昨年4月に、初の全編日本語詞のリード曲『big love lovers』を含むミニアルバム『parade of life』をリリース。自らの音楽性とシーンとの共有点を見出だしたかに見えたasobiusだったが、それも束の間、同8月にはギタリストの杉本広太が脱退。バンドの再構築を余儀なくされた彼らが、“原点回帰と進化”をテーマに、リスナーの不安も期待も遥かに凌駕する起死回生のアルバム『YES』を手にシーンに帰還! 再び英詞へとスイッチし、活動初期の洋楽的な素養にギアを入れた今作は、持ち前のファンタジックで壮大なサウンド上に舞う甲斐(vo)の突き抜けるボーカルが、まるで音楽を奏でる喜びを取り戻したかのようなエネルギーとメッセージを放っている。音も、言葉も、まさに最高傑作と言える仕上がりとなった『YES』に至るまでの物語を、メンバー全員に本音で語ってもらったインタビュー。日々“NO”を突き付けられるかのような閉塞した時代に、“許す”こと、“YES”と言ってあげられること――。音楽と出会った人生を肯定することを恐れず前進する、asobiusの現在に迫る。
変わらないものよりかは、核がちゃんとあるんだけど
時代の影響を受けていることが大事だなと思っていて
――まず、前作『parade of life』(‘16)のインタビュー時に“asobiusの1つの形ができた”という手応えを感じられたところだったのに、メンバーが抜けてしまった経緯を聞いておきたいなと。話せる内容ならば(笑)。
甲斐「『diamond tears』は新体制としては1曲目だったんですけど、バランスを取ってくれた曲だったんですね。いろんな要素の楽曲がある中で、この曲を基準にアルバムを見通すと、確かに真ん中なんですよ。今までやってきたこととの架け橋みたいな感じで『diamond tears』を作って、その後に『walking in the rain』(M-7)を作ったのかな? 『walking in the rain』が一番asobiusの初期に近い曲ですね。自分的には、『diamond tears』と『walking in the rain』をこの順番で作れたことによって、もう大丈夫だって思えたんですよね。この辺に自分の趣味をぶつけてて、『diamond tears』ではミューと映画『ネバーエンディング・ストーリー』(‘84)、『walking in the rain』はasobiusの初期だったりシガー・ロスだったりカイトをブチ込んで。その後に『first life』(M-11)かな? これはシガー・ロスの『ハピポラ』(‘05)っぽく作りたかったんですけど(笑)」
甲斐「今回は実現し切れなかった部分はあったんですけど、新体制になったときに1曲1曲にMVが作れたら、ぐらいの気持ちがあって、『flash』は映像のイメージありきで作った曲なんです。家の近所にスケート場があって、実際にそこに行ってインスピレーションを得て。僕の中のイメージでは、スケートって選手生命がすごい短いスポーツで、やっぱり女の子がすごく多いというか。その選手生命の短さと、少女でいられる時間みたいなものが自分の中で噛み合って、綺麗だけど儚い=一瞬の輝き、みたいなところから『flash』っていうタイトルを付けて。スケートって等級によって滑る時間が決まってるんですけど、展開も短くまとめて。歌詞も結構気に入ってるんですけど、次の瞬間には今までの私よりも新しくなってるからっていうとことで、“See you next flash.”みたいな。オシャレ(笑)」
甲斐「歌詞は自分の人生の切り売りだと思ってるんで(笑)。そこに、童話的エッセンスをやっぱり自分は欲しがるんで。物語だったりファンタジーな部分と絡めて。あと、完全新作っていう意味では、『diamond tears』『walking in the rain』『first life』の後に『sons of the sun』(M-2)、最後『tonight』っていう感じだったんですよね。あとは、初期の空気に近いものを作った後に、『sons of the sun』で新しいものを、原点からの発展系を作りたくて。歌詞もバンドの現状報告っていう感じなんですよね」
――『sons of the sun』の歌詞にある、“I thought we lost everything, but all precious is in our stained hands”=“何もかも失ってしまったと思ったけど、大切な物は全部汚れた手の中に残っていたよ”のラインが象徴的ですけど、asobiusに残ったものって何なんでしょう?
