関西から音楽シーンを盛り上げるべく
関西のコンサートプロモーターが夏休みイベントを開催!
シーンを支えてきた裏方目線で“ライブの魅力”を紹介する
企画第二弾! KYOTO MUSEの行貞さんにインタビュー
夏のライブイベント「サンクリ夏休み特別企画『RockSteady’17 -HIRABI NO HATCH-』」が、8月17日(木)に大阪・なんばHatchで開催! 関西から音楽シーンを盛り上げるべく、関西のコンサートプロモーター・サウンドクリエーターが“いま観てほしい!”イチオシの気鋭アーティストを集結させ、ライブの楽しさや音楽の魅力を発信するイベントだ。ぴあ関西版WEBでは同イベントの開催に伴い、関西のライブシーンを支えてきた裏方の大先輩ならではの目線で、ライブの魅力や楽しみ方を紹介する企画を実施。第二弾の今回は、KYOTO MUSEの行貞店長にインタビュー! 時代と共に移り変わるシーンについて、たっぷりと語ってもらった。
――まずは行貞さんのこれまでの経歴について教えていただきたいのですが、いつ頃からライブハウスでお仕事を?
「99年に大阪心斎橋のBIGCATがオープンして、アルバイトで働きはじめたのが最初です。ライブハウスではずっと働きたいなと思ってたんですけど、90年代後半はライブハウスで働きたい人が多かったから、なかなか採用してもらえず…。やっと合格をもらえたところがBIGCATでした。当時は22歳ぐらいで、タダでもライブハウスで働きたいと思っていましたね。今はライブハウスで働きたいと思ってくれる人が減っていますけど…」
――それからKYOTO MUSEの店長には、どういった経緯でなられたのですか?
「BIGCATを1年ぐらい休んでいる時期があったんですけど、戻ってきた時に僕を採用してくれた村井さんが、KYOTO MUSEの店長になっていたので『あんたもこっちにおいで』と言ってくれてKYOTO MUSEへ行くことに。因みに今、村井さんはOSAKA MUSEの店長をしています。それで京都に移ったのが2000年ぐらいですかね。最初は時給のアルバイトで、ステージのスタッフをしたり、自分の好きなイベントを企画したりしていたぐらい。それが、ブッキングを担当していたスタッフが辞めることになり、まだバイトでしたけど僕が代わりにブッキングマネージャーになりました」
――大阪と京都では違いも感じましたか?
「お客さんの反応については、全然違うなと思いましたね。大阪のお客さんは4バンドぐらい出ているイベントなら、好きなバンドの時はめちゃくちゃ盛り上がって、終わってしまうとみんな帰っちゃうイメージ。だけど、京都のお客さんは静かだけどずーっと最後まで観ていて、アンケートを書いて帰る、みたいな。“京都はやりにくい”とアーティストの方に言われることもあるんですけど、反応が薄かったり分かりやすくは盛り上がっていないだけで、心の中ではすごく盛り上がっているし、最後までずっと聴いてくれているんですよね」
――それは当時も今も。
「変わらずですね。だからこそ、そこでビビらずライブをやりきれたら、きちんとお客さんには響いているはずです。僕のイメージですけどね」
――今年で27周年を迎えたKYOTO MUSEですが、時代の流れと共に変わったなと感じることってありますか?
