須田亮太(ナードマグネット)×藤島裕斗(Subway Daydream) スプリット7インチリリース記念、相思相愛対談 ―後編―
4月13日(水)にリリースされる、ナードマグネットとSubway Daydreamのスプリット7インチ『Re:Action』。盤面には、それぞれのリード曲とお互いのバンドの楽曲をカバーした2曲が、N面S面それぞれに収録されている。収録曲は、ナードマグネット(以下、ナード)が『アナザーラウンド』とカバー曲『Dodgeball Love』、Subway Daydream(以下、Subway)が『Yellow』とカバー曲『いとしのエレノア』。ぴあ関西版WEBでは、リリース情報解禁日(3月28日夜)に、須田亮太(vo&g)と藤島裕斗(g)のコンポーザー対談を敢行。前編では、2組の出会いやお互いの印象、ナードマグネットの『アナザーラウンド』について語ってもらった。そして後編では、Subway Daydreamの新曲『Yellow』と、お互いのカバー曲、MV、リリース記念ライブについての話をたっぷりと聞いた。対談中、終始マスク越しでもわかるほどの笑顔を浮かべていた藤島。全身から喜びが溢れ出ていた。須田にとっても、Subwayとの出会いは大きな救いになっていたというので、まさに出会うべくして出会った両バンドと言えるのではないだろうか。相思相愛対談の後編、ぜひお楽しみいただきたい。
ずっと大好きなバンドと作品を出せるので
リスペクトの気持ちを曲に詰めたい(藤島)
――次はSubway Daydreamの『Yellow』のお話を聞きたいと思います。
藤島 「『Yellow』の曲の原型は、かなり前からありました。バンドを始めて1年ほど経ったタイミングで、自分が好きなジャンル以外の音楽も幅広く聴かないといけないみたいなフェーズが来て、広い年代、広いジャンルの音楽を意識的に聴いていたんですけど、ちょっと疲れてくる瞬間もあって。俺がほんまに好きなのはどんな曲やろと考えて、元々好きなスーパーチャンクを聴いた時、“スーパーチャンクみたいに力強くて前向きになれる、でもどこか弱々しさもある曲を作りたいな”と思って。で、2021年初めに『Yellow』を書き始めました」
――なるほど。
藤島 「『Yellow』という曲名は最初からあって。書いた当初は“雲の切れ間の太陽のイエロー”というイメージで、音楽活動をやる上での想いみたいな、結構熱い歌詞を書いてたんですけど、ボーカルのたまみちゃんが歌うにしてはちょっと自分の要素が強すぎるなと思って、書き直そうと。でもタイトルは『Yellow』にしたかったので、いろいろ映画とか見てたら、スクールバスってイエローやなと思って。青春っぽい歌詞に書き換えたら、たまみちゃんの歌声にハマって喜んでたんです。でもちょうどそのタイミングで、ナードマグネットがシングル『DETENTION』をリリースして、そのジャケットがスクールバスだったんですよ。“なんかやられた!”と思って。本当は夏頃出せる予定だったんですけど、今出したら被りすぎるなと思ってたら、その直後にスプリットの話が確定したので、“じゃあ逆にピッタリやん!”となって。そこからナードとのスプリットにふさわしいように、よりギターを歪ませるアレンジをしました」
――ナードに寄せたアレンジをされたんですね。
藤島 「ずっと大好きなバンドと作品を出せるので、リスペクトの気持ちはやっぱり詰めたいなって。『Yellow』のイントロはナードの『爆発しそう』のイントロのドラムフレーズを拝借しました。<バスは今日も遅れてる>という歌詞は、『透明になろう』の<電車は今日も遅れている>に言い回しを近づけて。個人的なナードマグネットのオマージュを詰めています。最終的にスプリットにふさわしい良い曲になったと思います」
――須田さんは気付いてました?
