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野性爆弾がMCで出演中の音楽バラエティ番組『音楽爆弾』が
主催する『セキスイハイム近畿 presents ONBAKU!FES. 2023』
初日3/4(土)ライブレポート

お笑いコンビ、野性爆弾がMCで出演中の音楽バラエティ番組『音楽爆弾』(テレビ大阪)が主催するライブイベント『セキスイハイム近畿 presents ONBAKU!FES. 2023』が3月4日、5日に大阪城音楽堂で開催された。

「春一番!ヤバいフェス!爆誕。」を合言葉に音楽とお笑いを融合させた同イベント。各ミュージシャンらのすばらしい演奏はもちろんのこと、長年にわたって異端的なお笑いを追求してきた野性爆弾がイベントの内容面にも大きく関わっていることも相まって、極めて「非日常的な2日間」となった。

ちなみに同イベントは、2日間にわたる「物語」も設定されていた。ミュージックを司るゴッド、クリーカーンへの憎しみから音楽に恨みを持つようになった男女アイドル、NANIWAすくーるず(くっきー!(野性爆弾)、桂ぽんぽ娘)は、「このフェス(『ONBAKU!』)に出場するアーティストどもを根絶やしにしてやる」とミュージシャンらに襲いかかることに。

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イベント初日、NANIWAすくーるずの"標的"となったのが、Hump Back、ZiDol、ストレイテナー、梅田サイファー feat.とろサーモン久保田かずのぶ、打首獄門同好会、ゆりやんレトリィバァ、キュウソネコカミ。7組のパフォーマンスはもちろんのこと、無事に生き延びられるかにも注目が集まった。

●Hump Backが歌った「おもろい大人になりたいわ」

「ウチらはライブハウス出身。ライブハウスで育って、ライブハウスのやり方しかしらんから。ここをライブハウスにして帰ります。ここはな、アホになればなるほど格好良い場所や」

Hump Backのボーカル&ギター、林萌々子は何度も「ライブハウス」という言葉を口にした。日に日に取り巻
く環境が変化しているであろう、Hump Back。「拝啓、少年よ」を1曲目に披露したこの日も、多くの観客がア
ンセム化したサビの部分を口ずさんだ。しかし「どうかみなさん、間違えてライブハウスに来てください」と
訴える思いからは、バンドとして絶対に変わらない部分があることをあらわしているようだった。

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「小学校のとき、友だちとうまくできへんくって、学校を休みがちやったり、保健室でサボったりしていた。そのときテレビで(芸人の)ですよ。さんが出ていて、笑い泣きして救われました。画面の向こうの芸人さんたち、救ってくれてありがとうございます。だから今日みたいな日に歌えるのはほんまに幸せです」

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お笑いから元気をもらったという林萌々子の気持ちが発露した4曲目「番狂わせ」は特に印象的で、「おもろい大人になりたいわ」と歌う姿は、音楽とお笑いがクロスオーバーした同イベントのトップを飾るにふさわしいものがあった。

●ZiDol「5分の3がメガネ、5分の2が肥満のグループ」

1曲目「today isまにまに」を歌い終えたのち、プロデューサーのkento fukayaが登場して「悲しいお知らせになります、次がラストです」と堂々言い放って笑いと驚きを与えたのは、わずか2曲の持ち歌で果敢にも音楽フェスに参戦したお笑い芸人アイドルのZiDol。

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kento fukayaが称した「5分の3がメガネ、5分の2が肥満のグループ」とだけ聞けば、いかにもお笑い芸人5人組。ただアイドル楽曲としてクオリティは非常に高く、たとえばディスコナンバー「today is まにまに」は、サビ部分のキャッチーな曲展開と人差し指を立てるなどする振付の中毒性が途轍もない。

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しかし、いかんせん披露できるのは2曲だけ。そのため、中谷(マユリカ)がトトロの「さんぽ」を口笛で吹いたあとにバク転をしてからおもしろい3文字を言ったり(ちなみにその3文字が「酢飯」で、kento fukayaから「お笑いだけ(うまく)できなかった」と残念がられた)、浦井のりひろ(男性ブランコ)とkento fukayaが元ソフトボール部が再会したときの様子としてハイタッチに見せかけて下手投げになる場面を描写したり、ショートネタもはさみこんで観客を楽しませた。

●ストレイテナー

「ストレイテナーというバンドは、今年25年目に入っておりまして。日本を何周もしてきたんですけど、まだまだこうやって自分たちの作る音楽を届ける、届いている相手が見えるわけなんです。ライブって、まだまだやめらんないなって」

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ライブ中にそう語ったのは、ストレイテナーのボーカル&ギター、ホリエアツシ。1曲目「From Noon Till Dawn」の一節「地が果てるまで行け この世界の終わりまで まだ題名のないストーリーは そこで始まるんだ」然り、25年という時間が経ってもなお若々しくて鋭い音を鳴らし、新しいファンをとりこみ続けている理由は、音楽を介し、聴き手に常に新鮮さを与えようとチャレンジしているからだろう。きっとこの日もストレイテナーを初めて聴いてファンになった10代、20代は多いはず。

