ホーム > インタビュー&レポート > WurtS、POLYSICS、ART-SCHOOLら、 UK.PROJECT所属の12組のアーティストが大阪に集結 『UKFC on the Road 2024』ライブレポート
【LAYRUS LOOP】
『UKFC on the Road 2024』のトップバッターを飾るのは、昨年に続き2度目の出演となったLAYRUS LOOPだ。関西発の彼らがオープニングの相棒に選んだのは「スーパーヒーロー」。オオトシユリヤ(Ba,Vo)とムラカミマホ(Gt,Cho)の2人は早速ステージギリギリまで身を乗り出し、「私たちが来たぞ!」とでも言うべくフロアへ熱視線を送る。3人で向き合いながら演奏する風姿にはスターターを任されたことへの喜びが滲んでおり、その幸福感が甘酸っぱいオオトシの声色や愛くるしいメロディーに乗せられて伝播していく。
3人のシンガロングに観客もハンズアップで応えた最終曲「心躍る方へ」の最中、オオトシは<好きなものが大好きだって 今は正直でいよう>という純真なリリックを具現化するがごとく「好きに歌ってたって大丈夫。何も気にしなくて大丈夫!」と語りかけた。モトザワソラ(Dr)が「皆、めっちゃ笑顔」と話していたように、今日がハッピーな1日になることを確信させるポップな幕開けだった。
【the shes gone】
FRONT STAGEのトップバッターを飾ったのは、4度目の出演で、新体制では2度目の出演となるthe shes gone(以下、シズゴ)。the telephonesの石毛輝(vo.gt.syn)による「UKFC!」というシャウトが印象的なSEが流れ、兼丸(vo.gt)、マサキ(gt)、熊谷亮也(dr)、サポートの松田ナオト(ba)が登場。早速兼丸が弾き語りで『最低だなんて』をパワフルに響かせる。兼丸の「さあ始めようかUKFC!」という叫びから、このステージに臨む気合いが十分に伝わってくる。のっけからシズゴらしいロックチューンで包み込むと、続けて力強くも優しく背中を押す『エイド』を披露。フロアもしっかり手を挙げて応える。
兼丸は「フロントステージのトッパー、楽しくやらせていただこうと思います。大阪のみんなよろしくね!」と挨拶し、きらきら輝くサウンドとグッドメロディが耳を潤し、胸を震わせた『きらめくきもち』を経て、MCで兼丸は石毛のジングルの真似をして「石毛さんの声だ! って帰ってきた感じがする」と笑顔。夏にピッタリの『線香花火』、代表曲『ラベンダー』を経て、最後は7月に配信リリースされた新曲『タイムトラベラーと恋人』でパワフルかつキャッチーに締め括った。実に良曲揃いの全6曲。クリアでハリのある歌声と演奏力の高さで見事なサウンドスケープを描き出し、「UK.PROJECT、the shes goneでした」とステージを去った。シズゴは11月22日(金)にワンマンライブで大阪BIGCATに戻ってくる。
【からあげ弁当】
リハーサルから口々に「音量を上げてください」とリクエストし、爆音をぶっ放す準備満タンだったのが、『UKFC』初出演のからあげ弁当。焼きそば(Vo,Gt)のアカペラが会場に響き渡った「チキン野郎」でスタートすると、「やれんのかい? なんばHatch!」と煽りながら「22」「そんな日々を生きていく」を連投する。こーたろー(Dr)のマッシブなビートやゴリゴリに歪んだ春貴(Ba)のベースサウンドは純度100パーセントのロックンロールを叩き出し、少し息切れしているように見える焼きそばの背中さえ頼もしい。
ここまでの疾走感溢れる雰囲気から一変、Ryu-no.(Gt)の乾いたリフを筆頭にラウドなムードを作り出した「OH MY GOD」を終えると、焼きそばは初出演にあたって『UKFC』の歴史を調べてきたと語り、「初めてきた人も何年も来ている人も、全ての人にリスペクトと愛を込めて歌います」と話した。そこから放たれたのが<今君は聞こえるかい この声よこの声よ>というラインで幕を開ける「Good day」なのだから堪らない。
ここまでのセットリストにも一貫していた「幸せな人生を送ってほしい」というメッセージが濃縮された同曲を経て、焼きそばはこう続けた。「今日の朝、おじいちゃんが死んだ。次の曲は『UKFC』に来た奴らと俺らと、まだその辺におるおじいちゃんと一緒に歌いたいと思います!みんなで乾杯をしよう!」―――胸中を慮るだけで胸が苦しくなる状況に置かれながらも、「また遊びにおいで!」「届け!」とマイクを握りしめて叫ぶ焼きそばの姿に思わず涙腺が緩む。最後に再びドロップされた「チキン野郎」まで、一切攻撃の手を緩めずに突き抜けた4人だった。
