ホーム > インタビュー&レポート > 「人生の大切な瞬間に流れる歌を作れるアーティストでいたい」 変わりゆく石崎ひゅーいが迎えた『Season2』 約2年半ぶりのバンドツアー『TOUR 2024「宇宙百景」』の渦中で 音楽人生の分岐点を語るインタビュー
"そろそろ石崎ひゅーいの才能に気付いた方がいい"
みたいに書いてくれるんですけど、昔からずっと書かれてるなと思って(笑)
――何と、ぴあ関西版WEBには11年ぶりの登場で、当時の『ファンタジックレディオ』('12)と『独立前夜』('13)のインタビューを読み返したら、ひゅーいくんも聞き手の俺もノリが若い(笑)。
「アハハ!(笑) でも覚えてる。いいインタビューで、俺もたまにあの記事を見て、"何言ってんだお前は"って自分に思う(笑)。若さってすごいよね」
――若さゆえの衝動というか...あの頃はひゅーいくんが初めてMステ(=『ミュージックステーション』)に出て、スタジオ中を駆け回る衝撃のパフォーマンスでネットがざわついた時期ですから(笑)。
「それが崎山蒼志くんの心にも残ったみたいです、"何だこの人?"って(笑)。大切ですよね、衝動って。今はしっかり仁王立ちで歌ってますから(笑)。いろいろありましたね」
――そんな石崎ひゅーいもおととし、デビュー10周年を迎えて...とりわけ楽曲提供するようになってからミュージシャンズ・ミュージシャンみたいな立ち位置も出てきて、ひゅーいくんの作る音楽への信頼感が、自分のアーティストとしての寿命も延ばしてくれているような。
「ありがたいことですよね。それで言うと、さっき話したような衝動的な自分を歌の書き方も含めていいと思ってくれた年下の世代がいて、逆に俺はその子たちに刺激をもらってまた新たな曲を作って...音楽って面白いなって」
――自分の音楽を中心に世界が循環する。言ったら、俺のおかんも菅田将暉のCDを買ってますから(笑)。でも、常日頃CDやレコードを買ってサブスクも聴いてます、じゃない人にも届く大衆音楽のすごさって尊いなとも。
「そうですよね。そこまで届かせるのがどれだけ大変かは分かってきたつもりだし、デビューした頃と違うのはそこだなって。ただ、経験が増えていいこともあるけど、"怖さ"みたいなものも増えていく。今はそういうタームです」
――去年、ひゅーいくんがTV番組『酒のツマミになる話』に出たとき、楽曲提供が自分の人気に跳ね返ってこないと嘆いてたけど(笑)、あれから一年経って状況は変わった?
「全く(笑)。ていうのは言い過ぎかもだけど、ライブ会場の外にいてもファンの方に気付かれなかったり(笑)」
――でも、ああやって自分でネタにできるのがいい状況だなとも思いましたよ。さっきのミュージシャンズ・ミュージシャンの話や楽曲への信頼感みたいに、今は数値化できない見えない徳を積んでいる最中なんじゃないですか?
「でも数値も欲しいんですよ(笑)。たまにYouTubeとかXのコメントに、"そろそろ石崎ひゅーいの才能に気付いた方がいい"みたいに書いてくれるんですけど、昔からずっと書かれてるなと思って。そろそろ気付いてくれよ!(笑)」
――botでもなく今でもそう言ってくれる人がいるのは素晴らしいじゃない(笑)。バズったときにこそ今までやってきたことが問われるし、その曲だけが良かったり、ライブがダメだったらそこで終わるから。
「だからライブのやり方、歌の届け方もやっぱり重要だなと思って。面白いもの見たさで来てくれた人も、昔からずっと来てくれてる人も、好みはぞれぞれ違うじゃないですか。例えば、ライブで"自由に楽しんで"みたいに言う人がいますけど、エゴサーチしてたら"自由って何だか分からないし、ちょっと嫌"とかいう書き込みを見て、こっちから手を引いてあげる意識が足りなかったなと思ったり。片や言われなくても自由に楽しめる人もいるし」
――"この曲のここで手を上げる"とか決まってる方がノリやすい人もいるし、そうしなきゃいけないような同調圧力が苦手な人もいる。どっちも気持ち良くライブが見られる伝え方をしたいよね。
「みたいなことまで最近は意識してるんですよ、すごくないですか?(笑)」
――最初から全力で会場の端から端まで走り回って、2時間のライブなのに最初の30分で疲れて切って声が出ない、みたいなことは今はないということですね(笑)。
「走って楽屋まで帰ってもう一回ステージに戻ってくるのがライブだと思ってた俺が(笑)。変わりましたよね」
自分が主人公にならないようにするのが最近の目標
――今年5月に東京・東京国際フォーラム ホールCで行われソールドアウトした、キャリア初のホールワンマンライブ『石崎ひゅーい LIVE 2024「宇宙百景」』は振り返ってどうでした?
