人生への不安も、音楽への好奇心も 2年間の変化を刻んだ2ndアルバム『Have Fun』携え 東阪リリースツアーがいよいよ開幕へ! シンリズムインタビュー&動画コメント
デビュー曲『心理の森』(‘15)を聴いたときの衝撃は忘れられない。口ずさめるポップなメロディ、現在のどのシーンにもいい意味で当てはまり過ぎないオリジナリティ。10代、それも高校生でとんでもない才能が現れたなと感動した。あれから、2年…。サポートメンバーとのライブも重ねたことで、人と音楽を作り上げることの楽しさをより知ったように思う2ndアルバム『Have Fun』。大学進学とともに神戸の地を離れ、上京したのも大きいのであろう。この2年の変化、そして今作へのこだわりを事細かに聞いてみた。
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ソロだけど、バンドっぽくするのが狙いでした
――前作『NEW RHYTHM』(‘15)から2年ぶりの2ndアルバム『Have Fun』ですが、この2年間はいかがでした?
「早かったですね。結構、物事出来事が多かった2年間でした。まず高校生なのにCDを出して、タワレコで展開してもらえたり、クアトロでワンマンをやったり、フェスに出たり、ビックリでした。大学進学で上京して、東京拠点になって環境は変わりましたね」
――東京のいいところを教えてもらえますか?
「東京のいいところは、単館系の映画がすぐやってるところですね。関西なら2ヵ月待ちなんで、待ってる間に忘れますから(笑)。逆にキツいのは、満員電車の乗り換えですね。1人暮らしも分からないことだらけですし。でも、自分だけのレコード棚があるのは嬉しいです。自分だけの空間をカスタマイズできますから。実家だと親と共有ですし」
――そんな中で生まれた今作ですが、前作との違いはありますか?
「前回はデモをしっかりと作っていたのですが、今回はデモを作り込み過ぎず、プリプロで楽曲を詰める作業にしました。みんなで話し合いながら、サポートメンバーの個性をバンドサウンドとして入れようとしましたね。自分以外のアイデアを聞くのは初でしたね。デモを作り込んでなかったら、もらったアイデアを採用しやすいんですよ。ソロだけど、バンドっぽくするのが狙いでした」
――楽曲自体の傾向としては?
「リード曲と地味な曲を気分で作っていって、地味な曲がたまっていった感じですね(笑)」
――リード曲的なものはシングルでその都度出していきますもんね(笑)。でも、本当に他の曲も素晴らしくて、『長く続く道』(M-10)は個人的に大好きでした。
「その曲は高校の卒業タイミングで作っていて、人生が不安で何が起きるか分からないという気持ちを込めました。今まではいい意味で好きなように作っていた曲をアルバムとして出した感じでしたから、当たり障りのない歌詞もあったかもしれない。でも今回は、今の自分の気持ちを歌詞に反映させて出そうと思いました。佐野元春さんにお会いする機会があったときに、“今しかできない楽曲があるから頑張って”と言ってもらったんです。だから、10代の気持ちを残そうと。でも、自分で書いておいて、出すのが恥ずかしくなりましたね、『長く続く道』は」
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――とてもラストナンバーっぽい曲ですけど、実際はその次の明るい曲調の『Music Life』(M-11)でアルバムが終わるのが、逆にいいなと思いました。
「『長く続く道』で終わる案もあったんですが、しんみり終わるのもなと思って。最後は、もうちょっとポップに終わりたかったので」
グッとこさせたいというこだわりはありました
――ちなみに、楽曲のストックはたくさんあったのですか?
「曲を作るペースは速くなっていて、もう1枚アルバムを出せるくらいありますね。ただ、『Music Life』と『春の虹』(M-3)の後に作った曲は、歌詞が練られてなくて恥ずかしいんです。楽曲に合わせて歌詞を書くだけではなく、グッとこさせたいというこだわりはありました。例えば、『ラジオネームが読まれたら』(M-4)は歌詞から作ったのですが、今までやったことのないキラッとした雰囲気になりましたね」
――詞先は初めてですか?
「過去にも1回ありましたが、歌モノではなく雰囲気モノの楽曲でしたね。意外と詞先の方が歌モノとしてはいいかなと。今後、メロディ先行で作って行き詰まったら、詞先もありかなと。ただ、歌詞の方が時間かかりますからね」
――アルバムの曲調的には基本明るいし、『遊びロック』(M-8)なんて楽曲もありますが、やはりバンドサウンドが強調されていますね。
「ロックアルバムですね。レッド・ツェッペリンやザ・フーのベスト盤を聴いていて、カッコいいなと思ったので。今のオルタナインディーで言うと、レモン・ツイッグスも面白いですよね。ジャンルがいろいろ入っているし、急な展開もあって、ビックリするんです」
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――あと、『春の虹』には“ぼくらが旅に出る理由”という歌詞が出てきます。小沢健二さんの楽曲タイトルでもありますが、どのような流れでこの歌詞になったのですか?
「フリッパーズ・ギターも小沢健二さんも聴いたことがなかったんですが、前作を聴いて小沢さんを連想した方が多かったみたいなんで、歌詞に小沢さんの楽曲のタイトルを入れたら面白いかなと。楽曲的なオマージュではなく、歌詞でオマージュしたくて」
――改めて小沢さんを聴いてみて感じたよさは、どのようなものでしたか?
