面白おかしく歴史が学べる人気舞台が大晦日の梅田芸術
劇場に登場! そのキーマンとなる矢崎広&村井良大、
そして大和田獏に作品の見どころや魅力を聞いた!
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--こんにちは。ぴあ関西版WEBです。『大江戸鍋祭』インタビューということで、今日はよろしくお願いします。大和田さんは前作もご出演されまして、キャストのほとんどが若い俳優さんでしたが、若い方とご一緒に舞台に出られて、どんな印象でしたか?
大和田獏(以下、大和田)「僕一人だけ年齢が高いので、最初はどうなるかなと思っていたんですが、稽古が始まってしまえば目指すところは一つ、いい舞台を作るんだという目的に向かって励んだので、僕の中では年齢の壁を超えて同士としてやれたことが非常に楽しかったです。若い人たちが芝居に対して本当に熱心でね、情熱的で。真面目に取り組む姿を見て嬉しかったですね」
--若い役者さんと芝居のお話なんかもされたんですか?
大和田「稽古の合間とか、何人かと飲みに行ったりして、食事をしながら演劇論を交わしたりとか…。おこがましいから僕が芝居に対してどうだと言うことはなかったですけど、向こうが聞いてくれば『こういうことも大事だよ』とか、そういう話もできましたね」
--大和田さんは若者たちの中ではどういうポジションなんでしょうか?
大和田「意識の中では仲間ですね。年齢が上だから先輩だとかじゃなくて、もう板の上に乗ったらみんな同等なんですよね。主役だろうが、脇だろうが、舞台の中で生きているときは一人一人が生きていなくちゃいけない。なので、僕の中では仲間という意識でいます。僕は稽古場が好きで、前回の『新春戦国鍋祭』の稽古のときも、自分の出番がなくても稽古場に行って芝居を見たり、“演出家はこれを どういうふうにまとめて行くんだろう”とか、“こういうときにどういうアドバイスをするのだろうか”と考えたりして、それが面白くて、ずっと観てました。特に芝居を見るのがすごく楽しかったですね。“ああ、なるほど、若い人はこういう芝居をするのか”っていう発見があったり、“演出家はこういうふうにして芝居をいい方に導いているんだ”ということがわかったりして、楽しかったですね」
--『新春戦国鍋祭』も何でもアリだったんですが、それが一つにまとまっているのがすごいなと驚きました。
大和田「そうなんですよね。それはもちろん稽古の賜物なんですが、一つには演出家の手法だとも思うんです。『新春戦国鍋祭』のときも稽古が始まって10日ぐらいに演出家と二人で食事をしたんですけど、そのときに“辛抱強いですね”と僕は言ったんです。板垣さんは、まずは好きにやらせるんです。こうしなさい、ああしなさいとか、こうすべきだということを言わない。“うん、なるほど。もっとやってみて”とか、“ほかにないかな”とか、抑えつけず好きにやらせて、その過程で出てきた役者のキャラクターや個性を少しずつ摘まんでいくんです。そして無駄なものは切っていって。そうして交通整理を始めて、稽古の中盤ぐらいからだんだん一つの絵が見えてくるというか、“ああ、なるほど、そうか”となるんです。それを見ていて楽しかったです」
--最初はどんな感じだったんですか?
