ホーム > インタビュー&レポート > 野性爆弾がMCで出演中の音楽バラエティ番組『音楽爆弾』が 主催する『セキスイハイム近畿 presents ONBAKU!FES. 2023』 2日目3/5(日)ライブレポート
大阪城音楽堂を舞台に、野性爆弾のシュールで狂気的な笑いの世界と、出演したバンドや芸人たちの圧倒的なパフォーマンスがぶつかり合ったライブイベント『セキスイハイム近畿 presents ONBAKU!FES. 2023』。
3月5日の開催2日目は、Hakubi、ジュースごくごく倶楽部、KANA-BOON、見取り図、KEYTALK、COWCOW、ヤバイTシャツ屋さんの7組が登場。前日の1日目に続いて、パフォーマンスとともに、音楽に恨みを持つ男女アイドルのNANIWAすくーるず(くっきー!(野性爆弾)、桂ぽんぽ娘)が7組に襲いかかるというストーリーが展開。イベントラストには、NANIWAすくーるずの運命も描かれた。
●Hakubi「今年一番ヤバい出会いにしたい」
カオスなイベントの空気をトップバッターで良い意味で一変させたのが、Hakubi。1曲目「悲しいほどに毎日は」で響き渡る、ボーカル&ギターの片桐の繊細な歌声。その息遣いも実に美しく、メロウなムードへと観客を引き寄せていく。
片桐が「めちゃめちゃ良い感じじゃないですか。一番後ろまでちゃんと見えています。京都のライブハウスから来ましたHakubiです。今年一番ヤバいフェス。あななたちがHakubiに出会ったことが、今年一番ヤバいことにしたいです」と言葉を投げかけ、「Eye」「在る日々」などを演奏。静けさと激しさのコントラストが、より一層、Hakubiの魅力を際立たせていく。
片桐は「昨日、今日、音楽だったりお笑いだったりを楽しんで、また明日、また同じような日々が戻ってくる。どこか寂しくなったり、孤独になったりしたタイミングで今日のことを一瞬だけでも思い出して、頑張れる気持ちになって、『またライブを見たいな、あの人に会いたいな』ってなってほしい」「音楽を通してまた会いましょう。この出会いをこれからも続けていきましょう」と観客に願いを届けた。
●ジュースごくごく倶楽部、
バンドタオルを掲げる姿はまさにロックバンドの佇まい
ジンジャエール阪本、愛コーラ、堂前タオル、ポイズン反町、辻クラシック、あたしからなる、お笑い芸人が「お笑い抜き」で本格的にパフォーマンスするバンド、ジュースごくごく倶楽部。ジンジャエール阪本は「みなさん、初めまして! 僕たちがジュースごくごく倶楽部です、よろしくお願いしまーす」「今日は最後まで演奏のみでぶち通していきます」のハイトーンな挨拶で意気込んで、「ジュースごくごく倶楽部のテーマ」「サボりの歌」などを披露。
「タンパクスィッツあげるよ」で歌われる「チョコレートばっかりじゃ 朝のジョギングが幻になるし」など、コミカルさのなかに真意を突く歌詞の数々、さらにブルースロック的なサウンドとプレースタイルは、1960年代から1970年代の日本や海外のレジェンドバンドを思い浮かべる瞬間があり、バンドとしての味わいの深さが感じられる。
2日目はハードなサウンドを鳴らすロックバンドが並んだが、ジュースごくごく倶楽部のステージはまったく押し負けていなかった。ラスト曲「勇者にしてあげる」の演奏を終えてステージを去るとき、ドラムのポイズン反町がバンドのタオルを掲げる姿はまさしくロックバンドの佇まいだった。
●KANA-BOON「好きなものが増えると良いな」
本番直前のリハーサル時から、KANA-BOONのボーカル&ギターの谷口鮪の「楽しさが抑えきれない」といった風なアクションが目に焼き付いて離れない。そのテンションは、1曲目の大ヒットナンバー「フルドライブ」のスロットル全開なパフォーマンスにはっきりあらわれていた。
「声出しも久しぶりじゃないですか。ええやん。これがライブですよね、でも、これまで沈黙が続いていたと思うから、喉が開いてないと思うんですよね」と、2曲目「ないものねだり」では「ゆらゆらゆらゆら」のパートで、ライブ中に発声ができなかった数年分の鬱憤を爆発させる。
