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「笑顔は人を勇気づけるものだと改めて感じました」
『僕たちは世界を変えることができない。
But, we wanna build a school in Cambodia.』
向井理、松坂桃李会見レポート

 ありきたりの毎日に物足りない思いを抱える大学生4人組が、カンボジアという国との出会いを通じて自分自身と社会を見つめ直す姿を生き生きと描いた、実話を基にした青春ドラマ『僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.』が9月23日(金・祝)より梅田ブルク7ほかにて公開される。本作は、向井理の映画初主演作としても話題となっており、向井は、今までにない普通の大学生という役どころながら、悩み苦しみながらも“カンボジアに小学校を建てる”という目的に向かって突き進む、まっすぐな田中甲太ことコータを見事に演じている。公開に先立ち、向井理と、コータとは別の大学に通う学生でありながら、コータの思いに賛同し、コータたちを助ける本田充に扮した松坂桃李が来阪した。

 

 物語は、ある日「150万円の寄付でカンボジアに小学校を建てることができます」という海外支援案内のパンフレットを見つけた主人公・コータが周囲を巻き込み、紆余曲折を経て、カンボジアに小学校を建てるべく活動をしていくというもの。まずは、世界ウルルン滞在記以来のカンボジア滞在となった向井に改めてカンボジアの印象を聞いてみた。 

 

向井 :物質的にはたしかに裕福な国とは言えないですが、空がすこーんと抜けてる感じとか、時計のいらない生活をしている人もいっぱいいますし、何かに追われて生きている人がいないような気がしましたし、会う人会う人温厚な人ばっかりで。1ヶ月ぐらい住んでましたが、嫌な人に会うことがない国ですね。

 

 そのように、カンボジアへの思いを語る向井。本作は、日本とカンボジアのシーンがそれぞれ映画の半分を占めており、カンボジアでのシーンはほぼドキュメンタリータッチで撮影され、向井、松坂以外のメインキャストである柄本佑と窪田正孝を含む4人が様々な遺跡などを巡る場面がリアルに映し出されている。そして、ふたりに印象的なシーンを聞いてみるとそれはやはりカンボジアのシーンとのこと。

 

向井:やっぱりカンボジアのシーンはほとんど全部思い出ですね。トータル200時間ぐらい撮影している中からの2時間なので、当然カットされているシーンもたくさんあって、そういうカットされている部分も思い出になるぐらい印象的なのも多いですね。 

 

松坂 :僕もカンボジアがやっぱり印象深いです。僕は、最後に子どもたちと遊んでるシーンですね。あそこは半日以上ずっとカメラをまわしっぱなしで、暗くなるまで本気でずっと遊んでました。子どもの遊ぶ力ってすごいと思いましたね。

 

 本作では、向井、松坂以外のメインキャストである柄本佑と窪田正孝を含む4人の関係性がとても重要なポイントとなっている。向井と松坂、ふたりの印象に残るカンボジアでの撮影は、4人の絆をより深いものにしてくれたようだ。

 

向井:撮影が終わった後は、みんなでホテルのプールに入ってましたね。雨が降っててもプールに入ってました(笑)。だから、プールを通じてお互いの距離を縮めたような気がします。(僕らが演じた)彼らは、普段は絶対バカばっかりやってる4人組の大学生だと思うんです。実際は。そういう空気感を出すためには、信頼関係とプライベートをどこまで共有できるのかが大事だと僕は思うんです。舞台が日本じゃなくて、海外のカンボジアだと拠り所が自分たちしかないんですよ。そうすると自然と集まりますし、それがいい結果になりましたね。それは実際にフィルムに映し出されていると思います。

 

 そんな“普通の大学生4人組”が、「150万円の寄付でカンボジアに小学校を建てることができます」という海外支援案内のパンフレットをきっかけに、ボランティアのサークルを作り、寄付を募り、目標に向かって進んでいく。向井は、「結果的に、彼らがやったことはすごく評価されることなのかもしれないですけど、やった本人たちは特別に何かをやったつもりもないんじゃないか。世界を変えられる人なんてそうそういない」と語り、この映画のタイトルである『僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.』について語ってくれた。

 

向井:タイトルについて原作者のコータくんに聞いてみたら、銀杏ボーイズの曲名からぱくっただけという、安易なものだったみたいなのですが(笑)。すごく、この作品に合ったタイトルじゃないかと。(コータの)スピーチのシーンで「誰かのために何かをする喜びは、自分のために何かをする喜びより強い」という台詞があるんです。たしかに、自分のために何かをすることも大切だと思うんですが、人のために何かをやってその人たちが笑顔になると、それが自分に戻ってくるものなんだと、僕は現地の子どもたちを見て思いました。この子たちがこんなに笑ってくれるんだったら頑張ろうと思いましたし、役の中で作ったとはいえ、この子たちのために作りたい、本当に作ってよかったと思いました。笑顔は人を勇気づけるものだと改めて感じましたね。

 

 そして、最後に初主演を務めた本作への思いを向井に聞いてみるとー

 

向井:ただ、カンボジアに学校を建てましょうという話だけの映画にはしたくないと思ってました。この映画には、ボランティアだったり、サークルだったり、カンボジアだったり色んな要素がありますけど、前向きになれる映画だと思うんです。ドキュメントで撮っているので、観ている人からすると心にささることも多いと思いますし、そういうパワーがあるし、自分なりに何か感じるものがある作品になっていると思うんです。タイトルはすごくネガティブな印象を与えるかもしれませんが、彼らの場合は、“But”の先がカンボジアに学校を建てたいでしたけど、人それぞれの“But”の先が見出せる映画になっていると思うので、老若男女問わず色んな人に観てほしいですね。

 

 クールで爽やかな印象の強い向井だが、この会見ではカンボジアや本作についての思いを熱く、強く語る姿が印象的だった。そんな向井に対する松坂の印象は、「最初はクールな方だと思ってましたが、ほんとに優しいですし、頼りっぱなしでしたし、兄貴的存在というかリーダーでした。みんなで隊長って呼んでました(笑)」。逆に向井の松坂へのイメージは、「最初は爽やかな印象でしたが、終わってみると超爽やかでしたね。想像を超えました(笑)。すごく男気があって、今どきっぽくないというか、ゆとり世代の匂いがしないんですよ。だから、映画終わっても飲みに行ったりしてますし、僕と考え方が似てるんだと思います」とお互いにベタぼめで、会見中も楽しそうに思い出話に花を咲かせていた。“普通の大学生4人組”の軌跡とリアルなカンボジアを感じることができる、子どもたちの笑顔に胸が震える感動の物語だ。




(2011年9月20日更新)


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Movie Data



(C)2011「僕たち」フィルムパートナーズ

『僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.』

●9月23日(金・祝)より、梅田ブルク7ほかにて公開

【公式サイト】
http://www.boku-seka.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/155599/