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自分を救ってきた歌が、人を救う歌に変わるとき
Lyu:Lyu→CIVILIANへと更新する『Bake no kawa』の真相とは
コヤマヒデカズ(vo&g)インタビュー&動画コメント
「無駄な遠回りではなかったよなと」 自分を救ってきた歌が、人を救う歌に変わるとき Lyu:Lyu→CIVILIANへと更新する『Bake no kawa』の真相とは コヤマヒデカズ(vo&g)インタビュー&動画コメント
バンドには幾つものターニングポイントがある。それはワンマンであり、リリースであり、時にメンバーの脱退や、休止だってそうだろう。だが、そのどれにも当てはまらない“改名”という稀有な転機を迎えたバンドを司るコヤマヒデカズ(vo&g)は、ブログでこう綴っている。“僕は自分が言いたかったことや過去に言えなかったこと、自分自身のプロパガンダのようなもの、頭の中で何度もぶっ殺したあいつのこと、謝りたくても謝れなかったこと、そんなようなものを音楽の力を利用して人に理解、承認してもらおうとしただけで、純粋な意味で音楽をやっている人達とは自分は違うのだ、という気持ちがどこかにあったと思います。きっと自分は音楽じゃなくたって何だって良かったのです、ただ自分を吐き出すことができれば。小説だろうが演劇だろうがダンスだろうが絵画だろうが何でも。でも今は、音楽でなければ駄目です。あの2014年から時が経って、もっともっと自由に純粋に「音楽」に殉じたいと思うようになりました。自傷行為にも似た呪いの言葉を吐き出すだけの歌から、もっともっと広い世界へ足を踏み入れてみたくなりました。そして、それができる機会は今を置いて他に無いと思いました”。Lyu:Lyuとしての8年の活動を経て、7月18日付でバンド名をCIVILIANに改名。“市民”という名のバンドの新たなスタートラインとなるシングル『Bake no kawa』は、現代に巣食う人間というモンスターを描き、強烈なエナジーをフルドライブさせるマッシブな表題曲に、胸の奥にある壊れそうな気持ちを言い当て、問答無用に聴く者を奮い立たせる感動の名曲『爽やかな逃走』、脳内リベンジを軽やかに音と言葉で完遂する『自室内復讐論』と、3人の強固な意志と闘争の幕開けを周囲にも自らにも告げるような強力な3曲をコンパイル。さらには、現在放送中の読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『黒い十人の女』(木曜23:59~)の主題歌として書き下ろした新曲『愛/憎』(アイトゾウ)にて、11月にメジャーデビューを果たすことが先日予告されるなど、怒涛の急展開を見せるCIVILIAN誕生までの2年間のストーリーを語ったインタビュー。こんな未来が待っていたなら、回り道も悪くない。
「まさに今言ってもらった通りというか、音楽を作る人間にとって、新しい曲をアウトプットすることこそが代謝になるし、それによって自分自身を更新できる感覚はあったので。だからこそ、それを2年やれてなかった分、バンドとしての代謝がなかったのはすごく感じていて。ただ、表題曲の『Bake no kawa』(M-1)は本当に最近の曲ですけど、それ以外の2曲はいわゆるこの2年の間に書いた曲で、最初からCIVILIANを自分たちで定義してしまうよりも、とにかく曲を出してしまおうみたいな感じはありましたね。自分たちがどうすべきかは曲が運んで行ってくれると個人的には思っているところがあって、音楽が届いて初めて定義されるというか。まずはとにかく気合の入った曲を作りたかった、そんなシンプルな気持ちでやってましたね」
――今までは割と構築されたデモをコヤマくんがメンバーに渡して、みたいなところが、『Bake no kawa』はその制作途中から事前に意見を言い合ったと。
――表題曲の『Bake no kawa』は人間というモンスターの存在を描いたような曲で、現代におけるSNSとかがまさにやけど、そういう闇を描きながらも光が見える、そこに立ち向かう強い意志をすごく感じます。
「『Bake no kawa』を知り合いに聴いてもらったとき、“今までに比べてリーダーになろうとする感じがする”って結構言われたんですよ。書いた瞬間は、別に自分が何かを率いるつもりではなかったんですけど、“自分自身のことだけで完結させない”みたいな意志は多分最初からどこかであって、それが出てたんじゃないかなと」
「(笑)。この曲は最初から3人に共通のイメージがあって、表題曲の『Bake no kawa』はボーカルにエフェクトが掛かっていたり、サウンドのギミックに凝っている曲なので、この曲は逆にギミックなしで、あくまで軽快にバンドが“せーの!”でやりました、ぐらいの感じがいいよねって。歌の主人公的には全然笑える状況じゃないと思うんですけど(笑)、サウンドが歌詞の空気をいい具合に喜劇的にしてくれているという」
シヴィリアン…写真左より、純市(b)、コヤマヒデカズ(vo&g)、有田清幸(ds)。’08年、コヤマが同じ学校の卒業生である純市と有田に声をかけ結成。絶望的とも見られる言葉の連続の中に微かな希望をリアルに描写するコヤマの圧倒的な世界が貫かれたスリーピースロックバンド。退廃的な世界と攻撃的な楽曲が試聴サイトやライブ会場で話題となり、’10 年にオリコン主催による一般リスナーが選ぶネクストブレイクアーティストに選出された1stミニアルバム『32:43』にてインディーズデビュー。’16年にバンド名をLyu:LyuからCIVILIANに改名。同年8月3日、1stシングル『Bake no kawa』をリリース。同年秋から放送中の読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『黒い十人の女』(木曜23:59~)の主題歌として書き下ろした新曲『愛/憎』(アイトゾウ)を、メジャーデビューシングルとして11月23日(水・祝)に発売することが決定している。