ホーム > インタビュー&レポート > 大阪は桜満開、ベスト オブ ベストな開催日に! Keishi Tanakaがオーガナイズした4組が揃った 『NEW KICKS GREENSPIA 2025』レポート
満開の桜が咲き乱れた大阪。会場に現れたお客さんたちも服装がとても軽やか&カラフルな人が目立ち、目に飛び込んでくるあらゆることから芽吹きの春が感じられてなんだかうれしい。『NEW KICKS GREENSPIA 2025』は今年で開催3回目、これまでと同様に芝生会場の後方に並ぶショップ&飲食ブースはイベントの企画主・Keishiによるセレクトとなっている。昨年に続き出展となった雑誌『ランドネ』による物販と『CRAFTROCK BREWING』によるクラフトビール(今年も開場早々美味しそうにクラフトビールを飲む人たちの姿が見られた)、そして今年初登場となったのは大阪・お初天神の『鉄板野郎 裏参道店』のフードだ。『鉄板野郎』の土居さんに話を聞くと「Keishiくんが直接出店してほしいなぁって言いに来てくれて。Keishiくんが直接来てくれたら、引き受けるしかないやろ〜」だそうで、Keishiの主催者としてのマメさが光るエピソードが飛び出す。
Keishi自身が持つ人とのつながりやこのイベント開催までに紡がれたさまざまなストーリーこそお客さんを楽しませる("もてなせる"とも言う)とわかっている彼の信念が会場中に溢れている。さぁ、いよいよ桜満開の服部緑地野外音楽堂に音が響き始める時間だ。
【眞名子新】
Keishiがことあるごとにここ最近で出会った若い才能の中でピカイチだと口にしてきたシンガーソングライター・眞名子新が、『NEW KICKS GREENSPIA 2025』のトップを飾る。バンジョーの音色が際立つSEと共にステージに現れると、アコースティックギターを抱えて眩しそうに空を仰ぐ。この日は彼の歌の力を存分に味わうことができる弾き語りでのパフォーマンスだ。ポロリポロリとギターをつまびき、「灯り」で淡いサウンドスケープを描き出す。一節目の〈パソコンで〉と歌い出した声にグッと心が動いた。ゆったりしたギターの音に乗る柔らかで優しい歌声にまどろんでいたらギターを奏でるストロークが加速、アップテンポな「さいなら」、そしてカントリー調のメロディーが気持ちのいい休日をより気持ちよくしてくれた「砂ぼこり」へとつなぐ。特に「砂ぼこり」では春の誰かの暮らしを鮮やかに思い描ける詞の世界観が素晴らしく、じわりと感動が広がる。
「改めましてKeishiさん、お呼びくださりありがとうございます」とぺこり。前日に大阪入りした眞名子はKeishiのバンドワゴンに同乗してきたそうで、キャンプが好きないいお兄さんと認識していたKeishiが「おやつをくれるお兄さんに昇格しました」と話す。その声に笑いながら、淀川も近いと聞いたので...と「川沿い」を披露。どこかの川沿いで起こった何気ない出来事と発見を、ギターとブルースハープに乗せて紡ぐ。
そして曲の世界観と歌い方の素晴らしさに心を持っていかれたのが「一駅」だ。ギター一本、声ひとつ、そして口笛をプラスしたパフォーマンスで歌詞の情景を立体的にする力とでも言おうか。後に登場する3組がバンドセットであることも、きっといいコントラストになるはずだ。次でラストになります、と「海の一粒」を歌い上げる。会場後方ではKeishiをはじめ、この日の共演者たちがズラリと見守っていた眞名子のステージ。彼の歌声もアコースティックギターの音も角のない丸みのある音に聴こえたのは、ステージ上で垣間見えた彼の柔らかい人柄のせいもあったのかもなぁと優しい気持ちになれた。
【COMEBACK MY DAUGHTERS】
眞名子新からのバトンを受けて、ステージに現れたのはCOMEBACK MY DAUGHTERS。ライブを目撃できることも比較的希少なCBMD、この日は高本和英(Vo&G)、CHUN2(G)、渡辺将人(Ba)、清田敦(Key)、飯島拓也(Dr)とサポートにベース・ケイタイモ(WUJA BIN BIN)とトランペット・宇野嘉弘が加わりこの日イチの大所帯。メンバーが登場しサウンドチェックしているな〜と思っていたら、特に合図も言葉を発することなくひときわ大きい音でバンドがメロディーを奏で始める。あ、「WHY」だ! と会場の誰もがすぐに気がついたようでこれがライブの始まりの曲だとわかった瞬間、ステージ前方へと駆け足で向かっていく人が見える。軽やかに弾むリズム、ヘイ! という掛け声、スタートからCBMDらしさが溢れていて、すごくうれしい。そしてCBMD節とも言いたいエモーショナルなメロディーラインにトランペットの音が加わって気持ちよさが増した「HAVE LUNCHO」、春のふんわりとした軽やかな空気感をたっぷりと含んだバンドサウンドで心地よさも倍増の「Please, Please, Please」へとパフォーマンスをつなげていく。
