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ホーム > NEWS > 「この映画は撮影の常識への挑戦状です」(三池) 『藁の楯 わらのたて』舞台挨拶レポート その②(大沢たかお&三池崇史監督)

「この映画は撮影の常識への挑戦状です」(三池)
『藁の楯 わらのたて』舞台挨拶レポート
その②(大沢たかお&三池崇史監督)

 三池崇史監督の最新作『藁の楯 わらのたて』の試写会が先日に梅田ブルク7にて行なわれ、主演の大沢たかおと三池崇史監督が来阪。本作について語った。

 
 本作は、木内一裕(きうちかずひろ)の同名小説を映画化したサスペンス。その命に10億円もの懸賞金が懸けられた凶悪犯・清丸国秀(藤原)の身柄を、福岡から警視庁に移送する任務を負った銘苅(大沢)ら警視庁警備部のSPと刑事たちの闘いを今までにないスケールで描く。 
 
 
――昨年の夏1か月半に渡り、名古屋や台湾などで撮影されましたが、印象に残ったことは?
 
大沢たかお(以下、大沢):全てが印象的だったんですが、とにかく暑かったので、ひとつひとつの緊迫したシーンを撮るのに、興奮と暑さで吹き出た汗がそのまま映っています。そういった映画は今まであまりなかったので個人的な感情や状況が物語や役、スタッフにもすべてリンクしているような感じでした。
 
三池崇史監督(以下、三池):助監督時代も含めて長くこの業界にいると、この原作を読んでも「こういうの出来たら面白いけど、高速道路のシーンも無理だし、新幹線は貸してもらえないし、まあ無理ですよね。」とまず考えてしまうんです。そこから始まり、撮影のために設定を私鉄に変えたり、高速道路に入る前に事件が起き、一般道路へ行くなど逃げ道を作っていく。そういったプロとして身についてしまった撮影の常識に対する挑戦状でした。そこから逃げずに、原作に忠実にやろうと思うと台湾まで行って撮影することになりました。撮影がやりにくい状況の中でいろんな場所のいろんな人たちに協力を得て、何とかここまで来れたということそのものが1番印象的です。
 
――原作で意識した部分は?
 
三池:原作はSPがとんでもない怪物のような犯罪者を守るというハードボイルドなんです。これを映画化するにあたり、もちろん生身の人間が演じるので、SPにだって家庭があったり、年齢やコンディションと闘う個人の事情を抱えて仕事を貫こうとしている。また、犯罪者にしても彼は悪魔ではなく、本作で言えば性的な趣向が人と違うという、それだけのことなんです。自分の子供には自分の個性を大事にのびのびと好きなように生きてほしいと親は願うものだけど、彼も実はのびのび生きただけ。ルールとしての法律と人間としての欠陥があることをそれぞれに背負ってもらって、ハードボイルドという形ではなく、人間ドラマになればと思いました。
 
――大沢さんは主人公の銘苅をどのように考えて演じたのですか?
 
大沢:SPをスーパーヒーローではなく、実際に警視庁にいるSPの所作やマインドを含めて、現場にSPの方に入ってもらって、監修してもらいながら、毎シーンを丁寧に演じようと思いました。
 
――松嶋さんとの共演で彼女の印象は?
 
大沢:なりふり構わず、男の中で対等であろうとしていたというか、いい意味で男性的な強さを現場に持ち込んでいらしていて、変な気遣いもいらず一緒に仕事がしやすい本当に素晴らしい方です。
 
三池:大体女優は大物になると、スタッフとしては大変なんですよね。「暑い」とか「まだかしら」とかね(笑)。でも、そういったスタッフとの距離感が大女優として輝くためには必要なことなんでしょう。でも、松嶋さんはそれを超越して、今回SPということでほぼノーメークだったんですが、撮影が終わっても一度もモニターで自分をチェックすることがなかったですね。
 
――清丸という強烈にどぎついキャラを演じる藤原竜也さんについては?
 
三池:彼はそもそもああいう感じ(笑)。映画やテレビなどでいい人を演じているけど、清丸を演じるために生まれてきたような人です(笑)。ま、それは冗談ですけど、役者はいろんな役を演じることで、自分に問いかけているはず。今回は彼なりの清丸像を創り上げていました。それは原作とは少し違うのですが、台詞も多くない清丸を藤原くんの存在感だけで「こいつ異常だな」と示す必要があった。普段とは違う現場を彼も楽しんでいたと思います。
 
――藤原さんとの初共演でしたが?
 
大沢:凄く役に集中していて、それでいてまったく嫌味がなく、いつも綺麗な空気が流れているようでした。でも芝居になるとスッと清丸役になる。同じ作品を作る同志として信頼できるし、一緒に仕事ができて楽しかったです。
 
――今回SP役ということで、特に意識したことはありますか? 射撃シーンが多いですが、上腕部を鍛えられたとか(笑)?
 
大沢:射撃シーンがあるから上腕部を鍛えるということはなかったです(笑)が、銃を構えたり撃ったりする動きが浮き足立って変になってはいけないと考えていました。それは松嶋さんも同じですが、拳銃を抜いてから構えてまた戻すまでの一連の動きを、家でも練習しましたね。これ何回やっても難しいんです。後は、現場に入っただけで異常な緊迫感があり、それだけで自然と役に入っていけました。
 
――三池監督、大沢さん、お互いの印象は?
 
大沢:三池監督というのは、僕ら俳優の世界でほとんどの人が一緒に仕事をしたいと思い、一緒に仕事をしたらさらにまた仕事をしたいと思うような方として有名です。僕はそういう経験を今まで味わえずに俳優人生を送ってきて今回が初めてで。写真で見る限り目つきが怖いけどどういう方なのかなと思っていました(笑)。でもお会いしてみると、監督としてはもちろん、人として魅力的な方ですし、現場はこんなにも楽しいものかと、映画を作っていることをこんなにも楽しませてくれる監督は初めてでした。撮影は大変でしたが、誰ひとり嫌な顔をせず、愚痴もこぼさず、全員が同じ方向を向いているのが素晴らしかった。そういう空気を作っていた監督を、本当にすごい人だと思っていました。演出についても、言葉でも説明できるし、自ら演じて表現して見せてくれることもあって、僕はそれがとても助かりました。毎日何か発見があり、ドキドキして楽しかったですね。
 
三池:大沢さんは、このように優しい方です(笑)。それでいて自分の内面に厳しい、しかしそれを見せると周りに余計なプレッシャーを与えてしまうのでそこを見せない。役者としての自分を冷静に見ている目があっていろいろな視点を持つことが出来るんだなと。普通はのめり込むと客観的に見られなくなって内側だけで自己完結してしまうが、いろんな現場でいろんな演出家や監督と経験を積んだ人しか持てない視点を持っている人だなと感じてすごいなと思いました。僕自身びっくりすることが何度かありました。
 
――最後にメッセージを。
 
三池:スタッフ、キャストがひとつになって普段やれないことや諦めていたことを何とか作り上げた作品ですので、これが興行的に成功すれば、これからの日本映画を変えていける力になると思います。
 
別日に行われた大沢たかおと藤原竜也による舞台挨拶の模様はこちら
 



(2013年4月23日更新)


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左から、大沢たかお、三池崇史監督

Movie Data



(C)木内一裕/講談社 (C)2013映画「藁の楯」製作委員会

『藁の楯 わらのたて』

●4月26日(金)より、大阪ステーションシティシネマほかにて公開

【公式サイト】
www.waranotate.jp

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/160427/