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「僕が音楽のバトンを届けていきたい」
かりゆし58の名曲を20年の時を越え新解釈!
シンガーソングライター808(YAOYA)が現代へつないだ母への思い
『アンマー(808ver.)』インタビュー&動画コメント

 母への思いをつづった不朽の名曲として歌い継がれてきたかりゆし58の代表曲『アンマー』(’06)を、20年の時を越えシンガーソングライターの808(YAOYA)が新解釈。自身の人生を投影したリリックと独自のメロディラインをリミックスしアップデートされた『アンマー(808ver.)』は、原曲へのリスペクトを随所に感じさせながら『アンマー』のJ-POPスタンダードとしての飛距離をさらに10年、20年と延伸させるような軽やかさに満ちている。TikTokを起点に『You』(’24)で大ブレイク以降、その追い風を背にしても完成まで1年半を要した今回のプロジェクトの裏側で彼が迎えていたのは、一人の人間として、そして音楽家としての分岐点だった。808が語る’26年の現在地がここに!



音楽をやめるか続けるか、自分と戦ったターニングポイントの一年


――ぴあ関西版WEBにはEP『ALL 4 U』('25)のリリース時以来の登場で、昨年も絶え間なく音楽を作ってライブを重ねた一年だったと思いますが、振り返ってどうでした?

「地元の兵庫県小野市でお祭り=『音祭~ネガイマシテハ~』も始められて、この一年はみんなが僕のことをアーティストとして認めてくれたからこそ自分の芯がもっと濃くなったというか、"僕ができることって何だろう?"と考えさせられた一年でした。でも、東京・LIQUIDROOMでのワンマンライブが中止になっちゃったり...音楽をやめるか続けるか、自分と戦ったターニングポイントの一年でもありました」

――リリースも盛んで各地のイベントやフェスにも出て順調に見えても、その裏では同時多発的な苦悩があって。ファンの皆さんもそうでしょうけど、東京ワンマンがなぜ中止になったのかは気になっていました。

「当時は自分の頭の中がごちゃごちゃで心の準備もできていなくて、今世に出てる曲でライブを組まないとと思ってたんですけど、そのときの自分が歌いたい曲もあまりなくて...」

――曲を作ったときの心境とはどうしてもタイムラグができますもんね...。

「その状態でワンマンライブをするのは失礼なんじゃないかと思ってしまったというか...本当に申し訳ないんですけど、かなり迷惑をかけちゃいましたね」

――もちろん要因は一つじゃなくてさまざまな判断の結果だと思いますけど、今の自分と誤差のないライブをしたい気持ちと、待ってくれている人たちを喜ばせたい気持ち。その決断には賛否両論あってしかるべきですが、ある意味よりピュアな方を取ったとも言える。難しいですね。

「結構炎上もしましたし(苦笑)、そんな中でもいつも応援してくれている方からメッセージをいただいたのが支えになったんで、いつかちゃんとリベンジしたいですね」

――それでも音楽を続けようと思ったのは他に何かあったんですか?

「子どもができて守るものが増えたので止まるわけにはいかなかったし、一人だけならそこら辺でカラオケができたら、歌えるだけでいいやと思ったんですけど、みんなが僕のことを"君は歌う人だから"と言ってくれて、おかげで音楽で食べさせてもらってる。人生を懸けてフルベットできるのはやっぱり音楽しかないし、今はそういうファンの皆さんのためにもっと頑張りたいと強くなれてますね。でも、保護者的に言えば"ピンクの髪はやめようかな、俺ももうお父さんやしな"っていうのはありますけど(笑)」

――"あのお父さんチャラいな"って言われそう(笑)。そんな公私ともに激動の一年を経た808の'26年最初の一手が、『アンマー(808ver.)』というのは想定外でビックリしました。YouTubeのMVの再生数が1億回を超える、今やJ-POPスタンダードと言っていいかりゆし58の代表曲をなぜ選んだのか、なぜカバーではなくリミックスなのか。



「(レーベルから)この曲をやってみないかと言われたとき、『アンマー』は『アンマー』でこれが答えというか、僕にこれ以上やることはないと思ったんですけど、僕らより下の世代はもしかしたら『アンマー』を知らないかもしれない。みんなお母さんが大好きやと思うし、誰がお母さんの曲を歌ってもいいよなと思ったんですよ。だったら、まずは僕が自分なりのお母さんへの"ありがとう"を書いてみようかなと。だからカバーじゃなくてリミックスして、僕が音楽のバトンを届けていきたいなって。あと、これは全然関係ないかもしれないんですけど、占い師に"お母さんの曲を書きなさい"って言われた後にこの話をいただいたんで、余計に"これはやらないと!"と思えたのもありました。しかも変な占い師で、ライブ中に占うんですよ」

――どういうシチュエーションなんそれ(笑)。そのイベント、斬新過ぎるやろ。

「ステージの正面にあるPAブースにいる占い師から、"あなたはお母さんの曲を作りなさい"って急に言われて、その日のライブは全然集中できなかったです(笑)。でも、これはガイダンスだなと思って」