「一年前ぐらいに発表したやり方も良かったなと思って。そこに向かって石崎ひゅーいをみんなで動かしていった感覚で、これからはチームのみんなで新しいことをどんどんやっていこうと、例えばラジオのMCを始めたり(=TBSラジオ『ポケットカード プレゼンツ 気になる世界の身になるはなし』(日曜20:30~21:00)、新曲『Season2』で初めてYaffleさんにアレンジしてもらったり...あと、個人的な話だとめっちゃ旅行に行ったんですよ、ニューヨークとか他にもいろいろ。とにかく自分が見たことのない景色を見たり、食べたことのないものを食べたり、新しいインプットをしながらアウトプットもして5月のホールワンマンに向かえたので、それが功を奏したのかなって」
――去年の7月にアルバム『宇宙百景』をリリースしたのにここまでインターバルが空いたのはなぜだろうと思っていたけど、納得しました。むしろリリースしてすぐツアーに出るのとは全然違う自分で、あのステージに立てたと。
「ホールワンマンは初めてだったし、ライブハウスとはまたちょっと違う届け方に挑戦して、ああいう場所で、距離感で、会場の端っこまでどう温めて歌を伝えていくのか...ただ歌うだけなら何でもいいかもしれないけど、ホールの端までと考えるとやっぱり意識することは多くなるし、本当に経験できて良かったです」
――そして、新曲『Season2』におけるYaffleさんの効力は聴けば明確ですが、どういった流れでこの曲を?
「年末年始に曲作りすることが多いんですけど、『Season2』も去年末から今年にかけて作った中の一曲で。ちまたではドラマの"シーズン2が始まった"みたいな言葉をよく聞くようになって耳なじみもあるし、これを題材にできないかなと"シーズン2が始まるのに君がいない"みたいな歌詞を書いてたらピンときたんですよね。シーズン1のまま取り残されている自分に焦点を当てた曲なんですけど、タイトルだけでも新しいところに行くように思えるワード選びでもあるし、アレンジをYaffleさんに頼むことで新しい挑戦ができたらという意味も込められたのかなと」
――タイミング的にも区切りのホールワンマンを終え、新しい石崎ひゅーいになるのにうってつけで。歌い方がいつもより抑えめに感じるんですが、そこは意識したんですか?
「しました。自分が主人公にならないようにするのが最近の目標なので」
――ひゅーいくんって声が印象的だから歌えば=石崎ひゅーいの世界になるけど、同時に、その声の存在感から石崎ひゅーいでしかなくなるとも言えるから。
「そうそう! そういうところをどう打開していくかは俺も意識してるし、周りにも聴いてもらって細々と調整しながら、みんなが曲に入ってこれるようにしようと」
――曲調もサビで爆発せず淡々と盛り上がっていく構成で、EDMを日本のポップスに落とし込んだらどうなるか、みたいな1サビ終わりの神々しいボイスエフェクトも効いていて。Yaffleさんと作業してみてどう感じました?
「事前にYaffleさんが手掛けた楽曲もめっちゃ聴いてたし、"俺とどう混ざるのかな?"みたいなワクワクと緊張感の中でレコーディングしたんですけど、何せ自分の曲はトオミヨウさんとずっとやってきたから未体験ゾーンで。そういうドキドキはありながら一番印象的だったのは、コーラスワークですね。"主メロぐらいの強さで出すんだ"みたいなこととか、リズムのアプローチもそうだけど日本人っぽくない、何か知らない感覚だなって。ストーリー性のあるアレンジで洋楽っぽいなとか、盗めるところがいっぱいあるなと思いましたね」
―――アレンジャーにとっても、石崎ひゅーいは調理しがいがあった素材かも。
「食べ物で言ったら何ですかね俺(笑)」
――何だろうね...にんにく(笑)。バターと合わせて肉を食べてもうまいし、ラーメンにももちろん使える。単体だと強烈な個性を放ってるけど実はいろんな料理にも合う人懐っこさと、食べるとふつふつと元気になる精力もある。だから家系シンガーソングライターだね(笑)。
(一同笑)
「それ言ってこ(笑)。これからのれん分けしていけばいいわけで」
