「いくつになっても挑戦できるし、いくつになっても夢は見られる」
cinema staff×アルカラのヤバい夏、始まる――!
音と魅力が響き合う『undivided E.P.』引っ提げ絶賛ツアー中の
飯田瑞規&稲村太佑が語るインタビュー&動画コメント
今年4月1日、cinema staffとアルカラが活動を統合し新バンドを発足、インターネット黎明期にバンドのHPの定番となった“魔法のiらんど”を用いたオフィシャルサイトまでローンチと、エイプリルフールならではのユーモアでシーンをざわつかせた2組が(笑)、6月には本気のスプリット盤『undivided E.P.』をリリース。新曲にカバーに共作にと、全編にリスペクトとプライドの詰まった全5曲を収録した同作は、培ってきたキャリアをスクラップ&ビルドするようなチャレンジ精神と、大の大人がまるで少年のようにロックを愛でる歓びに満ちている。10年近い時間をかけてたどり着いたレーベルの垣根を超えたこの刺激的なコラボレーションを、cinema staffの飯田瑞規(vo&g)とアルカラの稲村太佑(vo&g)という両フロントマンが心底楽しそうに語り合う姿を見ていると、この旅の絶景は約束されたようなもの!? 本気で遊ぶcinema staff×アルカラの会心の一撃、ぜひ現場=ツアーに食らいに行っちゃってください!
いかに僕らのライブとか音楽に希望を感じるか
“嬉しい”、“楽しい”、“ワクワクする”かが勝負じゃないですか
――出会いは’09年ということですが、当時O-Crestで初対バンしたとき、お互いの第一印象はどうだったんですか?
稲村(vo&g)「あれはthe storefrontのイベントで…」
飯田(vo&g)「で、the storefrontのギターの竹内亮太郎さんは」
稲村「最近はアルカラのサポートギターをやってもらったりして。僕らは当時20代後半で、ようやく東京で2ケタお客さんが呼べたりイベントに出始めたタイミングだったんですけど、その日はcinema staff目当てに100人近く入ってて、キャーキャー言われてて(笑)。何やねんと思って斜に構えてライブを観てたらバカほどカッコよくて、そらそうやなって思ったのが最初です(笑)。ただね、その日はライブしてすぐに帰らなあかんかったみたいで」
飯田「当時はまだ学生で名古屋に住んでたんですけど、確かテスト期間中だったと思うんで(笑)。その日は日帰りしないとダメだったし結構いっぱいいっぱいで…けど、“ずっと噂に聞いていたアルカラと対バンできた”っていう感覚はありました。その後、’12年にKYOTO MUSEでtricotとスリーマンしたんですけど、そのときはアルカラが打ち上げに出れなくて。翌’13年に自分たちの企画に出てもらって、急速に距離が近くなって」
稲村「自分らのイベントを切り盛りしようという姿勢が伝わってきたし、“打ち上げは名阪2日間のうちどちらかでやろうと思うんですけど、どちらの日がいいですか?”みたいに丁寧な挨拶があったり。僕らは基本的にいつでも呑みたいんで(笑)、“とりあえず初日でやりましょう”とは言ったんですけど、年齢も離れてるし前は打ち上げで喋れなかったのもあったんで、“丁寧にやってるのか、ただ距離を感じてるのか、どっちかな?”って思いながら。でも、その日の打ち上げが始まった瞬間にお互いのダムが決壊したというか(笑)。楽し過ぎて三島(cinema staff・b)が、“今までで一番キレイな打ち上げだ”って(笑)」
飯田「時間も長過ぎず、メンバーも仲良くなって、ちゃんと笑いもアリ、もう完璧な打ち上げでしたもんね(笑)」