「なにより、バンドの数が減ってきたことでしょうか。音楽が好きだという点では変わっていないと思うんですけど…。例えば、高校生の卒業ライブイベントがあっても、昔は出演がバンドだけのことが多かったんですよね。8組いたら8組がバンド。だけど今はいろいろな選択肢が増えているからこそ、8組のうち4組ぐらいがバンドで、あとはダンスだったりDJ、漫才だったりが多くなっているんです。音楽が好きということでは同じなのでいいことなんですけど、僕はやっぱりバンドが好きやったから、バンドだったらいいなと思ったりします。逆に大学の軽音楽部については、アニメ『けいおん!』の影響もあってか、バンドが増えていると聞きます。バンドで飯を食っていくところまでは目指していないけど、コピーバンドでもバンドをしたいという子たちが増えている印象です」
――昔に比べると、テレビだけでなくインターネットで好きな物にアクセスしやすいからこそ、選択肢も増えてきているんですね。
「きっとそうですね。あとは、テレビにバンドが出ていないということも影響しているんじゃないかなと思います。そういうこともあって、『ミュージックステーション』にKen Yokoyamaさんが出演されたのはいいことだなと嬉しくなりましたよ。そりゃテレビにEXILEとかアイドルが出ているのを見ていたら『あんな風になりたい!』と思うじゃないですか。そんな時代の中で、『バンドをやりたい!』と思ってもらいたいからという理由で、ああいう風に出演したことってすごくいいなって思います。僕はTHE BLUE HEARTSが大好きなんですけど、当時はNHKとかテレビにもバンバン出てましたからね。Ken Yokoyamaさんがバンドでテレビに出たのをきっかけに、その後も色々なバンドもテレビに露出するようになりましたけど、そうやって『バンドってカッコいいな!』って、好きになる人が増えたらいいなと僕は思いますね。やっぱり、バンドってカッコいいなと今でも思っているんで!」
――行貞さんが“バンドっていいな”と思ったきっかけは?
「やはり、ブル―ハーツですね。小学校6年生の頃から、ブルーハーツが関西に来るとなれば絶対にライブに行っていました。だけど、その時はもうライブハウスじゃなくって大阪城ホールとか、なんとか会館みたいな大きな会場でしたね。中学の頃からライブハウスにも通うようになりましたけど、その時に改めて『バンドってカッコいいな』と思うようになりましたし、ライブハウスが大好きになりました。非日常というか、当時はちょっと危険な匂いがする場所だったというか…。大人の人がたくさんいて、いろいろな出会いがある場所。それで、とにかくライブハウスで働きたいと思っていたんです」
――非日常な空間だったり、出会いがある場所としては今も変わらない魅力ですけど、ライブハウスに対して“危険な香りがする場所”という印象は、今の若者世代はあまり持っていない感覚ですよね。
「それは本当にいいことやと思います。通いやすいからね。だけど、ちょっと寂しいなとも思います。昔は身構えながらというか、緊張しつつ『殴られるんちゃうか』とか思いながら通ってましたから(笑)。今はそんなこと絶対に無い、それはいいことです。だけど例えば、『そんなことしたらアカンやろ!』って怒られることとかもあって、それで『こういうことしたアカンねや』って教えてもらえる場所でもあったんです。だから今は、好き勝手やってるお客さんが増えてきてしまっているのはあるかもしれないですね」
――なるほど。マナーを周りの大人が教えてくれていたのですね。
「そうなんです。あとは何より、やっぱりライブハウスは音がでっかいですから。これはならではの体験やと思います。それと、共感できる人が周りにたくさんいる環境というのも良いなと思います。自分がグッと来た時に、周りのみんなもグッときてるとか、すごくいいじゃないですか」
――学校や職場では、あんまり音楽の話が合わなかったりしても、ライブハウスだとみんなでライブの興奮だとか好きな音楽を共有できますもんね!
「そうそう。それに同じアーティストが好きで、いつもライブに行くたびに必ずいる人がいて、挨拶したり話をするうちに仲良くなることもありますしね。そういう人たちから、いろいろなバンドの情報を教えてもらったりするのも楽しかったもん。当時は特に、CDのクレジットに書かれてる“special thanks”にいるバンドを見て、そのバンドを調べていくとか。調べると言っても当時は『DOLL』とかそういう雑誌を読んだり、ライブハウスでフライヤーをもらうしかなかったんですけどね」
――今だと簡単にネットで。
「いいですよね! ネットで知り合ってライブに行ったり、めっちゃいいなと思います。ブルーハーツのヒロトが、マンフレッド・マンというバンドが好きと分かったらすぐに聴いてみたり。マンフレッド・マンが好きと分かってもネットでパッと聴けるわけじゃないから、CDを店まで探しに行って、だけど実はCDが無いからレコードで探さないとダメだったとか…、当時はとにかく情報を探すだけでも大変でしたからね。だから、ライブハウスで知り合った先輩からパンクバンドの曲がたくさん入ったカセットをもらったりして、教えてもらう楽しさがあったんですよね。『うわ、めっちゃいいバンドおる!』とか、『この曲はすごいぞ』って発見することにいちいち興奮していました」
――時代が変化していく中で、時代に合わせた取り組みなどライブハウスでもされていますか?