――なるほど、そういういきさつがあったんですね。

「それから、かりゆし58の前川真悟(vo&b)さんはどう思ってあの曲を書いたのか知りたくて、3泊4日でプロデューサーのユタ(LIFE STYLE)くんと沖縄に行ってみたんですよ。そうしたら、地元で作っていたときはなかなかサビのメロディにフィットしなかったフックがスッと降りてきて。しかも、前川さんとO-ROOTSというバンドをやってるギタリストの久米はるき(OSAKA ROOTS)さんとたまたま出会って。久米さんは僕が『アンマー』をリミックスすることは知らなかったと思うんですけど、"今度一緒にライブしようよ"と誘っていただいたおかげで、前川さんに"『アンマー』をリミックスさせてください!"と面と向かって伝えられたし、セッションまでさせてもらえたんですよね」

――それは運命的ですね。久米さんとの出会いもしかり、ふいにフックが降りてきたこともしかり、その土地の持つエネルギーがあるんでしょうね。

「何て言うか、島全体にグルーヴがあるんですよ。沖縄に漂う波のグルーヴが好きで、大阪だと岸和田とかも雰囲気が似てるかも。僕らの地元には海がないので、山とかそっち側のフィーリングが多いんですけどね」

――先ほど"『アンマー』は『アンマー』でそれが答え"と言ったように、名曲ゆえに脳内にこびりついたメロディ=確固たる正解があって。そうなると、"こんなの『アンマー』じゃない"と言わせない範囲で、"こんなの『アンマー』と一緒じゃん"とも言わせないリミックスを作らなきゃいけない。それは自由に書くより相当難しい作業に思えます。

「というのもあって、完成するまで結局1年半ぐらいかかってますから! でも、この曲のおかげでいろんな曲が作れるようになったんで自信につながりました」

――SNSで808がポストしていた"ありがとうがお仕事"っていい言葉だなと思って。この曲はまさにそれというか、808の大事にしているスタンスとリンクした楽曲ですね。


直では恥ずかしくて言えない気持ちもストレートに届けられる
歌に乗せるとすんなり言えちゃうのが『アンマー』の力


――ラブソングは808の得意分野ですけど、『アンマー』で歌われている愛は、それとはまた違う新たな挑戦ですね。今回の歌詞を見れば一目瞭然ですけど808にとってお母さんは大きな影響と愛を与えてくれた存在で。ピンクの髪色もかつてのお母さんのスナックの看板の色からきているぐらいで。

「お母さんは僕が3歳ぐらいの頃に離婚して、たった一人で僕とお兄ちゃんを育てて、私学にも通わせてくれて...あと、スナックのママでもあるんで、地元のみんなのお母さんみたいな部分もあったと思うんですよ。そういうところも曲に込められたらなと思って」

――かりゆし58の『アンマー』は、若い頃にやんちゃしていた前川さんからお母さんへの懺悔や感謝はもちろんありつつ、バンドにとってもレーベルとの契約を切られそうなピンチに放った起死回生の一曲で、このままでは終われないある種の悲壮感や執念も根底にあって。一方、808の『アンマー(808ver.)』は現代のムードにアップデートされたポジティブな気持ちというか、さっきバトンという話が出ましたけど、『アンマー』のポップソングとしての飛距離をさらに伸ばすために必要な軽やかさが、今回のアレンジで乗ったんじゃないかと。

「お母さんとカラオケに行ったとき、"おかん、大好きやで。感謝してるで"みたいな、直では恥ずかしくて言えない気持ちもストレートに届けられる、歌に乗せるとすんなり言えちゃうのが『アンマー』の力だと思うんです。この曲には僕の1年半をかけたので、そう言っていただけるとめっちゃありがたいです」

――『アンマー(808ver.)』を聴いていて、HYや夏川りみのような沖縄アーティストの雰囲気も時折感じました。

「僕も最初は(と歌い出し)、"アンマーよ アナタは私の"(かりゆし58『アンマー』)~"浮かぶあの笑顔"(夏川りみ『涙そうそう』('01))みたいに、めっちゃリミックスできるやんと思ったんですよ! だから、そういう雰囲気は自然と入ってると思います。でも、さすがにそのままだと夏川さんにも許可を取りにいかなあかんなと思って(笑)」

――そこまでいくとマッシュアップですもんね。ということは、意図したものじゃなくてにじみ出たもの。

「おじいちゃんが夏川りみさんとか沖縄の音楽もよく聴いてたので、そういう全部のフィーリングがインプットされて、僕なりにアウトプットできたのかなと思いますね」

――そしてMVは、かりゆし58の『アンマー』と同じ吉澤正悟監督が、808の地元・兵庫県小野市で撮影して。街の空気感が伝わる、温かい気持ちになるMVですね。



「小野にいるアンマーを探そうと、地元のパン屋さんとかいろんなところに行って、正悟さん自ら"撮っていいですか?"と許可取りもしてくれたんですけど、僕も"これで撮るん!?"って思ったぐらい小っちゃいカメラやし、正悟さんの風貌が怪し過ぎて、誰も撮らせてくれへんかもしれないとちょっと思ってました(笑)。でも、実際はむっちゃいい絵が撮れて、正さんにも"『アンマー』を超えましょう!"と言われて...何かすごく緊張しましたよ。(レーベルのスタッフも)みんな僕んちに集合してましたし、そもそも実家で撮影するなんて絶対にイヤじゃないですか(笑)」

