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“初期衝動を詰め込んだ、最高の自信作が完成した”
Name the Nightが『FULL MOON NIGHTS』で示す
DIYの自由さとクリエイティブの面白さ

山森大輔(vo&g/SKA SKA CLUB、ROCK’A'TRENCH)、畠山拓也(tb&key&sampler/SKA SKA CLUB、ROCK'A'TRENCH)、伊地知潔(ds/ASIAN KUNG-FU GENERATION、PHONO TONES)、MIYA(b)からなるName the Night(以下、ネムナイ)が12月16日、今年最後の満月の日に1stアルバム『FULL MOON NIGHTS』をリリースした。「全ての夜に名前をつけていく」をコンセプトに、2023年1月から活動をスタートした彼らは、同年11月より、毎月満月の夜に楽曲を1曲発表し続けてきた。今作には、これまでリリースしたシングル11枚と新曲『This Night』の全12曲を収録。1年間の活動の集大成とも言える作品が完成した。それぞれ音楽家としてハイスペックな実力とキャリアを持つメンバーが集まり鳴らす音楽には、新人バンドらしい初期衝動と、4人の信頼関係が詰め込まれていた。今回ぴあ関西版WEBでは、11月16日(土)に心斎橋Music Club JANUSで行われた初のワンマンライブ『満月の夜、僕らは大きな羊に出会った』を大盛況で終えたばかり(ライブレポートはこちら)のメンバー全員にインタビュー。彼らのクリエイティブについて深く迫る時間となった。

一生忘れられない夜になった、大阪でのワンマンライブ


――改めて先日のワンマンライブお疲れ様でした。まだ東京公演がありますが、大阪公演はいかがでしたか?

山森「バンドの史上初のワンマンだったので、一生忘れないライブになりましたね」

――ステージでもバンドの歩みを振り返っておられましたが、1年かけて準備されてきたものが形になって、感慨深かったですか?

山森「めちゃくちゃエモーショナルでした。演奏はもう少し高いレベルを目指していこうと思ってるんですけど、そう感じるのも初ワンマンならではで良かったです」

畠山「自分でもびっくりしたんですけど、当日はすごく緊張して。これまでライブは山ほどやってきたけど、新しいバンドでのライブはやっぱり全然違うんだなと思いました。初めての時は初めてなんだなというか、それも面白いなと。音楽を始めた頃と同じように緊張したし、いっぱい失敗したけどめちゃくちゃ楽しかった。バンドがさらに始まっていく感じがしましたね」

伊地知「バンドが始まった時に、"ワンマンライブどこでやる?"という話になったんですよ。目標は高く持った方がいいということで渋谷クアトロとJANUSを設定したんですけど、本当に始めたばかりだから、キャパ設定がすごく難しくて。そのキャパに向かってメンバー4人で工夫しながら、どうやったらお客さんが入るのか、どうやったらみんなが僕たちの音源を聴いてくれるのかとアイデアを出しながら、ワンマンライブだけを目標に1年間走ってきて。目標を持つのは良かったんですけど、キャパ設定はちょっと失敗したなと」

山森「あははは(笑)」

伊地知「ワンマンライブのチケットを売るために、みんなでアイデアを出し合っていろんなことをやってきたけど、それがすごく良かったし、"目標を持ってバンドを動かすってこういう気持ちになるのか"と、ライブ中にいろいろ思い出しました」

MIYA「僕はただただ楽しかった。潔さんからキャパ設定のお話が出ましたけど、僕はまだ全然先があると思えたのが嬉しくて。"こんなもんじゃない"と思いながらライブをできて面白かったです。あとは今まで僕たちが活動してきた結果、お客さんに見に来ていただいてると感じたので、本当に感謝しかなかったですし、その景色を見れたことがめちゃくちゃ嬉しかったです。次のワンマンに向けて活力をいただけたというか、また頑張っていこうと改めて思いました」

山森「確かにワンマンはソールドアウトしたわけじゃないですけど、それでもあれだけの方たちが来てくれて。中には初めて出会ってくれた人もたくさんいたし、過去の僕らの音楽に親しんで久しぶりに来てくれた人も、変わらずずっと支えてくれてる人もいて、みんなが混ざっている様子がすごく嬉しくて。小学校の時の地元に社会人の友達が来たみたいな感じ。人生を生きて新しい試みをすると、そういう面白いことが起きるんだなと思いました」



DIYだからこその、アイデア実現のスピード感


――皆さんはそれぞれキャリアも長く、数々のバンドをされてきていますが、DIYで全部自分たちで組み立てていく活動は、どんな感覚になるものですか?

