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「音楽から今の自分の状態を知る
　ミュージック・セラピー的な要素を持たせたい」
akikoがデビュー15周年に提案するアーユルヴェーダな新ベスト
『Elemental Harmony』インタビュー

　スタンダードなジャズからロック、エレクトロニカ、オールドタイミーなジャイヴ～スウィングまで。常に自由かつ柔軟な音楽的スタンスで多彩なアルバムを発表し、ファッションなどの音楽以外のカルチャーとの結びつきも示しながら、新しい音楽を提示し続けるシンガーのakiko。今年デビュー15周年を迎えて発表された『Elemental Harmony』は、これまでの楽曲＋未発表音源11曲を“アーユルヴェーダ(＝五千年の歴史をもつインド・スリランカ発祥の伝統医療)”の土・水・火・風・空という五元素に基づいて5つのCDにコンパイルした、彼女ならではのベスト的なコンセプトアルバムとなっている。ありきたりのベスト盤とは一線を画する新作と真摯で妥協のない活動スタンス、そして8月12日(金)にビルボードライブ大阪で行われる発売記念ライブについて語ってもらった。
 
 
こういう音楽の提案の仕方はメジャーなシステムの中にいたら絶対に出来ない
 
 
――ベストとしても優れた内容ですが、それ以上にakikoさんの音楽を新しい形で聴き手の生活の中にプレゼンしてくれるような、他に例のない5枚組のコンセプトアルバムになっていますね。
 
「(ありきたりの)ベストアルバムを出す意味って、ハッキリ言って今はもうなくなってきているというか。今は誰でも自由にプレイリストを作れるし、それをいろんなフォーマットに落とす手段も持っている。だから、コンパイルするとしたら、何か私にしか出来ないやり方でプレゼンテーションしたいと思ったんですよね。今回のアルバムを5枚に分けたのは、土・水・火・風・空というアーユルヴェーダのコンセプトを使っているんですけど、例えばここで、クラブジャズ、スウィングジャズ、モダンジャズ…みたいに、ジャンルごとにカテゴライズするのはナンセンスだなと思って。今までに21枚のアルバムを出してきてそれぞれに方向性が違ったし、大別しようとしてもジャンルがいっぱい出来てしまうので、今回の分け方がいいかなと思ったんですよね。そして、それがただの寄せ集めではなくて、それぞれの元素を調整するようなミュージック・セラピー的な要素を持たせたいなと思ったんです」
 
――akikoさんの場合、ジャンル分けするとなるとジャズだけでも数枚では収まらない上に、ロック、ブラジル音楽、エレクトロニカなど、際限がなくなってしまいそうですもんね(笑)。
 
「そうなんですよね。そうなると分ける意味がなくなってしまうし(笑)」
 
――今回の分け方の方がむしろ、日常生活の中での気分の移り変わりやシチュエーションに合わせて多様に楽しめる気がします。
 
「そうですね。“自分の好きな曲”とかいうことではなくて、私が選曲とフロウを考えて作ったそれぞれのディスクのコンセプチュアルな聴き方を、すでに楽しんでくれている方が結構いて。“私は火のアルバムを聴いたときに一番感じるんですけど”とか、“私は空のアルバムが一番好きなんですけど、それはどういう意味なんでしょうか？”とか、逆に音楽から今の自分の状態を知るという聴き方も出来るんだなぁと」
 
――音楽って、その日の自分の状態などで、しっくりくるものが実は変わりますもんね。
 
「あと、今回は未発表音源を11曲も入れていて、今までのアルバムを全部持っている人にも買ってもらう意味はあると思います。5枚組で3900円と、全く経済的ではないですけどね(笑)。しかも、今作は自分のレーベルから出しているんですけど、半分以上の曲は(メジャーレーベルから)許諾を取るのでライセンス料もすごくかかっていますし、パッケージも凝っているので、我ながら本当にお値打ちだと思います。それはもちろん裏事情なんですけどね」
 
――メジャーレーベルに在籍しながら出しているベスト盤とは、大きく意味合いが変わりますよね。
 
「というか、この出し方はメジャーレーベルでは絶対にやらせてもらえないです。最初はメジャーから出そうという話もあったんですが、“出来ても2枚組だ”と言われて。ドリカムだって3枚組なんだから(笑)。だったら自分でやろうということだったんですよ。でも逆に、それが自分でやっている自由さの醍醐味というか、おもしろいじゃないですか？　経済的ではないし、効率はすごく悪いけど、こういう音楽の提案の仕方はメジャーなシステムの中にいたら絶対に出来ないし。私はあまりミュージシャンのコミュニティにも属していないんですよね。それよりも“異業種コラボ”というか、ウェルネスの分野で今回のようにアーユルヴェーダとコラボしたり、ファッションやコスメの業界と何かしたり、そういう全く違う業種とのコラボの方が楽しくて、アルバム制作でもライブ制作でも、常にそういうことをしていきたいと思うんですよね。やっぱり組織の中にいると、最初から予算がないからダメとか決められちゃうんですけど、それってすごく“夢”がないじゃないですか？　音楽ってすごく夢があるものなのに」
 
