ホーム > インタビュー&レポート > WurtS、POLYSICS、ART-SCHOOLら、 UK.PROJECT所属の12組のアーティストが大阪に集結 『UKFC on the Road 2024』ライブレポート
8月21日(水)、東京・下北沢のレーベル・UK.PROJECTとプロダクションのUKPMが年に一度開催する夏のお祭り『UKFC on the Road 2024』がなんばHatchで行われた。大阪では2018年に心斎橋CONPASSで行われた以来の開催で、大阪での単独開催は今回が初めて。1フロア2ステージ制で、UK.PROJECT所属の12組のアーティストが、約8時間にもおよぶライブを繰り広げた本イベント。本記事では、後半パートのライブレポートをお届けする。
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【ペルシカリア】
一言では括ることのできないバンドたちが火花を散らす『UKFC on the Road 2024』。後半戦の口火を切ったのは、UK.PROJECT最年少のペルシカリアだ。矢口結生(Vo,Gt)とフルギヤ(Gt)が浮遊感漂うアルペジオを紡ぐ「煙」で柔らかにキックオフすると、「メインステージの先輩たちのワンマンならチケットは売り切れる。俺たちの3月のツアー大阪のキャパは200。つまり、大チャンスってことだ!」という矢口のMCを狼煙に猛進を開始。中垣(Ba)と中村達也(Dr)が幕開けの一発を鳴らした瞬間にひりつく質感へ変わった「歓声の先」、白色の照明だけのシンプルなステージが裸一貫なバンドの格好良さを引き立てた「優しい人」を終えても、勢いは止まることを知らない。
この間にも矢口は「UKのちゃぶ台返しをしに来ました」「UK最年少として波に乗るより波を作りたい」とレーベルの次世代を担っていくことへの決意を咆え、アクセルを踏み続ける。「死ぬほどどうでもいい」を経て、中村のビートにフルギヤの澄み渡ったリフが重なっていく。中垣と矢口がアンサンブルに加わると、中垣の哀愁を演出するコーラスから「タイムオーバー」がフィナーレに据えられた。終止爆音が体を満たしていた25分間のほんの数秒、矢口の地声ギリギリから繰り出される切ない歌声からふと訪れた静寂が美しかった。
【Age Factory】
続いては奈良県発のAge Factory。スモークと逆光の中、メンバーのシルエットが浮かび上がる。清水英介(vo.gt)が「俺らがここに立つのは自分たちの色を確かめるため。みんなの目には何色に映りますか?」と問いかけ、真っ青な照明に包まれて『Blood in blue』を響かせる。サビ前の増子央人(dr.cho)のドラムフィルと同時にステージがパッと明るくなり、メンバーの姿があらわになると、より会場が熱を帯びる。何とドラマチックなオープニングだろうか。続く『Dance all night my friends』では、どんどん挙がる手とシンガロングに清水は嬉しそうに笑顔を見せる。イントロで西口直人(ba.cho)の指弾きが下腹部をじりっと熱くした後、増子の割れんばかりのビートとディレイが空間を支配した『HIGH WAY BEACH』に続き、地元・奈良について歌った『Merry go round』ではエッジーな迫力はそのままに、優しく大切そうに歌声を響かせた。
1曲目から楽曲が鳴らされるごとに、自分も周りも彼らの虜になっていくことがわかる。「速い曲をやりたくて作った曲があるんだ。みんなまだいけますか?じゃあもっといこう」と言葉が添えられた『Shadow』がこれまでにない爆音で叩き込まれると、フロアはもう大狂乱。MCで清水は「俺、UK.PROJECTに入れて超嬉しくて。UKは胸張って昔から好きなレーベルです。そんなレーベルから、未来にも過去にも自分たちの音源が残っているのが超誇らしいです。俺がどんな奴だったとかどうでもいいけど、自分たちが大切に作った音楽だけは残るので。良いレーベルで嬉しいです」と口元に笑みをたたえて言葉を紡ぎ、今年2月にリリースされたアルバム『Songs』からタイトル曲の『SONGS』を真剣な表情で歌い上げる。ハスキーな清水の歌声、天井に響かんばかりの上昇感のある音。どこを切り取っても芯と熱があってドラマチックだ。