「COMEBACK MY DAUGHTERSといいます。眞名子くんのあと、音デカくないですか? 大丈夫ですか?」と語る高本に言いたい。大丈夫です、むしろナイスコントラストです! 雨予報だったけどどうやら大丈夫そうなので、Keishiまで盛り上げるのに一役買っていけたらと思いますと演奏されたのは「THE WEATHERMAN」。昨年の今頃リリースされた楽曲だけに、こちらもたっぷりと春の柔らかな(そして少し気だるい)ムードを纏った1曲だ。ラストに会場中に鳴り響いて時空をも歪ませたギターの音は、しばらく忘れられそうにない。そして高本がアコースティックギターに持ち替え、さらに春の軽やかなサウンドに会場のお客さんたちの体を揺らしていた「Yours Truly」へ。開始からここまでの5曲でさまざまな春のムードを見せてくれるCBMD、さすがの一言だ。
そしてまた高本が話を始める。「僕たちそんなにライブの予定があるわけではないので(メンバーは仕事と両立しており、2024年のライブ回数はわずか4回ながら実は関西公演が最多の2回だった)、一歩一歩進んで行こうと思っています。見られる時に見ておいた方がいいよというぐらいレアなので」との言葉に、会場の人々もうんうんと大きくうなずいている。その時、少し強めの風が吹いたら...なんだかソースのいい香り。実はさっきから風が吹くたびに『鉄板野郎』の焼きそばのソースの香りが漂っていたのだ。その後始まったのは「I Was Young」「Bored Rigid」といった人気曲。無事焼きそばを買ったお客さんも、美味しそうにすすりながらぴょんぴょん飛び跳ねて楽しそうだ。そしてCBMD、ラストソングとなったのは「Secret Castle」。キーボードから奏でられるメロディーと高本のボーカルでシンプルに始まったのだが、曲が進むごとに楽器もコーラスも重なり壮大なアンサンブルに...! ふわーっと会場中にバンドのサウンドを響かせて、その響きをそっと置いていくような終わりを見せた彼ら。春の白昼夢のような終わり方もいい余韻のステージだった。
【THE BAWDIES】
グッと気温が下がり始めた17時。観客の装いもジャケットやコートに変わり始めた。ウィルソン・ピケットの「Land of 1000 Dances」が鳴り響く中、ステージに現れたROY(Vo&Ba)、JIM(G)、TAXMAN(G)、MARCY(Dr)ら、THE BAWDIESの4人。フロントの3人は手拍子を煽りつつもう楽しそうだ。するとその場の空気に雷を落とすようなROYの高音シャウトと「ロックンロール界のお祭り番長、THE BAWDIESだ!」という言葉が耳を支配する。ライブはリリース当時フィーチャリングボーカルにOKAMOTO'Sのオカモトショウを迎えた「GIMME GIMME」、そして「JUST BE COOL」で幕開け。揃いのスーツに身を包んだスタイリッシュな佇まいと破壊力あるパフォーマンス。これぞ、THE BAWDIESだ。
TAXMANのギターのカッティングに痺れた「LET'S GO BACK」、この日のために選曲されたような「KICKS!」、急遽この日Keishiバンドで参加予定だったキーボーディスト・別所和宏(赤のTHE BAWDIESオリジナル法被を着てステージに登場した)を呼び込んで披露された「SUGAR PUFF」、ROYが一瞬口パクで歌うと観客から歌声が続いたライブ人気曲「LEMONADE」など、曲が進むごとに会場にいる人をどんどん巻き込んでいくパフォーマンスは4人にこそなせる技。彼らがロックンロールをぶっ放す姿は、かっこいいのに可愛さもあって...なんかもうズルい。それに気づかせてくれたのは、両親と訪れていた2歳くらいの少年だった。両親は会場の座席の中程に座って体を揺らしていたのだが、4人が奏でるロックンロールに虜になっている少年はどんどん前のめりになっていく。座席で大揺れし出した彼は、いよいよお母さんとJIMの真ん前の最前列へ。小さな男の子が飛び跳ねていることに気づいたJIMがしっかりファンサしていたのも素敵な光景。少年、大きくなったらバンド組まないかなぁ。夢のある話!