甲斐「僕はジャケットのイメージも固まってたんですよ。自分たちのバンドロゴをデザインしたものに、シンプルにアルバムのタイトルを載せる。1曲目にSE的に『introduction』があって、『sons of the sun』が鳴るっていうところで、最初は『sons of the sun』でいいかなって思ってたんですけど、『yes』もすごい好きなんですよ。“どれを聴かせたい?”って聞かれたら全曲聴かせたいんですけど、ちょっと面白がっちゃったんですよね。“『YES』にしたい”って言われたときに“YES”=“いいよ”ってさらっと返す感じを(笑)」
――いつもだったらそこを裏切るところを裏切らないという裏切り(笑)。この曲もすごくいい歌詞で。“People are deceived by songs like just the way you are. But if we forget thanks and conscience for others, forgiving our immature lives loses its worth.”=“世間のみんなが 君は君のままでいいって歌に騙されて 開き直って感謝や申し訳なさを忘れたら 未熟な僕らを 許し合う価値なんて無いじゃないか”って…今も映してるし、時代に流されちゃって忘れがちな普遍的な精神もあるし。素晴らしいですね。
――あと、この流れで次に『first life』と続いて、歌詞にも“We live in the first owned lives. We aill be able to forgive them”=“誰もが初めての人生を生きている だからきっと許せるだろう”とあって。何でもNOみたいな今の時代に、許すこと、YESと言ってあげること。肯定すること恐れちゃいけないんじゃないかって。今までに音楽的な変遷もいろいろあったバンドですけど、メッセージも含めて、まさに最高傑作ですね。
Album 『YES』 発売中 2500円(税別) RX-RECORDS / UK.PROJECT RX-133 ※デジパック仕様
<収録曲> 01. introduction 02. sons of the sun 03. flash 04. tonight 05. winter sparks 06. never never 07. walking in the rain 08. dark gazer 09. diamond tears 10. yes 11. first life
Profile
アソビウス…写真左より、海北真(b)、甲斐一斗(vo)、石川直吉(ds)、髙橋真作(g)。'11年10月頃結成。'13年5月、1stミニアルバム『Rainbow』をリリース。透明感溢れる甲斐の歌声と激しくも美しく緻密に構築されたサウンド、独特で叙情的なメロディセンスと世界観が多方面から注目を浴び、デビュー作ながら“タワレコメン”、“HMV激押しインディーズPICKUP”に選ばれる。また、収録曲『I’m in the love』が関西テレビ『音エモン』6月度エンディングテーマ、関西テレビ『ミュージャック』6月度パワープッシュに選ばれる。9月にはタワーレコード限定ワンコインシングル『starlight』をリリース。力強くかつ叙情的なメロディにダンサブルなリズムが話題の楽曲『starlight』が、ニッポン放送優秀新人9月度、TOKYO FM『RADIO DRAGON』・FM GUNMA『KAMINARI RECORDS』9月度エンディングテーマ、MRT宮崎放送・FM nagasaki 9月度パワープレイなどに選ばれ、瞬く間に全国に知れ渡り品切れ店が続出。12月には初の自主企画ライブ『Rave LOVE-to-LOVE』ツアーを東名阪で開催し、大成功を収める。'14年3月、世界的にも異例となる英語詞版と日本語詞版を同時収録した1st アルバム『pray&grow』をリリース。6月に代官山UNITにてリリースライブ『life is growing』を、12月にはバンド史上初となるワンマンライブ『little revolution』を開催。'15年2月に発売した3rdシングル『window』が“い・ろ・は・す~ビッグドロップ篇~”のCMタイアップに決定。'15年4月、石川が加入。2ndアルバム『ultralium』をリリース。収録曲『moments』が“ムラサキスポーツ MIZUGI collection 2015 CMソング”に、『love of blue』が同“PVソング”に決定。 '16年4月、2ndミニアルバム『parade of life』を発売。『parade of life release tour “asobi parade”』と夏のイベントを最後に杉本広太(g)が脱退。’17年7月19日には、新体制初音源となる3rdフルアルバム『YES』をリリース。9月には東名阪ツアー『asobius tour 2017 “we need YES”』を開催。