伊地知「個人的には本当に今までやったことのないことばかりやってるので。レコーディングはほぼDIYで、ストリートライブもやったことなかったし、事務所が関わっていなくて、ほぼメンバーだけでやりたいことをやる。だから自分の意見に対して責任を持たなきゃなと反省することもあります。ポロッと言ったことを、みんな実現しようとしてくれるので」

畠山「QRコードTシャツ作ったよね。潔くんが"宣伝のためにQRコードTシャツ作ろうぜ"みたいな話をして。通販サイトでライブチケットを売ってるんですけど、そこに飛ぶQRコードのTシャツを作りたいんだってアイデアがLINEグループにポンと飛んできて、その日にすぐデザインして、次の日にQRコードをつけて」

――すごいスピード感ですね。

山森「ノリでやっちゃうことは多いよね(笑)」

――ストリートライブもチケットを売るために始められたんですか?

山森「発案は一応自分です。18歳の時に純粋にお小遣いが欲しくて、アコギの弾き語りでストリートライブをやってたんです。今はバンド活動を経て、ライブをブッキングする難しさも知っているし、ストリートだとたくさんの人に見てもらえるし、しかも"今の僕らのスキルとキャリアの中で一通り揃っている良い機材だと、ストリートライブできるんじゃない?"と言ったら、"いいねー!"みたいな。発案するとすぐ進んじゃう(笑)。1番大変なのは、フルドラムセットを持ってくる潔くん」

伊地知「ストリートもだんだんパワーアップしてるよね。最初ペラッペラのバスドラムでやってたからね」

畠山「可搬性が良いトラベルドラムを使ってたけど、サウンドにこだわりが出てきちゃって」

伊地知「今、かなりクオリティは高いと思いますね。ストリートもいつか見ていただきたいぐらい自信はありますね」



Name the Nightが"持続可能なバンド"でいられる理由


――アルバムの資料で、伊地知さんが"目標は持続可能なバンド"だとコメントを寄せておられました。それぞれの活動もある中で、1年間で工夫しつつも続けていける方法を見つけてこられた感覚はありますか。

伊地知「実は持続可能と言ったのは山森くんなんです。最初から"このバンドはそういうコンセプトです"と言っていて、面白いなと。アメリカのヴルフペックというバンドも持続可能をコンセプトにしていて。バンドって続けていくのがすごく大変なんですよ。お金もかかるし、Name the Nightはそれぞれ別の仕事を持ってるので、その状態でどこまで続けられるかなんですけど、山森くんが"元々持続可能なバンドです"と言ってるので、続けていけるアイデアを持ってるんだなと。そうしたら、"お金がほとんどかからない。ほぼDIYでここまでやれます"といろいろアイデアをもらって。それは面白いなとコメントに書いたんですけど、全部山森くんのアイデア。人のものを勝手にカッコ良く書いたんです(笑)。説明をお願いします」

山森「本当に今言ってくれた通りで、やっぱり他社の投資を受けてしまうと、絶対に期限を切ってリターンを発生させる必要が出てくる。それを僕らは今のところはしなくてもいいように、自分たちのスキルと持っている資産で、しかもみんなのクリエイティビティと才能でクオリティの高いものを出していけば、自ずと持続可能だなと思った感じですね。でも、このメンバーが集まったことで半ば達成してる。あとは淡々と続けていきたいなと思ってます」

――1ヶ月に1曲リリースするのは、傍から見るとすごく大変なのではないかと思うのですが、それも持続可能なプランですか?

