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“どんなに困難な状況でも、愛を持って笑顔で接すれば、
全て乗り越えていける”。クイーン他の名曲カバーも収録した
ジャズシンガーKeiko Leeが唱える素晴らしき人生の黄金律
『The Golden Rule』インタビュー&動画コメント

 ジャズシンガーとして20年以上にわたり第一線で活躍し、国内外で高い評価と人気を確立しているKeiko Lee。12月4日にリリースされた2年ぶりのニューアルバム『The Golden Rule』では、その存在をジャズファン以外にも幅広く浸透させた『We Will Rock You』と新録『Another One Bites The Dust』というクイーンのナンバー2曲、さらにスティーヴィー・ワンダー、ホイットニー・ヒューストン、キャロル・キングなど、70~80年代のAOR、ディスコ、ソウルナンバーのカバーを中心に収録され、あの唯一無二の“ディープ・ヴォイス”で、自身が10代から親しんできたジャンルを超えた楽曲群を深くしなやかに歌い上げている。また、表題曲を含む2曲のオリジナル曲もAOR感漂うサウンドやエレクトロポップのアレンジ/リミックスが施されており、聴く人によってはかなり新鮮な印象を受けるのではないだろうか。刺激的なサイケデリックアートのジャケットも目を引く今作のリリース記念ライブは、関西では3月23日(月)・24日(火)ビルボードライブ大阪で開催。’20年にはCDデビュー25周年を迎える彼女が、新作にまつわる興味深いエピソードから、自身の糧となり支えとなってきたミュージシャンたちへの愛と尊敬の念をフランクに語ってくれたインタビューは、その(意外な)音楽的なルーツとジャズスピリッツに触れた貴重な時間となった。

 
 
アンサンブルというものは、思いやりと愛情と尊敬がないと成り立たない
 
 
――今作では80年代のAOR、ディスコ、ソウルナンバーを中心にカバーをされていますが、選曲はどのように?
 
「オリジナルの2曲以外は、私が10代の頃からよく聴いていたなじみがある曲を中心に選曲しています。『Timeless 20th Century Japanese Popular Songs Collection』(’17)も70~80年代にかけての選曲だったんですけど、その洋楽版という感じですね。(レコーディングした)バンドメンバーは60代の方々なんですが、当時からその時代を支えていた重鎮なんです。“今回は僕らの青春時代に聴いていた音楽を作ろうじゃないか”という話になって、携帯やスマホもまだなかった時代でしたが、のんびりといい音楽に触れたり映画を観たりという当時を知っている方にとっては、その頃の風景や匂いを思い出してもらえるような曲ばかりだと思います」
 
――AOR的なアンサンブルを中心にしつつ、オリジナル曲の『The Flame』(M-4)なんかは80年代のエレポップ(=エレクトロポップ)を思い出すようなリミックスがいいですね。
 
「Dimitri( From Paris)さんにリミックスをお願いするときに、サンプルとして80年代前後に流行っていたエレクトロサウンドを送ったんです。その雰囲気を汲んでくださって、とても満足する仕上がりにしてくださいました。当時のデジタルサウンドは今聴くと、ちょっと温かみのあるシンセの音に胸がキュンとするようなサウンドですよね。『Don't you Worry 'Bout A Thing』(M-2)の途中で入ってくるシンセの音なんかも、まさに70年代のアナログシンセみたいな雰囲気を持った音で。野力奏一(p&key)さんが当時の音を探したり、作ってくれたりして素敵な音色になっています。その時代に生きてきた彼らならではの本物の音色なんですよね」
 
――当時を知っている方は懐かしく感じると思いますし、近年再評価されているシティポップブームで、70~80年代の曲に触れるようになったリスナーにもぜひ聴いてほしいですね。あと、『We Will Rock You』(M-11)と『Another One Bites The Dust』(M-8)と、クイーンのカバーも2曲収録されていますね。
 


「『Another One Bites The Dust』は今回新たに録音しました。『We Will Rock You』は’01年にカバーした当時のものが入っていて、アナログ盤ではT-Grooveさんのリミックスで、よりディスコっぽいサウンドになっていますので、その違いも楽しんでいただけたらと思います」
 
――オリジナルの表題曲『The Golden Rule』(M-3)には、ジャズレジェンドの渡辺貞夫(Sax)さんが参加されています。貞夫さんは86歳でいまだに第一線にいらっしゃるのも本当にすごいなと。
 


