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“12月のライブはより音楽に集中して、研鑽を積んで臨みたい”
音楽と山への熱き想い
スーパー登山部の活動を深掘り 後編

2023年に愛知県で結成された、小田智之(key)、Hina(vo)、いしはまゆう(gt)、梶祥太郎(ba)、深谷雄一(ds)からなる5ピースバンド・スーパー登山部。彼らは“音楽と登山”を活動の軸に置き、通常のライブのほかに山や山頂でのライブを行うバンドだ。今年8月には、多くの準備を乗り越えて標高2,832mの白馬山荘でのライブを大盛況で終え、1stトラバース(=ツアー)を見事に締め括った。今回はそんなスーパー登山部から、小田とHinaにぴあ関西版WEB初のインタビューを敢行。前編では、山の魅力や白馬山荘ライブについて語ってもらったが、後編では最新シングル『頂き』や楽曲制作について、また12月13日(金)に心斎橋CONPASSで行われる『T.B.O presents #長堀界隈 ver1213』についてたっぷり話を聞いた。ぜひ前後編どちらも読んで、次なる“頂き”を目指す彼らのライブに足を運んでほしい。

楽曲制作で大切にしているのは"懐の広さ"(小田)



ーー8月に配信リリースされた最新シングル『頂き』には、白馬岳に登られた経験が詰まっているんですか。

小田「白馬山荘ライブの時にはもう曲はあったんですけど、1年前に1人で白馬岳に登った時の時の景色や体験からインスピレーションを受けてできた曲です」

Hina「個人的にすごく共感する場所があったんです。歌詞で言うと<頂きと思って近付くと 道まだ続くと気付いて嫌になる>。頂上に登る前と登った後で、歌う時のメンタルが違うんですよ。白馬岳までは、本当のピークじゃなくて、ピークに見えるんだけど、登ったらまた次の頂きが見えるという"偽ピーク"を何回も繰り返して頂上に辿り着く道だったので、本当にそうだなと思って」

ーー2番では<道まだ続くと気付いてほっとする>になっていますね。

小田「人によって感じ方は違うと思うんですけど、自分も偽ピークが嫌になることが多かったんです。でもある時、"まだ歩けるんだ、登山が楽しめるんだ"となった瞬間があって。本当のピークに着いたら後は下山するだけじゃないですか。Hinaちゃんもいつか、もう一段階歌が変わる時があるかもしれないです(笑)」

Hina「私は今は『頂き』は、小田さんのことを考えて歌ってます。小田さんがそういう気持ちになってる表情を見たことがあるので」

小田「(笑)」

Hina「私は<ほっとする>はまだ実感できてないかな。やっぱり私はゴールが見えているものに対して頑張ることが大前提なので、嫌になるというより、若干くじけそうになる。頂上が急に現れたり、めちゃくちゃ遠くに見えてたけど、進んでみたら意外とすぐそこだったり、逆にすごく近くに見えるのに遠かったり。自分の人生の中でのゴールや頂上とはまた違うものが、山にはあるなと思いましたね」

ーー楽曲は基本的に小田さんが作詞作曲をされて、たまに違う方が作詞をされたりもしていますね。

小田「僕がそんなに作詞が得意ではないのもあって。誰かと作品を作るのも好きだし、自分に足りないものを補ってもらう形で一緒にやることもありますね」

ーー小田さんの歌詞には、人間の本質的な部分が表れている気がします。

小田「何が本質か、僕はもうずっと迷ってばかりなんですけど(笑)」

Hina「私が小田さんの歌を歌っていて思うのは、本質に気付いているように見せかけてちゃんと迷ってるし、悩んでるし、苦しんでる。それが歌詞の色んな場所に少しずつ入っています」

ーー山に登る人ならではの視点がありそうで奥深いですね。例えば6thシングル『樹海 feat. TENDRE(2024年7月)』は、もちろん単語に対するイメージもあるとは思いますが、ストーリー性が感じられて、人生にも例えられそうだなと。スーパー登山部の曲には、そういうものが多いなと思ったんです。

小田「ありがとうございます。『樹海』は本当に富士の青木ヶ原樹海を見た時の景色のイメージもあるし、学生時代に布団の中、真っ暗闇の状態で音楽を聴いてた時期のことも思い出して書きました。歌詞の流れとして、明確な1個のエピソードや具体的な景色は用意しつつ、曲を聴く人が違う景色でも見れるような懐の広さは大事にしたいなと思ってます」

Hina「初めて聞きました」

小田「(笑)」

ーー『頂き』で描こうとしたものは?

