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「自分にとってラブソングがさらに大事になった一年だった」
『You』のバイラルヒットが808(YAOYA)にもたらした景色とは?
全身全霊を込めた最新EP『ALL 4 U』を手にLIQUIDROOMに挑む
話題のニューカマーに迫るインタビュー!

 昨年3月にリリースした『You』がTikTokを起点に大ブレイク。ほぼノンプロモーションでSpotify国内バイラルチャートで1位を獲得したほか、多くのチャートをにぎわせたシンガーソングライター、808(YAOYA)。歌と仲間とスケボーをこよなく愛す兵庫県小野市出身の彼は、自然豊かな故郷のバイブスとノスタルジーを礎にしたメロウな楽曲と、人間味溢れる情熱的なパフォーマンスで一躍、時の人となった。『SUMMER SONIC 2024 OSAKA』への出演も果たすなど充実の’24年を駆け抜けた808から、6月17日に待望の最新EP『ALL 4 U』が届いた。そして、四季に根差した4曲4様のラブソングを収録した同作を引っ提げ、11月1日(土)には東京・LIQUIDROOMで初の東京ワンマンライブを開催する。この秋、キャリア最大規模の大舞台に挑む808が、激動の一年から新作&ワンマンに懸けた思いまでを語るインタビュー。話題のニューカマーのライフストーリーに迫る!



"愛してる"とか"好き"に代わる奥ゆかしい日本語が他にある気がして


――昨年は『You』のバイラルヒットをきっかけに、一気に人生が変わった一年でしたね。



「全国いろんなところに行かせてもらって、自分が今どこにいるのか分からなくなりました(笑)。自分なりに緊張していたのもあって、ステージに上がる前にちょっと足が震えたりもして..."ガチやな"、みたいな。でも、自分にとってラブソングがさらに大事になった一年だったし、これからも変わらずにラブソングを...っていうか、ラブというジャンルを歌い続けたいと強く思いました」

――『You』が生まれたとき、これまでの曲とは違う手応えはあったんですか?

「実はあんまりなくて...でも、『You』が入っているEP『MAGIC HOUR』('24)には人生を懸けていました。ベットできるものは全部ベットしてお金もなかったし、これで無理なら明日のベッドもない、ぐらいな感じで(笑)」

――インタビュー中でも韻を踏むという(笑)。

「('24年5月に開催した)ワンマンライブのチケットも手売りしていて手元に現金が結構あったから、ついタバコを買っちゃったりもして(笑)。当日ギリギリまで不安でしたけど、『You』で奇跡が起きた」

――結果、『You』の追い風もあって大阪・SUNHALLでの初ワンマンは見事に成功して。

「思い返せば『You』がリリースされる前、GeG(変態紳士クラブ)さんがデモを聴いてくれて、"やっとレゲエで通用する曲ができたな"と言ってくれて、"この曲ヤバそう...!"みたいなことがあったんです。曲にパワーがあったのかは自分には分からないですけど、GeGさんがそう言ってくれたから、レコーディングするときに心を込められたというか、自分の中で大事にできたのはありましたね」

――『You』は彼女や初恋の人を思い描いて書いたとのことですが、その感情を曲にしようと思ったのは?

「ラブソングを聴くのは好きなんですけど、"愛してる"とか"好き"に代わる奥ゆかしい日本語が他にある気がして。僕の中のルールとして、"愛してる"とか"好き"じゃない表現でも、その思いが伝わるように日々考えています、龍の湯という温泉で全裸で(笑)。『You』に関しては、プロデューサーのユタ(LIFE STYLE)くんがオケだけのリディムをかけてくれたとき、メロディに乗っかってパッと言葉が出てきてくれた感じでしたね」

――日本はわびさびが分かる国のはずなのに、いざポップスとなると分かりやすい描写が乱立しているからこそ。

「僕もそう思います。だからこそ、これからもラブソングを書き続けようと思っています」



『You』があったから『i love you』もできて『ALL 4 U』につながった


――新作のEP『ALL 4 U』もユタさんとの共同制作ですが、最初の出会いは?



「(ユタがディレクションした、ジャパニーズ マゲニーズの)『最後の一本(Remix) feat. NORIKIYO & 紅桜 & J-REXXX』('24)のMV撮影に、職質されるスケーター役で僕を呼んでくれたんですけど(笑)、元々スケボーをしていたので自分でもピッタリやなと思って。その流れでユタくんが家まで迎えに来てくれたとき、かけてくれたリディムに合わせてフリースタイルしていたら、そのままスタジオに連れて行ってくれて...それが全ての始まりだったから、MVに出てホンマに良かったなって。"これはバトンだ"と思いましたね」

――『ALL 4 U』は心血を注いだ『MAGIC HOUR』に次ぐEPとなれば気合いも入ったと思いますが、作るにあたってのビジョンはあったんですか?

