『ウラなんばグランド花月』にちなんで
中張又張が大先輩のメッセンジャー黒田に直撃!
「黒田さん、“ウラ”の定義ってなんですか?」
9月25日(水)~9月27日(金)に、なんばグランド花月で開催される『ウラなんばグランド花月』。昼間は全国各地から観光客が集まる笑いの殿堂「なんばグランド花月」を“オモテ”とするなら、月に一度、開催されるこのイベントはまさに“ウラ”。子どもは足を踏み入れることはできない、大人だけがわかるディープな笑いが満載のライブなのだ。
今回は、『ウラなんばグランド花月』に向けての特別クロストーク第一弾。『ウラなんばグランド花月』のリーダー的存在、ウラのなかのウラ芸人、メッセンジャー黒田と9月25日に出演する5upよしもとで活躍中の中張又張がガチンコ対談! 「先輩、“ウラ”の定義ってなんですか?」。芸歴4年目、まだキラキラした目をした中張又張に、酸いも甘いも噛み分けたメッセンジャー・黒田はどんな進言をするのか……?
白井:黒田さん、今回はよろしくお願いします。対談のテーマは「“ウラ”の定義」なんですけど……。
黒田:“ウラ”なぁ。ダークグレーというか、もしくはマニアック、マイナー。そういう感じやろうな。でも、マニアック、マイナーのよさってあると思うねん。ほかと融合しないというよさが。
高道:そうですよね。
黒田:でもなかには、“オモテ”でも“ウラ”でもない芸人っておるやん。俺、そういう奴は見ていて恥ずかしくなるねん。
白井:“オモテ”でも“ウラ”でもないって、どういうことですか?
黒田:そうやなぁ、めっちゃスタンダードの漫才をしてて、ツッコミにも関わらず、髪型とか服装をものすごくファンキーにしてしまう奴、とか……。
高道・白井:ファンキー(笑)。
黒田:マイナーにはなりたくない、でも、“オモテ”、いわばメジャーでもない……という、どっちつかずの奴を見ていたら、ものすごく照れてしまうねん。
白井:例えば、どんな感じですか?
黒田:うーん、「そっちじゃないやろ!」ということ。そこらへんにあるごく普通の純喫茶で、メニューはサンドイッチとナポリタンしか置いてないのに、マスターがコック帽をかぶっていたら「それは別にいらんのとちゃう?」って思ってしまえへん? 芸人だけじゃなくて、一般の人たちにもそういうタイプっていてるやん。俺はそういうの、すごく気になるねん。でも微妙すぎてツッコむこともでけへん。もっとわかりやすく例えたら、俺がロン毛やったらどう? 気持ち悪いやろ?
高道:ロン毛の黒田さん、ちょっと想像できないです(笑)。
黒田:もし自分のオカンが、ミニスカートをはいてたら怒るやん。「なんでよ! 私、これが好きやねんからええやん」と言ったとしても、「そういう問題じゃないわ!」って言い返すやんか。でも、そうやって本人に注意できないぐらいの、微妙なラインにいる人。その人たちを見てたら、俺は照れる。
白井:なんか、分かってきました。
黒田:そうやろ? “己を知る”ということやな。とくに芸人は、それが大事な職業やと思うねん。俺は『ウラなんばグランド花月』に出演する奴らは、そのへんのことをちゃんと分かってる奴らばっかりやと思ってるから。
高道・白井:本当ですか! よかった~。
黒田:でもひとりだけ、全然分かってない奴がおる。
白井:ど……、どなたですか?
黒田:ギャロップの毛利やね。
高道・白井:僕らからは何とも……(笑)。
黒田:でも、わかるやろ? あいつ見てたら、こっちが照れてしまうねん。おもしろさより、もっと手前の感覚。照れるのよ!!
高道:毛利さんだけですか。僕ら、入ってなくてよかった……。
白井:ホンマやな、よかった。
黒田:実はたまに、林もやねん。
白井・高道:えっ!?
黒田:あいつもたまに、自分がハゲてることを忘れて、フサフサ気取りの発言をするときがある。まぁ、林は言い合える仲やから、そういうときは「お前、今、生えてるで」って注意できるんやけど。
白井:フサフサ、ですか……。
高道:僕たち、本当に大丈夫ですかね?
黒田:大丈夫と思うで。こんなにゆっくり話したのは初めてやから、まだわからんけどな。
白井:ライブ当日にボロが出るかもしれませんね……。
黒田:でも、そういう奴もおもしろいねんで。「何してるねん!」ていうところが。芸人やのに、「みんなからこう見てほしい!」っていうポイントがズレているというか、カッコ悪いというのか……。
高道:見ている側が、違和感を持つみたいなところでしょうか?