山森「毎月リリースは、ワンマンのためにハッスルしたところでもあるかも。"やったらいいんちゃいますか?"とMIYAくんが言ってくれて、曲のストックもあったし、僕の強みとして曲を書くのが結構早いので、毎月リリースはその能力が活かせるところだなと思って、いけると思って食いつきました(笑)」

――アルバムにまとめようという構想もあったんですか?

畠山「CDにするかどうかは決めてなかったけど、毎月の節目があったので、"1年で12曲になるな"と計算はしていて。アルバムを出すタイミングも未定だったけど、曲を溜めてワンワンのタイミングで12曲出すのはめちゃくちゃ綺麗だなというのは、毎月リリースを検討した時から頭の中にありましたね」

――なるほど。

畠山「シンプルに僕らは時間の制約がめちゃくちゃあって。それぞれいろんなバンドや音楽制作をやっていて、月に何回集まれるか、ここ2人(畠山、MIYA)は夜型だし、こっち(山森、伊地知)は朝型なので、生活リズムも違ったり。でも限られた中でどうやるのがベストかというのは1年間ずっと考えたし、それを踏まえて来年はちょっとやり方を変えようという話はしてて。この歳で新しいバンドを始めるのはなかなかないことだし、既存のやり方ではない方法で、少しずつバンドが大きくなっていくのは面白いし、"いつでも新しいことを始めていいんだよ"みたいなメッセージにもなるのかなと思って。そういうクリエイティブティのある活動を伝えていきたいな。だから活動の仕方もどんどん変わっていくと思うし、限られた時間に合うスタイルを作ることも並行してますね」



バンド内にプロデューサーとディレクターがいるという強み


――1曲を作り上げるスピードはどのくらいですか?

山森「結構流れが定まってきていて。自分がまず弾き語りと歌のほぼ骨組だけの感じで、ワンコーラスを作るんですね。稀に口ドラムとか入ってるのをみんなに聴かせて、その時点で何かあったらちょっと変えて。で、みんなで僕の家のベッドルームスタジオに集まって、フル尺へのアレンジをしながら構成を決めるんです。その段階では歌はまだ<ラララ>で、その場で2番を作ったりあるいは宿題にして。で、みんなが帰った後に僕が歌詞を書いて投げて、何かディレクションがあったらそれを受けて直す、みたいな感じです。骨組みを作るのは約1時間で、歌詞も1日あればいける感じですね」

MIYA「アレンジ作業はベッドルームスタジオに集まったらほぼ1日でできますよね。こういう感じの楽曲にしようといって、じゃあドラムやベースどうしようと弾いたものを録音して編集して。ほぼ1日でタネから膨らませるので、確かに早いかもですね」

――それは長年のキャリアとスキルに裏打ちされたものですね。

山森「それは絶対にそうですね」

伊地知「(山森と)家が近すぎるんですよ。もう呼ばれたら5分で行ける」

山森「パジャマから5分で行ける」

畠山「それは言い過ぎでしょ(笑)。あと山森がサウンドプロデューサーの役割をできるのも大きいかもね。一緒にROCK'A'TRENCHをやった後、山森はソロをやりながらいわゆるサウンドプロデューサーという仕事を、何年ぐらいやってた?」

山森「6~7年はやっていて。クライアントワークをもらったおかげで身についたスキルは確かにすごくあるかも」

畠山「だから多分、他のバンドよりも俯瞰できるというか。もちろんやりたいことをやってるんだけど、"やりたいこと"も少し考えてやってる部分はあるかな。僕がクライアントで山森に"こういう曲を作って"と発注するみたいに作るものもあったり。タイトルだけ伝えたりね」

山森「『This Night』(M-12)はそうだった」

畠山「『This Night』は割と早い段階で、"ちょっとテンポが遅い『This Night』というタイトルの曲を作って"と伝えて。それ以外大きなことは言わずにいたらできた曲なんです。そういうのも面白くて。僕らは今Name the Nightというものを設計しているところ。"4人がName the Night"というよりは、僕らで"Name the Nightというバンド像"を作って、そこに合いそうなものを山森が形にしている感じ。だからちょっと特殊なバンドだろうなと思います」