稲村「で、翌日も結局、“今日も行かへん?”って(笑)。そこからグッと近くなってイベントとかツアーに呼んだり。とりあえずcinema staffは絶対に出てくれるから遠征のときに誘おうと。だって泊まりやったらまた呑めるじゃないですか?(笑) その辺が今回の話にもつながってくるんですけど、“いつかスプリットとか作ってみたいよね”って言い合って…当時はまだお互いの状況的にそこまで話が広げられなくて。去年、アルカラからメンバーが1人抜けて、“とりあえず目の前にあるツアーを終わらなせなあかん、でも、来年はどうするんやろ? (アルカラ主催の)『ネコフェス』はやれるんかな?”みたいな感覚になるくらいショッキングな出来事だったんですけど、そのときに“スプリットを作りましょう!”って僕らに次の一歩のきっかけをくれたのがcinema staffだったんです。一見スムーズにいったように見えますけど、実現のためにチームで頑張ってくれたんやろうなって。それが胸が熱いというか」
飯田「今年はどうやって進めていこうかと考えてたときに、“アルカラとのスプリットって今なんじゃないか?”と思って。一緒に前に進めるように後輩ながら誘うというか、もうこのタイミングしかないだろうって。で、辻(cinema staff・g)くんから(稲村)太佑さんに話しに行って」
――こういうのはやっぱり辻くんが特攻隊長なんだ(笑)。
飯田「辻くんは太佑さんの舎弟なんで、どこにでもついて行くんで(笑)」
稲村「“大事な話がある”みたいな感じやったから、“こいつ、辞めるとか言ったらどうしよう”と思って(笑)。そしたら、“スプリット…やりたいんですよ”って言うから、すごい嬉しくて。“よっしゃ、じゃあ呑むかあ!”って、その日は細かいデスク作業をしようと思ってたんですけど、辻のせいで後回しになりました(笑)」
飯田「アハハハハ!(笑)」
――さっきcinema staffに対しての第一印象をアルカラから聞きましたけど、cinema staffから見たアルカラはどういうバンドだったんですか?
飯田「とにかくライブがカッコよくて、対バンするたびにセットリストとか空気の作り方をめっちゃ変えるんです。お客さんを冷めさせずに夢中にさせる能力というか…MCにおけるエンターテイナー的な要素もあるんですけど、単純に演奏で持っていく力をすごく感じて、こういうバンドになれたらっていう目標でもあったんで。最近は特に思うんですけど、何組かツアーに誘って実現するのもこんなに大変なのに、『ネコフェス』とか…あれはもう完全にバンドマンがやるイベントだし、ここまで愛されてるバンドってなかなかいないと思うんですよ。あと、単純にアルカラとやると、テンションが上がりますよね(笑)。一緒にいると陽のエネルギーをもらえるというか、前向きになれるところがすごくある。実際、対バンした後のメンバーの雰囲気も変わりますし、いつも“アルカラ、ヤバかった~!”って話しながらスタジオに入ってますよ(笑)。アルカラとスプリットを出すこと自体が、カッコいいと思ったんです」
――それは周りから見てても思います。アルカラが“うん”と言ったんだ! みたいな感覚ってすごいありますね。
飯田「マジでそうなんですよ。太佑さんは打ち上げでもいつも飄々としてるのに、『ネコフェス』について熱く語るのを見て…真面目じゃないとあんなことはできないから、そういうところにも憧れますね」
稲村「いかに僕らのライブとか音楽に希望を感じるか、“嬉しい”、“楽しい”、“ワクワクする”かが勝負じゃないですか。でも、cinema staffは表に見えない地面の下の部分がどう形になってるのか、そういうところにもアンテナが立ってて。多分、彼ら自身もそうなんだと思いますけど、そこを感じ取ってくれるのは…だから、スプリットも何の違和感も異物感もなく、根っこが一緒なんやなって感じる作品になりましたし、そういう答え合わせもできましたね」
本当に愛やなと思って
――今作にはそれぞれの新曲とカバー曲、2組の共作曲が収録されてますけど、お互いにどの曲を入れるかは事前に知らせなかったと。
稲村「カバーに関しては、取材があるギリギリまで知らなかったっていう(笑)」