 
全体をプロデューサー的な視点で見て企画したり演出したりすることが好き
 
 
――akikoさんの最近の活動は、その辺りの音楽以外のフィールドとの結びつき方が必然的かつ自然で、なかなか他のミュージシャンには出来ないことだなと思います。
 
「私は元々“歌えていれば幸せなんです”というよりは、もうちょっと全体をプロデューサー的な視点で見て企画したり演出したりすることが好きなんですよね。そういう視点で、同時発売されたチャイチーシスターズのデビュー作『GIRL TALK』も作ったんですけど、ジャケットの絵をイラストレーターの田村セツコさんに描いてもらっているんですよね。田村さんもこういう古いジャズが好きでご自身も歌っていらっしゃったりするし、この田村さんの絵があるから、曲や音作りのイメージが固まったところもあったんですよね」
 
――チャイチーシスターズは最近のakikoさんの作品にも参加していてオールドタイミーなジャズをキュートに聴かせていましたが、田村さんの絵の世界と結びつくことでグッと親しみも増しますね。
 
「田村さんのイラストは女の子なら一度は見たことがあると思うし、もう70歳は超えられているんですけど普段の服装とかもかわいくて、すごく素敵な方なんですよね」
 
 
音楽を空間演出や自分自身のバランサーとして使っていく
 
 
――このように15年の間に作ってきた曲たちをコンパイルしたことで、改めてakikoさんご自身が気付かされたことなどはありましたか？
 
「私自身にとっては“空”のアルバムが今の自分に一番近いモードで、今後もこういうことをやっていきたいんだなと思いますね。いわゆるメロディみたいなものがなくて、淡々と詩を読んでバックにはチャイムの音が鳴っているだけのトラックも入っているんですけど、そういう“空間音楽”的なものも作っていきたいなと思っています。それだけじゃなくて、今回の選曲でも示せたように、音楽を空間演出や自分自身のバランサーとして使っていくような提案もしていければなと」
 
――音楽にアーユルヴェーダを応用すると聞くと、何だかスピリチュアルな音を想像してしまったりもしますが、そういうことではないことも今回の5枚組でよく分かりました。
 
「これまで個人的にアーユルヴェーダを勉強してきてワークショップをやったりもしてきたんですけど、“何でジャズシンガーなのにアーユルヴェーダなの？”という謎もあったと思います(笑)。今回はこういう形で私が勉強してきた知識と音楽をちゃんとリンクさせることが出来たので、よかったなと思っています」
 
――そして、8月12日(金)にはビルボードライブ大阪にて、ピアノトリオ編成に加え、ゲストにチャイチーシスターズとギタリストの小沼ようすけさんを迎えた、発売記念ライブが行われます。
 
「ピアノトリオは今回のアルバムにも参加してもらっている林正樹さんのトリオで、小沼ようすけも私と同じく今年がデビュー15周年ということでゲストに参加してもらいます。林さんは(音楽の中に)ストーリーを作っていくのが上手な方で、東京の代官山のT-SITEで私が定期的に企画してやっている『音楽を詠む夜』というイベントも、林さんありきでやっているところがあって。大好きなピアニストですね」
 
 
Text by 吉本秀純



【LIVE DATA】
　
『akiko 15th Anniversary Tour “Elemental Harmony”』
 
【東京公演】
チケット発売中
▼8月11日(木)16:30／19:30 
ビルボードライブ東京
自由席7000円
ビルボードライブ東京■03(3405)1133
※未就学児童入店不可｡18歳未満･高校生は成人の同伴にて入店可｡チケット購入後､手元にチケットを用意の上､問合せ先まで要連絡(入場整理番号決定)｡

【大阪公演】
チケット発売中
▼8月12日(金)18:30／21:30
ビルボードライブ大阪
自由席7500円
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※本チケットに整理番号はございません｡ご希望の方は発券後､お問合せ先まで要連絡｡当日は整理番号順でお席へご案内しておりますが､整理番号をお持ちでないお客様は開場時間の30分後のご案内となります｡カジュアルエリアの取り扱いなし｡未就学児童及び高校生同士の入場不可｡18歳未満は成人の同伴が必要｡