「メロディがいいのと、あの時代の最先端の海外の音楽をしっかりと取り入れていたことですね」
――そういう感想を持った上で歌詞でのオマージュという方法論は、ものすごく興味深いですね。
楽曲のクオリティが高くても、どうライブで響くかが大事
――そして、今後の話題の1つとして、フェスについてもお伺いしたいです。
「フェスに出るのはありだとは思いますが、僕の楽曲でどう盛り上げるかは考えますね。今作は前作よりもフェスで盛り上がる気はしています。楽曲のクオリティが高くても、どうライブで響くかが大事ですから。ロックはライブで観るといいけど、ポップスのライブでの見せ方は本当に考えます。慣れないなりにやっていて、まだ100%は掴めてないですけど、お客さんに参加してもらう大事さは感じてますね。サニーデイ・サービスをライブで観たときにすごいなと思ったんです。エモーショナルなんです。音源とライブのギャップの見せ方をいろいろ考えさせられました」
――今作には SHISHAMOの 宮崎朝子(vo&g)さんが参加していますが、感じた魅力はどうでしたか?
「宮崎さん、むちゃくちゃ歌が上手いんです。メインボーカリストとしての表現力がすごい。音程がブレないし、表現は幅広いし。なので、もっと歌を頑張ろうと思いましたね。『ショートヘア』(M-9)ではヒデとロザンナや、まぁカーペンターズもそうですけど、今の時代にああいう感じをやってみたかったんです。だからこの曲はコーラスではなく、しっかりと歌で参加してもらおうと」
――物語的な歌詞も新鮮でした。
「自分の想いをダイレクトに出すのも嬉しいですが、物語的な歌詞が上手いこと仕上がるのも嬉しいですね。宮崎さんにも“歌詞、面白いね!”と言ってもらえました」
――あと、音大に進学した影響も大きいのでしょうか?
「ベースでコードを弾くとかのテクニックは学んでいますね。ジャズ科の先輩とかに何かを質問すると、“何となくだよ”とか言われるんですけど、そんなことはないですから(笑)。そういうことを考えてるのは面白いですね」
――ちなみに、次回作の案はすでにあったりしますか?
「何となくあるのは、アルバムの1曲目から最後までがつながるコンセプトでやってみたいかなとは思ってます」
(2017年8月21日更新)
Check
Movie Comment
アルバムとツアーについて語ります シンリズムからの動画コメント!
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Release
3作の7inch表題曲も軒並み収録! 2年ぶりとなる2ndアルバム
Album 『Have Fun』 発売中 2700円 ANO(t)RAKS XQFQ-1502 <収録曲> 01. 彼女のカメラ 02. FUN! 03. 春の虹 04. ラジオネームが読まれたら 05. ATTACK! ATTACK! ATTACK! 06. Pure 07. 話をしよう 08. 遊びロック 09. ショートヘア 10. 長く続く道 11. Music Life
Profile
シンリズム…’97年7月17日生まれの20歳、兵庫県出身。作詞・作曲・編曲はもちろんプログラミングまでこなすシンガーソングライター。高校1年生のときに中学時代から作りためた楽曲をSoundCloudに公開。’15年4月18日のRECORD STORE DAYに7inchアナログEP『心理の森』をリリース、翌5月の全国各地のFM/AMラジオ局で最多となる33局のパワープレイに。スペースシャワーTVでは『Power Push!』にも選出された。また、高校2年生の夏から約半年にわたり制作していた1stアルバム『NEW RHYTHM』を、同5月にリリース。夏休みには東名阪クアトロを含むワンマンツアーも成功させた。’16年3月には、地元関西の梅田Shangri-Laにて高校生活最後のワンマンライブを開催。‘17年、年明け早々に書き下ろした新曲『FUN!』が『カーセンサー』のTV-CMソングに抜擢され話題に。そして、2年ぶりとなる2ndアルバム『Have Fun』を、4月22日のRECORD STORE DAYにLPで、5月10日にCDでリリースした。シンリズム オフィシャルサイト http://shinrizumu.com/
Live
バンドを従え東阪リリースツアーへ 大阪公演は梅田Shangri-Laにて!
『シンリズム 2nd Tour「Have Fun」』【東京公演】 チケット発売中 Pコード331-627 ▼8月22日(火)19:30 UNIT オールスタンディング3800円 ディスクガレージ■050(5533)0888 ※3歳以上はチケット必要。
チケットの購入はコチラ!
Pick Up!!
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード331-511 ▼8月23日(水)19:30 Shangri-La オールスタンディング3800円 清水音泉■06(6357)3666 ※未就学児童は入場不可。
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Column
『心理の森』のパワープレイで話題 神戸発、驚異の17歳 高校3年生のポップ・マエストロが ルーツに現在、戸惑いも未来も語る 『NEW RHYTHM』インタビュー
Comment!!
ライター鈴木淳史さんからの オススメコメントはこちら!
「当たり前っちゃ当たり前だが、この2年で大人になったなというのが正直な感想。高校生から大学生になったわけだし、実家の神戸を離れ、東京で1人暮らしをしてるわけだから、そりゃ大人にもなるだろう。だからこそ、その成長を見届けるのが本当に楽しみで、勝手に親戚のおじさんの気分になってしまう。ともかくシンプルにグッドメロディを奏でているイメージがあるし、現在の若手でポップスという言葉を意識する人も本当に少ないと思う。ようやく20歳になったばかりの、この才能をゆっくりじっくり、今後も見守っていきたい」