飯田「“『great escape』(M-4)やってくれたんだ~”と思って聴き始めたら、“え? これが『great escape』!?”って(笑)。ここまで変えられるものなのかと、すごく感動しましたね。完全にアルカラの曲でした。逆に、cinema staffがアルカラのカバーをするなら、『半径30cmの中を知らない』(‘11)『LET・IT・DIE』(‘16)『ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト』(’09)『やるかやるかやるかだ』(’15)とかがピッタリかなと思ったんですけど、最終的にアルカラのお客さんが一番ワクワクする曲にしたくて。曲決めには結構時間がかかったんですけど、やりたい曲があり過ぎるから、『チクショー』(M-3)の中に盛り込めるだけ盛り込みました(笑)。アルカラのお客さんに“cinema staffで間違いなかったでしょ?”って思ってもらうためにも、『チクショー』という選択はよかったんじゃないかなと」
稲村「単純にカバーしたと言うよりは“メドレー”みたいな印象ですよね。そんな想いが溢れた1曲になって…僕と三島がマスタリングのために各バンドを代表して先に聴いたんですけど、聴きながら“もうええって、分かったって!”って、攻められてる感じがすごいなって(笑)。終わると思ったらまた違う曲の終わり方を入れてきたり、本当に愛やなと思って。うちの下上(アルカラ・b)がこれを初めて聴いたときに嬉しくて泣いたらしくて、宅配便の配達の人が来たのに泣き過ぎて出れなくて、不在票を置かれるっていうね(笑)」
――アルカラが『great escape』をカバーする際に心がけたのは?
稲村「僕らが持ってる武器で『great escape』を引き立てるという意味では、このビート感は大事やなと思ったのと、裏で鳴るメロディのちょっとクラシックな要素を、まずはバイオリンで弾いてしまおうと。いきなり違う雰囲気のイントロから始まってバイオリンが出てきたら、そこでまずcinema staffの4人が“おい!”て言うかなって(笑)」
飯田「実際言いましたもん(笑)」
稲村「4拍子の曲を3拍子のワルツにしたら、クラシックな感じがハマったんですよね。ただ、原曲をリスペクトしたかったんで、最終的にどうやって元のアレンジに戻るのかを考えて…デモでは一旦、cinema staffの元の音源を貼り付けてみたんですよ。そしたら、モノマネしてたら後ろから本物が出てきた感じがめっちゃ面白いなと思って(笑)、このアイデアは採用しようと。最後の最後に原曲に返ってきた気持ちよさ=カタルシスがあるのがいいなと思いながらやりました。歌に関しては普通に歌っちゃうと平坦になってしまうから、これをいかに歌いこなすのか…“やっぱり飯田というボーカリストはすごいんだな、天性で持ってるものがあるんだな”って、すごい感じました」
――やっぱり、カバーして改めて分かるバンドの内部構造みたいなものがありますね。
飯田「本当に。まさに俺もですけど、最初は『チクショー』を歌ってても平坦に聴こえちゃってたんですよ。太佑さんの言葉の早さというかリズムで持っていく感じは歌ったことがなかったし、どうやってその面白味を出すか悩みながら…気持ちいいところがどこなのかを探すのは、結構時間がかかりました」
――両者とも楽曲のソリッドさやライブの爆発力に目がいきがちなんですけど、要となるのはやっぱり歌なんだなって、お互いの曲を聴くことで再認識できたところはありますね。
cinema staffは抽象的な歌が多いですけど
根本には誰かの背中を押したい気持ちがあるんですよね
――そして、アルカラの新曲『サースティサースティサースティガール』(M-2)に関しては、サポートに入ってくれた9mm Parabellum Bulletの滝(g)さんが、“新曲を作りましょう”と提案してくれた流れで生まれたと。
稲村「今まではセッションで作ることが主やったんで、スタジオの音の聴こえ方である程度作った上で、実際のレコーディングの段階になって、“え? この音ぐちゃぐちゃやけど合ってる?”みたいなこともあったんです(笑)。けど、アルカラも変わらなあかん時期だったし、いろいろと力を貸してくれるヤツもいたんで、宅録で本番に近いところまで追い込めるようになって。そのやり方で作った曲はこれが初ですね」