この日のライブ、ROYのMCの中心はバンドが独立して自主マネジメントレーベル「HOT DOG RECORDS」を立ち上げたこと。「僕が代表の渡辺です」と本名で挨拶すること2回、レーベル設立はネットニュースになったのに使われた写真の自分たちが私服だったこと(いつもはスーツなのになぜ!)...。あちこち飛ぶROYの話題にMARCYからの「マジでお前MC下手だよな」というツッコミを受けながらも、会場の気温を一気に5度くらい上げる「HOT DOG」へ。みんなが歌い、熱狂するお祭り騒ぎは「COME ON,LET'S PARTY」へと続く。チラリと目線をやると、JIMは興奮する少年に演奏する手元を見せてあげている。最高! 「最後にみなさんが弾けて飛ぶところが見たいんです! ポップコーンみたいに弾けて飛べますか?」というROYの言葉を引き金に、マジで会場が弾け飛んでいた「POPCORN」まで全9曲。演奏を終えた4人は深々と一礼、最後までステージに残ったROYが「ありがとう、僕たちは普通の男の子に戻ります!」と放ち笑いが起こる。THE BAWDIESを喰らった〜という余韻が残るパフォーマンスだった。
【Keishi Tanaka】
さぁ、いよいよホスト・Keishi Tanakaの登場時刻だ。ステージにバンドメンバーが揃い最後にSEの音に体を揺らしつつ両手を挙げたKeishiが現れる。この日のファーストソングは「See Your Heart」。ギターも持たずにバンドの音に身を委ねて歌うKeishiと同じように、お客さんもゆったりゆらゆらと体を揺らす。田中啓史、始めます! と「This Feelin' Only Knows」「Wonderful Seasons」を続けて披露。今日のバンドメンバーは四本晶(G)、田口恵人(Ba)、小宮山純平(Dr)に別所和宏(Key)が加わる。個人的に、この日のサウンドはどかっと男臭く、弾むようなギターが耳にしっかりと残るようなもので、Keishiが音とリズムに体をのっけながら歌っているような感じを受けた。
そしてここで『Like A Diary』のプロローグ的インストソング「First Page」が流れ、「まだまだ行こうぜ、NEW KICKS GREENSPIA!」というKeishiの言葉をきっかけに、曲が「Precious Time」へと切り替わった。「First Page」から「Precious Time」への流れは『Like A Diary』の収録順と同じ。この2曲を続けて聴いてもらうことの重要性を、Keishiはとても大事にしているのだろう。そして曲は「I'll Be There」へ。個人的に"Keishi Tanaka的おさんぽソング"と呼んでいるこの曲、左右にゆったりと揺れることができるこの曲は桜満開のこの日にぴったりの選曲だ。
「今日は『NEW KICKS GREENSPIA』という大規模なお花見にご参加くださり、ありがとうございます! 関西は今日が開花...開花? 違うね、満開だね(笑)」とご挨拶。このイベントについても、フェスをやりたいわけではなくてかといって対バンイベントでもないものを目指していると告白。「まぁ今日はみんなお花見気分でできたらいいなと思ったの、ビールでも飲んでね」とユルく楽しもうという気持ちが伝えられる。そして小宮山が刻むビートから次の曲へ。Keishi自身もギターを持ち、奏でられたのは「The Smoke Is You」だ。この日はすごくスタイリッシュで大人っぽさを増したタイトな印象が漂う。暮れてきた空にこの曲がピタッとハマり、照明にも光が灯り夜の雰囲気に。
「新生活が始まったという人もいると思います。そんな人に」と演奏されたのは「Colors」。Keishi自身が解き放つようにそして解き放たれるように歌う姿が見て取れて、屋根のないこの会場で歌声とバンドのサウンドがフワーっと広がっていく様が本当に美しい。きっと、園を訪れていたたくさんの人にも、この歌が届いていたに違いない。そしてこの日のエンディングにセレクトされたのは「おぼろげ」だ。心が上向くような鮮やかなバンドアンサンブルに、Keishiの伸びやかな歌声。この曲に見えるのは光。彼が求め大事にしているもの、そして音楽に含ませようとしているものは光なのだと思っている。すっかり夜の帷が降りたこの会場にいても、光が見えるような1曲。最後に大きく両腕をあげ、頭の上で組んで感謝を伝える姿も印象に残った。
そして迎えたアンコール。「アンコールありがとうございます! 今回で3回目、自分にとっても心休まる...違うな。あたたかいイベントになっております」と話した後、バンドメンバーひとりひとりの名前を呼び、ありがとうと改めて伝えていく。もうちょっとだけいけますか? 1曲だけやりますね、みんなで歌いましょう!」と始まったのは、「Just A Side Of Love」。彼のここ一番のライブ曲がアンコールに奏でられたら、盛り上がらないわけがない。たくさんの手拍子と笑顔、大きな歌声に、この場にいた人ひとりひとりの充実度が伝わってくる。毎年春の恒例になった『NEW KICKS GREENSPIA』。来年もまた、満開の桜の下に集えたら!
