「僕はもう音楽家じゃなくていい。ROLLYというものを表現したい」
ジャンルも時代も飛び越えた永遠のギター少年にして総合芸術家が
再び日本のロックの名曲に挑む大好評超絶カバーアルバム第2弾
『ROLLY’S ROCK THEATER』インタビュー&動画コメント
(2/2)
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中学生の僕から現代の僕へ、この1曲でこの40年近くのことを歌ってる
――ROLLYさんは今回のカバーアルバムに入ってるような曲を作ってきた先人たちと、今では同じステージに立ったり、一緒に制作するようになって。ちょっと感慨深いですよね。
「その気持ちを描いたのが『1978』(M-2)ですね。これは’78年、僕らは中学生で、友達の中田くんと2人で自転車をこいで、“BOWWOWスーパーライブ”って街中に張り出されてたクリスマスコンサートを高槻市民会館に観に行ってね。客席にはロック姉ちゃんやら兄ちゃんばっかりで、ティロリン♪って(山本)恭司さんがギターを弾いて“カッコいい!”って思ったあの気持ちを持ち続けて、今年で53歳。今では自分もあのステージのスターと対等に弾くことができてる。だけど、この僕を観ていた子供もミュージシャンになって、またそれが続いていくっていうのは、音楽のバトンを渡し続ける美しい物語…つながってる感じがしてね。中学生の僕から現代の僕へ、この1曲でこの40年近くのことを歌ってるんです。最近は恋愛の歌でも、まぁ付き合って別れるまで2年もないかなぁ? 短いやんね? でも、上には上がいて、谷山浩子さんは1曲で何億年か移動する」
――マジで!?(笑) もうスケールが完全に宇宙ですね。
「ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団っていうグループでアルバムを2枚出してるんですけど、それが凄まじい内容で。一般的に谷山浩子さんって、“ニューミュージックを歌うほんわかした人”みたいなイメージですけど、例えば『第5の夢・そっくり人形展覧会』(‘12)っていう曲は、円形のステージに同じ顔をした人形がズラーッと置いてあって、司会者が“この中に1人だけあなたの本物の恋人がいます”って言うの。で、“本物と言っても全部同じ顔じゃないですか!”、“いや、本物が1人だけいる。それを今から選ぶんだ。ただし間違えたら、一生そいつと一緒にいなければいけない。何故ならばそっくりになるから”とか言って(笑)。もうわけが分からない。“そっくりだけどちーがーう~そっくりだけどちょっと~ね♪”って」
――すげぇなぁ(笑)。ROLLYさんはいろんな方と接点ができていくというか、どんな人ともつながっていきますね。
「それはですね…真心を込めて向き合うっていう感じですね」
――めちゃめちゃ人間的なところなんですね。まさかの回答ですね(笑)。
「(笑)。真剣に自分がすべきことを、どうやったら一番喜んでもらえるか、一番有効なのかを常に考えてやると、また次につながっていきますね。次につながると、じゃあまた来年もやりましょうってなる。ありがたいことに、来年の年末までスケジュールがギッシリになってしまって、そこまで生きてるかどうかは…」
――(笑)。あと、僕はカバーアルバムを聴いたときに、“果たしてこの人たちに勝てるような名曲を、今後誰かが書けるんやろうか”って思ってしまうんですけど、偉大さを感じるからこそ、オリジナルを生み出す難しさとか、逆にやり甲斐って感じるんですか?
