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シンガーソングライター・青山みつ紀が
3rd Album『CHARM』をリリースした今振り返る
ここに来るまでの長い長い道のりについて

シンガーソングライター・青山みつ紀。都内のクラブでDJとして音楽活動をスタートさせ、DJをしながら歌うDJ&シンガーというスタイルで 年間100件以上のイベントに出演しながら全国を回る中、2018年には歌手活動に専念――。ここまで聞くだけでも、今までなかなかなかったプロフィールではないだろうか。デビュー後、2枚のミニアルバムのリリースを経て突如降りかかったコロナ禍は、自分がこれまでやってきた音楽にも大きな影響を与え、言葉のチョイスや歌っていきたい世界も新たになる思いだったという。そんなコロナ後に見つけた新たな表現をギュッと詰め込んだ3枚目となるフルアルバム『CHARM』が世に放たれた。今作品は、Tokimeki Records、SIRUP、加藤ミリヤらのサウンドプロデュースも手掛けるT.O.Mとのコライト作品の集大成と位置付けられている。コンプレックスや、挫折、倦怠感など、ネガティブな感情さえもポジティブに昇華させた歌詞とメロディーはどのようにして生まれたのか。今の場所に立つまでの経緯や心の動きについて、ストレートな言葉で語ってくれた。

DJ修業、夢への挫折、ひとり旅
夢へとつながっていたたくさんの経験


――インタビュー初登場となる、青山みつ紀さんです。今日はよろしくお願いします! 自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。

「はい。北海道・帯広出身でシンガーソングライターをしています、青山みつ紀です。2018年にDJから歌手へ転向して、そこからファーストミニアルバム『Naturally』、セカンドミニアルバム『Secret』を出して、今年4年ぶりのフルアルバム『CHARM』をリリースしました!」

――改めてよろしくお願いします! 先ほどの自己紹介の中で、DJとして活動をされていたというのが音楽活動へ進む大きな一歩だったのかなと思うのですが、そもそもDJを始めたきっかけは?

「歌手を目指して専門学校に入ったのを機に上京したけども、周りの人たちの歌手としてのスキルや音楽の知識の深さに愕然として挫折したのがきっかけなんです。その時に音楽の歴史を勉強したり、もっと音楽を聞かないといけないと強く感じて、DJになればそういったことを全て身につけられるなと考えたんです。それまでクラブに行ったこともなかったし、DJが何かもわからないまま六本木のParadis TOKYOというクラブに行って、"DJになりたいんです!"と突撃して」

――すごい行動力!

「(笑)。そうしたら、なんだか面白いやつが来たみたいに捉えてもらえました。そこからDJとは何か、音楽の歴史やジャンルについても隅から隅まで教えてもらって、DJにどんどんハマっていきました」

――数あるクラブの中から、Paradis TOKYOを選んだのは?

「当時のバイト仲間にいいよ、と聞いたからです。本当にタダ働きでいいので通わせてください! と話をしたら、そんなこと言ってくる子が今までいなかったと驚かれまして。そこから毎日通ってDJブースの掃除、先輩たちの荷物持ち、オープンからラストまで先輩たちがかけていた曲を全てノートに書き溜めて勉強して、照明も覚えました」

――弟子入りして師匠から全てを学ぶ、芸事の世界ですね。

「本当にそうですね。半年ぐらいそういう修業の日々を過ごしました。当時はEDMの流行りはじめで、ZEDDやAviciiが出てきた頃でした。とにかく先輩の曲のつなぎ方を見て技を盗む日々で教わったのは、どうしてこの曲をかけたの? と聞かれたら、説明ができる選曲をするべきということが大きかったですね」

――音楽の知識ももちろん、機材を操ったりやれなければいけないことだらけですね。めちゃくちゃ大変そう!

「その全てを先輩たちから手取り足取り教えてもらえたのは大きかったですね。本当に世間知らずの生意気な娘だったので...修業期間では礼儀やいろいろなことを叩き込んでもらいました」

――ちなみにParadis TOKYO以外でもDJはされていたんですか?

「ESPRIT TOKYO、V2 TOKYO、GASPANIC、RED AREA(現在は閉店)とか、六本木のクラブはほぼほぼ行ったと思います」

――へー!

「最初は先輩に連れて行ってもらって。そのうちに歌いながらDJをするようになったこともあって、面白いことをやっているねとゲストDJという形で呼んでいただけるようになったんです」

――DJをしながら歌うというスタイルを始めたきっかけというのは?