取材・文/桃井麻依子
撮影/キョートタナカ
(2025年5月 2日更新)
⚫️眞名子新
01. 灯り
02. さいなら
03. 砂ぼこり
04. 川沿い
05. 一駅
06. 海の一粒
⚫️COMEBACK MY DAUGHTERS
01. WHY
02. HAVE LUNCHO
03. Please, Please, Please
04. THE WEATHERMAN
05. Yours Truly
06. I Was Young
07. Bored Rigid
08. Secret Castle
⚫️THE BAWDIES
01. GIMME GIMME
02. JUST BE COOL
03. LET‘S GO BACK
04. KICKS!
05. SUGAR PUFF
06. LEMONADE
07. HOT DOG
08. COME ON,LET’S PARTY
09. POPCORN
⚫️Keishi Tanaka
01. See Your Heart
02. This Feelin’ Only Knows
03. Wonderful Seasons
04. First Page
05. Precious Time
06. I’ll Be There
07. The Smoke Is You
08. Colors
09. おぼろげ
EN. Just A Side Of Love
眞名子新『野原では海の話を』Release one man tour
【京都公演】
▼7月6日(日) 17:30
UrBANGUILD
全自由-3800円(ドリンク代別途必要)
※小学生以上(6歳以上)の方はチケットが必要となります。未就学児童のご入場は同行の保護者の方の座席の範囲内で、周りのお客様のご迷惑にならないように、ご覧いただくことを前提とさせていただきます。身障者様、及び車椅子で御来場のお客様は、各公演問い合わせ先までご連絡、ご相談ください。
[問]GREENS■06-6882-1224
【大阪公演】
▼9月6日(土) 17:30
Yogibo HOLY MOUNTAIN
全自由-3800円(ドリンク代別途必要)
※小学生以上(6歳以上)の方はチケットが必要となります。未就学児童のご入場は同行の保護者の方の座席の範囲内で、周りのお客様のご迷惑にならないように、ご覧いただくことを前提とさせていただきます。身障者様、及び車椅子で御来場のお客様は、各公演問い合わせ先までご連絡、ご相談ください。
[問]GREENS■06-6882-1224
▼5月31日(土) 17:00
BIGCAT
オールスタンディング-5000円(お連れ様お一人無料、整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]Summer Eye/toconoma/眞名子新(Band Set)/ゆうらん船
※小学生以上は有料。未就学児童は保護者同伴のもと、保護者1名につき未就学児童1名まで入場無料。小学生および未就学児童の入場は保護者同伴に限ります。
※チケット購入者1名につきお連れ様1名まで無料で入場できます。ただし、チケット購入者とお連れ様が同時入場の場合に限ります。
※イベント当日の写真や映像が公開される可能性がございます。
※飲食物のお持ち込みはご遠慮ください。
※チケット購入後のキャンセル・変更は一切出来ません。
※出演アーティストは都合によりキャンセル・変更となる場合があります。その際チケット代金の払い戻しは行いません。
※購入後はイベントが開催される限りは、いかなる事情でも払戻対応不可。
[問]GREENS■06-6882-1224
『8otto presents『One or Eight』-Two Band Show-』
▼8月8日(金) 19:00
心斎橋JANUS
一般チケット-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学割チケット-2500円(当日要学生証、整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]8otto/THE BAWDIES
※未就学児童は入場不可、小学生以上は有料。
※客席を含む会場内の映像・写真が公開されますので予めご了承ください。
※公演の中止または延期、及び開場開演時間の変更以外による理由のチケット代払い戻しは致しかねます。
※また、時短要請などの状況に合わせ開場/開演時間が変更になる場合がございます。
[問] 心斎橋JANUS ■06-6214-7255
『OUTDOOR PARK 2025』
【大阪公演】
▼5月17日(土)・18日(日) 9:30〜17:00(入場は16:30まで)
万博記念公園 東の広場
一般-800円(中学生以上)
[出演]Keishi Tanaka ほか
※雨天決行、荒天中止
※小学生以下無料 ※別途、万博記念公園入園料(大人¥260・小中学生¥80)が必要です。
※Keishi Tanakaの出演は18日(日)、弾き語りでの出演になります
眞名子新 HP
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COMEBACK MY DAUGHTERS Instagram
https://www.instagram.com/comebackmydaughter_s/?hl=ja
THE BAWDIES HP
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