「愛する人への気持ちを言葉にすると、例えば"ありがとう=Thank you"とか、全部に"you"が入っているなと思って。当たり前やからこそすぐに忘れちゃうけど、当たり前があっての幸せだから、そんな当たり前をジップロックできたらなと曲を作っていったら、それぞれが春夏秋冬に当てはめられたんです。そこから『ALL 4 U』、"四季折々、キミと"、というコンセプトができていきました」

――今作の軸になった曲はあります?

「『i love you』(M-3)が僕らの背中を押して、ゴールまで連れていってくれました。この曲は、地元の公園の大草原でいつも通り友達とミニギターでセッションしていたときにサビが思い浮かんで、そのボイスメモをユタくんに送ったら、アベンジャーズみたいにミュージシャンが集まって録ってくれました。僕は夕日がきれいな田舎の出身で、何もなくて何でもある街なんですけど、シティ寄りの音よりどちらかと言うとカントリーっぽい、温かいカレーの匂いがしそうなぐらいがいいなと思って(笑)」

――レゲエやヒップホップに限らずさまざまなサウンドの方向性がある808ですが、一貫して感じるノスタルジーみたいなものが特徴だなと。それは808の地元の景色や雰囲気が、音楽に落とし込まれているからかもしれませんね。

「きっとそうだと思います。アミューズメントパークも映画館もゲームセンターもないので、自分たちで遊びを作るしかない。映画がないなら映画を撮ろう、みたいな(笑)」

――『i love you』のような大衆性と清涼感のあるアーシーなバンドサウンドは808の新たな突破口に感じます。他にも『Rock you』(M-1)は、80~90年代のジャパニーズR&Bなムードも流れる優しい浮遊感で、『Feeling you』(M-2)はサーフミュージック的な流麗なエレキギターが心地良く、"会って 合って 当てはまる"や"相合愛変わらず"なども、らしいフロウだなと。今作にはそういう遊び心も随所に垣間見えますね。

「ありがとうございます! ただ、制作期間は今までで一番長くなってしまって、毎回この感じで作っていたら、人生がいくらあっても足りひんなと思いました(笑)。でも、それによって深みが加わって、全身全霊を叩き込めたというか...せっかくなら自分をもっと発見したいし、自分で自分にプレッシャーを与えた作品でもありましたね。最近、大事にしているのが、"困難は乗り越えられる者にしか訪れない"という言葉で、こんな作品を作れたなら、またレベルアップできるのかなと思ったり」

――楽な道といばらの道があるなら、困難な方を選べと言いますけど。

「僕は変な道を真っすぐ突き進んでいるのかもしれない(笑)」

――そして今作の最後には、『You(Acoustic ver.)』(M-4)ということで、『You』のストリングス&ピアノアレンジバージョンが収録されています。

「これからもライバルは自分しかいないし、そういう自分が作ったアートで言えば、今のライバルは『You』で。『You』をいいと言ってもらえるけど、僕の中ではまだ答えが定まっていなかった感じもあって...でも今回で、"これが正解やったんや!"と思えるところまで突き詰められました。レコーディングに使ったマイクもたまたま"U"47(=ノイマン製のヴィンテージマイク)で、マイクにハートマークが付いていて、これはガイダンス=導きやなって。『You』があったから『i love you』もできて『ALL 4 U』につながったので」

――このアレンジで聴けて良かったなとすごく思いました。ピアノとストリングだけになることで=超メロウじゃないですか。バズった先入観を抜きにして純粋にいい曲だと分かる、それが最も伝わる美しいアレンジだなって。


808はチャレンジする場所


――昨年の大阪初ワンマンに続き、今度は11月1日(土)東京・LIQUIDROOMで初の東京ワンマンが開催されますね。

「去年の大阪ワンマンは、直にお礼を言えていない人がまだまだいっぱいいるぐらい素敵なみんなが集合してくれて、じいちゃんばあちゃんも来てくれたり、家族の正月みたいな場所を作れて僕もうれしくなって...音楽を続けていこうと思えた一日になりました。あの後、ちゃんとみんなで打ち上げできる場所があれば良かったんですけど、それが今度のワンマンの課題かな?(笑) LIQUIDROOMは僕にとって挑戦なので、ここを満パンにさせられるかが今年の勝負どころですね。よりエンターテインメントなライブができるんじゃないかとワクワクしています」

――ちなみに4人組ヒップホップクルー、FLAT FRANKENとしての活動も精力的で、ソロとグループの両輪が刺激し合っているのはありますか?

