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注目の若手俳優、中村米吉、中村隼人も熱演!
昼夜とも歌舞伎の様式美や魅力がたっぷりと味わえる
大阪松竹座で上演中の「七月大歌舞伎」ついて
米吉、隼人にインタビュー!

7月27日(月)まで大阪松竹座で開幕している「七月大歌舞伎」。毎年、関西の夏を彩る風物詩として定着してるこの大歌舞伎で、今年は関西初登場の演目も上演され、話題を呼んでいる。昼の部は鶴屋南北作、かつては刑場のあった鈴ヶ森を舞台に繰り広げる、歌舞伎の様式美がたっぷり詰まった『御存鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)』、江戸の情緒と夏の風情が感じられる舞踊『雷船頭(かみなりせんどう)』、そして夫婦の情愛の深さと普遍的な月日の流れを描いた森鴎外の短編小説を基にした『ぢいさんばあさん』を上演。そして夜の部は、大阪や京都も物語の舞台となっている、同じく鶴屋南北作の大曲を上演。左枝大学之助(さえだだいがくのすけ)という武士と、立場の太平次(たてばのたへいじ)という町人(片岡仁左衛門二役)がそれぞれの立場で悪の限りを尽くす、通し狂言『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』が関西初登場。
片岡仁左衛門を筆頭に、片岡秀太郎、中村歌六、中村時蔵、中村錦之助ら錚々たる俳優陣が出演する中、若手の中村米吉と中村隼人が大奮闘。昼の部『ぢいさんばあさん』では宮重久弥(隼人)、きく(米吉)の若夫婦として、時の流れを感じさせる名場面で登場。そして夜の部の『絵本合法衢』では、“ここで遭ったが運の尽き”といわんばかりに、たまたま逃げ込んだ立場で太平次になぶり殺される孫七(隼人)、お米(米吉)の夫婦を熱演している。そんな二人に「七月大歌舞伎」の見どころや、歌舞伎の魅力を聞いた。

--「七月大歌舞伎」も中日を過ぎましたが、現在はいかがですか?

隼人 昼と夜、両方とも初役なんですが、昼の部の『ぢいさんばあさん』は(きく役の米吉と)ふたりで、のどかな雰囲気を出せたら、より仁左衛門さんと時蔵さん演じる伊織、るん夫婦の哀れみや悲しみが浮き彫りになるのではないかと思います。僕は初々しさを忘れずに、これから未来に進んでいくふたりなんだなとお客様にわかっていただけるよう、毎日勤めています。

米吉 彼が言ったとおり、この若い夫婦は37年ぶりに再会する夫婦との対比上、必要なんだと思うんです。原作では名前ぐらいしか出てこないお役ですが、もしかしたら若い頃の伊織とるんに重なる部分もあると思うんです。

隼人 重なるからこそ悲しいんじゃないですか、お客様は。重ねてもらいたいですね、我々からすると。

米吉 お客様からしたら一瞬、(伊織とるんの)息子夫婦なんじゃないかと思う方もいるかもしれない。

隼人 そこは僕も仁左衛門さんにご注意されました。普通にやってしまうと、坊が大きくなって結婚したのかな?思われてしまう。それは違うからねと。

米吉 伊織とるんの子どもがどうなったのかという伏線にもなりますし。

隼人 僕たちは伊織とるんの37年の間をめる説明役なんですよね。伊織が京都で人を斬って。

米吉 それからどうなったかわからないですからね。

隼人 だから僕がその説明をして、お客様にわかってもらいわないといけない。だけど全部聞かせようとすると、つまらない長台詞になっちゃう。そういうことも意識しながら演じています。夫婦の間にある長い時間をつなぐ、大事な役割だと思っています。

--夜の部の夫婦は全く異なりますね。

隼人 そうですね。昼の部の夫婦が未来に向かっていくとしたら…。

米吉 夜の部は、お先真っ暗の夫婦ですよ。

--物語の中でも一番不運というか、理不尽な感じがしますよね。

米吉 “運が悪い”という状況は、南北さんらしいというか、このお芝居の暗くてどろっとしたようなものの一端だと思うので。(作品の中で)いろんな殺され方がでてきますが、僕らが一番長いこと、太平次に殺されているんですよ。

隼人 僕、6回も斬られてます。この芝居の魅力の一つで、歌舞伎のいろんな殺され方がでてきます。殺しの場面でも血が出ないので美しいもので終わるというのがいいなと思います。

--同じ世代の方に今月の作品をどのようにアピールされますか?