「『The Golden Rule』を作曲している途中に貞夫さんのアルトサックスが頭をよぎったので、お願いしたら快くOKしていただいたんです。貞夫さんはビートルズのカバー集『Keiko Lee singles THE BEATLES』(’14)でも2曲参加していただいたのですが、今回は自分のオリジナル曲で吹いてくださったので、私の音楽人生の中でもとても大切な1曲になりました。深みがある音色で、5年前ともまた違って…ちゃんと艶やかでもあり、本当に素晴らしいです。さすがレジェンドだなと思います」
 
――この曲もちょっと懐かしいようなAORの感触で。
 
「この曲に70~80年代のAORっぽい空気感を感じてもらえるのは、とても嬉しいです。私の音楽のルーツはその辺りなので、やっぱり出てきちゃうんですよね。作曲するときに貞夫さんのサックスが頭に浮かんだのも、その当時の貞夫さんの音が体に染み付いていたからかもしれません。バンドメンバーもそれをキャッチして、ああいうアレンジにしてくれたんだと思います。レコーディングを終えて、“いや~懐かしいなあ、70年代とか80年代にタイムスリップしたみたいだな”って、貞夫さんもニコニコ顔でおっしゃってくださいました」
 
――Keikoさんの歌声もそうですし、プレイヤーの皆さんの演奏も、年齢を重ねてきたからこそ醸し出される深みと優しさが感じられます。
 
「やっぱりアンサンブルというものは、思いやりと愛情と尊敬がないと成り立たないと思うんですよね。今回のアルバムは、そこのバランスがすごくいい感じで反映されていると思います。みんなのサポートがあって作品ができているんだなと、年々身に沁みて感じます。ありがたい=“有ることが難しい”じゃないですか。本当にそう思いますね」
 
――今作では2曲でデュエットされていますが、このお相手は? 
 
「岡沢章(b)さんです。いつもステージではコーラスをやってもらったり一緒に歌ってもらったりするんですけど、今回は彼の素晴らしい歌声をフィーチャーしたいと思ってお願いしました。ソウルミュージックが体に根付いている方で、意外とああいう歌い方をするシンガーがいないんですよね。本当に稀有な声の持ち主です」
 
 
私たちの魂と共にお客さまに音楽を伝えるのがライブ
 
 
――『The Golden Rule』というアルバムタイトルは、どのような想いから付けられたのですか?
 
「『The Golden Rule』=黄金律は、“自分がしてもらいたいことを他人にもしましょう”というような意味ですよね。この曲の歌詞は『The Flame』も書いてくれたDonny Schwekendiekというアメリカ人のピアニストに書いてもらったんですが、彼ともそういう話をしました。この曲のサビで、“どんなに困難な状況でも、愛を持って笑顔で接すれば、全て乗り越えていける”というようなことを歌っていますが、自分にもそういうことを心がけて生きていこうと言い聞かせるような想いも込めています。それもあって、アルバムタイトルは『The Golden Rule』以外思い当たらなかったんです。覚えやすいし、私の想いを込めたアルバムの内容にも沿っているのかなと思って」
 
――今まで以上にこれまでのことも振り返りながら制作されたのですか?
 
「来年でCDデビューして25年なんですけど、この後、何枚音源を残せるのかなと考えると、本当に1枚1枚大事にしていかないといけないなと、前よりもさらに思うようになりました。いつどうなるか分からない世の中ですし、今のところはこうして元気でいられることに感謝しています」
 
――6年前のぴあ関西版WEBのインタビューでは、「私自身はジャズシンガーだとか、全く思っていなくて」とおっしゃっていたのが意外だったのですが。
 
「私は若い頃からジャズ界の先輩に育て上げられたので、ジャズミュージシャン・スピリッツはやっぱり根付いてるんだなと、最近は思います(笑)。うちのメンバーも、“俺たちはジャズミュージシャンじゃないから”って言うんですけど、ここは(胸をたたいて)、そこでつながってるし」
 
――ジャズスピリッツが軸としてあると?
 