「初めはDJをしながらMCをしていました。その頃はDJ KAORIさんもお客さんを煽るような言葉を挟み込んだMCを加えてDJをされていましたし。そのスタイルでやっていた延長で、ZEDDとアリアナ・グランデがフィーチャリングした「Break Free」に私がハモって歌ったり、音を消して少しアカペラで歌ったりしてみたら、それが意外とウケたんです。そもそも歌手になりたかったわけだし、このスタイルでやっていけば個性が出せるかもしれないと思いました。歌いながら次の曲を探したり、つないだり、エフェクトをかけたりもしますね」

――すごい! それが2018年に歌手へと転向して音楽活動を1本に絞られているわけですが、それはどうしてですか?

「当時のDJ界にいた感覚では、本当に中途半端なことはできないなと感じていました。二足のわらじを履いて進むのは難しいというか。なので、どちらか1本に絞らないといけないなと思っていたことと、だんだん私の歌を聞きに来てくれる方が多くなったので、歌手でやっていこうと決めました。けれどDJ歴の方が長いし、根っからDJすることが大好きで辞めきれなかったんです。今年DJとしての活動も再開しました」

――2018年に歌手活動に絞ってからは、どんな日々を過ごされていたのでしょう。

「なんとかデビューに向けて進んでいたのですが、事務所トラブルで全てが飛んでしまって...」

――なんと!

「死ぬほど挫折を味わって、めちゃくちゃ大変な思いをしました。でもこんなことのために夢を諦めるのもムカつくなと思って。そこから一念発起してなんとか自分でトラブルも全て片付けた時に、改めて音楽で生きていく! と思えました。誰かにやってもらおうとかサポートしてもらおうと考えずに、自分で! の精神でいこうと決めました。それでまずはクラウドファンディングに挑戦してみようと思って」

――まずは活動資金を集めるところから。

「そうです。1stミニアルバムはクラウドファンディングで資金を集めて、大好きだったプロデューサーの長岡成貢さんのスタジオの扉を叩きました。1カ月ぐらい毎日通って、曲を作ってください! って(笑)。それが起点となって『Naturally』は完成しました。ただ、『Naturally』を作った頃に私が好きだった音楽はジャズ~ヒップホップ~R&Bで、今後もそういう音楽を歌っていくならば歌声に説得力を持たせるためにも海外に行こうと考えたんです」

――いきなり!?

「はい。ニューヨークで路上ライブをして、チップのみで生活することを課してやってみました。本当に大変だったんですけど、思った以上にチップがいただけて1カ月間滞在することができたんです。そしてそこでベーシストのウィル・リーともたまたま出会いました。滞在中にオープン・マイクに出たら、そこでベースを弾いていたおじさんがめちゃくちゃ上手で"私日本で歌手をやっているから、あなたベースを弾いてよ"って。で、日本に帰って"ベース弾いてくれるって言っているおじさんがいる!"とスタッフに話したら、その人めちゃくちゃ有名人だよ! って(笑)。そういうノリでニューヨーク、ロンドン、パリを回りました。その経験は、今頑張れているエネルギーになっていると思いますね」



ルーツであるダンスミュージックに
振り切ることを決めたフルアルバム


――デビュー前に音楽的な経験値を上げるような体験をたくさんされて、自分の歌いたい音楽の世界観が固まってきたのはいつ頃からだったのでしょう。

「CDデビューから2年ほど経って、これからだ! と思っていた時にコロナで何もできなくなってしまって。私ずっと自分は曲を書けない人間だと思っていたんです。でもコロナになった時に、渦巻くマイナスの感情をどうしたらいいのかわからなくて、それを全て紙に書いていたらノート3冊にもなったので、それにメロディーをつけてみようかなと初めて作詞作曲に向き合ってみたんです。そうしてみたことで自分はR&BやDJをルーツに持ちながら、シンガーソングライターとして、経験してきたことやこの行動力、自分の全てをありのまま歌で表現したいと心に湧いてきました。そこからは、歌手ではなく、シンガーソングライターとして進んでいきたいと方向が見えましたね。なので、固まってきたのは本当にコロナ後で」

――ということはコロナ以前にリリースしていたアルバムと、コロナ後である今回りリースになったアルバムでは存在として別というか、第一章、第二章ぐらい存在として違うものになっていると思っていいのでしょうか。

「うん、まさにそうですね。だからこそ今回の『CHARM』には、2022年以降にリリースした楽曲をギュギュッと収録しています。前作からの4年は、自分が変化遂げるために必要な時間でしたね」

――変化を遂げたというコロナ中には、どんな思いを抱えられていたのですか?