――俯瞰する視点がありつつも、初期衝動を込められるのもすごいですよね。

畠山「多分制約があった方がいいよね。いわゆるクライアント仕事は制約がないというか、いろんな幅のものがある。制約の中でいかに自由に作るかが、多分初期衝動。長くやってると引き出しがありすぎて逆に面白くなくなっちゃうので、"夜"というテーマに決めたんです。だからみんなでアレンジする時も"これ夜っぽくないよね"というので判断することが多かったですね。それは指針としてめちゃくちゃわかりやすいですね」

――非常に納得しました。そうなると本当に皆さんしかできないバンドですね。

伊地知「特に山森・畠山ペアが大学から一緒なんですよ。その後SKA SKA CLUBをやってROCK'A'TRENCHをやって、今3つ目のバンドで、2人のやり取りが結構強烈なんですよね。例えば山森くんが書いた歌詞に対するディレクションを畠山くんがするんですけど、"そんなことまで言っちゃう?"みたいなことがLINEで飛び交うんです」

MIYA「もう慣れたけど、最初は"喧嘩してるのかな?"と思った。でも違うなと。多分根底に信頼関係がある上での本気の意見の混ざり合いだということに気付いて、"これは大丈夫ですよ"という」

山森「それも武器の1つかなと思って。僕は最初のゼロイチにする役なんですけど、即座に畠山からバコーンとディレクションが飛んで来る。一般的にはバンドメンバーと別にディレクターがいるのがオーソドックスなバンドの形だと思うんですけど、うちはバンド内にディレクターがいる。しかも付き合いも長くて忌憚のないことをすぐ言ってくれるから、"マジか! 書き直しか!"みたいなことはあるけど、"やった方がいいだろうな~"と思って」

畠山「書き直しの時は、言い方をすごく考えてた。1回褒めた後に"でも、もう1パターンほしいなぁ"って」

伊地知「毎回最初の1行目は"最高!"とか入れるじゃん。その後にやり直しポイントがズラッと書いてある。公開したいもん、そのLINE」

畠山「僕、昔に比べて自我がなくなったんですよ。バンド活動をしていない間、10年くらい音楽ディレクターとして人の音楽制作を手伝っていたんです。ディレクターはやりたいことが形容詞で来た時に、それを紐解いて音楽に翻訳するという仕事だと思うんですけど、ネムナイの中で言うと、プレイヤーとしての自分は後回しになっていて。例えば僕はトロンボーンプレイヤーだから、トロンボーンソロを入れた方がいいんじゃないかというアイデアが出るんだけど、1回それを置いといて、"でもこの曲にトロンボーンはあまり合わないかな"みたいなことを最初に思う。"じゃあトロンボーンソロじゃないものを作って、その後に僕はどうしようか"という順番で考えるようになって。昔ROCK'A'TRENCHを始めた時は全部にトロンボーンを入れたかったんですよ。でも合わないからやめようというやり取りをしたのを、すごく覚えてて。今は真逆でフラットになった。だから俯瞰できるように自分自身が変わったと思います」



4人での楽曲制作が、とにかく最高!


――アルバムの中で印象に残っている曲をそれぞれ教えてください。

MIYA「僕は『Radio La La La』(M-10)です。元々山森さんのソロで既にリリースされていた曲なんですけど、潔さんが"曲が良いからネムナイでもやろうよ"と言い出して」

山森「白状すると、俺が"この曲どうですか?"って根回ししたんだよ(笑)」

MIYA「(笑)。セルフカバーをやろうとなった時に、もうベースは全然違うものにしてみようと。だから僕、山森さんの音源を1回しか聴いてないんですよ。コードを理解するためだけに1回聴いて、リズムをミュートしてベースを考えて、"どうでしょう"と投げたら"いいね"と言ってくれて。やりたいことをやったらいいねと言ってくれる人がいるんだと(笑)。だから楽しかったですね。山森さんのソロとは全然違う感じになったかなと思います」

山森「MIYAくんのベースプレイは、我がバンドの屋台骨なので」

MIYA「さっき畠山さんが俯瞰で見るみたいな話をされていましたが、僕はそういう人がいてくれるから、基本ベースは好き勝手やろうと思ってるんですよ。さすがにいき過ぎてたら言ってくれるやろうと思ってるので、単純に楽しいです」

畠山「僕はネムナイの個性はベースだと思っているので、注目して聴いてもらえると嬉しいな」

――ライブだとアレンジも加えたりされるんですか?