須田 「もちろん! 最初聴いた時から“あっ!”て」
藤島 「バレてた(笑)。スプリットの話を受けて肉付けしていったので、この話がなかったら全然違う曲になってたかもしれないです」
――先ほどYouTubeでミュージックビデオも公開されました。同じシチュエーションをそれぞれの視点で分けて撮られたのでしょうか。
須田 ・ 藤島 「そうですね」
須田 「僕の地元・滋賀のイタリアンレストランを借り切って、撮影させていただきました。画面で見たら、右側にSubwayの機材を、左側にナードの機材を置いて、真ん中で主演の2人が演技して。ナードパートとSubwayパートを同時進行で撮影しました。監督の加藤マニさんも1日に2本分撮るのは初めてで(笑)。しかもSubwayのパートを撮影してる間に、ナードは別のところでアー写の撮影したりね。かなりタイトな1日でした」
――雪も降ってましたしね。
藤島 「めちゃめちゃ寒かった」
須田 「『アナザーラウンド』は男の子の視点、『Yellow』は女の子の視点のカット割りになってます。両方見比べてもらうことで、より2人の気持ちが分かるといいなと思います」
――見てほしいポイントはありますか?
須田 「僕は最後のバスの中の映像がすごく好きです。あれ、バスが走ってるように見えるじゃないですか。実は全く動いてないんですけど、街灯が流れてる感じを出すために、外側から人力でライトを流しているという(笑)。それで雰囲気のある画になってます。あれはおもしろかったね」
藤島 「本当に(笑)」
須田 「1日で全部やらなあかんかったから、そんなに凝ったこともできなくて」
――藤島さんは見どころはありますか?
藤島 「『アナザーラウンド』のMVに、ちらっとSubwayの機材が映るのが、個人的に嬉しいです!(超笑顔)」
VIDEO
『いとしのエレノア』のアレンジで繋がった、奇跡のシンクロ
――Subwayがカバーした『いとしのエレノア』について、アレンジ面でこだわった部分を教えてください。
藤島 「『そうふくしゅうツアー CRAZY,STUPID,LOVE編』に呼んでいただいた時、僕らがナード大好きということを分かってほしくて、ナードの曲をカバーしようと『いとしのエレノア』を選びました。『いとしのエレノア』は『この恋は呪い』というミニアルバムに入っているんですけど、サブスクにないので、本当にCDを買った人しか聴けない。だからそこからカバーしたかったんです」
須田 「古参マウントや(笑)」
藤島 「そう、古参マウント(笑)。“俺はCD買ってるぞ”って。あとボーカルのたまみちゃんに、『いとしのエレノア』のハッピーな感じが合うなと思って。ライブの時はほぼコピーで、アレンジは大幅に変えずに演奏したんですけど、今回レコーディングするにあたって、“対等にバンドとしてぶつからないと、ナードに失礼や!”という想いはあったので、結構ガラッと変えようと思って」
――いいですね。
藤島 「僕がナードから影響を受けているのは、音楽性はもちろん、音楽の姿勢的なところもそうなんです。ナードマグネットは、曲中に影響を受けた音楽の要素を、敢えて全面的に出す。一聴して“あれ、この曲のギターってあの曲じゃない?”みたいな分かりやすいオマージュを、『いとしのエレノア』のカバーでもやりたいって。で、さっき須田さんも話してたザ・マフスが、僕も元々好きで、須田さんが大好きやというのは知ってたので、ザ・マフスらしいフレーズをぶち込んだら、バッチリハマった感じです」
須田 「何も知らずに、送られてきたエレノアのカバーを聴いたら、イントロで涙が出てきて。自分のここ数年のマフスモードの気分とシンクロしてて、マジか! と(笑)」
藤島 「須田さんには、特に何も言ってなかったんです。なので僕も『アナザーラウンド』がザ・マフスみたいな曲と聞いた時はビックリしました」
――運命的なシンクロですね。
藤島 「そうなんです。でもちゃんとSubway Daydreamの曲として成り立つよう、バランスも意識して作りました。あとは個人的に僕が大好きなバンドの要素を取り入れてみたり。ザ・マフス好きな方だったら、多分イントロで“おっ”となりますよ」
須田 「2秒ぐらいでわかる(笑)」
藤島 「わははは!(笑)」