サポートギターのBOYも一緒に、4人で前のめりにセッションしてから披露された『TONBO』でも躍動感が会場を包む。最後は清水がギターを持ち替え、ひとりピンスポに照らされて『nothing anymore』を弾き語る。そこからの展開もダイナミックでエモーショナル。ライブが終わると、しばし余韻に浸ってしまった。
【the telephones】
同郷である埼玉県の後輩・ペルシカリアからFLOOR STAGEのバトンを受け取ったthe telephonesのライブが始まる前、ステージ上にミラーボールが設置された。この先に待ち受けるダンスタイムへの期待が高まる中、石毛輝(Vo,Gt,Syn)が「踊ろうぜ、大阪!」と開幕を宣言すると「Urban Disco(2024)」で鮮やかなオープニングを迎える。
昨年の『UKFC』はthe telephonesにとって新体制初のライブであり、新曲のみで構成されたセットリストが届けられたが、今年はバフのかけられた重低音がずっしりと響いた「Homunculus」や彼らの代名詞であるディスコが凝縮された「Mirror Ball Disco!!!!!!!」をはじめ、新旧の楽曲を織り交ぜた最新型のthe telephonesが提示され、この1年の歩みを伺うことができた。
エンディングに花を添えた「Monkey Discooooooo(2024)」では、イントロが鳴らされた瞬間にファンから快哉が叫ばれ、耐えきれないとばかりにモッシュも発生。ライブ中盤、石毛は「UK.PROJECTは色々なバンドがいるから。」と口にしていたが、ここからART-SCHOOLに繋がる流れはまさしく『UKFC』ならでは。兎にも角にも賑々しいパーティーの時間を建設し、空間を掌握した3人だった。
【ART-SCHOOL】
療養やコロナ禍を経て、昨年UKFCに復活したART-SCHOOLがトリ前に登場。SEが流れ、木下理樹(vo.gt)、戸高賢史(gt)とサポートの中尾憲太郎(ba)、藤田勇(dr)、やぎひろみ(gt)がステージに姿を現わすと大歓声があがる。1曲目は戸高の加入20周年を祝して7月にSpotify O-EASTで行われた『Today Forever』ファイナル公演と同じ幕開けの『車輪の下』を投下。木下の歌声が会場を突き抜けると、負けじと手を挙げて飛び跳ねるフロア。戸高のギターリフが爽やかな『ローラーコースター』に続き、ポップで骨太な『FLOWERS』、木下のリードギターから始まった『real love / slow dawn』まで、『Today Forever』東京公演と同じ流れで演奏された。ライブが始まってからずっと爆音で鳴らし続けられるバンドサウンドの迫力もすさまじく、中尾と藤田による盤石のリズム隊、時にユニゾンし、時に繊細にフレーズを鳴らすやぎと戸高のツインギターは忘れられるはずもない。
MCでは戸高が「大阪の皆さんこんばんは。呼んでいただいて本当にありがとうございます。僕らすごくUK.PROJECTにお世話になってて。多分UK.PROJECTがなかったらART-SCHOOLは存在してないと思います。感謝してもしきれないぐらい感謝してます」と述べる。戸高に話を振られた木下は「楽しんで帰ってくださーい」と一言だけ挨拶し、後半戦へ。『サッドマシーン』、『ジェニファー'88』、『BOY MEETS GIRL』と5人のバイブスで一気に疾走する。そして戸高が「Age Factoryがこの曲に影響を受けて、1曲目にやった『Blood in blue』を作ってくれたそうなので」と『あと10秒で』を披露。なかなか演奏されることのないレア曲だけにオーディエンスは大歓喜で手を挙げる。ラストは『Bug』。戸高が加入する前の2002年の楽曲から昨年6月にリリースされた最新アルバム『luminous』のリード曲まで、ART-SCHOOLの歴史をぎゅっと詰め込んだステージだった。
【POLYSICS】
FLOOR STAGEのアンカーを務めたのは、『UKFC』皆勤賞のPOLYSICS。エスカルゴを模した角のハンドサインがキュートだった「Young OH! OH!」から「シーラカンス イズ アンドロイド」、サイレンが鳴った瞬間に歓声が噴出した「I My Me Mine」と畳みかければ、完全にお祭りムードに。メンバーがチューニングしている間も止むことのないファンからの声援は、彼らがどれだけ待ち望まれていたのか、愛されているのかをひしひしと伝えている。これほどまでに莫大な愛を注がれているのも、ひとえにPOLYSICSが『UKFC』を支え続けてきたからこそ。
