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土井コマキのシネマライフ


今回紹介するのは…『東京家族』

東京家族
(C)2013「東京家族」製作委員会

時代で変わっていく家族のあり方と
時を経ても変わらぬ家族の絆を描く

【あらすじ】

小津安二郎監督の代表作『東京物語』を現代の設定に置き換えた家族ドラマ。橋爪功、吉行和子、西村雅彦、妻夫木聡、蒼井優など実力あるキャストを迎え、監督50周年となる山田洋次がメガホンを執る。田舎から上京してきた夫婦と東京で暮らす子どもたち、生活のリズムが違う家族が再会することで生まれる絆を、時に愛おしく時に儚く描いていく。物語は、瀬戸内海の小さな島で暮らす周吉と妻のとみこが息子たちが暮らす東京を訪れるところから始まる。個人病院を営む長男、美容院を経営する長女、舞台美術の仕事をしている次男はそれぞれに両親のことを想い、東京で快適に過ごしてもらいたいと願うが、生活のリズムがあまりに違うために関係はぎくしゃくしてしまう。昨年度には、黒澤明監督、新藤兼人監督に次いで映画監督としては3人目となる文化勲章を受章し、『幸福の黄色いハンカチ』や『男はつらいよ』シリーズなど、現代の“家族”と向き合い続けてきた山田監督の間違いなく代表作になるだろう。

【Movie Data】

●1月19日(土)より、大阪ステーションシティシネマほかにて公開

公式サイト
http://www.tokyo-kazoku.jp/

「土井コマキのシネマライフ」一覧

コマキ's レビュー

必ず自分を見つめ直すきっかけをくれる
大切なのは何なのか、炙り出しのように
ゆっくり優しく浮かび上がると思います

田舎から上京して来た両親と東京で暮らす長男夫婦、長女夫婦、次男と恋人…それぞれの思いがとても丁寧にリアルに描かれていて、わたしはずっと泣きっぱなしでした。特に母親のひと言ひと言が、胸に突き刺さりました。たぶんご覧になる方の立場によって、どの人物に気持ちが寄りそうか違うと思いますが、わたしは蒼井優が演じる次男の恋人の目線に、今までの自分の人生のいろんな瞬間を思い出して、涙が溢れました。初めてお義母さんに会ったときのこと、祖母が亡くなったときのこと…など。そういう意味で印象に残っているのは「君はここにいていいんだよ」と恋人の家族に言ってもらうシーン。この時彼女は、どんな気持ちだったでしょう? 悲しいシーンだけど、きっと喜びのような幸せのようなものを、ジワッと感じたんではないでしょうか。「おかしくて、かなしい。これはあなたの物語です。」という宣伝文句どおり誰もがこの物語の主役です。必ず自分を見つめ直すきっかけをくれると思います。直接答えはくれなくても、きっと自分にとって大切なのは何なのか、炙り出しのようにゆっくり優しく浮かび上がると思います。そして観終わったあと、全く湿っぽくないのが素晴らしいです。後味は清々しいのです! 是非、幅広い世代の方に見ていただきたい映画だと思いました。


 

コマキは見た! その①

東京家族

高層ホテルの1室に泊まることになった両親。窓の下に広がる都会の夜景を見下ろしながら、昔ふたりで見た映画の思い出話をするシーンが大好きです。なんてことない静かなシーンなんですが、なんだか涙が出ました。素敵な「ラブシーン」と表現したいです。憧れの夫婦ですね。

コマキは見た! その②

東京家族

開業医の長男宅に天童木工のちゃぶ台があったり、劇場の裏方仕事をする次男の部屋に横尾忠則のポスターが貼ってあったり、いいなと思う所がいっぱい。美しさを感じたのは、田舎の実家の玄関に置かれた黄色い花です。さりげなく何気ないものが、とても美しく胸をうちます。

 

コマキ's select『東京家族』に捧げる“5 Songs”


映画を観て、選びに選び抜いたコマキ的『東京家族』に
捧げる5曲を発表!

①ビューティフルハミングバード
「おかえりなさい おやすみなさい」

②星野源「茶碗」

③NABOWA「また明日 feat. 長谷川健一」

④アナログフィッシュ「抱きしめて」

⑤三波春夫+CORNELIUS「赤とんぼ」

今回は特に、歌詞に重点を置いて選んでみました。
①は「いつでも帰ることができる場所」について考えさせてくれる曲。「私にとって」だけではなく、いつか誰かにとって私はそういう場所になれるだろうか、と。
②は夫婦が一緒に年を重ねていくことを朗らかに歌い上げる曲。
③④は、大変なことが待っているのが確実なこれからの時代を生きて行くということ、歩き続けるということを考えさせてくれます。
⑤初めて聴いたとき号泣しました。三波春夫先生の歌声の振動と、コーネリアスサウンドの細やかな波。

 

次回更新は1月25日(金)予定!


(1月11日更新)


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