――それこそ崎山くんとか才能ある後進のシンガーソングライターたちに(笑)。楽曲の持つ浮遊感は石崎ひゅーいがデビュー時から持ってる独特の芸風ですけど、『Season2』ではそこにちょっとアーバンでアダルトな風味が加わって、年齢相応の大人のポップスに仕上がってますね。でも、歌詞には"歌をうたうように"とか"抜け殻のメロディ"というフレーズがあるだけで、石崎ひゅーいの歌になる。
「自分の何かを散りばめないと歌にならない気がして」
――最初に聴いたときは地味かわいい曲だなと思ったけど、何回も聴きたくなる。家系シンガーソングライターの新たな入門編にはいいんじゃないでしょうか(笑)。最初から濃い味だと何杯もおかわりできないから。本当に『Season2』というか、次の10年の新たなスタートになり得る楽曲ですね。
"あなたが聴いてくれて初めて石崎ひゅーいの音楽が完成する"
――近年は楽曲提供をしてきて『宇宙百景』ではされる側にもなったし、そういう経験が今の制作に生かされている気がします。でも、ちょっと提供する曲が良過ぎるんじゃないかと。ホームランは自分のために置いておいた方が。
「その説はありますよ(笑)。でも俺、自分のためだとあんまり頑張れない。人のためだったら結構頑張っちゃうんですよね...街中で"あの曲いいよね!"とか言われてるのを聞くと、提供しておいて返してと思うこともあるけど(笑)」
――(笑)。現在は全国20カ所を巡るバンドツアー『石崎ひゅーい TOUR 2024「宇宙百景」』中で、12月には東阪ビルボードライブ公演『石崎ひゅーい 2024「キミがいるLIVE」-Piano Quintet-』と、年内はライブ尽くしですね。
「体が心配ですね、今年のテーマは健康なんで(笑)。まずはバンドツアーですけど、(タイトル曲の)『宇宙百景』自体がファンのみんなに向けた手紙みたいな曲で。"あなたが聴いてくれて初めて石崎ひゅーいの音楽が完成する"と思うようになってきたことを伝えるツアーなので、それぞれの街で待ってくれてる人たちに直接それを届けにいく。そういった意味があるツアーにできたらなって」
――ホールワンマンでは全国から東京に来てもらったし、今度は自分から会いに行くと。最後に、11年前のインタビューで将来どんな歌手になりたいかという話をしてましたけど、今、改めて聞いてみたいなと思って。
「え、怖い(笑)。一つあるのは、最終的には酒を飲みながらピアノを弾いて、ちっちゃなビルボードライブとかブルーノートみたいなところでおじいさんになるまで歌ってる、みたいな」
――ちなみに前は精神論ですけど、"最終的にやっぱり人格が見えちゃうような歌を、一瞬でどんな人か分かるような歌手になりたくて"と言ってました。
「コメントが自分に向かってますね...今はその逆かもしれない。自分の中で本当に大切な曲って1~2曲じゃないですか。そういう人生の大切な瞬間に流れる歌を作れるアーティストでいたいな。誰かのそういう一曲が作れたら」
――変わりましたね、この11年で。
「確かにそうですね。あの頃は自分のことばっかり考えてたから」
――そういう意味では『宇宙百景』にもつながりますね。今はみんなに音楽が向いている。
「そういうふうにはなってきてるんだと思います、うん」
Text by 奥"ボウイ"昌史
ライター奥"ボウイ"昌史さんからのオススメ!
「ひゅーいくんと久しぶりにがっつり話しましたが面白かったな~。自身の音楽をつづる才能はもちろん、それを言葉で伝えるすべをちゃんと持っている人だと再確認。ぜひ過去のインタビューもこの機会に読んでみてください。若くて危なっかしいけど(笑)その片鱗はすでにあります。そんな彼の最新曲『Season2』を聴いて、Yaffleさんの手腕はもちろんですが、どんなアレンジにものまれない圧倒的なオリジナリティに、改めて感心しました。'21年コロナ時に『世界中が敵だらけの今夜に-リターンマッチ-』ファイナルのレポートを担当したり、大柴広己主催のシンガーソングライターフェス『SSW』('14~'16出演)に出たときや劇団鹿殺しの『彼女の起源』('15)で舞台を見ていたり、ちょくちょく会ってはいたものの、やはり目を離してはいけないアーティストだなと。話を聞いて、バンドツアーもビルボードライブもがぜん楽しみになりましたよ!」
(2024年10月 4日更新)
Digital Single New!