一方で谷口鮪は、野性爆弾のシュールな笑いが散りばめられた『ONBAKU!』について「どんなテンションでやったらええんか分からへん」と苦笑い。「Hakubi、すごいよな。あんな感じでできる? ギターをサラーンと弾きながらMCをする真面目な感じとか、普段のライブなら成立するけど今日は自信がない」とジョークを飛ばす一幕も。その後も「シルエット」「スターマーカー」などで盛り上げた一方、谷口鮪の「お笑いを見に来た人も、バンドを見に来た人もいると思いますけど、全部、とりこぼさず楽しんでいってくださいね。今日、好きなものが増えると良いなって」というMCは、私たちが生きる上でもっとも重要なメッセージに思えた。
●見取り図は音楽的雰囲気に流されずガチ漫才
「シンプル漫才をやらせてもらいます」とガッチガチに漫才ネタをやりにきたのが、人気お笑いコンビの見取り図。音楽的な雰囲気に流されず愚直なまでにお笑いをやる姿勢には芸人としての矜持があった(ましてや盛山晋太郎はラップができるのにそれを一切、やらなかった)。
リリーが「今日は相方の盛山が、テンションが上がっている。3月5日が誕生日だということで」と紹介して祝福の拍手を誘ったが、盛山は独特の高い声で「俺、今日誕生日ちゃうわ!」とツッコミ。見取り図のネタではおなじみのツカミだ。
その後もリリーが、お客からワードを募って即興で謎かけを披露。「いちご」というワードを受け取って、「いちごとかけまして、車と解きます。そのこころは......どちらも3文字です」と得意げにお辞儀して笑わせるなどした。
●KEYTALK「サンドイッチされて喋ることねーよ」
1曲目「MATSURI BAYASHI」の「祭りじゃ祭りじゃ」「わっしょいわっしょ」というコールアンドレスポンスでフィーバーしたのが、KEYTALK。メンバーと観客の気持ちの高ぶりは本番直前のリハーサルでもうかがえ、KEYTALKのメンバーも「マジでアガってきた」と心が躍っていた。
首藤義勝のベースと八木優樹のドラミングは観客の心身を否応なくグラインドさせ、小野武正と寺中友将の刺激的なギターサウンドが会場全体の熱量を上げる。「MATSURI BAYASHI」「君とサマー」「BUBBLE-GUM MAGIC」などを演奏し、日本で一番早く夏を感じさせてくれた。特に「BUBBLE-GUM MAGIC」のソウルフルなギターとベースのサウンドはこの日のライブをよりダンサブルな展開へと運んでいった。
小野武正は「めちゃくちゃ楽しいぞー。野音良い、外良い、みんなの顔が見れて最高。すごいイベントだよね。聞いたことねーよ。こんな(お笑いの出演者に)サウンドイッチされて喋ることねーよ」と嬉しそうに話せば、寺中友将もライブの冒頭とラストで1杯ずつ、ビールを飲み干す場面も。まさにお祭り騒ぎの30分だった。
●COWCOW「なんか変なノリになってきた」
「やっとお目当ての人が出てきましたよ」と豪華出演者を差し置いてヘッドライナー宣言をしたのが、お笑いコンビのCOWCOW。
観客が飲食購入やトイレへ行くために席を立つたび「全然、行って良いですよ」「あ、このタイミングで」などとひたすらツッコんでいたところは、寛容なのか気にしすぎなのか分からなくておもしろかった。
この日披露したネタは、同窓会で再会した元バレー部のふたりの挨拶。アタックなどバレーの動きを交えた挨拶を、リズミカルに見せていって笑いをあつめていった。観客から「フーッ!」という声があがるなどなぜかクラブっぽい盛り上がりが起きて、COWCOWは「なんか変なノリになってきた」とちょっと戸惑いつつ、一世を風靡した「あたりまえ体操」で締め。まさに音楽と笑いを融合させたパフォーマンスだった。
●ヤバイTシャツ屋さん「ヤバTのヤバいにしてもらって良いですか」
トリを飾ったのはヤバイTシャツ屋さん。初っ端から人気曲「あつまれ!パーティーピーポー」で、「しゃっ!しゃっ!しゃっ!しゃっ!しゃっ!」の大合唱が巻き起こり、つづく「無線LANばり便利」では会場が揺れるほど観客が一斉ジャンプ。それでもボーカル&ギターのこやまたくやは「もっと跳べる、もっと跳べる」と貪欲にリクエスト。さらに曲中「座れ、座れ」と観客全員を一旦着席させ、「跳べ」の掛け声で大きくジャンプさせるなどして盛り上げた。
「私、音爆したいです。音の爆発をみんなで」と言うのは、ベース&ボーカルのありぼぼ。「後ろの方からウオーッて、前の方へ」とまた一旦座らせて、後方の芝生席の観客から前方へ向かって順々に立たせてウェーブを起こすことを提案。観客もエネルギーをすべて発散するようにウェーブを巻き起こし、こやまたくやは「音楽爆弾、爆発しました!」とさらに白熱した演奏を披露。