【愛知公演】
チケット発売中
▼8月14日(日)16:00／19:00
名古屋ブルーノート
ミュージックチャージ7400円
名古屋ブルーノート■052(961)6311

（2016年8月10日更新）


Check

Release

土・水・火・風・空の5枚組全50曲！
新曲11曲含む集大成で新機軸なベスト

Best Album
『Elemental Harmony』
発売中　3900円(税別)
ability muse records
POCS-9134

＜Disc1 [earth]収録曲＞
重く気分が乗らないとき、現実を受け入れられないとき、打開できない現状に打ちのめされそうなとき、人の言葉に傷ついてしまったとき…など。
01. Spring Can Really Hang You Up
The Most
02. East Of The Sun
03. Dark Eyes
04. Wish You Were Here (New Track)
05. Gee Baby, Ain't I Good To You
06. Come On - A My House (New Track)
07. Skindo - Le - Le
08. Bei Mir Bist Du Schön
09. Lullaby In Ragtime (New Track)
10. The Rose (New Track)

＜Disc2 [water]収録曲＞
悲しいとき、寂しいとき、現状に流されそうなとき、気分が浮かないようなとき…など。
01. Do You Know
02. Cry Me A River
03. I Miss You
04. Tristeza
05. Cherokee
06. Jazz ~ Introducing
“How High The Moon” (New Track)
07. Upstream
08. Onnanoko No Yuutsu (女の子の憂鬱)
(New Track)
09. Girl Talk (New Track)
10. Fly Me To The Moon

＜Disc3 [fire]収録曲＞
ちょっぴりイラついて人のせいにしたり、人に八つ当たりしそうなとき、許せない気持ちのとき…など。
01. Old Devil Moon
02. So Tired
03. You Really Got Me
04. Video Killed The Radio Star
05. Brazil
06. Big Bang
07. Fever (New Track)
08. Can’t Buy Me Love
09. Lady Madonna
10. The Gift

＜Disc4 [wind]収録曲＞
考えがまとまらず、落ち着かないとき、ソワソワしてしまうようなとき、不安や心配でいっぱいのとき…など。
01. It Don't Mean A Thing
02. Funky Monkey Baby
03. Lupin The Third
- Hajime Yoshizawa Remix
04. Waters Of March
05. Mr. Sandman
06. I’ve Got You Under My Skin
07. Ladies Love Mercedes
08. Love Theme From Spartacus
09. All Blues
10. Around The World

＜Disc5 [space]収録曲＞
心にぽっかり穴が開いてしまったとき、まとまりがつかないようなとき、疎外感や孤独にさいなまれてしまっているとき…など。
01. Gymnopédie No.1
02. Naima
03. Time
04. The Reason Of My Tears (New Track)
05. A Song For You
06. In The Afternoon (New Track)
07. The Only Words
08. Beyond The Moon
09. Across the Universe
10. I Am (New Track)

Profile

アキコ…’01年に名門ジャズレーベルの“ヴァーヴ”から初の日本人女性シンガーとしてデビュー。その後もジャズというジャンルに捕われることのない活動スタンスで作品を発表し、これまでにスウィング・アウト・シスター、小西康陽、須永辰緒、ブッゲ・ヴェッセルトフト、大貫憲章らをプロデューサーやスーパーバイザーに迎えてきた。近年は、英国アーユルヴェーダカレッジ日本付属校認定アーユルヴェーダ・ライフスタイリスト、日本ナチュラルヒーリングセンター認定アーユルヴェーダ・ホームケアドクター及びライフコンサルタントの資格を取得。不定期でアーユルヴェーダのワークショップやスリランカでのリトリートツアーなども開催している。デビュー15周年を迎えた今年6月22日に、未発表音源11曲を含むコンプリート・コンセプトアルバム『Elemental Harmony』を発表。

akiko　オフィシャルサイト
http://www.akiko-jazz.com/

　

Column

「ダンスミュージックであるジャズ
　の魅力を伝えていかないと」
GENTLE FOREST JAZZ BANDを
率いてakikoが音楽やファッション
に対する敬愛を綴る『Rockin'
Jivin' Swingin'』インタビュー

特設ページはコチラ！

　

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ビルボードライブ大阪
黒木あいさんからのオススメ！

「自身の感性に真摯に向き合い、活動の幅を広げ続けるakikoさん。東北や熊本にチャリティで訪れ、出会った人々とのつながりを大切にされていたり、日本全国はもちろん海外のミュージシャンたちからも愛されていることから、彼女の人柄の奥深さを感じます！　ビルボードライブにも様々なアーティストとコラボして登場されています。今回も、akikoさんが盟友たちと共にお届けするステージは必見！　チャイチーシスターズのデビューアルバム『GIRL TALK』も私のお気に入りです」