「やっぱりバンドは楽しい。それがきっと音楽を続けてる理由」
よりメロディックに、オルタナティブに邁進する
元FACTのメンバーによる世界照準の新バンドが語る夢のつづき
Joy Opposites『Swim』全員インタビュー&動画コメント
(2/2)
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まさか夢が叶うとは思わなかった
――今作のレコーディングは、あのフー・ファイターズのデイヴ・グロール(vo&g)所有のスタジオ、Studio 606 で行ったということですけど、これも特別な体験でしたね。
Immy「まさか夢が叶うとは思わなかったし、夢にも思わなかった」
Tomohiro「そうなんですよね。アメリカでレコーディングしたいっていう話から始まって、プロデューサーもアレックス(・ニューポート)がやってくれるって…もうその時点でヤバいよね(笑)。そこで、アレックスがStudio 606の話を持ってきてくれて。“そんなところでできるの!?”みたいな。機材もやっぱりすごいし、あとスタッフもね」
――レコーディング・マジックじゃないですけど、何か印象的な出来事はありました?
Adam「もう全部(笑)。毎日そこに行くだけでもう」
Eiji「住みたかったです! あのソファーでいいから!(笑)」
Adam「全然いいよ! 俺、庭でもいい!」
(一同笑)
Eiji「期間が1週間しかなかったので、ドラム録りはそこでやって、みたいな感じだったんですけど、多分いろんな気持ちの部分もあって、結局ベースまで録り切れて。今までのスケジュールだと俺、1日半で13曲は叩けないと(笑)」
Tomohiro「もうやるしかない、じゃないですけど、思いっきり楽しんでやろうって。すごく楽しかったし、みんなが楽しんでるし、すげぇいい経験だったなぁ」
Adam「しかも、そこでドラムとベースを録ったけど、演奏自体はみんなしてたんですよ。もうライブ盤的な。それは今までにはなかった」
Tomohiro「今のレコーディングってエディットありきのパズルみたいな感じですけど、ここではもっと“塊”で録ったんで、緊張感がハンパないんですよね」
Immy「とっても刺激的でしたね」
――あと、アレックスが以前プロデュースしたthe telephonesにインタビューしたとき、ベーシストの(長島)涼平くんが、アレックスはまぁ演奏に関してはシビアで、すごく大変だったと言っていて。“涼平、お前は最高のベーシストだ。だからもう1回やろう”って、褒めるんだけどなかなかOKをくれないって(笑)。
Tomohiro「しかも1週間しか時間がないし、“ヤベェ、鬼監督が見てる…”みたいな(笑)」
Eiji「でも、全然やりづらいとかじゃなくて、すごくフレンドリー。言っても、根本にあるのはアレックス=ヒーローな気持ちなんで、もうずーっと目がハートでしたよ(笑)」
Adam「アット・ザ・ドライヴインとか、ブロック・パーティ、デス・キャブ・フォー・キューティーとか、アレックスがプロデュースした作品は全部が素晴らし過ぎて。一緒にできること自体がもう夢、ホントに。あ、サマソニでアット・ザ・ドライヴインにCDを渡しました(笑)」
――マジで!?(笑)
Tomohiro「すごく優しかったけど、こっちは緊張して何も言えない(笑)」
Eiji「みんなでアット・ザ・ドライヴインを観て、何かバンドを始めた頃みたいに、“曲間とかああいう風にしたいねぇ”とか話して。すげぇ楽しかったですね」
Adam「大好きですよ! 俺なんかアット・ザ・ドライヴインのタトゥー入ってますから(笑)。アレックスがRECのときにその写真を撮って、アット・ザ・ドライヴインのメンバーに送ったんですよ。それをサマソニのときに見せたら、“あ、それ見たよ”って言われて。“お、おぉ~!(嬉)”って(笑)。ヤバかったな~」
Tomohiro「さっきFACTが解散したとき、“それぞれがプレイヤーとしても”みたいな話があったけど、個人的にはそこに音楽の楽しさを求めてなくて。“みんなとやる”とか、バンドで同じ体験をして…例えば、物販を作って“ヤバい! このTシャツカッコよくない!?”みたいな楽しさが、音楽にリンクしてるんですよ。極端な話、演奏がそんな上手くなくたってやっぱりバンドは楽しい。それがきっと音楽を続けてる理由なのかなぁ。もちろんいろいろと高めていく必要はあるんですけど、この人たちと、こういうものを作って、こういう活動をして…それが楽しいなぁって」
――“何をやるか”も大事ですけど、“誰とやるか”というか。
Tomohiro「AdamもImmyも、海外のミュージシャンと一緒にやった方がハーモニーの部分でもネイティブだからいいじゃんとか、クオリティを追求していくと、きっとそうする方が間違いがない。ただ、俺らとやろうと思ってくれてるということは、多分そこじゃなくて。足りない部分は頑張って高めればいいわけで、誰とやるか、どういうことをやるかっていう楽しさを、みんなで見てるのかなぁと。楽しみですよ、これからが」
僕たちは“ロックです!”じゃなくて
“Joy Oppositesです!”っていう世界観
――今作は優れたメロディが多いですが、そこを重視する共通認識があったんですか?