【Helsinki Lambda Club】
Helsinki Lambda Club(以下、HLC)はUK.PROJECTに所属して今年で10年目。元気よく走り込んだ稲葉航大(ba)と、熊谷太起(gt)、橋本薫(vo.gt)、サポートの岡田優佑(dr)。「UKFC大阪よろしくお願いします!」と橋本が挨拶し、稲葉と交互にボーカルをとる『ロックンロール・プランクスター』でゆるりとライブスタート。じわじわとHLC色に満たされていくフロアは心地良さそうに身体を揺らす。2曲目は雰囲気を一変させ、思い切りロックに『ミツビシ・マキアート』を叩き込む。"ぎゅわ〜ん"という熊谷のギターやビートが異国感あふれる『Chandler Bing』では、橋本はハンドマイクでゆらゆらとチルに歌声を響かせる。稲葉のコミカルで独特な動きに橋本が笑ってしまい、曲をやり直す場面もあったが、ほどよく空気がほぐれてゆき、フロアもリラックスムードでプチョヘンザ。HLCのライブは1曲ごとに表情が変わるのが本当に面白い。
原点回帰の『Good News Is Bad News』に続けて短いMCを挟み、浮遊感のある『引っ越し』、サイケデリックな『収穫(りゃくだつ)のシーズン』で没入空間を作り出した。ウィスパーボイスからシャウトまで、1曲の中に橋本のボーカルのレンジの広さが濃縮されているのもすごい。アウトロは轟音でトリップさせると、ハッと目が覚めるようなギターロックチューン『Skin』でパワフルに締め括った。ジャンルレスで自由な、HLCの魅力が詰まった35分を見せてくれた。
【peanut butters】
2023年の『UKFC』は惜しくもキャンセルとなってしまった(なお、昨年はpeanut buttersの枠にペルシカリアが出演し、1日で2度のライブをこなした)peanut buttersが昨年の雪辱を果たしにやってきた! オープニングナンバーに新曲「ヴヴヴ」をセレクトすると、のっけからフロアも波立つ。音源ではエレクトロな印象が強かったが、楽器陣によるタフなプレイングや鋭利なフレーズをはじめ、より肉体的なバンドとして進化を遂げていることが分かる。それは各パートの見せ場でサポートメンバーの名前を叫ぶばななあいす(Vo)らも読み取ることができ、フロントマンとして楽器陣を信頼し、牽引しようとする意志が伝わってきた。
「ラスト!」とシャウトして届けられた最終曲が「普通のロック」であったことを思えば、"音楽ユニット"や"バンド"という括りに囚われていたのはこちらの方だったと気付かされる。中盤のMCにて東名阪ワンマンツアーを発表したpeanut butters。今後の行く末に胸が躍る。
【the dadadadys】
リハから本番さながらの熱量でフロアの拳を突き上げさせたのは、the dadadadys。昨年のUKFCでも見られた光景であるが、小池貞利(vo.gt)がライブを終えたばかりのHLCの橋本を袖から連れてきて一緒にHLCの『Skin』を歌う場面もあり、ライブが始まる前から既にクライマックスのような盛り上がり。小池は「そのままライブいこうよ!」と叫び、猛スピードで『蜩』を投下するとフロアは激しく揺れ、のっけからダイバーも出現! 頭を振り乱してギターをかき鳴らしながら叫ぶ小池のボーカル、サイドを固める山岡錬(gt.cho)と儀間陽柄(gt)の豪速球のギター、ボトムをどっしり支える佐藤健一郎(ba.cho)とyucco(dr.cho)のパワフルなビート。わずか数十秒で終わった『朝焼け』に続く『拝啓』では、どうやっても抗えない重低音と音圧、エネルギーで会場全体を巻き込んでいく。ほんの3曲とは思えない熱量を生み出して熱狂させると、小池はアコギを持ってアニメ『らんま1/2』のOP曲『じゃじゃ馬にさせないで』を思い切りポップなバンドアレンジで披露。
後半も勢いは加速する一方で、「もっとバカになって遊ぼうぜ!」と爆音で『にんにんにんじゃ』を投下。小池はハンドマイクで身体を震わせながら叫び、歌う! 超絶激しい『ROSSOMAN』でフロントマン4人が前に出ると、フロアはもう大騒ぎ。なりふり構わず全力で音楽を奏でる5人に呼応して、拳を上げる人の数がどんどん増えていく。「最後まで自分の楽しみ方で楽しんでいってください!」と全編ミドルテンポの『らぶりありてぃ』をヒップホップ調のフロウで韻を踏みまくる小池。座って床と距離を近づけ、目の前のオーディエンスと対峙して、呼びかけるように訴えるように、歌声を響かせた。ラストの『9月になること』まで全8曲。最高にパワフルで人間臭く、エモーショナルな空気を醸成し、爪痕を残したthe dadadadysだった。