米吉 同じ世代の方たちに歌舞伎を観ていただかないと、歌舞伎がなくなっちゃうので、本当に。「七月大歌舞伎」では、『ぢいさんばあさん』はわかりやすい(話)です。昼の部は幕見席もありますから、『ぢいさんばあさん』だけでも観てくだされば。お値段も安くなりますので。

隼人 まず、僕達と同い年や年下のファンの方を増やして、どんどん歌舞伎に興味をもってもらうことは大切だと思います。そうするためにも、こうして取材を受けさせていただいたり、世に出してもらえる機会は有難いことだと思います。テレビに出たり、ラジオに出たりして宣伝をする。それをきっかけに観に来ていただいた方を裏切らないように、僕らもしっかり芝居ができれば、またお越しいただけると思うんです。

米吉 歌舞伎は娯楽で、古典芸能でありながら大衆のものだから、「ちょっと観てみようか」という感じで来てほしいですね。昼の部は『ぢいさんばあさん』に限らず、『鈴ヶ森』は様式美のものだし、『雷船頭』も雷様が出てきて楽しく踊ります。夜の部の『絵本合法衢』は、 “カッコイイな、悪いヤツだけど”というようなところを見せるお芝居だから、わかりやすいのかもしれないなと思うんです。

--改めて、歌舞伎の魅力を教えていただけますか?

隼人 歌舞伎はまず、衣裳が派手で、化粧が派手で、様式美があるので、見た目にも非常に楽しめると思うんですね。それプラスで、日本の最高級の演奏家たちがいます。三味線も琴も鼓も。全部、生演奏で、SEとか、効果音とか機械を使わないですからね。役者も含めて、総合芸術だと思うんです。

米吉 一つ一つの演目が(長い歴史の中で)何度も繰り返し上演され、ミュージカルや、オペラと同じように、練り上げられてきたものです。そういった作品が今、上演されています。新作であってもその骨格にある技術は同じです。そういうものが連綿と続いて400年。さかのぼれば、四條河原で出雲阿国が踊っていたことが、基になっているわけですから。

隼人 路上ライブ的な。

米吉 根本は娯楽ですよね。だから、楽しめるところはいっぱいあると思うんです。難しそうだなって思っちゃうと楽しくないけど、変な話、「何言ってるかわかんないけど、すごいな、こんな高い声出して」とか、「台詞回しがすごいな」っていうのだっていいと思うんです。「本当にあの人、80歳のおじいさんなの!? こんなにキレイなのに?」とかでも。お客様はどんな見方をされてもいいと思うんです。

隼人 お客様は神様です。

米吉 三波春夫さんじゃないけども(笑)。

隼人 いいツッコミをありがとうございます。

米吉 (笑)。夜の部は、「あー、あんなに殺しちゃうの!?」でもいいと思うし。それはお客様の見方によって違う。わかんないことがあってもいいと思うんです。でも、理屈を通り越した面白さがそこにあって成立しているものだと思うので、「とにかく一遍、観てみてください」っていうのが一番です。

隼人 そうだね。

米吉 舞台も、世話物みたいな話だと逆にリアルで。家とか全部汚してあって、江戸の生活が垣間見られます。一つでも面白いと感じてもらえるものがあるはずです。

隼人 観に来られた方は、タイムスリップした感じになると思うんです。それだけリアルに作り込まれている舞台もあります。

--暗闇のシーンなんかは確かにそう思いました。人の気配を感じて手探りで歩く仕草など、昔はそうだったんだろうなって思いますね。

隼人 今の人の感覚では絶対にないですよね、電気があるから。昔はろうそくだけだったから、やっぱり見え方は違いますし。我々も、夜の部では、実際は見えているし、何しているかわかるけど、見えないふりをしています。その人の奥を見る感じで。そういうのは歌舞伎ならではの独特な演技だと思います。で、ですね、僕はその夜の部で、仁左衛門のおじさんと二人で芝居をさせてもらうところがありまして…。僕は本当に、仁左衛門のおじさんが好きで、憧れていて、いろんなことを伺いに行ったりとか、それこそ化粧とかも一つ一つ、いろいろ細かく教えてくださって。