小田「目標にしていたのは、山を登ったら感じる感情を素直に表現することと、自分が山によって救われたり元気をもらった時のことをちゃんと描きたいなと。あとはタイトル通り、人生も目標に向かって進んでいくし、その行程や結果がすごく大切だけど、目標に辿り着いたら人生終わりかと言うとそうではなくて、死ぬまで続くわけじゃないですか。それをどう捉えるか。自分は最初、山に登る目的はピークハント、頂上に着くことだったんですよ。標高何千mからの良い景色が目的で、それはそれで面白いんですけど、そこまでの過程も楽しいことにも気付きました。頂上に辿り着いたからって、別にそれ自体が人生を変えてくれるわけでもないかもしれない。そう感じたことを歌詞にしました」

ーー登りながら思考することはあるんですか?黙々と登ることが多いですか?

小田「最近は1人だと黙々と登ることが多いかもしれないですね。ただ時期によって違うというか。永遠と考え込んでしまう時もありましたし、そういう時はもう何も考えたくなくて、もっと必死に歩いたり。自分と山登りの関係性も、その時その時でどんどん変わり続けているので面白いですね」

ーーちなみにHinaさんだけのボーカルの曲とツインボーカルの曲がありますが、曲ごとにイメージで変えられるんですか?

小田「そうですね。2ndシングル『意志拾い(2023年10月)』とかは、元々自分の中にやまびこというアイデアがあって。Hinaちゃんが返したものに対して別の方向から返して、それが合わさるような構成が面白そうだなと思って、ツインボーカルにしました」

Hina「すっごい練習しましたね。自分の中で"このレベルにいけたらライブでやっても良いんじゃないか"というラインがあって。レコーディングでも厳しくやり直したり、本当に黙々とやった時もありました」

小田「スタジオリハの日に、毎回みんなでボイトレしたりね」

Hina「『頂き』には全員のコーラスが合唱みたいに入っていて。深谷さんも梶さんも歌に対して前向きに考えてくれてるので、めっちゃ嬉しいですね。私は合唱が好きなのでいずれ全員をハマらせたい。歌に関して色んなことに挑戦してもらいたいですし、最終的には4人が別の音を重ねて、ハーモニーを和音として聴かせられたらいいな。それは自分の夢です」



スーパー登山部は、新しい表現方法を見出してくれるバンド(Hina)



ーースーパー登山部は、Hinaさんにとって今どんな存在ですか?ただのバンド活動ではないですし、やりたいことも芽生えてきているようですし。

Hina「難しい質問きたー!(笑)。そうだな......自分の新しい表現の仕方を見出してくれるバンドだなと思っています。私が得意とするのは静かなバラードなんですけど、それだけじゃなくて色んな曲調がある。例えば7拍子をやる中で、"歌はどの立ち位置でお客さんに届ければいいんだろう。7拍子に聴こえないように歌うことが自分の役目なんじゃないかな"と考えて。4thシングル『hatoba(2024年2月)』はテンポがだんだん早くなって疾走感が出る時に私が7拍子を感じさせないようにして、リズム隊や周りの楽器の人たちがしっかり7拍子を刻んでいる。私はお客さんを、目を瞑ったら景色が見えるような場所に連れていきたいんです。最近はそう言ってくれるお客さんが増えてきたけど、それは私だけの力じゃ絶対無理なので。色んな音色で色んなリズムで、色んな方法を使って新しい音を出せるのはすごく嬉しいですし、自分もこの1年でステージでの立ち振る舞いや喋り方、歌い方が本当に変わったなと思います。それはお客さんとメンバーのおかげです」

ーー小田さんにとっては、バンドも登山とは違う活動としてのライフワークですか?