Photo by タカギユウスケ/松本いづみ
Text by 久保田 瑛理/横堀つばさ
(2024年8月28日更新)
●the shes gone
01. 最低だなんて
02. エイド
03. きらめくきもち
04. 線香花火
05. ラベンダー
06. タイムトラベラーと恋人
●Helsinki Lambda Club
01. ロックンロール・プランクスター
02. ミツビシ・マキアート
03. Chandler Bing
04. Good News Is Bad News
05. 引っ越し
06. 収穫(りゃくだつ)のシーズン
07. Skin
●the dadadadys
01. 蜩
02. 朝焼け
03. 拝啓
04. じゃじゃ馬にさせないで
05. にんにんにんじゃ
06. ROSSOMAN
07. らぶりありてぃ
08. 9月になること
●Age Factory
01. Blood in blue
02. Dance all night my friends
03. HIGH WAY BEACH
04. Merry go round
05. 向日葵
06. Shadow
07. SONGS
08. TONBO
09. nothing anymore
●ART-SCHOOL
01. 車輪の下
02. ローラーコースター
03. FLOWERS
04. real love / slow dawn
05. サッドマシーン
06. ジェニファー'88
07. BOY MEETS GIRL
08. あと10秒で
09. Bug
●WurtS
01. エヴォリューション
02. Talking Box (Dirty Pop Remix)
03. リトルダンサー
04. BOY MEETS GIRL
05. SWAM
06. NERVEs
07. NOISE
08. ふたり計画
09. 僕の個人主義
EN. 分かってないよ
●LAYRUS LOOP
01. スーパーヒーロー
02. 幸せ者なの(新曲)
03. ダンスフロア
04. 良い男
05. ハイヒール
06. 心躍る方へ
●からあげ弁当
01. チキン野郎
02. 22
03. そんな日々を生きていく
04. OH MY GOD
05. Good day
06. 乾杯をしよう
07. チキン野郎(ショートver)
●peanut butters
01. ヴヴヴ
02. ツナマヨネーズ
03. スイカP
04. あいへいと
05. すげー(心のボーナストラック)
06. she so come!!!
07. パワーポップソーダ
08. 普通のロック
●ペルシカリア
01. 煙
02. 歓声の先
03. 優しい人
04. さよならロングヘアー
05. 風道
06. 死ぬほどどうでもいい
07. タイムオーバー
●the telephones
01. Urban Disco (2024)
02. HABANERO (2024)
03. Danger Boy
04. Wanna Wanna Do
05. Homunculus
06. Go Bananas!!!
07. Mirror Ball Disco!!!!!!!
08. Monkey Discooooooo(2024)
●POLYSICS
01. Young OH! OH!
02. シーラカンス イズ アンドロイド
03. I My Me Mine
04. SUN ELECTRIC
05. Funny Attitude
06. Shout Aloud!
07. Boys & Girls
08. Electric Surfin' Go Go
「UKFC on the Road 2024」Web Site
http://ukfc2024.ukproject.com/
「UKFC on the Road 2024」X
https://x.com/ukfcontheroad
「UKFC on the Road 2024」Instagram
https://www.instagram.com/ukfcontheroad/