奇跡のシンクロ第2弾。『Dodgeball Love』と『Yellow』は
ゲット・アップ・キッズの『Action & Action』がテーマ
――今度はナードがカバーした『Dodgeball Love』について。先ほどのインスタライブでは、演奏が難しかったとおっしゃっていましたが。
須田 「テーマはゲット・アップ・キッズです(笑)。Subwayのライブで『Dodgeball Love』を見て、Cメロに差し掛かった時にピンと来て。あの部分をちょっと変えるだけで、ゲット・アップ・キッズの『Action & Action』のイントロみたいになるなと思って。じゃあそのままやっちゃおうと(笑)」
藤島 「やり方が一緒や(笑)」
須田 「僕らカバーをする時に、色んな要素を寄せ集めるんです。例えばアルバム『透明になったあなたへ』に収録した『Song For Zac & Kate』という曲は、オーストラリアのThe Wellingtonsの来日ツアーの思い出を歌った曲なんですけど、彼らのオリジナル曲を日本語でカバーしてるんですね。ただカバーするだけだと面白くないから、The Wellingtonsの他の曲の要素をたくさん入れてみたんです。今回もゲット・アップ・キッズの他の曲の要素も引っ付けて1曲にまとめようと」
――ふむふむ。
須田 「で、ある程度レコーディングが進んだ段階で、焼き肉屋さんで“タイトルどうしよう”という話をした時に、“俺のテーマはゲット・アップ・キッズやねん”って制作途中の音源を聴かせたら、さっき彼はスーパーチャンクと言ってましたけど、“実は『Yellow』もゲット・アップ・キッズの『Action & Action』を参考にしてるんです”って」
――ええ!?すごい!
藤島 「ゲット・アップ・キッズの『Action & Action』って最高のイントロなんです。印象的なギターのフレーズから始まるんですけど、須田さんが『Dodgeball Love』をゲット・アップ・キッズ風に料理してるのを知らずに、そのフレーズを僕らも『Yellow』で参考にしていたんです。奇跡のシンクロが起きてる(笑)」
須田 「ほんまに打ち合わせゼロで、ここまで噛み合った」
藤島 「タイトルの『Re:Action』もその流れで、『Action & Action』をお互い違った方法で料理してるから、“アクション”という単語は絶対入れたいねって」
須田 「でもアクションだけやとそのまますぎるから、お互いの音楽に対する“リアクション”という意味にしました」
――すごく意味深いタイトルだったんですね。藤島さんはナードにカバーされていかがでしたか?
藤島 「感動してちょっと泣きました(笑)。俺が書いた詞で、俺が書いたメロディのはずやのに、ちゃんと須田さんの歌になってる。やっぱりすごいなと思いました。欲を言えばライブでいっぱいやってほしい(笑)。BPMも速くて盛り上がりそうですし。お願いします!」
須田 「(笑)」
――5月14日(土)に東京・FEVERで、5月21日(土)に心斎橋・JANUSでライブがありますが、意気込みをお願いします。
藤島 「前回はナードマグネットのゲストという形でのツーマンで、“呼んでくれてありがとうございます”という気持ちが強かったんですけど、今回は一緒にやるという意味で、もちろんリスペクトがありつつも、“先輩負けませんよ”みたいな気持ちで、バチバチな感じでできたらなと思ってます」
須田 「本当にこういうバンドが出てきてくれたことがすごく嬉しいし、自分の励みにもモチベーションにもなるんですけど、僕らはダサいことはやれないなと思ってしまうので、カッコ良くあらねばというプレッシャーがすごいです(笑)。ライブまでにはしっかり仕上げていきたいですね。あと、7インチもぜひ。僕らアルバムはLPで出してましたけど、7インチは初めてなので。レコード聴けなくてもダウンロードコードが付いているし、可愛いので手に取ってほしいです。7インチはDJの方がかけてくれるイメージなので、色んなロックな曲が流れる場で使ってほしいです」
Text by ERI KUBOTA
Photo by うつのみや
(2022年4月12日更新)
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