「…今仰ったこと、思いますよ。その極限を言いましょうか? それまで電球がなかったところから、トーマス・エジソンが電球を作った。ものすごい発明ですよね。それまでスマートボールで遊んでたところから、ファミコンが出てきた。それもすごい発明だけど、だんだんインフレ化してくるというか、やっぱりインパクトはなくなってきて、発明はしにくくなってくる。それでもアーティストとしては、何とかしてそれを目指す気持ちを忘れてはいけないのね。音楽は特に、メロディの組み合わせはほとんど出尽くしてるんじゃないかと思われるところもあって。実際に自分が今“こんな音楽聴いたことない!”っていう曲を発明できてるかと言うと、まだできてないと思うから。だけど、気持ちはデッカくいこうぜっていう感じはあるね」
――でも、『1978』はアルバム唯一のオリジナル曲ですけど、名だたる楽曲と並んでも全然違和感がないというか。それはストーリーテリングの手腕、音作り、いろんな要素があると思うんですけど、とても’16年に生まれた曲とは。
「思えないよね?(笑) 嬉しいですね。僕が子供の頃に聴いてたアイドルとか歌謡曲のアルバムって、半分以上がカバーだったのね。子供の頃、初めてフィンガー5のアルバムを買ったんですけど、ほとんどがジャクソン5にスリー・ドッグ・ナイト、カーペンターズなんかのカバーだったの。そこから洋楽が入ってきたのね。だから、本当に聴いてほしい自分の曲が1~2曲あったら、あとはカバーでいいような気がするの。でも実際ね、お仕事とは言え、取材する人のアルバム聴くのは偉いと思うわぁ~」
――聴かんとここに来たら逆にイヤでしょ!(笑)
「僕も相当な量のアルバムをもらうんですよ。いやでも実際のところ、興味のある人やったら結構聴けるけど…1時間聴くのはしんどくてねぇ…」
――何ちゅう顔してるんですか(笑)。でも、僕は今の話の流れやと“聴かへん”って言うのかと思いました。物理的なスケジュールで全部聴けない人もおると思いますもん。偉い!
「もし、その日に聴けなかったとしても、会う可能性が見えてるときは聴く。でもね、僕は逆に“どうでした?”とは聞かへんよ。気持ちが分かるから、僕は渡すときに常に“一応渡しますけど、何かの時間があったときに、何となくBGMでかけてくださいね”って言う。でも、次に共演するときとかはバッチリ聴いていくね。ちゃんと“あの1曲のあそこのアレンジが”とか言う。そういうのはすごい大切ですよ」
僕はすかんち時代から、常に自分の音楽にはネタを仕込んであります
それを見つけるきっかけになるキーワードも必ず入れてる
――ROLLYさんはロックもジャズもシャンソンもクラシックも読み聞かせも演劇もやる中で、何か軸としてるもの、ブレないようにしてることはあります?
「流石に長くやってると、ブレようがない己がもうありますね。関数のブラックボックスって習わなかったですか? Aをブラックボックスに入れたらBになって出てきました。Bをブラックボックスに入れたら今度はCになって出てくる。ブラックボックス=私ですよね。それがROLLY流ってことです。だからもうブレないよね。分かりやすく言うと、ティム・バートンっていろんなタイプの映画を作るけど、全部がティム・バートンでしょ? ブランドですよね。その人がやったらこうなるっていうことが=アーティスト性じゃないかなと思います。故に、あんまり何も考えずにやれますね」
――ちなみにROLLYさんって毎日ギターの練習とかするんですか?
「練習はしないけどギターは毎日弾きますね。でも、作曲するときはあんまり楽器を持たないんですよ。鼻歌ってバカにできないんで。楽器持つと自分のスキル以上のことができない。例えば今、適当なメロディで作曲してみましょう! …ちょっと待ってください」
(一同笑)
♪しばし鼻歌♪
「これで今、僕の頭の中で全部の楽器が鳴りました。イントロのベースとドラムと、ブレイクでパッと入るメロディアスなギターと。楽器を持ってるとこうはならないですね。だから、作曲するのは運転してるときが多いです。でも、“これ最高~!”って思うんですけど、運転してるから録音もできない(笑)。忘れんように忘れんようにって思いながら忘れちゃうんですよねぇ。いやぁ~いっつも忘れますわぁ~」
――あかんやん!(笑)
「でも、思い出したときは嬉しいですよ(笑)」
――よく、思い出すぐらいの曲じゃないと、とか言いますもんね。でも、今回はカバーアルバムの話ですから(笑)。それこそチューリップの曲は、前作から候補に上がっていてやりたかったと。