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3曲目「シンデレラソング」が圧倒的な支配性をもって演奏されたと思えば、続く「シンクロ」「彩雲」は気持ち良いメロディラインを響かせ、野外というシチュエーションに溶け合っていく。あらためてストレイテナーの爆発力と美しさが実感できた。

●梅田サイファー feat.とろサーモン久保田かずのぶ
「歴史ある場所でサイファーをやりたい」

本番直前のリハーサルで、梅田サイファーのKZは「今日一番、ヤバい時間やったって記憶、作りましょう」と呼びかけた。そして言葉通り、ヤバいパーティーがこの時間に繰り広げられた。

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大阪駅周辺でおこなわれていたフリースタイルラップ(サイファー)から派生した同ラップユニット。即興はもちろんお手のもので、「こういう歴史のある場所なので空気を感じ取りながらサイファーをやりたい」と、4曲目には代表曲「マジでハイ」のリズムに乗って各クルーが思いおもいのリリックを口に。スペシャルゲストの久保田かずのぶ(とろサーモン)も参戦し、「新大阪に着いたら 俺にサインを求めたやつが言った 『シソンヌの長谷川さん』 だから俺はこう書いた 『シソンヌ長谷川』」とボヤきラップで会場を爆笑させた。久保田かずのぶは「ちゃんとラッパーとして(ライブに)呼ばれたんで(芸人として)もう終わりです、俺は」と嘆いたが、高く評価されるラッパーとして腕をしっかり見せてくれた。

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また梅田サイファーが『音楽爆弾』のために書き下ろした楽曲も初披露。野性爆弾のふたりが提案したワードを入れこんで作ったそうで、「ボリューミーはるみ」など不可解なワードが連発しながらもドープな曲調が格好良い逸品だった。

●打首獄門同好会「野性爆弾さんとの絡み方が分かりません」

寒くなる時間帯にノースリーブで登場して「空気が読めていませんでした、寒いです」、さらに野外のため「花粉で目と鼻がコンディション悪い」などボロボロになりながらも、「今はアドレナリンで持っています」と叫ぶのは打首獄門同好会のギター&ボーカル、大澤敦史。

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体を温めるためにメンバーと観客全員でスクワットをしながらパフォーマンスする「筋肉マイフレンド」、「1年に1回、やるかやらないかの曲を持ってきました」と花粉症のつらさを歌にかえたレア曲「失われし平和な春の日よ」など、演奏曲にそのまま「現在の心境」があらわれていて迫り来るリアル感があった。

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「『音楽爆弾』という番組のフェスということで......すみませんね、出演したことがないんですよ。なんでオファーをくれたんだろうって。野性爆弾さんと初めて挨拶しました。まだ絡み方が分かりません」という大澤敦史のセキララなMCも秀逸なれば、「あっさり最後の曲にいきますよ」と「日本の米は世界一」で爆アゲさせるだけさせてステージを去るサッと潔さも、いかにも打首獄門同好会らしかった。

●ゆりやんレトリィバァのカオスネタ「エアハムスターショー」

この日もっとも狂気的な時間となったのがお笑い芸人、ゆりやんレトリィバァのネタ時間。生き物らしきものがなにも入っていない透明のケースを持ってきて、「エアハムスターショー」と称して仮想のハムスターをひたすら可愛がるという内容だ。

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エアハムスターをケースの外へ取り出して腕や肩の上を這わせたり、頭に乗せたり。さらに「危険な大技」としてエアハムスターを丸呑みして吐き出すという芸まで披露。

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約5分「エアハムスターショー」をやり終えたゆりやんレトリィバァは最後に、「本当のエアハムスターは私たちなのかもしれません」と意味深なメッセージを投げかけた。ネタ後、とろサーモンの久保田かずのぶが再登場し、「あんなネタすんなよ。聞いたぞ、リハーサルも40分したって。狂っとる!」と驚愕した。

●キュウソネコカミ「おい男、声小さいんじゃ! 女子ども、お前ら最高だ!」

じっと座っていられないほど寒くなったこの時間帯。本番直前のリハーサルに登場したキュウソネコカミは、「一番シンプルな曲で体を温めてみる?」と三三七拍子のリズムを演奏。さらに「リハで声出せー」と煽るヤマサキセイヤ。そして「そのままライブやってもいいですか?」と、本来であればリハ後は一度、ステージ袖に引っ込むところを一気にライブ本編へ突入。寒さのなか、観客を待たせないスピード感と臨機応変さ。これぞキュウソ、という勢いに一気に飲み込まれた。

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キーボード&ボーカルのヨコタシンノスケが「最後に受け取った爆弾、ここで爆発できるか?」と呼び掛ければ、ヤマサキセイヤも「『ONBAKU!』熱くなろうぜ」と熱を大量放出。1曲目「ビビった」から圧巻の仕上がりだ。