「FLAT FRANKENは帰る場所というかホッとする。でも、808はチャレンジする場所で。"ただいま"ってFLAT FRANKENに帰ってこれるから、"そろそろ行こうか!"と808で思わせてくれる。僕の中ではFLAT FRANKENがあっての808やし、808があってのFLAT FRANKENですね」

――あと、ジャケットやワンマンのフライヤーしかり、808にはピンクのイメージがありますが何か理由が?

「僕のお母さんがやっていたスナックの看板が昔ピンクで。今は悪魔と契約して黒くなっているんですけど(笑)、せめて僕だけでもピンクでいようかなと思って。髪とか服の色をピンクにしてからフィットしているというか調子がいいから、これからもそうしようと」

――808というアーティスト名の由来は、ローランドのリズムマシンの名機TR-808からかと思いきや、学生時代のあだ名がBOBで、それを数字に見立てたと。そもそも何でBOBだったんですか?

「"何部?"って聞かれたとき、むっちゃしょうもないんですけど"スポンジ・ボブ"って答えたのが、そのまま(笑)」

――あだ名ってだいたいしょうもないことから付きますからね(笑)。

「そうですよね(笑)。でも、それが今では宝物です」

――『ALL 4 U』でまた新しい仲間に出会って、デカいパーティーをしたいですね。

「温かさだけは残して、どんどん違う場所でも祭りをしていきたいです!」

Text by 奥"ボウイ"昌史




(2025年6月18日更新)


Check

Release

『You』のストリングス&ピアノVer.も
四季のラブソングを収録した最新作

 
Digital EP
『ALL 4 U』
発売中
LD&K

<収録曲>
01. Rock you
02. Feeling you
03. i love you
04. You(Acoustic ver.)

Profile

ヤオヤ…’00年1月11日生まれ、兵庫県小野市出身。色気のある歌声、抜群のメロディセンスと感情が溢れ出る斬新な歌詞、等身大のパフォーマンスでジャンルを問わずあらゆる楽曲を808カラーに染め上げるシンガーソングライター。’24年にリリースした『You』はApple Music総合トップソングランキング13位、及びBillboard JAPANの新人アーティストチャート“Heatseekers Songs”や、今最も話題の曲をランキングで表すSpotify国内バイラルチャートでは1位を獲得。これからの活躍が注目必至の新時代のアーティストである。’25年6月17日には、最新作となるEP『ALL 4 U』をリリースした。

808(YAOYA) オフィシャルX
https://x.com/808_ne_jp
808(YAOYA) オフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/808.ne.jp/

Live

秋には過去最大規模にして
初の東京ワンマンライブを開催!

 
『808 ONE MAN LIVE
 In Tokyo「All 4 U」』

【最速先行】~6月15(日)
【1次先行】6月17日(火)~7月6日(日)
【2次先行】7月12日(土)~21日(月・祝)

一般発売8月8日(金)
▼11月1日(土)19:00
LIQUIDROOM

【最速先行】2000円
【1次先行】⼀般3800円 学割2000円
【2次先行】⼀般3800円

一般4800円 学割2000円
LD&K■https://ldandk.com/
※学割は小学生〜大学生、専門学生まで対象。公演当日入場時に学生証の確認をさせていただきます。学生証を必ずご持参ください。
学生証を忘れた場合、もしくは学生だと確認できない場合は一般価格との差額を支払っていただきます。
※小学生未満のお子様は保護者様1名につき、
1名まで入場無料。
 

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはコチラ!

「808はまだまだネットに情報が転がっていない未知数のアーティスト。初インタビューの下調べのために彼のインスタをさかのぼったら、仕事とは“稼ぐことじゃない、ありがとうって言ってもらえる、思ってもらえること”と金言が。リモートで対面した彼も、自らが作り出す音楽同様自由で、会話の根底に流れるピュアネスが信頼できたな。いろんなアーティストと話して思うのが、面白いことをしでかす人って純粋で、そういう人だからこそ応援したくなる。808にはその資質が間違いなくありました。新作の『ALL 4 U』もポテンシャル抜群で、中でも代表曲のリアレンジ『You(Acoustic ver.)』は息をのむド迫力。大阪で言えば、フェスティバルホールとかでこの曲を歌っても映えるだろなとイメージできる荘厳さでしたよ。今回の記事はそんな808のこれまでとこれからが分かる、現時点でのガイドになるはず!

PS. 僕はハワイが大好きで、ホノルルには“ピンクパレス”と呼ばれる名門ホテル=ロイヤルハワイアンホテルがあるんですが、808が売れてそこで新作のビジュアル撮影をするなんて日が来たら…そんな途方もない夢が広がった彼との第一歩でした。そのときもぜひ取材で呼ばれたい(笑)」