「特に『銀の指環』(M-6)をどうしてもやりたかったんですよね。このアルバムは僕と永井ルイ(b)、松本淳(ds)さんの3人で演奏してるんですけど、松本淳さんは元々チューリップの3代目のドラマーなんで。一般の方は、チューリップはメルヘンチックなフォークロックだと思ってるかもしれませんけど、僕にとってはイギリスの国民的なロックグループ“スレイド”の匂いがするんです。『カモン・フィール・ザ・ノイズ』(‘73)っていうクワイエット・ライオットがカバーしてヒットさせた曲があるんですけど、僕にはそんな感じに聴こえるんですよ。だからすごくグラムロックっぽい。あと、RCサクセションの『雨あがりの夜空に』(M-10)はあまりにも有名過ぎるから、僕がやるんだったら『トランジスタ・ラジオ』(‘80)か『よごれた顔でこんにちは』(‘76)にしたかったんですけど」
――前作もそうですけど、基本的にこのカバーシリーズは原曲に忠実に、をモットーにしてましたよね。
「ただ、あまり変えないことをモットーにすると、(忌野)清志郎さんのボーカルスタイルには特徴があり過ぎて、何か突破口を見出せないかなぁと思ったときに、(『雨あがりの夜空に』は)笑っちゃうほどUFOの『オンリー・ユー・キャン・ロック・ミー』(‘78)とイントロのリフが一緒なのを思い出したんですよ。そこで、清志郎さんのことは1回忘れて、『雨あがりの夜空に』を『オンリー・ユー・キャン・ロック・ミー』を演奏するような気持ちで演ることによって、ちょっと清志郎さんとは違う魅力を醸し出すことに成功したと思ってます。この発想は誰にもなかったと思うんですよね。僕は何を聴いても“何かに似てる”ってすぐ思うんですけど、ディープ・パープルの『バーン』(‘74)に原曲があるの知ってます? あれはジョージ・ガーシュウィンの『魅惑のリズム』(‘24)っていうビッグバンド風の曲を8ビートで弾いてると思うんです。でも、僕らミュージシャンとしては“おぉ! そこにそれを持ってくるか!”っていうアイディアに“お見事!”って思うんだけど、普通の人はそんな聴き方はしていない。頭を柔軟にしてないと気付かないんですよね。やっぱり違う畑からネタを持ってくるのがおもしろいよねぇ。僕はすかんち時代から、常に自分の音楽にはそういうネタを仕込んであります。それを見つけるきっかけになるキーワードも必ず入れてる。今回も、KISSの『テイク・ミー』(‘76)のフレーズをほとんどの曲で弾いてたり、本当にネタをいっぱい入れたんだけど、みんな気付いてくれないんだよねぇ…」
何でか分かったら、とっくに辞めてますわ!
――こうやって話をしてきて思いますけど、ROLLYさんってやっぱり少年のような…って言うとベタな表現かもしれないですけど、キャリアが長ければ、いろいろと現実も見るじゃないですか。それでも今こうやって、嬉々として音楽の話をしていて。
「僕アホですよね? これ元ネタやねん! 見て~!って(笑)」
――(笑)。いつまでもキラキラと夢を追いかけられてるのは何でかな、と思ったりしました。
「何でか? 何でか分かったら、とっくに辞めてますわ!」
(一同爆笑)
「何でか分からんからやっちゃってる。イヤですよもう。何でか分からないから、死ぬまでやるんでしょうねぇ」
――むっちゃいいこと言いますやん。締まりますね~(笑)。
「ありがとうございました(笑)。でもね、分かってくれる人がこの世の中にどこかにいるんじゃないかって、探し求めて曲を投げてるんですよ。『南総里見八犬伝』みたいにね(笑)。その内の1人は共同制作者の永井ルイ。そしてもう1人、一緒にツアーを廻ったりするNeo FantasticっていうバンドのHurricane(vo&g)が2人目。Neo Fantasticの連中は本当にアホでね、特にその人が(笑)。出会ったのはもう8年ぐらい前になりますけど、一発で気に入って楽屋に行って“一緒にやろうぜ”って言ったんで」
――そして、リリースツアーは今回のレコーディングメンバー+三国義貴(key)さんが参加するということで。
「三国さんはTHE YELLOW MONKEYやRED WARRIORSで活躍してきた人なんで、もう何も言わなくても分かるんですよね。すかんちの小川文明(key)さんを亡くして以来、キーボーディストをどうしようかと思ってたところ、最近はロックンロールピアノを最高に弾ける男・三国さんが一緒にやってくれてるから、すごく上手くいってて。4人でこのアルバムの曲をしっかり演奏したいと思います!」
(2016年10月13日更新)
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