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真夏の會と極東退屈道場が初演時に高評価を得た
『エダニク』『サブウェイ』をこの夏、同時再演! (2/2)

―― この2作品のジャンルは、それぞれ何になるんでしょう。

林「『エダニク』は、構え方としてはコメディ的にしていると思うんですけど、実情は割と骨太な内容だと思うんです。口当たりよく飲んでいるけど、お腹に入ったらずっしり来る感覚があるんじゃないかなという気がします。うちは……ふざけてる(笑)」

原「ああ、それは非常によくわかる表現ですね。悪ふざけですね(笑)」

―― コメディではなく?

林「コメディは皆さんに楽しんでもらう、わっと沸いてもらうものだと思うんです。『サブウェイ』はそういうふうには沸かない状況になっているので、コメディと言ってしまうと…。もちろん笑いの要素というか、いびつな状況に置かれている人たちを描こうとして、さらにそれをクロースアップして、その人の心情に入り込んで悲劇的な要素なんかも真剣に見ちゃうんですけど、いびつな状況にいる人たちを俯瞰で見ると、真剣にやっていてもどうしても笑けてしまう。小さいところで一生懸命やっている人たちを、ちょっと距離を置いて見ると笑ってしまうという心理があるので、そういう構造にはなっているんですけど、コメディではないですね。喜劇は喜劇かもわからないですけど。『コメディ』を翻訳すると『喜劇』になりますが、語感も含めて『喜劇』のほうが近しいかもしれません」

―― なるほど。では、それぞれ世界観の異なるお芝居ですが、舞台装置はどういうふうにされるのでしょうか?

原「ほぼ同じ舞台装置になりますね」

林「機動力の高さで言うと、真夏の會の方が高いので…」

原「机と椅子があればできます(笑)」

林「そこが面白いところかもしれないですね。この『真夏の極東フェスティバル』のために美術を作って、2組ともその中でやるので、その辺りが初演とは異なるイメージが立ち上がるかもしれません。同じ状況の中で共通の何かを探らないといけない状況になるのが、再演の面白さになるかなと思いますね」

―― では改めて、合同で再演する意味や、このことをきっかけとした将来的な展開などあれば教えてください。

林「横山くんと僕と原くんは、アイホールで北村想が教えている『伊丹想流私塾』の出身で、その中で割と毛色の異なる作品を作っていったという、そういう豊かさというか、枝の張り方を観てもらいたいですね。僕たちとしても、やりながら面白いなと思うところがあります。2組ともユニットなので、劇団とはまた異なりますし。真夏の會の『エダニク』は、原くんと横山くんと上田さんというアンサンブルで上演するので、そのアンサンブルを関西でも東京でも見てもらえたらと面白いなと思いますね」

原「見たいお芝居を一日でまとめて同じ場所で見るという、そんなんしたいなっていう思いつきから始まったんですけど、こと“東京に行く”ということに関して言えば、それこそ林さんがおっしゃったように、関西でやっているユニット、しかもふり幅が広い2作品を同時に見れますので、それだけでも東京のお客さんに観てもらえたらと思いますね。もちろん関西も、これだけ違うお芝居を同時にできるんだというところも観てもらいたいです」

―― 関西の方でも初めてご覧になる方は、東京で初めて観る方と同じような感覚になるでしょうね。

原「2組が同時にやることで、今まで興味を持ってもらえなかった層に訴求できるかなという思いもありますね。少しでもいろんな方に興味を持ってもらえることをしたいなと思いますし」

―― 東京に作品を持っていくということに関してはどうですか?

林「東京と大阪の2都市でやるには、ご縁がなかったら相当厳しいなと思っていたので、具体的な目標としては掲げていなかったんです。けど、今回、こういうご縁で行かせてもらえるとなったからには、“作品を東京で観てもらう”ということをやっぱり意識しましたね。『サブウェイ』は文字通り、地下鉄の話なんですけど、大阪にも地下鉄は走っていますが、利用者は割と地元の人が多いですよね。『サブウェイ』は都会に来ている田舎者たち……僕も北海道の函館出身なんですけど、“故郷を喪失した感のある人が都市固有の地下鉄を利用している”というところから発想しています。そういう人は、大阪より東京の方が多いのではないかと思うので、そんな日常の人にこの作品を観てもらって、そこでどういう反応をされるのか純粋に知りたいというか…。この作品には、そういう方たちに観てもらいたいという思いがあったので…。東京で上演する一番の理由はそこですね」

原「『エダニク』が日本劇作家協会の新人賞を受賞されて。賞の選者も東京の方ですし、その賞自体も関西より東京の方で話題になるような感じで、そういう経緯があるので、再演するにあたっては東京でしたいねという思いがありました。なぜ東京公演をするのかというとそこですね。『エダニク』という受賞作を東京でお披露目するという気持ちが正直、あります。個人的には、なんせ関西以外でお芝居をしたことがないので、よその土地であればどこでも楽しいんですが、こと『エダニク』であれば東京で上演すべきだと僕は思っています」