「宣伝方法は変わってきていますよね。とはいっても今でもフライヤーをしっかり撒いたり、という基本的なところは変わらず。あとはやっぱり、SNSをしっかり使わないと広がっていかない時代ですよね」
――バンド自体のシーンも変わってきていますか?
「バンドはね…、よく言うとセルフプロモーションが上手くなってきていますよね。ライブハウスでずっとライブを続けて、地道にお客さんを増やして、やっていこうというバンドは少なくなっているかなと思います。ネットでバズらせたり面白がらせて、話題を得る方法をとるバンドが多い傾向にあるかなと個人的には思います。あとは打ち上げに出ないバンドが最近は多いですね(笑)。打ち上げが全てではないですけど、僕らは打ち上げでしかコミュニケーションをなかなか取れなかったりしましたから。そこでまた次のブッキングが決まるとかね。こういうことあんまり言いすぎると、親父の『昔はこうだったのに!』という話になってしまうから嫌なんですけど…(笑)。今は今の人のやり方で上手くいくならそれが一番やと思っています。でも、そういう昔からある考え方を、今でも信じてるぞという気持ちもあります。バンドもそういう打ち上げに出ることで、ライブハウスの仕組みとかを学ぶこともあるんじゃないかなと思うので」
――バンドにも土地柄があると思うんですけど、京都らしさもありますか?
「いくつかあると思いますね。まずは、40代とか50代になってもずっとバンドをやっている先輩が多い。もうひとつは、京都で活動していて、ほんまに実力があるのに大阪とか東京に出ていこうとしない人が多い。京都で完結しているんですよね。あとは、一筋縄ではいかないような音楽をやっている人が多い印象ですね。ずっとバンドで飯食えたらそれに越したことがないけれど、仕事をしたり自分たちの生活がありながらバンドを続けていて売れてる人たちもたくさんいますからね。そこは、その人たちのスタンスに任せています。ただ、とにかく辞めないでほしいなとは思うんです。京都は大学も多くて学生が多いから、大学4年になって就職するとバンドを辞めてしまう子が多いんですよね。ほとんど辞めてしまうんです、そのタイミングで。でも別に、就職したからといって、いいバンドやのに辞める必要ないのになと思うことがあります」
――時代の変化の中で、たくさん良さがある一方、寂しさもあるのですね。
「俺らだけが変わってないのかなと思うよね。それやとしたら、全然アカンよね。それぞれがバンドのために、どうしたらこのバンドを見てもらえるかなとか一生懸命に考えてるんですけど、ライブハウス論とか根本的なライブハウスのシステムは全然変わってないからね。東京の下北沢Threeはチャージがない日を作ってたりと料金システムを変えていたり、京都だとネガポジというライブハウスが平日はチケット代がかからなかったり。やり方をいろいろ変えたり考えたり、それぞれでやってはいるんですよね」
――KYOTO MUSEは2013年から円山公園音楽堂で、ご家族でも楽しめる野外音楽イベント『Rainbow’s End』を主催されていますよね。
「1年に1回はみんなで大事な人を連れてきてもらって、みんなと一緒に過ごしたいというコンセプトのイベントですね。出てもらうアーティストには、そういう場を提供することで、今度はKYOTO MUSEにも出てほしいなという想いもあります。京都には磔磔だったりMETROだったり、素晴らしいライブハウスが他にもたくさんあるので、KYOTO MUSEならではってなんだろう?と考えながら日々取り組んでいることのひとつです。今年も5月に開催したんですけど、5年連続で出てくれているLOSTAGEの五味岳久さんが、今年はアルバムのリリースがあるからと、MCで『いっつもこうやってしてくれてるんで、今回はツアーをKYOTO MUSEに入れました』と言ってくれたんです。今までKYOTO MUSEでライブをしたことがほとんどなかったので、それがこうして繋がってすごく嬉しかったですね! そんな儲かるわけでもないし、バンドにもお客さんにもライブハウスに来てもらいたい一心でやっているようなイベントなので、MUSEのブランド力が上がったり、そういう風にライブハウスに繋がっていくとやっぱり嬉しいですね」
