 
ホーム > インタビュー&レポート > DJ復帰で新たに進む、“DJシンガー”としての道! 「その経験の中で見つけた次の表現がR&Bでした」 シンガーソングライター・青山みつ紀インタビュー

自分の軸に気づけたアルバム制作
新たに楽しむ"DJシンガー"の活動
――前回お話を聞いたのは2023年のアルバム『CHARM』リリース時でした。念願のフルアルバムリリースは青山さんの中にどんな感情を残したでしょうか。
「『CHARM』に収録したタイトル曲はコンプレックスを克服したい! という内容だったのですが、私...歳をとることが怖かったんです。でもアルバムを出してからは年をとる=成長するという方向に意味の捉え方が変わった気がします。あれから2年、コンプレックスに向き合って楽しくいろんなことに挑戦できるようになったのかなと思います」
――それはアルバムを解き放ったことによってか、リスナーに共感してもらえたことによってか、どちらの浄化作用なのでしょうか。
「どちらもかなぁ。自分の中ではコンプレックスを言葉にして、それに共感してくれる人がいたことは大きかったなと思います」
――今、何割くらいポジティブになれたイメージですか?
「6割、7割ですかね。まだどこかで年齢は怖いです(笑)。でも『CHARM』リリース前よりは確実に変われたなと思います」
――精神的な変化に加えて音楽的に次やりたいことも見えてきましたか?
「私は元々クラブDJという経歴を持っていますが、シンガーをメインにしてからDJは趣味に変わっていました。でも『CHARM』を作った時に、DJで培った知識を作品に落とし込めたんですよ。それで私の中でDJが大事な核になっていると気づけたので、DJを職業として復活させました!」
――DJ復活、興味深く拝見していました!
「ありがとうございます。そのおかげでシンガーサイドというより、DJサイドから音楽を見られるようになってきました。DJとしてはハウスでフロアを盛り上げた後、1回BPMを下げてチルな空間を作りたくなっちゃうクセがあるんですよ。そういう気持ちが働いたのか、『CHARM』でガッツリ盛り上げたので次の作品ではR&Bがやりたくなっちゃって」
――あぁ! 今回の作品がR&Bというのはそれで?
「そうなんです(笑)。ちょっとBPMを落として、フロアメークするように作品にも取り組みたいなと。音楽制作への姿勢もDJをまた始めて変わってきたかなと思います」
――今回の作品はDJ復帰からの流れがあったんですね! ちなみにDJ復帰に葛藤はなかったですか? シンガーに専念するためにDJを辞めていたわけで...。
「実はかなりあったんですよ。シンガー一本で行きますって出て行ったDJの世界にまた受け入れてもらえるのかなって。なので、DJ始める前にはいろんな先輩やクラブのみなさんのところへ挨拶に行きました。怒られるかと思っていたら、みなさん歌いながらDJもすることをすごく面白がってくださって」
――青山さんの音楽活動を見てくださっていた証ですね。
「それが一番の驚きでした。だから復帰してからは、自分の歌も歌いながらDJもする"DJシンガー"スタイルでやっています。でもシンガー活動に絞る前、同じスタイルでやっていた時は批判されたりもしたんですよ。両方中途半端だって」
――受け取られ方としてはマイナス寄りだったんですね。
「はい。でも、今はポジティブに捉えてくださる方がたくさんいてうれしいです」
――改めて見えてきたこともあるんじゃないでしょうか。
「フロアを上げてからチルな方向へというのは盛り上がり方としても定番ですけど、今クラブでかかっている曲調はBPMも160くらいの速くて激しいものが多いと感じています。みなさんコロナが明けてはっちゃけたい気持ちが強いのかなと。なので、強い音やハードな音がすごく盛り上がるんですね。ただそればかりだと疲れるから、そこにR&Bを挟むとフロアがゆったりしてお客さんもしっかり踊りつつ聴いてくれる印象があるなと思っていて」
――なるほど。フロアの反応的な気づきももちろんですが、一度シンガーに専念したという経験を踏まえるとフロアの作り方やDJのやり方も変わりました?
「それも変わりました! 以前は曲そのものやつなぎ方で盛り上げる気持ちが強かったですが、今は自分の曲を歌いながら盛り上げる"歌で魅せるDJ"という手法になったので、パフォーマンスとしてのDJという側面がすごく強くなったのは大きな変化だし収穫だと感じています」
自分と向き合うことを表現した2曲と
DJである自分を表現した2曲で作った新EP
――去年はリリース控えめ、ライブ&DJ多めでしたよね。それには何か理由があったんですか?
「どんな曲を作っていくか、DJシンガーとしての活動をどうしたら格好よく見せられるかをずっと考えて...去年は修行のような1年を過ごしていたんです」
――定まっていなかった?