――自ずと新しい制作スタイルを試せるタイミングにもなったんですね。
稲村「滝とやるのは決まってたんで、ある程度事前に曲が見えとかなあかんから、“滝善充やったらこういうギターを弾くだろう”っていうところまで作ってデモを渡したら、彼は彼でギタリストとしてそこに味付けしてくれて、これはいい作り方ができてるなぁと思って。ていうのも、うちのバンドは本番まで弦楽器系は何を弾くか全然分からなかったんで(笑)。そういう感じでいろいろやりたいことを詰め込んでたら最初は長さが5分ぐらいになっちゃって、滝に“詰め過ぎやからちょっと減らさへん…?”って聞いたら、“僕も今同じことを思ってたんですよ!”っていうことで、このサイズ感に落ち着いたんですけど。展開も多くて作っててクリエイティブでしたし、今までと同じ環境じゃなかったからこそ、一歩引いて見られるきっかけにもなりましたね」
――そして、その曲にインスパイアされてcinema staffが用意したのが『first song(at the terminal)』(M-1)で。
飯田「アルカラの曲で震えるポイントが2つあるんですけど、まずはイントロのエッジの効き方が…結構いろんな曲でコードで弾かない独特な奏法をしてて、すっげえ早くて何を弾いてるか分からないんですけど、めちゃくちゃカッコいいんですよ。あとは、サビ終わりでAメロに戻る瞬間の美しさったらもう。『サースティサースティサースティガール』はまさにそうで…ライブとかでも最初に掴んだもん勝ちじゃないですか? その掴み方ってやっぱりこれだよなと。ただ、元々は一番最初の“これから最終バスに乗り込んでいく君へ 花束を”の部分もなかったし、サビ前のアレンジもなかったんですよ。サビまで来たらこの曲はエモいしいい曲だと分かってもらえると思うんですけど、ひと筋縄ではいかねぇぞと見せたい部分もあったんで、『サースティサースティサースティガール』みたいな聴いたことのない入り方をしたくて。歌詞も含めて、スプリットじゃなかったらこういう曲は絶対にできなかったと思います」
――その歌詞に関してはアルカラ目線で、ある種のエールじゃないですけど。
飯田「そもそもアルカラにとっても俺らにとっても大事な時期に、時間を共有したかったというか…もちろん憧れなんで力も借りますけど、内心“俺らが連れていくんで!”って思ってましたし、やっぱり気持ちは入りますよね。俺らの周りでもいろんなバンドがどんどんいなくなって…去る人、失う人がいるのは誰にでも共通する話だし、聴いてくれた人が自分のことのように感じられると思ったんで。cinema staffは抽象的な歌が多いですけど、根本には誰かの背中を押したい気持ちがあるんですよね。“これがcinema staffの代表曲です”って本気で言える曲ができました」
自分がちゃんと世に出して恥ずかしくないものを作ってるって
自信を持って言えなあかんタイミングやと思ったんですよね
――最後の『A.S.O.B.i』(M-5)は2組の共作で。今作において、cinema staffからはアルカラ愛とオマージュが存分に感じられますし、アルカラとしてはまだ世に知られていないcinema staffを伝えたり、その眠ってる魅力を覚醒させようという意図ですよね。
稲村「この曲はcinema staffと沖縄に行ったときの思い出を書いてるんですけど、彼らが普段ライブではあまり見せないちょっとおちゃめな部分だったりを、自分から出すのは今さら大変なんでこのタイミングなのかなっていうのと、辻とかはセリフがあるんですけど、声で参加したりすると聴いたことのないcinema staffになるのかなって。最初に出てくるギターのメロディは、2バンドで台湾に行ったときに空港で買ったおもちゃがサックスで吹くメロディがこういう感じだったんですよ。そのときは旅スイッチが入ってるんでそれを鳴らしまくってるだけで面白くて、その音が流れると笑ってしまうみたいな(笑)」