Tomohiro「個人的には、鼻歌が歌えるぐらいにはしたくて。だから、演奏スタイルもそれに合わせて変わっていったと思う。メロディをどう活かすかは、全員が考えてたんじゃないかなぁ。ベースもアルバムトータルでいくと、アメリカに行ってから3分の1ぐらいはラインを削ってシンプルにしたし」
Adam「例えば、『Somewhere Down The Line』は最初はギターが3本あってもっと刻んでたのが、アレックスも“まず3本目はカット、刻んでる部分ももっとシンプルに弾いた方がいいよ”って。それでさらにメロディを活かせたし、ギターが忙しくなくなったし」
Eiji「『Blossom Forecast』(M-8)とか『In My Bones』とかもそうだけど、ちょっとアップテンポな曲とかを今っぽいモダンな音にしちゃうと、何かありきたりな感じになるなとは思ったりもして。このアルバムは曲の世界観の落差もすごいあるから、その違いをつなぐためにドラムはオーガニックな感じの音にしたいなと。アレックスが絶対にそういう音にしてくれると思ってたし」
――かつてを観てると、もっと叩けるのに、もっと弾けるのにって求めがちですけど、キャリアも年齢も重ねて、ずっとハイカロリーな音楽がやりたいかと言ったら、みたいな。
Tomohiro「もう、十分やったよね(笑)」
Adam「激しいのは十分やったと思う。でもまぁ何だろうね、激しいのも大好きです(笑)」
Tomohiro「もちろんそういうのも全員好きだし聴くんです。だけど、Joyでそこに向かう必要性は今はないかなって。このメロディを考えたらね」
Eiji「ジャンルじゃなくてバンドそのものとして観てもらえるように、感じてもらえるようになりたいですね。僕たちは“ロックです!”じゃなくて“Joy Oppositesです!”っていう世界観。アット・ザ・ドライヴインを観てても、もう彼らそのものだったんで。ジャンルとか関係なく“うわぁ~!”って感じてもらえるようになりたいですね」
Adam「『Swim』を超えていきますよ。ライブをやって、“この4人で何ができるか?”が見えてくると思うし」
Tomohiro「ライブに関しても、アルバムが出る前に、デモを聴く前に、“やれるでしょ?”って友達のバンドが誘ってくれたからには、応える義務が出てくるじゃないですか。いきなりサマソニみたいなデカいステージに立たせてもらったけど、本来バンドってそこだけじゃないから。小っちゃいライブハウスでやることの方が多くて、そこで“初めて”が“好き”になっていくわけで。そこをどう持っていくか、精一杯やれることをやろうと思ってます」
全世界でちゃんと知られるようなバンドになりたい
――話を聞いてると、次の音源は結構早く出るんじゃないか? みたいな予感もあります。
Adam「もう曲は作ってる(笑)。アメリカから帰ってきてリハが始まる前に、個人練習とか1ヵ月ぐらいの準備期間があったんでね。まだみんなでシェアしてないけど、もう早く、来週でもいいよ(笑)」
Eiji「アハハハハ!(笑)」
Tomohiro「まずはこのアルバムの曲の練習だよ練習!(笑)」
――そうですね、このアルバムをまず聴いてもらわなきゃいけない(笑)。
Tomohiro「ライブでやっていかないと分からないと思うんですよ。俺だってペダルを踏んでコーラスして…ライブ中にお客さんの表情を観るゆとりもまだそこまでないですよ(笑)。FACTのときより追われてる感がすげぇある(笑)。そこに慣れてきたら、もっとどう巻き込むかとか、次のステップに変わってくると思うんですよね」
Adam「しかも、俺はライブでセンターじゃなくて右側にいたかったんですよ。でもImmyに、“いや、お前がセンターにいないと意味ないよ!”って怒られて(笑)。FACTのときはセンターじゃなかったから、それもすごく新鮮(笑)」
――単純に景色が違いますもんね。
Tomohiro「あと、お客さん全員がAdamを観るわけですから」
Adam「必死にペダルの踏み換えとかを考えてるときに、“俺、今センターだ”とか思っちゃうともうダメ(笑)。そのときはえっくんの顔を見る。安心する(笑)」