--仁左衛門さんと掛け合いのようなシーンもありますね。

隼人 男同士で絡みのあるお芝居は初めてで。稽古中から本当にいろいろ細かく教えてくださいますし、何とか少しでも応えられるように、この演目で少しでも役に立てるようにという気持ち演じています。

米吉 仁左衛門のおじ様とは先月の歌舞伎座でもご一緒させていただきました。今までそれほどご一緒させていただく機会がなかったんですけど、微に入り細に入り、本当に細かく教えていただいて…。おじ様に限らず、大先輩の方々と一緒に舞台をさせていただけることは本当に得がたい、貴重すぎる経験だと思います。先輩方のそばで空気とか、そういうものを感じながらもお芝居をしていかなきゃいけないわけですよ。ただボーっと見てちゃいけないわけですから。そういう緊張感を感じながらやっています。そうやって永遠におじ様方のそばでお芝居ができるわけでもないですから、その一月、一月に感じられることを得ていると思うと、本当に毎日ありがたく思います。

--たくさんお話をお伺いしまして、重複する部分もあると思いますが、最後に一言、お願いします。

隼人 「七月大歌舞伎」では、僕らは大きい座組のなかでお役を昼夜いただいています。その責任感もあるので、若いなりにしっかりと勤めたいと思っています。面白い、つまらないはいったん置いておいて、何か感じて帰っていただけると思うので、歌舞伎を観たことのない方はまず観に来てください。そして、歌舞伎が好きな方には、何度も足を運んでいただいて、僕たちを育てていただき、見守っていただきたいなと思います。

米吉 関西でも歌舞伎の上演回数が増えてきていますけども、大阪松竹座で“大歌舞伎”が見られるのは、今年はもう今月だけなんです。ですから、ほんの少しでも興味がわいたら、ぜひ足をお運びいただきたいなと思います。(毎月座組みが変わるので)全く同じメンバーで芝居をするは、これからも基本的にないと思うんです。毎回毎回が一期一会です。どんな演劇もそうですが、いつも今しか見られない状態にあると思うんです。歌舞伎は同じ演目が何度も上演されますが、その都度に違うので、歌舞伎がお好きな方はそのたびに違うものを楽しみにいらしてください。初めての方は本当に、敷居が高いと思われず、気軽にお越しください。

隼人 お待ちしてます。




(2015年7月19日更新)


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写真左から中村隼人、中村米吉

七月大歌舞伎

▼7月3日(金)~27日(月)

大阪松竹座

一等席-17000円
二等席-9000円
三等席-6000円

<昼の部 11:00>
『御存 鈴ヶ森』
『雷船頭』
『ぢいさんばあさん』

<夜の部 16:00>
『通し狂言 絵本合法衢 立場の太平次』

[出演]片岡仁左衛門/片岡秀太郎/中村歌六/中村時蔵/中村錦之助/片岡孝太郎/市村家橘/市川高麗蔵/他

※日時・席種により取り扱いのない場合あり。4歳以上は有料。

[問]大阪松竹座[TEL]06-6214-2211

大阪松竹座
http://www.shochiku.co.jp/play/shochikuza/

歌舞伎美人「七月大歌舞伎」
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/osaka/2015/07/post_42.html

※前売り券はチケットぴあでの販売終了。


片岡仁左衛門インタビュー

大阪では初となる四世鶴屋南北作の 『通し狂言 絵本合法衢』も上演! 片岡仁左衛門が語る「七月大歌舞 伎」の見どころと魅力!

https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2015-06/1506011.html