「それ“も”あるというか。偉大な先輩方から本当にいろんなことを教えてもらったので。例えばデビュー間もない頃、故・宮沢昭(Sax)さん(※越路吹雪の専属バンドなどに在籍)に、“それ以上うまくなったらダメだよ”と言われたんです。当時の私なんてまだ何にも歌えていなかったし、自分の思うようなフレーズも出てこない時期だったので、“宮沢さん、何をおっしゃるんですか?”とお聞きしたら、“あんまりうまくなると、音楽は嫌味になるからさ”って。それ以降、私は自分がおかしな方向に行きそうだなと感じたときは、その言葉を思い出して音楽に真摯に立ち向かうようにしています。慣れてくると、テクニックだけでその場をしのいだり、ひけらかすようなことをしてしまいがちなので…その言葉がずっと私の中の支えになっていますね」
 
――Keiko Leeさんの歌声が“ディープ・ヴォイス”と称される理由が改めて分かったような気がします。テクニックだけではなく、深いジャズスピリッツがあるからこそだと。
 
「実は自分では“ディープ・ヴォイス”だと思ってはいないんですけどね。(カバー曲で)キーの設定をするときに、“私、オリジナルの男性より低いな…”と思うぐらいです(笑)」
 
――そして、今作のリリース記念ライブが、3月23日(月)・24日(火)ビルボードライブ大阪で開催されます。
 
「今回も私のレギュラーバンドであるレコーディングメンバーと一緒にやります。私たちの魂と共にお客さまに音楽を伝えるのがライブなわけですから、私たちがまず楽しむことですよね。このアルバムを作っているときも楽しかったですけど、皆さんに体を揺らして踊ってほしいですね。もちろん、心の中で踊ってもらってもいいです(笑)。大人の方から若い方まで聴きに来てもらいたいです」
 
――大阪でのライブはどんな印象ですか?
 
「大阪はすごくやりやすいですね。お客さまの高揚感がステージにも伝わるし、熱い方が多くて、いつも嬉しいです。ライブは日常を忘れられるところで、私たちは皆さんに夢を与えて素敵な世界に誘う、そういう役割だと思っています。特にビルボードのような会場では、自分なりのオシャレを楽しんで来てくだされば、さらにモチベーションも上がるのではと。ジャズって難しいとか、分からないというイメージがあるかもしれませんが、今回は多分、一度は耳にしたことがある曲ばかりだと思うので、楽しみに来てくださると嬉しいです!」
 
 
Text by  エイミー野中



エイミー野中さんからのオススメ!
 
「今まで直接お会いする機会がなかったので、いったいどんな方なんだろう? と、緊張気味で臨んだ今回のインタビュー。結果的に、取材から現在に至るまでとても素敵な余韻に浸っています。1時間足らずのインタビューではまだまだお聞きできてないこともたくさんありますが、前よりもっとKeiko Leeさんの歌が聴きたくなりました。これまでもジャズの枠を超えたカバー曲を歌ってきているKeiko Leeさんですが、今作『The Golden Rule』から流れてくるのは80年代の洋楽中心。クイーンの『We Will Rock You』はCM曲として世に知れ渡っていますが、ホール&オーツ、ドナルド・フェイゲン、ホイットニー・ヒューストン、スティーヴィー・ワンダー、キャロル・キングなど、“え、こんな曲を!?”という驚きが詰まった選曲なのです。中には、80年代初期のエレクトロ・ポップフレーバーをまとったオリジナル曲『The Flame』もあったりして(個人的に特にお気に入り!)。そのどれもが、Keiko Leeさん自身が10代から親しまれてきた楽曲ばかりということで、年月をかけて大切にしてきた楽曲に対する愛情やいろんな想いが込められたボーカリゼーションに惹きこまれます。そして、AOR~ソウルミュージックまでしなやかに心地よく奏でられる上質のバンドサウンドにも。容易に時代やジャンルを超えられる今のサブスク世代にもぜひキャッチしてほしい! そして、音源だけでなく、生のステージでもKeiko Lee さんの唯一無二の“ディープ・ヴォイス”に包みこまれてほしいです!!」

(2019年12月27日更新)


Check

Movie

CDにアナログに大阪でのライブを語る
Keiko Leeからの動画コメント!

Release

クイーン他70~80年代カバーを含む
新作にリミックスアナログもリリース

Album
『The Golden Rule』
【初回生産限定盤DVD付】
発売中 3500円(税別)
ソニー・ミュージックジャパン
インターナショナル
SICP-31303~4

【通常盤】
発売中 3000円(税別)
SICP-31305

<収録曲>
01. I Can't Go For That
02. Don't You Worry 'bout a Thing
03. The Golden Rule featuring 渡辺貞夫
04. The Flame
  [Remixed by Dimitri From Paris]
05. I.G.Y.
06. Overture to You Are Everything
07. You Are Everything
08. Another One Bites The Dust
09. Now You Are Not Here
10. All At Once
11. We Will Rock You
12. You've Got A Friend
13. Sweet Love

<DVD収録内容>
01. We Will Rock You [Video Clip]
02. The Golden Rule featuring 渡辺貞夫[Video Clip]