「全然ですね。やりたいことはあったけど、受け入れてもらえるかも大事なことだと考えていました。リスナーが何を求めているかにも耳を傾けたくて、どういう音楽が求められているかを知るためにずっとクラブに通い詰めて勉強を重ねた1年でした」
――そう考えるようになったきっかけはあったんですか?
「DJ復帰が大きかったと思います。DJをする時に、例えばお客さんたちはこのアーティストに次はファンク系の曲を出して欲しいと思っているんだろうなと感じるけど、そのアーティストはやりたいことが別にあるからファンクは出さない。でも聴き手が欲する曲もあるんだなという気づきがありました。それを自分に当てはめて客観的に見た時に、次の私にはR&Bが必要なんじゃないかという結論が見えてきたけど、それを作って出すには時間が必要だなと思いました」
――ふむふむ。
「R&Bが必要だと感じたのは、他にも理由があるんです。Y2Kリバイバルを音楽シーンでもすごく感じていて、今まではちょっとした流行りだったけどもう定番化してきているというか。そんな中でR&Bにちょっとスパイスでヒップホップが入っているような楽曲をされている女性アーティストがあまりいない気がしたんです。私はDJもやっているので、そこは伝わりやすい曲にできるんじゃないかと。そう思えたのが去年の夏のことです。それから1年近く、何曲作ったかわからないほど作りました。アレンジしてもこれは違う、こう変えようみたいなことを続けまくって、自分でピンと来るものができるまで本当に時間がかかってしまいました」
――その"ピンと来た"ポイントを言葉にできますか?
「キャッチーさがあったことと、すごくヒップホップが好きな方にわかってもらえるオマージュをさりげなく入れられたことですね。そのふたつがハマった時にピンと来た! という感じだったと思います」
――でもR&BってキャッチーすぎるとJ-POP感が強くなりそうだし、キャッチーじゃなさすぎるとわかる人にしかわからないし、加減が難しそうです。
「そうなんですよ!! だからサウンドはわかる人にわかるものに徹底して、歌詞とメロディーはポップス寄りのバランスを心がけました。歌詞は英語を多めにしているけれども、しっかりと日本語も使って。サウンドと作詞作曲の目的をガッツリと分けて作ったイメージです。とにかく今回作った「Heroine」と「Breathe」をEPにまとめたいという思いが強くありました」
――R&Bが軸のEPを作りたい、と。
「それと、自分と向き合うことを表現したいと思いました。去年は本当に自分と向き合うべきことがたくさんあって、その重要性が身に染みたというか。進むだけが人生じゃなくて、立ち止まる時間の大切さがわかりました。だからR&Bで自分と向き合うようなやさしい時間を作りたいという気持ちが強くなったのかなと思います」
――なるほど。だた今の時代、R&Bの音源を出すにしてもいろんな形があると思うんです。シングル、EP、ミニアルバム、フルアルバム、配信、フィジカル...。今回2曲を基軸にEPを選んだ理由は?
「最初は2曲だけで出そうと思っていたんですけど、それだけだと私っぽくないというか...。それもあって「In Your Driving」のリミックスバージョンを入れたんです。これは、実際私がDJの現場でもよく使っているリミックスなんですよ。R&Bで自分と向き合うことがテーマのメッセージ性が強い2曲の後にこの曲を入れて私の基盤がDJであることを伝えたかったのと、ダンスは忘れてないぜ! ということを表現したくて「Heroine」のエクステンデッドバージョンを入れて4曲のEPにすることで、DJシンガーとしての新しい青山みつ紀を見せようとEPという形になりました」
――2023年からの経験を表現に落とし込んだらこの形になったんですね。
「そうそう、私、一旦まとめたいタイプなので(笑)」
――でもすごい数の曲を作っていたと聞くと、フルアルバムを作れたのでは...と思ったりもします。
「そうそう、アルバムでもよかったんですけどとにかく今回は4曲をじっくり聴いてもらおう! という目的でEPにとどめました」
――ちなみに「Heroine」の世界観の構築はどう始まっていったものなのでしょうか。
「この曲は恋愛です! とはいえ恋愛のみならず人と人の関係の中で傷つけられることもあるじゃないですか。それこそ私、ネガティブになればなるほどよりネガティブになってどん底に落ちられるタイプでして」
――明るく言っていますけども。
「どんどん落ちることができます! でも底まで落ちたら、急に開き直りの精神が湧き上がるんです。そこからが強いタイプで、とんでもない爆発的な行動力が生まれるんですよ。どうしようもなくて海外に飛び出したり、クラウドファンディングをやってみたり!」
――前回のインタビューで伺いましたよね(笑)。