ハヤシヒロユキ(Gt,Vo,Syn,Programming)は「昨年からニューカマーも増えて、フレッシュな気持ちですね。僕らも負けずに気持ちはフレッシュです!」と話していたが、彼らが活動をスタートさせた頃には生まれていなかった後輩たちと一堂に会することができるのも『UKFC』の魅力であるし、それほど幅広い年齢のアーティストが同じ巣で音楽を鳴らしていること自体、UK.PROJECTが世代を超えて音楽の中心に存在し続けていることの証明でもあるのだ。
「休憩させません!」と表明して雪崩れ込んだ後半戦は、「Electric Surfin' Go Go」でピリオドが打たれる。前方で完璧に踊り散らかしているオーディエンスを懸命に真似しながらダンスしていた若い観客の姿を目撃した時、「こうやって次の世代へと音楽は託されていくのだ」と思った。
【WurtS】
13時半から始まった『UKFC』も、いよいよ最終アーティスト・WurtSの登場。昨年初出演となった『UKFC』ではZepp Shinjukuのトッパーをつとめたが、今回は大トリに大抜擢。ライブを終えた多くの先輩アーティストが見守る中、WurtSは佐藤亮(gt)、黒川バンビ(ba)、城戸紘志(dr)、ウサギ(DJ)という布陣でステージに立った。オートチューンを使った新機軸の『エヴォリューション』からライブをスタートすると「WurtSです、よろしくお願いします!」と片手を上げて挨拶し、スリリングな『Talking Box (Dirty Pop Remix)』、キャッチーな『リトルダンサー』と人気曲を投下して会場の温度を引き上げてゆく。
MCでは「楽しんでますか?今回は『UKFC』のトリをつとめさせていただけるということで、ありがとうございます!」と感謝を述べ、「なんばHatchの良さはお客さんとの距離が近いこと。後ろの皆さんの表情も見えてます! ここから踊れそうな曲が続くんですけど、皆さん踊ってくれますか!」と煽り、滑らかかつ畳み掛けるように早口ボーカルを響かせた『BOY MEETS GIRL』、イントロのマーチングドラムが印象的でEDM要素も含まれる『SWAM』に続き、「もっと踊るぞー!」と勢いをつけてダンスチューン『NERVEs』をプレイ。堂々たるパフォーマンスはもちろん、DJブースを飛び出したウサギも、コミカルな動きでフロアを扇動して盛り上げる。
2度目のMCでは、UK.PROJECTに入った時の話を回顧する。2021年、上京した大学生のWurtSは趣味で音楽を続けていた。そんな時、本人が知らぬままWurtSの両親がUK.PROJECTに音源を送ったそうで、突然UK.PROJECTから来たメールに驚いたと同時に、「最初は不審だった」と当時の心境を明かす。今は「尊敬している素晴らしい方がいっぱい所属している、誇らしい事務所です」と述べ、「もっとUK.PROJECTの名前を出した方がいいよね」と宣伝隊長を買って出る(?)発言も。ここで8月9日に全国公開された映画『ブルーピリオド』の主題歌『NOISE』を力強く投下。タイトル通りのノイジーな歌声と、荒々しさと力強さを感じさせる疾走感たっぷりのサウンドで駆け抜け、ラストは「UKFC最高ですね! もっと歌えますか! もっと楽しめますか!」と煽りまくり『僕の個人主義』で本編を締め括った。
アンコールはWurtSの代表曲であり、今やライブでは欠かせない大アンセムに成長した『分かってないよ』。歓喜に湧いたフロアは、幾度かのコール&レスポンスを経て、この日1番のシンガロングを巻き起こした。10月30日には2ndアルバムのリリースが、翌10月31日(木)には初の日本武道館公演も決定している。両親がUK.PROJECTに送った音源をキッカケに、アーティストとして大躍進を遂げている最中のWurtS。これからもUK.PROJECTを背負って活躍を続けることだろう。
そして、この日の出演アーティストを呼び込む。総勢40名を超えるメンバーがステージに集合する様はさすがに圧巻。POLYSICSのハヤシヒロユキ(gt.vo.syn.prog)が「皆さんもっとこっち寄ってくださーい」と優しく頼もしく仕切り、最後はWurtSが音頭を取って記念の写真撮影。こうして約8時間におよぶ『UKFC on the Road 2024』は大団円で幕を閉じた。同じ事務所の同じレーベルのベテランと若手が一堂に会する光景は、希望を感じさせられる。各所属アーティストの活躍を楽しみにしつつ、来年の『UKFC』も心待ちにしていよう。