飯田「確か180回くらい聴いてたんで(笑)。旅スイッチって怖いですね(笑)」
稲村「結果、コードを拾っていったらファンクとかジャズのそれになって、爽やかに歌い出したらいきなり“西南西”って、cinema staffにはあんな渋い曲=『西南西の虹』(‘13)があるのにっていう、遊びと真剣が入り交じったカオスなものができるかなって。歌詞はcinema staffの曲名とかをとりあえず当てて渡したんで物議を醸し出すだろうなとは思ってたんですけど、こういうことがもし一緒にやれたらこのスプリットって大成功やなと思って。その後、ライブが一緒になったときに“聴いてみて実際どうやった? 別にあれじゃなくてもいいねんで? ベタな曲も一応書いてるから”って言ったんですよ。嘘なんですけど(笑)。“じゃあそっちで”って言われたら家に帰ってソッコー書こうと思ってたんですけど、“え? もう1曲あるんですか!? じゃあ、そっちもやりましょうよ!”って(笑)」
――どっちかじゃなくて、まさかの1曲増(笑)。
稲村「あと、この曲では“えび釣り”のことを“そび釣り”って歌ってるんですけど、これは台湾のえび釣りのお店が日本語を間違えて表記がそうなってたんですよ(笑)。cinema staffのサイドメニューな部分がこの曲で引き出せて、ライブが楽しそうやなって思ってくれたら嬉しいし、このリリースツアーをやっていく中で、本編ではバチバチに戦ってたのに、最後にこの曲をやって“さっきの何やってん!”ってなったりしたらおもろいなって(笑)。そして、ここからまたお互いに歩き出して何年か経って、“あの曲、またツーマンでやりましょうよ”みたいになれたらいいなって」
――ちなみに、この曲にはアルカラの曲タイトルも入ってるのは初めから?
稲村「いや、バランスを取ろうかなと思って、ちょっとずつ足しながら(笑)」
飯田「最初はそんなに入ってなかったです(笑)。だんだんと割合がちょうどいい感じに」
――cinema staff的には、この曲を最初に聴いたとき、正直どう思ったんですか?
飯田「いや…何か…ざわつきましたけど(笑)」
(一同爆笑)
飯田「そら、ざわつきますよね?(笑) でも、太佑さんとめちゃくちゃ声が合うなと思ったし、今までで一番早く歌詞が覚えられたんですよね。メンバーも最初に聴き終わった後、“うわ、すっげぇ”ってまず驚きましたけど、その後すぐに口ずさんでましたから(笑)。ただ、あのおもちゃのメロディが使われてるのは後から知ったんですよ、自分で歌ってたくせに(笑)。こういうインタビューでも、“何でいきなりおもちゃの話をしてるんだろう…?”って最初は思ってて、気付いたときに“そんなことができるんだ!”ってめちゃくちゃ感動しました(笑)。アルカラと周るこのツアー中にいろんなことを変えていきたいし、新しいcinema staffになりたいと思ってるんですよね。アルカラからいろんなものを盗みたいと思ってますし、『A.S.O.B.i』はまさにそのきっかけの1つだし、マジでやったことがなかったし、今後もやらないだろうし(笑)、やれないだろうし。それぐらいこの曲では新しい一面を出せると思うんで」
稲村「ちなみに、この曲の途中のギターソロは、本職のギタリストを差し置いて三島が弾いてるんで(笑)。あと、ビールを開ける“カシャッ”っていう音を入れようってなったときも、みんなで集まって…。そもそもcinema staffって、これから真面目なことをしようとしてるのに、絶対にビールとかを買ってきちゃうんですよ、辻が(笑)。そのまま“これを録ってみよう”って1本でカシャッと開けても全然よくなくて飲んで、3本並べて“せーのっ!”で開けてみて飲んで(笑)。最終的に500ml缶じゃなくて350ml缶の方が、ちょっとハイ抜けして音に臨場感があって(笑)」
――かつてレコ―ディングでビール缶の音のよさを突き詰めた人がいるのだろうか(笑)。