こやまたくやは「このフェスのポスターに『春一番!ヤバいフェス!』って書いてあったから、ヤバTのことを言ってくれてるんかなって思ったら、野爆のフェスって言われて。でも残り2曲、ヤバTのヤバいにしてもらって良いですか」と、「ヤバみ」「ハッピーウェディング前ソング」で『ONBAKU!』をヤバT色へと染め上げた。
●ヤバT・ありぼぼの言葉「壁って越えていかなあかんから」があらわしたこと
この日も、アーティストの演奏などとともに展開された、NANIWAすくーるずによる「アーティストを根絶やしにする」という物語。そのなかで印象的な言葉があった。それは、ヤバイTシャツ屋さんのありぼぼが発した、「でも男女の壁って越えていかなあかんから」という言葉。そしてありぼぼは、メンバーやファンの制止を振り切って、大人のグッズをかぶって風船のように膨らませるゲーム&対決にチャレンジした。
この「壁を越える」は、『ONBAKU!』をまさに象徴する一言だ。
Hakubiもドラムのマツイユウキが同様に風船膨らましに挑戦し、仲間であるはずの片桐から「うわうわうわうわうわ......初めて見た、こんな顔」と苦笑いさせた。ジュースごくごく倶楽部はお笑い抜きの演奏がまさにそれであり、一方でくっきー!とのゲーム対決では絵描き歌で芸人としての領分を発揮(前日同様、くっきー!の支離滅裂な歌が飛び出した。絵描き歌の答えは「牛の子作り」だった)。KANA-BOONのときには、前日出演のキュウソネコカミのヤマサキセイヤが飛び入り参加して、「任せとけ、KANA-BOON。先輩の意地を見せたる」と大人のグッズをかぶっての風船膨らましを買って出た(ちなみにセイヤはプライベートでの来場にも関わらず、その後も何度もステージへ登場)。そんな先輩の勇姿に心打たれたのかドラムの小泉貴裕も風船膨らましに挑むことに。見取り図はスマホのスロー再生機能を使って顔を横に振り、どれだけ表情を弛ませることができるかにのぞみ、売れっ子ながら芸人らしく体を張った。KEYTALKも同じく全員が顔を振って変顔を作ったが、くっきー!から「(舌の太さが)キリンくらい太い」とある意味、アーティスト生命にかかわるバトルを強いられた。COWCOWはベテランながら映像の変顔加工でくっきー!の世界観に巻き込まれていった。
エンディングは、出演者全員で安室奈美恵の「a walk in the park」を合唱。歌の力で「ミュージシャンを根絶やしにする」と息巻いていたNANIWAすくーるずに正気を取り戻させた。そのエンディング曲の「walk」というワード、そして「取り戻す」という動作もあらわしているように、2日間にわたった『ONBAKU!』は、コロナ前のライブの形が音楽シーンに少しずつ戻ってきて、さらにこの約3年の間、作らざるを得なかった人と人との間の壁や分断もようやく飛び越え、前に進んで行ける時期がきたことを実感させた。
取材・文:田辺ユウキ
(C)ONBAKU!FES.2023
(2023年3月22日更新)
▼3月4日(土)・5日(日)
大阪城音楽堂
【4日(土)】
[出演]Hump Back/ストレイテナー/打首獄門同好会/キュウソネコカミ/梅田サイファー(※R-指定は出演致しません)/ZiDol
[ゲスト]久保田かずのぶ(とろサーモン)/ゆりやんレトリィバァ
[司会]野性爆弾/大抜卓人
【5日(土)】
[出演]KEYTALK/Hakubi/KANA-BOON/ヤバイTシャツ屋さん/ジュースごくごく俱楽部
[ゲスト]COWCOW/見取り図
[司会]野性爆弾/大抜卓人
Hakubi
01. 悲しいほどに毎日は
02. Eye
03. 在る日々
04. 光芒
05. 君が言うようにこの世界は
ジュースごくごく俱楽部
01. ジュースごくごく俱楽部のテーマ
02. サボりの歌
03. タンパクスィッツあげるよ
04. 勇者にしてあげる
KANA-BOON
01. フルドライブ
02. ないものねだり
03. シルエット
04. きらりらり
05. スターマーカー
KEYTALK
01. MATSURI BAYASHI
02. 君とサマー
03. 宴はヨイヨイ恋しぐれ
04. BUBBLE-GUM MAGIC
05. 桜花爛漫
06. MONSTER DANCE
ヤバイTシャツ屋さん
01. あつまれ!パーティーピーポー
02. 無線LANばり便利
03. NO MONEY DANCE
04. Blooming the Tank-top
05. ちらばれ!サマーピーポー
06. ヤバみ
07. ハッピーウェディング前ソング