 

7inch
『Another One Bites The Dust
(with T-Groove & Yuma Hara)/
 We Will Rock You(T-Groove Raw Mix)』
【完全生産限定盤】
発売中 2000円(税別)
ソニー・ミュージックジャパン
インターナショナル
SIKP-1001

<収録曲>
Side A: Another One Bites The Dust
(with T-Groove & Yuma Hara)
Side B: We Will Rock You
(T-Groove Raw Mix)

Profile

ケイコ・リー…'95年のデビュー作『イマジン』以来、ライブ盤、ベスト盤を含む23枚のアルバムをはじめ、多くの作品をリリースしている。存在感のある“ディープ・ヴォイス”が評判を呼び、共演したミュージシャンから「楽器と対等に渡り合える歌手」と絶賛され、その即興生と瞬発力にすぐれたパフォーマンスの評価は高い。’01年、日産ステージアCMソング『We Will Rock You』の大ヒットで幅広いファンを獲得。翌年発表したベストアルバム『ヴォイセズ』は累計25万枚のヒット作となった。’03年、スイングジャーナル誌主催『日本ジャズメン読者人気登場』では女性ヴォーカル部門の第1位(13年連続/通算15回)に加え、総合部門の頂点でもある『ジャズマン・オブ・ザ・イヤー』『アルバム・オブ・ザ・イヤー』の三冠の快挙を達成。アルバムデビュー10周年を迎えた’05年には、長年の活動を支えてきたファンの声を反映したベスト盤『ヴォイセズ・アゲイン』をリリース。’12年、国内外5人の男性ヴォーカリストのデュエットで話題となった『ケイコ・リー・シングス・スーパー・スタンダーズ2』をリリース。その他CM楽曲、TVドラマ主題歌などオリジナルの作曲にも定評があり、また多重録音のヴォーカルアレンジも自ら手掛ける等、多方面にて多彩な才能を発揮している。そして国内はもとより香港・台湾・韓国などアジア地域でも人気を博し、セールスも好調。実力・人気ともにNo.1ジャズ・ヴォーカリストとして国内外でその地位を確立している。’15年にはレコードデビュー20周年を迎え、記念アルバム『LOVE XX』を発売。生誕100周年を迎えたビリー・ホリデイとのヴァーチャル・デュエットも収録され話題に。同作はジャズ・ジャパン・アワード 2015『アルバム・オブ・ザ・イヤー<ヴォーカル部門>』を受賞。’17年、日本の名曲を歌い上げたカバーアルバム『Timeless 20th Century Japanese Popular Songs Collection』を発売。’19年12月4日には、2年ぶりのアルバム『The Golden Rule』とリミックス7インチ・アナログ盤『Another One Bites The Dust (with T-Groove & Yuma Hara)/We Will Rock You(T-Groove Raw Mix)』を同時発売。’20年にはCDデビュー25周年を迎える。

Keiko Lee オフィシャルサイト
http://www.keiko-lee.com/

Live

レコーディングメンバーと共に回る
ツアーでビルボードライブ大阪へ!

 
『「The Golden Rule」
  リリース記念ライブ』

【愛知公演】
チケット発売中
▼12月29日(日)18:00/20:45
名古屋ブルーノート
ミュージックチャージ8700円
[メンバー]野力奏一(p&key)/岡沢章(b)/
渡嘉敷祐一(ds)/吉田サトシ(g)
名古屋ブルーノート■052(961)6311


【東京公演】
チケット発売中 Pコード169-437
▼2月6日(木)18:30/21:30
ビルボードライブ東京
自由席8700円
[メンバー]野力奏一(p&key)/岡沢章(b)/
渡嘉敷祐一(ds)/吉田サトシ(g)
ビルボードライブ東京■03(3405)1133
※未就学児童入店不可。18歳未満・高校生は成人の同伴にて入店可。チケット購入後、手元にチケットを用意の上、問合せ先まで要連絡(入場整理番号決定)。

チケット情報はこちら

 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード169-306
▼3月23日(月)・24日(火)18:30/21:30
ビルボードライブ大阪
自由席8700円
[メンバー]野力奏一(p&key)/岡沢章(b)/渡嘉敷祐一(ds)/吉田サトシ(g)
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※本チケットに整理番号はございません。ご希望の方は発券後、お問合せ先まで要連絡。当日は整理番号順でお席へご案内しておりますが、整理番号をお持ちでないお客様は開場時間の30分後のご案内となります。カジュアルエリアの取り扱いなし。未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。

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