大和田「最初は、みんな好きにやって、自分も好きにやって。“これをどうまとめるんだよ!? 大丈夫かな”と思ってたんですけど、“いや、大丈夫ですから”と演出家が言って。それがまあ、本当に、本番1週間ぐらい前になったときに見えたんですよね。“なるほど、こうまとめたか!”と。みんな、嫌なことは一つもやっていないんですよ、“え? これをやるのか”とか、“これはおかしいんじゃないかな”ということはなくて、自分が好きにやってきたことをまとめてもらって、知らないうちに道を作ってもらって、出来上がっていったという。だから、みんなが生き生きと、のびのびと、楽しんで。そして一生懸命にやった結果がお客様に伝わって、もう1回見たいというリピーターのお客様が多かったんだと思うんです。最初はみんな、この芝居をどうやって観るんだろうと心配していたんです。役者仲間、演出家、作家など、観てくださった方に“どうだった?”って聞いたら、第一声が“おもしろい!!”。それを聞いて、“ああ~よかった~”って(笑)。みんな本当に、真面目に、真剣にふざけましたから、そういう意味でも、その評価を得たときはうれしかったですね」
--今回、その第二弾です。
大和田「前回もそうなんですけど、今回も、いろんなパロディが入ってます。そのパロディも、茶化すということではなくて、パロディにしたそれぞれの作品に対するリスペクトの気持ちが作家にも、演出家にもあるんですね。面白おかしくはしているんですが、決して茶化しているんじゃなくて、原作に対する思いがしっかりあります。決して品のないものにはなっていないと思います」
--『新春戦国鍋祭』を拝見して、その世界観が昭和のコメディに近いかなと思ったんです。
大和田「そうですね。僕もそんな雰囲気でやってました。それこそドリフターズの面白さとか。だから、いい加減なことをやっているようで、実は何度も何度も練られて、稽古して、持ってきたものなんですよね。ドリフの『8時だヨ! 全員集合』のようなものを僕も感じていました。瞬発芸だけじゃなくてね」
--そういう部分でも年配の方にも楽しんでもらえる舞台だと思いました。そして、本公演は『忠臣蔵』ということで、『忠臣蔵』に出られるのは初めてだそうですね。意外ですね。
大和田「初めてなんですよ。僕も意外だと思って(笑)。僕なんかの世代は、時代劇だと『忠臣蔵』『新撰組』『清水次郎長』に出たいという思いが必ずあったわけで。暮れからお正月だと『忠臣蔵』、夏だと『清水次郎長』。『清水次郎長』物は何度も演じたことがあるんですよ。桶屋の鬼吉もやらせてもらったり。でも、『新撰組』と『忠臣蔵』がなかったんですよね」
--お役は大石内蔵助です。
大和田「この作品は大石内蔵助が主役というよりも、どちらかというと今まで悪役で描かれていた柳沢吉保がメインで。そっち側から観ているところがあるんですが、当然、大石内蔵助のイメージがあると思うので、そのイメージは……崩してしまうかもしれません(笑)。まあ、非常にベーシックな、昔から僕が観てきた、いろんな方々演じられた重厚な大石内蔵助をまずは作り上げて、それをどう壊すかという作業だと思いますね」
--それは大和田さんの手で壊したり…。
大和田「演出家の手によって壊されたりとか。その中で、ちょっと茶目っ気のある、ユーモアにあふれたところも出したいなと思っています」
--大石内蔵助がどんなキャラクターになるのか、楽しみですね。では、最後に、公演を楽しみにされているファンの方にメッセージをいただけますか。
大和田「真面目な話になるんですが、やっぱり2011年という年は特別な年だと思うんです。多くの演劇人は非常な迷いを抱いたと思います。悩みと迷いですね。それは、この時期にお芝居をしていいのかどうかという。最初は躊躇された方もいっぱいいるんですけど、その中でみんな、やっぱり演劇の力を信じようということで公演を続けて。皆さん、いろんな劇場でいろんなお芝居を続けていらっしゃると思うんです。僕もそんな気持ちで、今年はほかの舞台もやらせていただきました。そして、この2011年を締めくくる年末に、このお芝居ができることには、すごく大きな意味があると思っているんです。一見、ふざけているように見える、何でもアリのお芝居ですけども、この日本に明るさと元気を取り戻すためには、もう1回、“真剣にふざけようよ”という場があってもいいんじゃないかと思って。そういう意味でも、2011年を締めくくりにふさわしい作品にしたいと思っています」
――なるほど。今日はありがとうございました!
(2011年12月28日更新)