――京都にたくさんライブハウスがある中で、KYOTO MUSEらしさといえば何ですか? 個人的には、ジャンルレスに様々なイベントが日々開催されているところかなと。
「京都って実は、普通のライブハウスがあんまりないんですよね。個性的なライブハウスが多いんです。だからステージにちゃんと高さがあって、音響があって、ステージの後ろからバンドが出て来れるという環境のライブハウスってなかなか無いんです。それらが揃っているKYOTO MUSEだからこそ、オールジャンルでみんなが出られるライブハウスになっているんだと思います。その分、その日その日で、イベントの色になるように僕らは考えながら動かないといけない。ハードコアからアイドルまでやっているから、すべての状況に対応できるようにその音楽のこともきっちりと知っておかないとダメ。そうなると、その現場に行ったことなかったら分からないから、出てくれる人たちのライブにはできるだけ遊びに行って、こういう雰囲気なんだなと感じるようにしています。そこで感じた空気をKYOTO MUSEでも作れるようにすることが大事かなと思ってやっています」
――長年、ライブハウスに携わってこられた行貞さんからみて、「サンクリ夏休み特別企画『RockSteady’17 -HIRABI NO HATCH-』」はいかがでしょうか!? 好きなアーティスト以外の出演者も気になったり、好きになるような仕掛けや企画があるそうですが…。
「やっぱりライブハウスの良さって、昔から知らないバンドこそ面白いと思ったり、名前は知ってるけど観たことないバンドをワクワクして観たりするところにあると思います。楽しみにしていたバンドのライブがめっちゃ良くて興奮したり、いまいちでガッカリしたり。良かったからCDを買うとかね。それこそがライブハウスの楽しさであり、喜びやと思います。最近は自分の好きなバンドだけを観て、帰ってしまうお客さんが多くなってきているところがあるから、1曲ずつぐらいはどのバンドのライブも観てほしいなと思います。1曲聴いて良かったら、もうちょっと観るとか。好きになったら今度は、ライブハウスツアーにも行ってみてほしいしね。このイベントに関してはいいバンドいっぱい出てるし、なんばHacthでアクセスもいいから良い機会なんじゃないかなと思います! 奈良のAge Factoryとか大分のSIX LOUNGEとか、それぞれの地域で活躍していてSIX LOUNGEとかは今年の京都大作戦に出てもらったり、俺が好きなバンドばっかりやしね!」
――それこそ地道にライブハウスで注目を集めてきた猛者揃いですよね。
「それぞれの地域で活躍していて、全国のツアーにでるようなバンドが集まってると思うので今ほんとに観ておくべきバンド、見逃してほしくないバンドばっかりですね」
――最後に音楽が好きな若者にメッセージを。
「やっぱりライブハウスに来てほしいです。良くない点は改善していくので、もっとライブハウスに遊びに来て、『これはこうちゃいますか?』とか気軽にスタッフへ意見してくれたら嬉しいです! ライブハウスで働いてる人間って、実は話しかけられることがすごく好きなんですよね。忙しそうだったり怖いイメージあるかもしれないですけど、良いバンドの情報とかお客さんから生の声として教えてほしかったりするし、『こんなバンド呼んでください!』て言ってもらえたら、その声が反映されることもいっぱいありますからね。ライブハウスでもっとみんなと、いっぱい音楽の話がしたいです!」
text by 大西健斗
(2017年8月17日更新)
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