「そう、でも自分もそういう部分を楽しんでいるところもあって...去年いろいろあった時にもどん底まで落ちた後、自分磨きが楽しくなった瞬間があって。ダイエットとか肌管理とか自分を磨くってこんなに楽しいのか! と気づいた時に、自分と向き合ってやれることをやりながら自分の道を行こうと思えました。"マジ、私は私!"っていう精神って、自分がヒロインなんだと気づけないと行き着けないのかなと。それに気づいたら自分を愛するという言葉もすごく理解できて、今まで私を傷つけた人にもありがとね! みたいなテンションにもなれて。そういうふうに始まったのが「Heroine」です」
――そうなると、2曲目で「Breathe」が立ち止まってもいいよというメッセージをこめているというのもすごく納得です。
「バーンと爆発してガーッと前に進んで、でもやっぱり立ち止まるのもオッケーだよと。なので、2曲がつながっているというのが自分の中では大きいことなんです」
――立ち止まるのもオッケーって、辛い時期を経験しないと言えませんよね。
「そう、逆にありがとう精神がないと言えない気がします。 この曲に関しては自己再生がテーマでもあるのでR&Bに乗せるとメッセージ性が強くなりすぎて、日本語にしたくなっちゃうんです。日本語でわかりやすくという点を追求するとダンスミュージックにする方が歌詞は乗せやすい気がしたんですけど、強い表現...例えば本当にありがとね! みたいな部分は英語にして、生まれ変わるとかやわらかいやさしい表現をところどころ日本語にすることでR&Bに合うように試行錯誤しました」
――ということはサウンドがR&Bでなければ、歌詞はこうはならなかった?
「そうですね、もっと日本語が多かったかもしれません」
――あと、気になったのは青山さんの歌い方です。『CHARM』ではキュートな歌声が印象的だったのですが、今回はすごく大人っぽさが目立つというか。
「実はそれ...DJを再開した影響なんです」
――というと?
「DJ復帰してから、声が枯れるようになっちゃって(笑)」
――あぁ!
「それでもDJは辞めたくないので、自分のベストな発声を探しているうちにハスキーな感じになりまして。元々ハスキーな声に憧れていたので到達できたわけですけど...ちょっと喉が変わったので、今のこの声と向き合って歌い方を変えました。今の声で歌える歌い方を見つけたというか。気づいていただけてうれしいです」
――音楽に真面目に向き合った結果、完成した歌声なんですね...! ちなみにタイトルになっている2曲に加えて既存曲のリミックスを2曲収録していますが、このアレンジのポイントも伺えますか。
「「In Your Driving」はT.O.Mさんにリミックスを依頼しました。実はDJをしている時にR&Bでフロアができあがってきてそこからテンション上げて踊らせたい! となるとBPM128くらいまで上げていくんですけど、そのR&Bからダンスミュージックにつなげる間のところの曲のセレクトってめちゃくちゃ難しくて。その間でしっかり踊らせることができる感じにしたいとお願いしました。そもそも「In Your Driving」は私の曲の中でもダンスっぽい感じだからこそ、クラブでノれるアレンジにしたら"真ん中をつなぐ曲"になれるんじゃないかと思って」
――DJ目線...!
「あはは! だからDJする時にめちゃくちゃ使いやすいんですよ! BPM110くらいで。 上げることもできるし下げることもできるし、一定のノリが続いているので初めて聴いた人でもノリ方がわかりやすいリミックスになっているんです。DJとして歌手としていい感じのフロアの作り込みができるんです」
――そしてその後の「Heroine」をエクステンデッド(原曲を再編集して、部分的にアレンジを加え再生時間を更に長くしたもの)バージョンにしたというのは?
「エクステンデッドバージョンはアウトロとイントロが長いものなのですが、DJをする時につなぎやすくなっているものなんです。つまりこのバージョンがあると、どの曲にもつなぎやすくなるんです。なのでいろんなアーティストの曲ともつなげられるし、ロングミックスもできるし、短くタイトにクイックもできますし、DJがすごく使いやすいっていうだけで作りました!」
――後半2曲は完全にクラブ仕様なんですね。でもここまでのお話を聞いてすごく"なぜこの4曲なのか"がすごく理解できました。そしてこのEPリリース記念として11月にワンマンライブが行われます。
「EPのテーマが自分と向き合うことだったので、ライブもかなり自分と向き合って自分を大切にすることを表現したいと思っています。最新曲はもちろん、今までライブであまり歌っていない曲も合わせてメッセージ性の強い楽曲でセットリストを作っています。その分、体験してもらったらみなさんはどっと疲れちゃうかもしれませんけど(笑)、ぜひ受け止めてもらって! 久々のバンドセットでのライブになりますので歌って、踊って、みなさんと会話するようなライブにできたらいいなと思っています」
取材・文/桃井麻依子
(2025年10月29日更新)
 