Photo by タカギユウスケ/松本いづみ
Text by 久保田 瑛理/横堀つばさ
(2024年8月28日更新)
●the shes gone
01. 最低だなんて
02. エイド
03. きらめくきもち
04. 線香花火
05. ラベンダー
06. タイムトラベラーと恋人
●Helsinki Lambda Club
01. ロックンロール・プランクスター
02. ミツビシ・マキアート
03. Chandler Bing
04. Good News Is Bad News
05. 引っ越し
06. 収穫(りゃくだつ)のシーズン
07. Skin
●the dadadadys
01. 蜩
02. 朝焼け
03. 拝啓
04. じゃじゃ馬にさせないで
05. にんにんにんじゃ
06. ROSSOMAN
07. らぶりありてぃ
08. 9月になること
●Age Factory
01. Blood in blue
02. Dance all night my friends
03. HIGH WAY BEACH
04. Merry go round
05. 向日葵
06. Shadow
07. SONGS
08. TONBO
09. nothing anymore
●ART-SCHOOL
01. 車輪の下
02. ローラーコースター
03. FLOWERS
04. real love / slow dawn
05. サッドマシーン
06. ジェニファー'88
07. BOY MEETS GIRL
08. あと10秒で
09. Bug
●WurtS
01. エヴォリューション
02. Talking Box (Dirty Pop Remix)
03. リトルダンサー
04. BOY MEETS GIRL
05. SWAM
06. NERVEs
07. NOISE
08. ふたり計画
09. 僕の個人主義
EN. 分かってないよ
●LAYRUS LOOP
01. スーパーヒーロー
02. 幸せ者なの(新曲)
03. ダンスフロア
04. 良い男
05. ハイヒール
06. 心躍る方へ
●からあげ弁当
01. チキン野郎
02. 22
03. そんな日々を生きていく
04. OH MY GOD
05. Good day
06. 乾杯をしよう
07. チキン野郎(ショートver)
●peanut butters
01. ヴヴヴ
02. ツナマヨネーズ
03. スイカP
04. あいへいと
05. すげー(心のボーナストラック)
06. she so come!!!
07. パワーポップソーダ
08. 普通のロック
●ペルシカリア
01. 煙
02. 歓声の先
03. 優しい人
04. さよならロングヘアー
05. 風道
06. 死ぬほどどうでもいい
07. タイムオーバー
●the telephones
01. Urban Disco (2024)
02. HABANERO (2024)
03. Danger Boy
04. Wanna Wanna Do
05. Homunculus
06. Go Bananas!!!
07. Mirror Ball Disco!!!!!!!
08. Monkey Discooooooo(2024)
●POLYSICS
01. Young OH! OH!
02. シーラカンス イズ アンドロイド
03. I My Me Mine
04. SUN ELECTRIC
05. Funny Attitude
06. Shout Aloud!
07. Boys & Girls
08. Electric Surfin' Go Go
「UKFC on the Road 2024」Web Site
http://ukfc2024.ukproject.com/
「UKFC on the Road 2024」X
https://x.com/ukfcontheroad
「UKFC on the Road 2024」Instagram
https://www.instagram.com/ukfcontheroad/