――カウンターで歌っているのはお母さんのスナックAngelで、遠目にかりゆし58の『アンマー』のMVが映り込む粋な演出もあって。もう20年も前だから前川さんのルックスも別人やけど(笑)、愛に溢れた一曲になりましたね。今後の予定としては4月19日(日)に『アコースティックフェスティバル KOBE 2026』への出演が決まったりもしてますが、今年はどういう一年にしたいですか?

「変わらずに変わっていって、ラフにタフにラブに今年も来年も再来年も愛を歌います。よろしくお願いします!」

――ラジオ用のコメントみたいにめっちゃ定型のフレーズあるやん(笑)。

「ありがとうございます(笑)。今年はアルバムを作りたいなと思っていて、フィジカルが好きなので盤を出したいなって。レコードの音で自分の曲を聴いてみたい。レコードは宇宙に飛び出しても音が聴こえるらしいし、無重力空間でも音が鳴るなら最強だなって!」


Text by 奥"ボウイ"昌史




(2026年2月20日更新)


Movie

人柄や会話の雰囲気が伝わる!?
808(YAOYA)からの動画コメント!

Release

自分なりの母への思いをつづり
かりゆし58の名曲をリミックス!

 
Digital Single
『アンマー(808ver.)』
発売中
Love earth rock

<収録曲>
01. アンマー(808ver.)

Profile

ヤオヤ…’00年1月11日生まれ、兵庫県小野市出身。色気のある歌声、抜群のメロディセンスと感情が溢れ出る斬新な歌詞、等身大のパフォーマンスでジャンルを問わずあらゆる楽曲を808カラーに体現するシンガーソングライター。’24年にリリースした『You』がSNSをきっかけに大ヒット。Spotify国内バイラルチャート1位、Billboard JAPANの新人アーティストチャートHeatseekers Songs 1位及び、Apple Music総合トップソングランキング13位を獲得するなどのバイラルヒット。YouTubeのリリックビデオの再生回数は1600万回を突破している。唯一無二の表現力を武器に、これからの活躍が期待される新時代のアーティストである。’26年2月2日には、かりゆし58の名曲をリミックスした新曲『アンマー(808ver.)』をリリースした。

808(YAOYA) オフィシャルX
https://x.com/808_ne_jp
808(YAOYA) オフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/808.ne.jp/

Live

神戸アコフェスに初出演!
貴重なアコースティックライブ

 
『アコースティックフェスティバル
 KOBE 2026』
チケット発売中
▼4月19日(日)昼12:30
神戸VARIT.ほか全11会場
前売チケット6000円
[出演]アカシアオルケスタ/今村モータース/ウルトラ寿司ふぁいやー/大橋ちっぽけ/叶芽フウカ/Kensuke Sudo/KOYUKI/
サーカスフォーカス/さとう。/
少年ラヂオ/Jonah/是是/大東まみ/
竹原ピストル/近石涼/天々高々/とた/
長澤知之/にこいち/NONA REEVES/
野田愛実/ヒグチアイ/Bigfumi/
フジタ カコ/フジヤマミユ/Baby Canta/ペンギンラッシュ/HONEBONE/
ホフディラン/松室政哉/
眞名子 新(Band set)/みらん/
もっさ(ネクライトーキー)/森 大翔/
808 /優利香/(夜と)SAMPO/
Ryu Solo(Ryu Matsuyama)/ルイ/
ワタナベフラワー
Kiss FM KOBE■https://www.kiss-fm.co.jp/contact/

 

Column

「自分にとってラブソングが
 さらに大事になった一年だった」
『You』のバイラルヒットが
808にもたらした景色とは?
全身全霊を込めた最新EP
『ALL 4 U』に迫る('25)

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはコチラ!

「昨年出会った808と約半年ぶりに再会。前回はリモートでしたが今回は対面でのインタビューということで、話していてより人柄が伝わってきた上にグンと話すのがうまくなっていた気が。それだけ彼がこの短期間でいろんな人と出会ってきたということでしょうか。新曲はかりゆし58の代表曲『アンマー』のリミックスで、彼自身と地元の兵庫県小野市が醸し出す温かなムードがマッチした意欲的な一曲に。土台となるビートを生かしつつウワモノを変えるアプローチは、普段からレゲエのリディムに乗せフリースタイルをやってきた彼だからこそな感じもします。今後の展望として、地元にレコーディングスタジオを作りたいと語っていた808。それが実現したらさらに充実した楽曲を届けてくれそうです!」