MIYA「そうですね。ライブだと曲の前に流れもあったりしますし、そもそもドラムの潔さんが同じことをやってくれなかったりするんです」

伊地知「やれない病なんです(笑)」

MIYA「でもそれがすごく面白いんですよ。"今日はそうきたか。じゃあこうしよう"みたいなその日限りのプレイになるのが面白いし、飽きないです。その点、持続可能のことを考えたら......」

山森「それはすごくデカい。マンネリにならないんですよ」

伊地知「良く言っていただいてますね(笑)」

――畠山さんはアルバムで印象に残った曲は?

畠山「僕は曲という感じではなくて、山森がワンコーラス作って、スケジュールを合わせて山森の家にみんなで行って、パソコンの前でセッションしながら作る、その作業がめちゃくちゃ楽しくて。好き勝手言ってやる感じも楽しいし、アレンジがどんどん変わるんですよ。大体1曲3時間ぐらいでやるんですけど、その瞬間が毎回最高。それが今作のハイライトです」

――4人でのクリエイティブの時間が楽しいと。皆さんの空気感や関係性は本当に素敵ですよね。

畠山「会う頻度がちょうどいい」

MIYA「毎日会ってたらそろそろ喧嘩する」

畠山「みんな戻ってきてるんですよ。ネムナイでバンドやって、他の仕事をやってバンドやって、またどこかいって戻ってきて。それを1ヶ月の中で繰り返してる。会って何かするのが楽しみというのは、僕らの活動スタイルだからだと思います」

伊地知「時間経つのが早いんだよね。作業は夜8時までといつも決めてるんですけど、スタジオに入ったら、毎回"もう終わっちゃうの?"みたいな感じになって。ほんと一瞬」

畠山「でも帰り道はちゃんとズタボロになってるんですよ。"疲れた~"って」

――集中して出し切ってるんですね。山森さんが印象に残っている曲は?

山森「『This Night』は、リズム隊が"せーの"で阿吽の呼吸で録ってくれて。このアルバムの中で1番抑揚がついたグルーヴになってます。緩急がすごくて、でも美味しいところでがっちりタッグを組んでるから、すごく気持ち良いんですよ。縦の線からはズレてるけど、音楽としてものすごく良い感じになってる。自分は上モノなのでギターと歌は後から乗せたけど、"こんなに気持ち良くできるんだ"と思って。すごく自信作に仕上がりました」

MIYA「僕はあの演奏を、1年目の今のタイミングで潔さんとできたのが嬉しくて。やっぱりリズム隊なので、2人の気が合わないとできないから、時間がかかるかなと思ってたんですよ。でも1年経たないぐらいのタイミングであのテイクを残せたのは、確かにめちゃくちゃ嬉しかった」

――伊地知さんは?

伊地知「僕は『Mid Day Moon』(M-6)。結構初期の段階で山森くんからデモをもらってアレンジを考えていたんですけど、こういう跳ねていたりスローな16ビートを今までやったことがなかったんですよ。人生初に等しいぐらいで、正解が出せるのかなって不安でしょうがなかった。でも大丈夫だなと思ったのは、畠山くんのディレクションがすごく上手なのと、山森くんはエンジニア業をやっているからうまくやってくれそうだなというのと、MIYAくんはその辺わかってるから、ベースに合わせてりゃなんとかなるでしょという気持ちがあって。結果すごく良いものが録れましたし、この曲のビートが僕のスキルの1つになったんですよ。引き出し1個増えちゃったなってぐらい自信を持って演奏できるようになって、とても思い入れが強いですね」