黒田:実はそういう奴の方がテレビ向きやったりするんやけどね。
白井:そうなんですか? いいところもあるんですね。
黒田:そういう奴は、なにせハートが強いねん。自分の中に、確固たる自分の世界を持っているから。そういう奴はテレビの世界が合ってるんやよな。
高道:では、黒田さんの言う“恥ずかしいライン”に行かないために、どんなことを心がけておいたらいいですかね?
黒田:いやいや、そういう奴がいてもええねんで。例えば芸人やのにめちゃくちゃ歌が得意で、笑いナシに本気で歌い上げることってあるやん。俺がそういうのを恥ずかしいと感じるだけで、本人からしたら得意ジャンルを伸ばせば、そういうテレビ番組に呼ばれたりするわけで。それは別にいいんちゃうか、と。
白井:実は相方が、回りから男前ってよく言われるんですけど、本人はめっちゃ嫌がってるんですよ。
高道:嫌なんです……。ホンマに嫌で。めちゃくちゃ恥ずかしいんです。
黒田:あぁ~。でも男前って、ひとつのカードやで。すごいことやねんで。だって、ブサイクは男前の3倍ウケないと認めてもらわれへんねんから。
白井:3倍も!(笑)
黒田:そうやで。いいカードを持っていると思えばええねん。相方が男前って、めっちゃ得やで。
白井:そう言われたらそうかもしれません。でも、相方がせっかく男前やのに、僕らのネタってバケモノのコントとかやってるから、お客さんから「キャーッ!!」って、歓声ではない本気の悲鳴が起きたりして、人気がほとんどないんです。
黒田:それは気にしなくていいと思うで。そのかわり、両方とも普段はめっちゃええ奴にならないとあかんわ。とろサーモンみたいなもんで。俺にとって、あいつらは抜群におもしろいし大好きやねん。村田は男前でいい奴。久保田もホンマにあのまんまの奴やから、どうしてもテレビサイズには収まれへん。まさしく“ウラ”の芸人やね。あんなパターンを目指したらええんちゃう?
高道:今、すっごい響きました……!
白井:お、俺も……!
高道:そのことでちょうどモヤモヤしてたんで、すごくうれしいです。ありがとうございます。
白井:あの……、僕も相談していいですか? 実はちょっと、楽屋ウラの話なんですけど、今、僕ら5upよしもとのなかで一番下で、回りはお兄さんばっかりなんですけど、ノリに入れなくて。
黒田:今、何年目?
白井:4年目です。
黒田:へぇ! それで5upにちゃんと出てるなんてスゴイことやん!
白井:ありがとうございます。でも、楽屋にいると、皆さんが楽屋のノリとかしはるんです。それがいい感じならそのままライブでやったりしはるんですけど、僕ら、それにうまいこと入れなくて……。
高道:さらに言うと、楽屋の中にすら入れなくて、楽屋の外にある洗濯機の前に座ってる状態なんです。
黒田:そうか~。俺なんかは、回りが先輩ばっかりやったら、先輩に喋りかけられるまで喋らんでいいと思うけどな。だって、ネタを見たときに「こいつら、おもしろいな」と思ったら、先輩から絶対喋りかけてくるもんやから。
白井:では、楽屋のノリみたいなやつに入れないことで悩まなくてもいいんですかね?
黒田:むしろ、そんなん入らんでいいよ。別に、仲間にならないといけない必要はないわけで。俺らの時代にも楽屋のノリはあったし、それがいろんな芸につながったこともあるよ。でも、あえてそこに融合する必要はないと俺は思うけどな~。楽屋と舞台は別モンやから。それに、たとえ厳しくても、結局はみんな、ひとりやねんから。
白井:ひとり……。そうですね。
黒田:ノリも全然ええねんけど、どこかで芸人は「職業」であることを心に留めておかないと。サークルみたいになってしまったら絶対にアカンと思うわ。例えばダイアンの西澤なんて、人とほとんど喋れへんけど、やっぱり評価は高いわけで。自分に合った生き方をするのが一番ええよ。背伸びするのが一番しんどい。
白井:無理をするのが、一番よくない、と。
黒田:うん。それに、売れてきたら、表面上には出てこないけど、必ず足を引っ張ろうとする奴が出てくる。そのとき、ひとりのほうが絶対に楽やろ。芸人は、そんな世界。全然いいやん。
白井:はい! ありがとうございます。
高道:今日はホンマにありがとうございます。今回のライブ、僕ら、ご一緒させていただくからには、お互い楽しみたいと思います!
白井:なに? お前、黒田さんと同じ目線で楽しむつもり?
黒田:なんや、さっきまで楽屋の洗濯機前におるとか言ってたのに、上座におるような言い方を(笑)。
高道:す、すいません! 言葉を間違ってしまいました……。今回は大先輩の皆さんに、乗っからせていただきます!
(取材・文/中野純子 撮影/矢橋恵一)
(2013年9月13日更新)
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