呼ぶぐらい色んな被害が出たんですよ。北海道の監督じゃないから、(ススキノの)色んなものが新鮮に見えて、こういう風に面白く撮れたんじゃないかと思います。札幌に住んでたらどこがセールスポイントなのか聞かれてもわからないですもん。

 

 そんな“雪まみれ”の街を舞台に繰り広げられる様々なアクションシーンも、本作を語るうえで確実に外すことができないポイント。特に大泉はここまでのアクションシーンが初めてだったこともあり、苦労したところもあったようだ。

 

大泉:アクションは、基本的にやったことがなかったので、どのシーンも大変でした。でも、出来上がったのを見たら、どのシーンもかっこよく撮れていてすごく嬉しかったです。特に、丸々2日間早朝から日暮れまで延々、スノーモービルのアクションシーンを撮ったんですが、あれはしんどかったですね。ほんとに疲れました。スノーモービルは初めてじゃなかったんですが、(撮影で使ったのは)でかいし早かったし、乗ってるところも平らじゃないですし。ほんとに危なかったんです。2m以上積もった雪の上をスノーモービルで走って、下の道路に落ちそうになったこともありましたし。でも、映画の中のスノーモービルのシーンの表情は怖がってないように見えると思うんです。どっちかと言うと、探偵はテンション高く逃げ切ったことを喜んでるんですよね。だけど、内心は怖かったです(笑)。「ひやっほー!ざまーみやがれ」とか言ってるんですけどね(笑)。

 

 また、アクションシーンとともに今までの大泉に対するイメージを裏切ってくれる、ファンにとってはたまらないシーンがこの映画には存在する。それが、大泉扮する探偵が馴染みの暴力団の幹部とともにサウナに入る場面だ。そこで大泉は見事な身体を披露しているのだが…

 

大泉:肉体作りなんてやったことなかったから、この映画の撮影中の身体が僕の人生においてのMAXでしたね(笑)。ただ、身体づくりはアクションシーンとは関係ないんですけどね。ただただサウナのシーンのためだけに鍛えただけなので(笑)。リアルなことを言うと、飲んだくれてる探偵が身体を鍛えてるわけないから、ぐだぐだの身体でもいいんですけど、そこは欲が出ちゃいましたね(笑)。せっかく見てもらえるなら綺麗な方がいいかと。プロデューサーがファンサービスだとか言うから、頑張ってやったんだけど、今はすっかり戻っちゃって(笑)。作る時は5ヶ月かけて少しずつ作っていったんだけど、戻るのは1ヶ月。すっかり戻っちゃいましたね。映画が終わった後も2ヶ月間舞台に出ていたので、その頃は頑張って維持できてたんだけど、こうやって映画のキャンペーンが始まったらもう各地各地で美味しいもの食べるしね。次回作の話が出たらまた一からだもん。だから、サウナのシーンはやめてくれって言ってるんです(笑)。

 

 そして、本作で忘れてはいけないのが、探偵の“俺”と松田龍平が演じる“俺”の相棒で運転手の高田との雇い主と運転手という関係にとどまらない男の友情だ。 

 

大泉 :高田と探偵はたしかに不思議な関係ではありますよね。思いっきりお金で繋がってる部分もあったりして、普通にバイト代あげちゃったりしてますから(笑)。決してそれだけじゃない部分も感じるし、本当にピンチになった時には助けに来てくれるし。遅いですけど(笑)。やっぱり男は、ベタベタしない友情に憧れはありますよね。行きつけのバーがあって、必ずそこに集まってて、毎晩そこで酒を飲んでるなんて、やっぱり憧れますよね。実際の生活でそういうことって難しいと思うんですよ。あんなにいいバーで毎晩飲んで、オセロしてなんて生活(笑)。だから、この映画はそういう男の憧れが詰まった作品なんじゃないかと思います。

 

監督:(探偵と高田って)ふたりでいても話すことなんてないんですよね。なんか居心地がいいというか、なんともいいがたい感じなんです。だから、ふたりが実際にどう知り合ってどういう関係なのか、みんなで胸の中で考えてほしいんです。この先もしシリーズ化して何本か作ることになったとしても、そこは秘密にしておきたいですね。

 

 ふたりの口から“シリーズ化”という言葉が何度か出ていることから、大泉と監督の本作への手ごたえを感じるとともに、この映画を観ると「シリーズ化してほしい」と感じる人は決して少なくないはず。大泉も「次回作は明智小五郎へのオマージュということで思いっきり変装をやってもいいかと(笑)。あるいは着物に袴で「しまった~」と金田一耕介とか。髪型は似たようなものを持ってるので(笑)」とシリーズ化に“ノリノリ”だった。そして、そこには、大泉の新たな一面が全面に押し出されていることが理由のひとつとしてあるに違いない。監督いわく「(大泉さんは)かっこいいベースがある人だと思うんです。「水曜どうでしょう」やネズミ男のようなコミカルな面もあり、こっちの面もあるマルチな顔を持った人なんですよ。だから、初めてお会いした時に、色気のあるクールな雰囲気を持った方だと感じました」とのこと。“オトコマエ”な大泉の魅力に溢れたハードボイルドな探偵映画の登場だ!




(2011年9月20日更新)


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Movie Data


(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

『探偵はBARにいる』

●梅田ブルク7ほかにて公開中

【公式サイト】
http://www.tantei-bar.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/156081/