―― なるほど。関西の方にももちろんですが、東京の演劇ファンの方々にも、この機会にぜひ観ていただきたいですね。インタビューはこれにて終了いたします。今日はありがとうございました。

 




(2011年8月12日更新)


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Infomation

真夏の會

元クロムモリブデンの俳優・夏と、水の会代表の原真、女優冨永茜が結成したユニット。音響・照明・美術などのスタッフワークは極力シンプルに、台本、演出、役者だけでどこまで魅せられるのか、を追求している。その機動性の高さで、「いつでもどこでも高品質」をコンセプトに作品を製作。

第15回日本劇作家協会新人戯曲賞受賞作品
『エダニク』
作:横山拓也(売込隊ビーム)
演出:上田一軒(スクエア)
'09年2月、TORII HALLにて初演。

舞台は東京近郊のとある町の屠場。超大型黒豚「伊舞黒豚」の生産に成功した(株)伊舞ファームは、通常の加工ラインの規格外であるその品種の専用屠場として、ミートセンター丸元(株)を関連会社化していた。ミートセンター丸元は、会社の規模こそ小さいが、歴史が古く、腕のいいベテラン職人や若く質のいい職人を数名抱え、工場長やライン主任も有能であった。ところがある日、ミートセンター内で黒豚解体の際に不正があったと、伊舞ファームの社長が跡継ぎを連れて丸元の屠場に直々に乗り込んできた。工場長と社長の話し合いが始まり、暇を持て余した伊舞の息子は『屠場一日体験』と銘打って、職人たちの休憩所にもなっている研磨室に現れた。そして休憩所は、とても休憩ができる空間ではなくなり…。立ちこめる熱気と臭気。「生」がたちまち「死」に、「生体」が次々と「物体」と化していく空間の中、目前で失われるエネルギーに抗うかのように、メンタル面でもフィジカル面でもひたすら力強くある職人たち。そんな彼らの中で、突如、「死」のイメージが膨張していく瞬間を描いてゆく。

極東退屈道場

(劇)ミサダプロデュースの作・演出として活動していたミサダシンイチ=林慎一郎が主宰する演劇ユニット。公演ごとに俳優を集めるプロデュース形態をとっている。『サブウェイ』では、映像、ダンス、セリフ劇を巧みに構成、実験性に富んだ作品で高い評価を得た。

『サブウェイ』
作・演出:林慎一郎
振付:原和代
'10年11月、ウイングフィールドにて初演。

地下鉄を巡る7日間のドラマ。外国の映画監督が日本の地下鉄を舞台にしてドキュメンタリー映画を作るというエピソードを導入にし、無言の満員電車を利用する7人のエピソードが点描されていく。都市に暮らす故郷喪失者たちの噂やため息がチューブの中でこだまし、絡み合いながら、この国のサブウェイは走り続ける。歴史の積み重なりが創りだした地面の下に深く潜り、景色の見えない車窓と膨大な広告に囲まれながら、ただ目的地を目指す人々の空虚でナンセンスなつぶやき。それは確かに時代の空気をはらみ出していく。やがて1週間が過ぎたとき、神も同じく地球をつくりあげる。そしてまた、新たな月曜日がやってくる…。

公演情報

『真夏の極東フェスティバル』

■伊丹公演
8月11日(木)~14日(日)
アイホール(伊丹市伊丹2-4-1) 
前売2500円
当日2800円
2公演通し券4500円
平日マチネ割引(11日(木)、12日(金)15時公演)2000円

11日(木)15:00(極)/19:30(真)
12日(金)15:00(真)/19:30(極)
13日(土)14:00(真)/18:00(極)
14日日11:00(極)/15:00(真)

■東京公演
8月25日(木)~28日(日)
王子小劇場(東京都北区王子1-14-4 地下1F)
前売2500円
当日2800円
2公演通し券4500円
平日マチネ割引(25日(木)、26日(金)15時公演)2000円

25日(木)15:00(真)/19:30(極) ※1
26日(金)15:00(極)/19:30(真) ※2
27日(土)14:00(真)/18:00(極) ※3
28日(日)11:00(極)/15:00(真)

☆公演終了後、昼夜ともアフタートークあり。
※1=ゲスト:楫屋一之(世田谷パブリックシアター劇場部長)
※2=ゲスト:中屋敷法仁(柿喰う客)
※3=ゲスト:竹内佑(デス電所)×丸尾丸一郎(鹿殺し)

各日とも開演の40分前受付開始、開演の30分前開場。

【チケット取扱】
ライトアイ[TEL]06-6647-8243 http://righteye.jp
(伊丹公演のみ)アイホール[TEL]072-782-2000 

[問]ライトアイ[TEL]06-6647-8243 

真夏の極東フェスティバル特設サイト 
http://www.manatsu-kyokuto.net/

ライトアイ
http://righteye.jp