稲村「CMの話とかけぇへんかなぁ~(笑)。あとね、今まではずっとクレジットを作詞・作曲:アルカラっていう表記にしてたんですけど、自分の名前したのはこの曲が初めてなんですよ。元々はLUNA SEAが“作詞・作曲:LUNA SEA”にしてたのを見てカッコいいなぁと思ってそうしてたんですけど(笑)、去年メンバーが抜けて、“バンド表記にしてた方が自分が最終的な責任を取らんでいいみたいな部分があるんちゃうか?”って自問自答したんですよ。自分名義だと、ダサい曲を書いたら=自分がダサいことになるし、自分がちゃんと世に出して恥ずかしくないものを作ってるって、自信を持って言えなあかんタイミングやと思ったんですよね。『A.S.O.B.i』は自分の中でも相当遊んだ曲やなと思いながら(笑)、自分から手を挙げたからには、ちゃんと名前を出そうと思ったんですよね」
聴いてほしいし観てほしいですね、とりあえず間違いないんで
――話を聞いていると、本当に音楽の楽しさを再確認するような充実した制作でしたね。
飯田「他のバンドのレコーディングを見られる機会もなかなかないし、あんなに和気あいあいとして…“そもそも音楽って楽しいからやってるんだ”って改めて気付けたというか。音楽が好きな人ほど信じてやってるから、間違った方向にでも突き進めちゃうことってあるじゃないですか? 小さい頃にサッカーをしてたときも、いつの間にかチームがどんどん勝ちにこだわるようになって、“あれ? そもそも何でサッカーやってたんだろう? 楽しいからやってたんだよね?”みたいになって…これから音楽をやっていく上でもそこは絶対に忘れちゃいけないし、忘れちゃったら続かないよなってめっちゃ感じましたね。アルカラの下さん(=下上)に、“太佑はいつもはもうちょっと静かなのに、今回はめちゃめちゃ楽しそうにやってる”って言われたのもすごく嬉しかったですし、俺らもそうだったんで、こういう感覚を味わえてマジでよかったなって。いいバンドとやれるとcinema staff内の雰囲気もよくなるんですよね。そういう場の空気で演奏が明らかに変わるんですよ」
――ツアーもしっかり本数があって、楽しい旅になりそうですね。
稲村「多分、僕ら以外の周りの人間は東名阪3本くらいのイメージだったかもしれないけど(笑)。“どこに行きたい?”みたいな振りがあって、お互いに台湾とか言い出して(笑)」
(一同爆笑)
飯田「結果14本なんですけど割と多いです(笑)」
稲村「2ヵ月くらいかけて回るんですけど、多分そんな本数を想定してなかったと思うんで、スケジュールも結構詰め詰めよな? ただ、ツアーに関しても効率のいいやり方をしたくなかったんですよね。作品自体もそうだったし、これだけ要領が悪いことをすげぇカッコよくやりたいですね(笑)。最終日はcinema staffの地元の岐阜なんで、『A.S.O.B.i』をみんなでやるときは泣くんちゃうかな?(笑)」
飯田「普通は全然泣けない歌詞なのに(笑)」
――最後にそれぞれに、今回のプロジェクトを通じて生じた今の心境を聞きたいなと!
飯田「今後のcinema staffの指針となる代表曲をこのタイミングで作れたのはすごく嬉しいし、それもアルカラのおかげで。アルカラとやれたことで、cinema staffはカッコいいんだって認識できたというか、自分らが自分らをカッコいいと思ってないと絶対に伝わらないし、そういうことに気付かせてもらった時間だったんで。聴いてほしいし観てほしいですね、とりあえず間違いないんで」
稲村「いくつになっても挑戦できるし、いくつになっても夢は見られるなって。もういい歳なったからとか、今まではこうだったとか、そういう線引きはなくていいってことを、これからもこの身体で表現していきたいなと思ってます。ぜひ、アンチエイジングに目覚めたい方は僕らについてきてください(笑)」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2018年8月13日更新)
Check