小田「元々音楽も登山も本当に大好きなので、好きなことを掛け合わせる活動ができてるだけでも満足ですね」

ーー野望はありますか?

小田「いっぱいあります(笑)」

Hina「今1つあげるとしたら?」

小田「うーん(笑)。やっぱり高い山に登ってきてるので、高いフェスにも出たいです」

ーー具体的には?

小田「フジロックに出たいです。あと地元ですけど『森、道、市場』にも出たい」

Hina「『意志拾い』の歌詞に<森道>と入ってたりして、若干掛けてるっぽくて」

小田「ガチガチに掛けてます。ラブレターです(笑)」

ーーぜひ叶えていきましょう! そして12月13日(金)には心斎橋CONPASSで『T.B.O presents #長堀界隈 ver1213』が行われます。7月の『T.B.O presents #長堀界隈 ver0712』に続き、2度目の出演ですね。前回は関西初ライブだったそうで。

小田「前回もミナホでも、関西の人のノリの良さやあったかさを感じました。大阪はとても演奏しやすいです」

Hina「うん。キャッチボールができてる感じがする」

ーー次は新東京とツーマンですが、新東京との交流は?

Hina「前回の『長堀界隈』で対バンさせていただいたYAMORIさんのサポートで、新東京のベースの大蔵倫太郎さんが出ていて、少し挨拶して。まさかツーマンできると思っていなかったので、すごく嬉しいです。初めて来てくださるお客さんもいると思うんですけど、ミナホよりもレベルアップしてると思いますし、初大阪の時よりもまた違った形で、色んなギミックを考えて挑みたいなと私は思っていますね」

小田「実は今回、僕らからも新東京さんとやりたいと伝えていたんですよね。12月で寒い時期になって僕らも山に登れなくなるので、その分音楽により集中して、研鑽を積んでレベルアップした状態で、僕らの曲と魅力を60分、しっかりたっぷりやらせていただきます。ぜひ楽しんでいただけたらと思ってます」

Text by ERI KUBOTA




(2024年11月15日更新)


Check

Movie

Release

登山で感じる想いと景色を詰め込んだ7thシングル『頂き』配信リリース中!

【収録曲】
01. 頂き

MUSIC INTERVIEW

スーパー登山部【前編】

superclimbingclub-part1.html

Profile

スーパー登山部…2023年1月にキーボーディストの小田智之が中心となり結成。小田は音楽仲間だったベーシストの梶祥太郎と共にバンドメンバーを集め、5人編成のスーパー登山部が誕生。5月には名古屋のKDハポンで初ライブを開催し、チケットは即完売。これはバンドにとって大きな一歩となった。バンド名に「登山部」とあるように、音楽と登山を組み合わせた活動をしている。2023年7月、天候不順で何度も延期されたが、ついに木曽駒ヶ岳で初登山。8月11日の山の日には、初のシングル「風を辿る」を配信リリースし、同日には天狗岳の黒百合ヒュッテに滞在。翌々日には東京代官山UNITで2回目のライブを成功させた。その後、10月13日に今池TOKUZOで開催された2度目の自主企画ライブもソールドアウトし、着実にファンベースを広げた。2024年3月には、長久手市文化の家で結成一周年記念コンサートを開催。ゲストにMERLAW、TENDRE、中村佳穂(シークレットゲスト)が参加し大成功を収める。6月からはバンド初のトラバース(ツアー)「1st EP Release Traverse」がスタートした。このトラバースでは、下北沢BASEMENTBAR、名古屋JAMMIN’、大阪心斎橋CONPASS、そして白馬山荘という、都市と山を結ぶ全4公演が行われた。特に8月の白馬山荘でのライブは、標高2,832mでの壮大なフィナーレとなり、大盛況のうちに幕を閉じた。12月には「T.B.O presents #長堀界隈 ver1213」で新東京とのツーマンライブを行う。


Live

「T.B.O presents #長堀界隈 ver1213」

PICK UP!!

【大阪公演】

▼12月13日(金) 19:00
CONPASS
スタンディング-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]新東京/スーパー登山部
※未就学児童は入場不可。
[問]夢番地■06-6341-3525

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