          
      
      New EP『Heroine / Breathe』
配信中
mitsukiaoyama
《収録曲》
1. Heroine
2. Breathe
3. In Your Driving (T.O.M Remix)
4. Heroine (Extended ver)
あおやまみつき…北海道出身、DJから歌手へ転向した異色の経歴を持つシンガーソングライター。2018年に1stアルバム『Naturally』でデビュー。2020年以降、「In Your Driving」で注目を集め、国内フェスやワンマンライブツアーを実施。2023年にリリースした3rdアルバム『CHARM』は、収録曲がテレビタイアップに起用されるなど踊らずにいられないサウンドと心を癒す歌詞で多くのファンを魅了している。現在はDJをしながら歌う“DJシンガースタイル”が注目され、年間100本以上の現場で自分の曲を歌いながらプレイを続けている。
          
            青山みつ紀 オフィシャルX
            
          
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            青山みつ紀 オフィシャルInstagram
            
          
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            青山みつ紀 オフィシャルYouTube
            
          
            https://www.youtube.com/@mitsuki.raspberry
            
          
【東京公演】
チケット発売中 Pコード:309-404
▼11月4日(火) 19:00
SPACE ODD
前売-4500円(オールスタンディング、整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
【お問合せ】yo4hito.kawasaki@gmail.com