「ファントムヴァイブレーション」では「スマホはもはや俺の臓器」のコールアンドレスポンス、「DQNなりたい、40代で死にたい」ではひたすらしつこく「ヤンキー怖い」と観客に歌わせる。ヤマサキセイヤは「おーーい、男! お前らの声が小さいんじゃ。負けてんじゃねーぞ。女子ども、今んとこお前ら最高だ」「今、リアルタイムでヤンキーのやつもいるはず。でも大丈夫、そいつらも一度は先輩ヤンキーにやられたことがある」など笑わせまくった。

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寒空もなんのその。限界点を突破する、キュウソネコカミの超ハイテンションなライブは感動すら覚えた。

●テナーのホリエが顔を弛ませ、キュウソのセイヤが"風船"をかぶる

『ONBAKU!』は、各出演者のライブパフォーマンスだけではなく、NANIWAすくーるずの「アーティストを根絶やしにする」という野望の行方もポイントのひとつだ。

ライブパフォーマンス後には、NANIWAすくーるずとその部下であるマッチョ2人組が、出演者とゲームで対決。その勝敗によって、そのアーティストが始末されるか、助かるかが決まるというものだった。

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トップバッターのHump Backは問答無用に始末され、ステージ上に残されたのはメンバーの悲鳴のみ。2番手のZiDolは、くっきー!自作の絵描き歌にあわせてイラストを描き、正解を出せば助かるはずだったが、「アイスクリームがありまして、大きい口でいただきます、山で食べようか、湖か、その前に穴ボコ埋めましょか、ゴマ、ゴマ、あっという間に完成」という不可解な内容に翻弄されて全滅(正解は、鳥のくちばしが顔のぎりぎりまで迫ってきている人の絵)。ストレイテナーのホリエアツシはスマホのスロー撮影の機能を使い、顔を横に振る動画のおもしろさで競い合い、アーティストイメージをかなぐり捨てて挑むも、くっきー!に敗北した。

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魔の手から逃れたのは、梅田サイファー。大人のグッズをかぶって風船のように膨らませている間にJR大阪環状線の駅名をいくつ言えるかというゲームで勝利した。打首獄門同好会も同じく逃げ切って生還。ゆりやんレトリィバァも、顔写真が表示された芸人たちが「未来人かどうか」を当てるゲームにのぞんで逃げ切った。キュウソネコカミはヤマサキセイヤが、大人のグッズをかぶって風船のように膨らませ、どれだけ大きくできるかをくっきー!と競って撃破。

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ラストは、生き残った出演者でBEGIN with アホナスターズの「笑顔のまんま」を歌い上げ、その歌の力でNANIWAすくーるずを正気へと戻した......と思いきや、キュウソネコカミのギター、オカザワカズマがなぜか刀を持ってNANIWAすくーるずに襲い掛かり、くっきー!の相棒であるぽんぽ娘を斬りつけたことで、音楽への恨みが再燃。キュウソネコカミのヤマサキセイヤは「明日は、明日はどうなるんや」と、結末は開催2日目へと持ち越された。

取材・文:田辺ユウキ
(C)ONBAKU!FES.2023


2日目(3月5日(日))ライブレポートはこちら




(2023年3月22日更新)


Check

『セキスイハイム近畿 presents ONBAKU!FES. 2023』

▼3月4日(土)・5日(日)

大阪城音楽堂

【4日(土)】
[出演]Hump Back/ストレイテナー/打首獄門同好会/キュウソネコカミ/梅田サイファー(※R-指定は出演致しません)/ZiDol
[ゲスト]久保田かずのぶ(とろサーモン)/ゆりやんレトリィバァ
[司会]野性爆弾/大抜卓人

【5日(土)】
[出演]KEYTALK/Hakubi/KANA-BOON/ヤバイTシャツ屋さん/ジュースごくごく俱楽部
[ゲスト]COWCOW/見取り図
[司会]野性爆弾/大抜卓人


Set List

3月4日(土)

Hump Back
01. 拝啓、少年よ
02. LILLY
03. ひまつぶし
04. 番狂わせ
05. ティーンエイジサンセット
06. 僕らの時代
07. 僕らは今日も車の中

Zidol
01. today is まにまに
02. 似非デレラ

ストレイテナー
01. From Noon Till Dawn
02. 宇宙の夜 二人の朝
03. シンデレラソング
04. シンクロ
05. 彩雲
06. シーグラス
07. Last Stargazer

梅田サイファー
01. KING
02. かまへん

打首獄門同好会
01. ニクタベイコウ!
02. 筋肉マイフレンド
03. 死亡フラグを立てないで
04. 失われし平和な春の日よ
05. カンガルーはどこに行ったのか
06. 地味な生活
07. 日本の米は世界一

キュウソネコカミ
01. ビビった
02. ファントムヴァイブレーション
03. 推しのいる生活
04. DQNなりたい、40代で死にたい
05. The band
06. 私飽きぬ私