「やっぱりライブがしたかったですね。最初は配信も行っていましたけど、コール&レスポンスができないのがとにかく嫌だったし、閉鎖的な気持ちが拭えなくて。今回のアルバムの中に「Gloomy Day」という曲があるのですが、言葉通り憂鬱な日について書いた曲でまさにコロナ禍で病んでいる歌詞なんですけど、T.O.Mさんが素敵なR&Bに仕上げて下さったおかげでポジティブに昇華されたのではないかなと思っています」

――2022年にリリースされたシングル6曲(1曲はCDのみのボーナストラック)がまるっと収録されていて、ベスト盤に近いような仕様になっていますが、アルバムの構想自体はいつ頃から?

「今回、サウンドプロデューサーとして T.O.Mさんに参加していただいているんですが、私とにかくT.O.Mさんが好きで。コロナの時もずっと彼の音楽を聞き続けていたので、アルバムを出すとなった時に"私の曲を作っていただけませんか?"とDMでお願いしました(笑)」

――わぁ! 何事も突撃するぞ精神ですね。

「その時に、最終的にはアルバムを出したいということは伝えていました。昔流行った音楽の要素を入れながらも、ただレトロな曲にとどまらずにフレッシュさや今っぽい要素が散りばめられていて、どこか懐かしいんだけど新鮮さもあるというT.O.Mさんのサウンドが大好きなんですよね」

――今回のアルバムは、T.O.Mさんとのコライト作品の集大成と位置付けられているのですが、全ての曲をふたりで?

「そうですね。私が作詞作曲をした曲にT.O.Mさんに曲をつけてもらうパターンや、私がこういう楽曲をイメージしているのでこんな風にしていきたいですとお願いしてT.O.Mさんがトラックを作ってくださって、そこに私が作詞作曲を加えるというパターンもありました。イメージの共有から始まって、ひとつずつ構築していきました」

――ふたりで最初に曲を完成させた時に、どんな手応えを感じられたのでしょう?

「1曲目になったのが「Paradise」だったのですが、一番感じたのは"私の声が浮かない!"という驚きでした。ミックスした時に気持ちのいい混ざり具合だったので、この曲には絶対的な自信がありました」

――シングルのリリースを重ねていく中では、最終的な目標としてのアルバム像はどう描いていましたか。

「試行錯誤しながら「I Wish」をリリースするぐらいまでは、どういう出し方がベストなのかな? と定まらないまま進んでいたのですが、「I Wish」~「In your Driving」がサブスクなどでたくさんの人に聞いていただけた手応えをしっかり得られたのを機に、次のアルバムは私のルーツでもあるDJやダンスミュージックに振り切りたいと思いました。例えるなら本当にクラブで踊って酔っ払って潰れて、でもそこでめちゃくちゃいいR&Bがかかる...みたいな、まるでクラブにいるような選曲のアルバムというイメージです。私のCDをそのままかけてもらったら、みんな酔っ払っていい感じに帰れるよ! という感じでアルバムを作りたいなと」

――なるほど。サウンドは楽しい感じをイメージしているとおっしゃいましたけど、一方でコロナ禍に書き溜めていた詞はダウナーな感じだったわけで...。そのバランスはどう考えていたのでしょう?

「ポジティブな曲は世の中に溢れていて、誰もが聞き飽きているのかなと思っていたんです。もっとみんなの本音というか、もうありのままに叫んでいいんじゃないかと思った時に、歌詞がネガティブでもいい! と吹っ切れる思いでした。ただ、音もネガティブになってしまうとBADに入ってしまうと思ったので、曲はポジティブに!サウンドは明るめ、踊れるものを! と方向性を決めました」

――作品を通して聞かせていただいて、アルバムタイトルにもなっている「CHARM」は一際光を放つイメージを受け取ることができる楽曲でした。この曲に込めた思いをお伺いしたくて。

「この曲は自分のコンプレックスやネガティブな思考を一気に入れ込んだので、リリースする時は大丈夫かな? と不安でした。クソとかちくしょうとかも書いてしまったし(笑)。自分のありのままを曝け出した曲で、挫折や倦怠感などのネガティブな感情満載ですけども、それをポジティブに昇華させた歌詞や、コンプレックスも受け入れてありのままの自分を愛する勇気を持って欲しいなと思ったし、自分もそうでありたいという気持ちでこの曲ができました。最初はみなさんのために作ろうと思って始まりましたけど、最終的には自分のための応援歌になったなと思っています」

――ネガティブなことを歌っているけれどもサウンドがすごくキラキラしているので、ネガティブなことを叫んでいる印象は残らないですよね。

「そうですね。Ghost Town DJsの「My Boo」という曲が、私はすごく好きで。この曲みたいな曲を作りたいとT.O.Mさんに話したところから始まりました。すごくキラキラしていて、クラブでよくかかっているような誰もが王道的に好きなサウンドだと思うんですけど、そこに私のコンプレックスを詞で乗せていいですか? とT.O.Mさんに話をした時に、"もっとハッピーな恋愛の詞を乗せてよ"と言われるかなと思ったんですけど、"いいね面白いね!" と言ってもらって」

――確かにあのキラキラサウンドには、同じくキラキラとした素敵な恋愛の歌詞がガッツリとハマりそうです。

「はい。でもそこでコンプレックスについて歌うことで、意外性が生まれたかなと思います」

――そしてアルバムに収録されている「omajinai」は、ファン投票でも1位を獲得するほどの人気曲なのですが、これがCDのみに収録されているボーナストラックになっています。これはどういう狙いで?