――めちゃくちゃ良いお話。

山森「最初は"タッカタッカ"と跳ねるリズムなんですけど、サビになる時に"タタタタ"って跳ねなくなるアイデアをくれて、それがすごく良かったなと。で、また間奏で跳ねに戻るので多幸感が強調されて、ライブでやってたらめちゃくちゃ気持ちが良いです」



思い出と、努力と汗と涙が詰まった自信作


――改めて1stフルアルバム『FULL MOON NIGHTS』、どんな1枚になったと思われますか。

山森「1stアルバムって、1stアルバムっぽさがあるじゃないですか。初期衝動が並んでいる。そういうものが自分はすごく好きなんですけど、今作もそういう感じになって。もちろんバンドの名前や"夜を表現したい"と想定したものはあるけど、アルバムとしてのコンセプトは今回はなくて、本当に初期衝動ですね」

MIYA「このバンドは"夜"の縛りなんですけど、僕も夜型の人間なので、基本夜は自分と向き合う時間なんですよ。楽器を練習したり、できないことをやったり、レコーディングして創作活動したり。自分と向き合った結果をこのバンドでアウトプットすることができて、一緒にめちゃくちゃ良い景色が見れたので、その結果としてさらに良いものができるようにしたいなと思ってて。まず今年1年の集大成がこのアルバムに詰め込めたかなと。努力と汗と涙の結晶だなと思ってます」

畠山「曲ができるたびに、いわゆるプロモーション資料を僕が作っていて、説明文を自分たちで書くんですけど、いつもめちゃくちゃ悩むんです。その瞬間その瞬間で自分たちで縛りをつけながら、良いと思うものを作って。このアルバムも1年間で僕らが良いと思うものを作りました。あまり言葉にはできないんだけど、来年は多分違うものができるだろうし、そういうのを続けていきたいし、もっとカッコ良いことができそうだなという予感のアルバムかなと思ってます」

伊地知「今3人が話してるのを聞いてて、僕は何だろうなと思ってたんだけど、カレンダーです(笑)。毎月曲をリリースしてたので、"あの曲はあの時期に出したな"と思い浮かぶ。実際グッズでカレンダーも作ってるので、そのイメージが強くて。思い出が1曲ごとにあるアルバムになったなと思います」

Text by ERI KUBOTA




(2024年12月18日更新)


Check

Release

夜を彩るバンド、念願の1stアルバム完成!

Album『FULL MOON NIGHTS』
発売中 3300円(税込)
SSR-002

《収録曲》
01. COASTLINE
02. Strange World
03. Marginal
04. No Stress
05. ボナパルト
06. Mid Day Moon
07. Infantry
08. Silhouette
09. PARADE
10. Radio La La La
11. Till Dawn
12. This Night

Profile

2023年1月結成。山森大輔(vo&g)、畠山拓也(tb&sampler)、伊地知潔(ds)、MIYA(b)からなる、鎌倉を拠点に活動する4人組バンド。多彩なキャリアを持つ同世代のミュージシャン達が、「全ての夜に名前をつけていく」をコンセプトに、夜を彩るグッドミュージックを奏でるべく集結。メンバーの自宅兼プライベートスタジオである”Bedroom Studio”で、全ての楽曲制作を完結させ、デザインや映像制作などもメンバー内で行う、既存の枠にとらわれないDIYスタイルを基本とし、SNS上で、満月の夜にオリジナル楽曲をアップしている。2023年11月、麦ノ秋音楽祭2023での初ライブを機に本格始動。2024年11月18日に思い出のライブハウス・心斎橋 Music Club JANUSでバンド史上初の1st ワンマンライブ「満月の夜、僕らは大きな羊に出会った」を実施。12月15日には東京・渋谷 CLUB QUATTROでワンマンライブを行う。翌16日に待望の1stアルバム『FULL MOON NIGHTS』をリリース。

Name the Night オフィシャルサイト
https://lit.link/namethenight


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