――今のバンドのいい空気が、すごく伝わってきますね(笑)。
Tomohiro「全然揉めないですね。アメリカに6週間いたときも何1つ揉めない。曲のことで“もっとこうしようか”っていうのはあるけど、ケンカにもならないし。だから一緒にいてすごく心地いいですよ、ホントに」
Immy「LOVEだね(笑)」
(一同笑)
Tomohiro「そういう小っちゃいことを楽しむことができなくなると、“何のためにバンドをやってるのか”ってなってきちゃうと思うんですよ。“お客さんが待っててくれるから”だけを逃げ場にしちゃうと、自分たちが楽しむところとはかけ離れていっちゃうと思うんで。みんな大人だし、リスペクトしてくれるし、リスペクトするし、すごくバランスが取れてるんだろうなって」
Immy「RECのときは本当に楽しかったし、これからツアーをやればやるほどずーっと一緒にいることになる。それに慣れて楽しくなくなる場合もある。でも、俺らは多分大丈夫。一緒にいるのが楽しいから、毎日が楽しい」
――いいな~。“毎日が楽しい”ってなかなか言えないですよ。最後にそれぞれ皆さんに、このバンドで目指していきたいところであるとか、今後に向けてひと言ずつもらえたら。
Eiji「FACTのときに海外ツアーをしてるとき、“お前らカッコいいよね、何歌ってるか分かんないけど”って、何回か言われたんですよ。そこが多分肝というか、それがずっと心に残ってて。やっぱりこういうメンバー編成だし、全世界でちゃんと知られるようなバンドになりたいですね。っていうかなると思うし、渡辺謙さんが『バットマン ビギンズ』(‘05)に出たみたいに、うちらも海外のゲストで出て当たり前みたいな存在になりたい。小っちゃい日本だけじゃなくて、もっと全世界を視野に入れた活動がしたいですね」
Adam「俺もイギリス、ベルギー、日本、いろんな国でやりたい気持ちはもちろんある。そして、このアルバムを超えていきたい。もう本当にいろんなアイデアがあるから、早くそれを形にしてどんどん出していきたい。さらに小っちゃい夢を言うと、この前、千葉の稲毛で公開リハーサルをやったんですけど、そこはTomohiroのホームタウンで。そのとき、16~17歳の頃に初めてのバンドやった俺の本当に地元の小っちゃい街、ノースウィッチのライブハウスでやりたいなって思った。あのシャーラタンズもノースウィッチのバンドで、そのライブハウスというか小っちゃいホールみたいなところでよくやってたんですよ。FACTのときはマンチェスターでライブをやれてすごく楽しかったけど、稲毛でやってノースウィッチに戻りたいなって思った(笑)」
Tomohiro「おぉ~やろう! えっくんとかAdamが言ってることはもちろん、1人でも多くの人に観てほしいし聴いてほしい。“元FACTの”でもきっかけは何でもいいんですけど、パッと聴いて“おもしろいじゃん”って少しでも思ってくれる人がいれば、それが俺らのモチベーションにもつながるし、原動力になる。Twitterで1人でも2人でも“いいじゃん”って言ってくれれば、みんなで“ウォ~!”ってなるんで(笑)。それをワクワクしながら見ていたいですね。そういう感覚がちょっとずつ広まっていってくれると楽しいし、俺らももちろんレベルアップしていくんで」
Immy「もちろん海外でやりたいし、2枚目のアルバムを早く作りたいのもあるけど、今みんなにすごく伝えたいのは、自分はベルギー生まれのパキスタン人でイギリスに住んでて、日本人とイギリス人と一緒にバンドをやってる。でも、全然何の問題もない。結構簡単にコミュニケーションも取れるし、結果的にすごくいいアルバムができたと思うから。別に文化が違っても仲良くできるし、一緒にやっていけるよって伝えたい。俺らは全員同じ人間だから」
Eiji「パチパチパチパチ!(拍手)」
――最後にバンドの話が、めちゃくちゃグローバルな話になった(笑)。いや~こりゃいいバンドだわ。本日はありがとうございました~!
全員「ありがとうございました~!」
(2016年10月 6日更新)
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