「これはT.O.Mさんとのコライト曲ではないので、他のアルバム収録曲とは少し毛色が違うんです。このアルバムの『CHARM』というタイトルにはお守りという意味もあって、みなさんのお守りのような存在になれるようにと作品を作ったんですけど、その中でも「omajinai」という曲は私の中ですごく大きな心の支えになっている曲で、曲中で"大丈夫なんとかなる"という言葉を使っているんです。私は今まで何度挫折してもこの言葉を信じて進んできたし、だからこそ今がある。この曲が自分にとっての応援歌でもあるけど、みなさんにも心の支えになってくれているのでは? と思っていて。ファン投票1位になったのも、やっぱりなと思いました。だからこそアルバムには入れたいと思っていたけど、T.O.Mさんの曲とはやっぱり少し違うので、悩んだ結果ボーナストラックという形を取りました」

――なるほどなるほど。今、アルバムのリリースから少し時間が経ちましたが、率直に何を感じられていますか。

「本当に今回ありのまま、自分がやりたいことを突き詰めた私の全てとも言える作品ができて、受け入れてもらえなかったらとか歌詞も大丈夫だったかなとか不安だったけど、みなさんすごく受け入れてくださって再生回数も思った以上に伸びているのを見ると、広がってくれているなという実感と、もっと広がって欲しいなと思うとともに、みなさんにライブに来ていただけたらうれしいなと思いますね」

――来年には初のワンマンツアーが開催されますしね。

「そうなんです! もう本当にみなさんライブから帰る時には足がぐにゃぐにゃになるほど疲れちゃって帰れないぐらい踊り明かせるようなパーティーをしたいですね。"遊ぼう"という言葉をテーマに、ライブを構築していこうかなと思っています」

――ライブのサポートにMPC GIRL USAGIが登場することもアナウンスされています。これはどんな経緯で?

「USAGIちゃんとはYouTubeコラボで一緒にさせてもらったことがあったんですけど(https://www.youtube.com/watch?v=Bb4aZIMdock)、すごくフィーリングが合った感覚がありました。いつものライブはしっかりとドラムを入れてやっていましたが、MPCにめちゃくちゃ可能性を感じていまして。すごく広がるなと思えたんです。それに今私がやりたい音楽は電子音やMPCが加わることで強度が増すんじゃないかな。そこでUSAGIちゃんにお声がけしたら、OKいただけました」

――地元の帯広から始まりますね!

「はい。地元でテンションをあげて、そのまま最後まで突っ走っていきたいなと思っています!」

取材・文/桃井麻依子




(2023年12月27日更新)


Release

3rd Album『CHARM』
発売中&配信中 2200円
AOYAMA-0001
Mitsuki Aoyama LABEL

《収録曲》
01. In your Driving
02. Fav song
03. CHARM(新曲)
04. Gloomy Day(新曲)
05. DOWN
06. I Wish
07. Paradise
08. omajinai (CDのみのボーナストラック)

Profile

あおやまみつき=北海道・帯広出身のシンガーソングライター。高校を卒業後、ミュージシャンを志し上京。専門学校在学中に突如DJになることを決意し、修業期間を経て都内のクラブで活動を開始した。その後DJ&シンガーというスタイルで全国を回っていたが、2018年に歌手へ転向。 同年に長岡成貢プロデュースの元、1st ミニアルバム『Naturally』でCDデビューを果たした。 2020年には、音声SNS・clubhouseにて 日本人初コライト楽曲に作詞作曲・メインボーカルとして参加。その後音楽プロデューサーにT.O.M(Tomokazu "T.O.M" Matsuzawa?)を迎えてリリースしたシングル「In Your Driving」が、YouTube再生回数6万回再生を超えるなど注目も上昇。2023年にはDJ活動を再開し、多くのクラブイベントにゲスト出演しながら活動の幅を広げている。


Live

MITSUKI AOYAMA LIVE TOUR 2024『CHARM』

【北海道公演】
▼2月3日(土) 帯広・studio REST

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:257-921
▼2月16日(金) 19:00
livehouse STARBOX
前売り-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[問]LIVE HOUSE STARBOX
■080-3102-0194

【東京公演】
▼3月16日(土) WALL&WALL

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