『Season2』
発売中
エピックレコードジャパン
<収録曲>
01. Season2
Album
『宇宙百景』
発売中 3300円
エピックレコードジャパン
ESCL-5848
<収録曲>
01. 宇宙百景
02. 邂逅
03. あいもかわらず
04. ワスレガタキ
05. デュラ・デュラ
06. あたしは恋をしている
07. 花束
08. 虹
09. スパノヴァ
10. ラストシーン
11. スタンドバイミー
いしざき・ひゅーい…’84年3月7日生まれ、茨城県出身。本名。母親がデヴィッド・ボウイのファンで、その息子がゾーイという名前だったことから、もじってひゅーいと名付けられ、両親の影響で幼少からトム・ウェイツ、デヴィッド・ボウイなどを聴いて育つ。中学からバンド活動を開始し、音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向。’12年7月にミニアルバム『第三惑星交響曲』でメジャーデビュー。’13年6月にテレビ東京系ドラマ『みんな!エスパーだよ!』エンディング曲となった2ndシングル『夜間飛行』を、7月に1stアルバム『独立前夜』をリリース。’18年3月に初のベストアルバム『Huwie Best』を発表後、全48公演に及ぶ全国弾き語りツアーを実施した。同年12月、菅田将暉への提供曲のセルフカバー『さよならエレジー』を配信。’23年7月にリリースしたデビュー10周年を締めくくる5thアルバム『宇宙百景』には、槇原敬之や尾崎世界観(クリープハイプ)、長澤知之からの楽曲提供曲を収録、初めて自身の曲以外を歌唱した。最新曲は’24年9月11日に配信した『Season2』。また、『アズミ・ハルコは行方不明』(’16)『そらのレストラン』(’19)といった映画やドラマ『ジャパニーズスタイル』(’22)『パリピ孔明』(’23)に出演するなど、俳優としても活躍している。
石崎ひゅーい オフィシャルサイト
https://www.ishizakihuwie.com/
『石崎ひゅーい TOUR 2024「宇宙百景」』
【神奈川公演】
▼9月7日(土)横浜ベイホール
【埼玉公演】
▼9月8日(日)HEAVEN'S ROCK
さいたま新都心 VJ-3
【三重公演】
▼9月15日(日)四日市CLUB ROOTS
【岡山公演】
▼9月16日(祝・月)YEBISU YA PRO
【青森公演】
▼9月20日(金)Quarter
【宮城公演】
▼9月22日(日)仙台 darwin
【山形公演】
▼9月23日(祝・月)山形ミュージック
昭和Session
【新潟公演】
▼9月28日(土)GOLDEN PIGS RED STAGE
【石川公演】
▼9月29日(日)金沢AZ
チケット発売中
※販売期間中はインターネット販売のみ。
▼10月5日(土)17:00
KYOTO MUSE
全自由(一般)6500円
全自由(学生)6500円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※未就学児童は入場不可。
※当日学生証提示で2000円キャッシュバック(公演当日のみ有効)。小学生、中学生、高校生、高等専門学校生、専門学生、短大・大学生、大学院生が対象(公演当日に学生である必要あり)。公演当日、学割キャッシュバック受付にて写真付学生証の提示が必要。学生証が写真付で無ければ、写真付身分証明証と学生証を合わせてご持参ください。
チケット発売中
※販売期間中はインターネット販売のみ。
▼10月6日(日)17:00
チキンジョージ
全自由(一般)6500円
全自由(学生)6500円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※未就学児童は入場不可。
※当日学生証提示で2000円キャッシュバック(公演当日のみ有効)。小学生、中学生、高校生、高等専門学校生、専門学生、短大・大学生、大学院生が対象(公演当日に学生である必要あり)。公演当日、学割キャッシュバック受付にて写真付学生証の提示が必要。学生証が写真付で無ければ、写真付身分証明証と学生証を合わせてご持参ください。
チケット発売中
※販売期間中はインターネット販売のみ。チケットの発券は、11/10(日)昼12:00以降となります。
▼11月17日(日)17:00
梅田クラブクアトロ
全自由(一般)6500円
全自由(学生)6500円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※未就学児童は入場不可。
※当日学生証提示で2000円キャッシュバック(公演当日のみ有効)。小学生、中学生、高校生、高等専門学校生、専門学生、短大・大学生、大学院生が対象(公演当日に学生である必要あり)。公演当日、学割キャッシュバック受付にて写真付学生証の提示が必要。学生証が写真付で無ければ、写真付身分証明証と学生証を合わせてご持参ください。
チケット発売中 Pコード282-039
※取り扱いの席種が限定される場合がございます。座席位置によりご相席になる場合がございます。お申込み後の変更・キャンセル不可。
▼12月5日(木)17:30/20:30
ビルボードライブ大阪
サービスエリアS指定席9100円
サービスエリアR指定席8000円
カジュアル指定席7500円(ドリンク付)
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※未就学児童入店不可。18歳未満/高校生は成人(高校生不可)の同伴が必要です。飲食代金は別途お支払いください。店内全席禁煙(周辺喫煙スペースをご利用ください)。お申し込み前、ご来場前にビルボードライブWEBサイトのAttentionをご確認ください。出演者については、必ず公式サイトをご確認の上お申し込みください。