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「“ダンスミュージックであるジャズ”の魅力を伝えていかないと」
 ビッグバンドGENTLE FOREST JAZZ BANDを率いて
 akikoが音楽やファッション、カルチャーに対する敬愛を綴る
『Rockin' Jivin' Swingin'』インタビュー

 正統派のジャズから、今年で35周年を迎えるロックDJイベント『ロンドンナイト』へのトリビュートやクラブジャズ界の才人たちとのコラボまで。多彩なアプローチの作品を世に送り出し続けてきたシンガー・akikoの新作『Rockin' Jivin' Swingin'』は、タイトル通りに彼女の音楽的ルーツの1つであるスウィンギンなジャイヴに取り組んだ痛快作となっている。大所帯のビッグバンドに可憐な女性コーラスグループなども交え、ゴージャスかつ洒脱な音と彼女のファッションやカルチャーに対する敬愛が隅々まで行き届いた新作と、4月25日(土)に迫ったビルボードライブ大阪公演について語ってもらいました。

 
 
ビッグバンドで歌うというのも特別なことで
私自身が感動して泣きそうになってしまうこともある
 
 
――今回の『Rockin' Jivin' Swingin'』は、’05年に小西康陽をプロデューサーに迎えて発表した名作『Little Miss Jazz&Jive』を彷佛させる内容ですが、同じスウィンギンなジャイヴものでも、また違ったタッチの仕上がりになっていますね。
 
「前作はやっぱり小西さんプロデュースというのがすごく大きくて、小西さんのカラーが強く出ていましたけど。今回はセルフプロデュースということで、小西さんのことはすごく尊敬しているけど彼のようにやろうと思っても出来ない部分もあるし、『Little Miss~』は“私の趣味の世界をこんな風に表現してもいいんだ”という糸口になった作品だったので、今回はそれを1人でやってみたという感じですね」
 
――50年代やそれ以前のジャイヴものというのは、akikoさんにとってやはりオールタイム・フェイバリット的な、1つの大きな柱のような音楽なんですね。
 
「そうですね。今作にも参加しているチャイチー・シスターズも入れて、一昨年に東京で『Rockin' Jivin' Swingin'』というジャイヴやドゥーワップを演奏するスタンディングのイベントをやったんですけど、スタンディングのイベントって準備なども大変で、なかなか疲れるんですよ(笑)。でも、久々にやってみたらお客さんもすごく喜んでくれて、“こういうものって求められているんだな”と感じたので、去年も同じ形式て2回やったんですけど。そのときにはもう、今回のようなアルバムにしようと考えていたんですよね」
 
――こういった音をちゃんと奏でていて踊れるイベントというのは貴重ですもんね。ビッグバンドのスケジュールを押さえて、いい会場を選んで運営してと、主催側は手間がかかって大変とは思いますが。
 
「ホントにすごく大変なんですけど、それだけの手間をかけてもやる価値はあると思えたし、ジャイヴという“ダンスミュージックであるジャズ”の魅力をもっと伝えていかなければいけないなと。その東京のイベントでは、ジャイヴやリンディホップと呼ばれるダンスを踊る人もいて、みんなが好きなように自由に楽しみながら、それぞれがその人なりのお洒落をして来てくれているのも良くて。すごくビックリしたのは、その中にカップルで踊っているオトナの男女がいたんですけど、その2人は1stセットが終わってDJを挟んで2ndセットに入ったときには、ちゃんと違う衣装に着替えていたんですよね。またその洋服がすごくかわいくてお洒落で。そこまでの気持ちや気合いで来てくれるイベントを作るのは、すごく大事なことだなと」
 
――最近のクラブなどはカジュアル化して、そういうファッションへのこだわりは薄れましたもんね。
 
「私はジャイヴという音楽も10代の頃にクラブで知ったし、当時は『ロンドンナイト』と『ロカビリーナイト』というイベントによく通っていましたけど、普通の格好では行けなかったですね。その方が浮いちゃうから。私は高校生だったからお金もなくてヴィンテージな高い洋服などは買えなかったですけど、安い古着屋で50年代っぽいワンピースを探したりして。今のクラブカルチャーにはそういう部分はないですけど、私の中ではファッションと音楽は常にリンクしているものだし、“コレは気合いを入れてお洒落をして行かないと”とか、普段とは違う時間なんだということを味わえる空間を提供していきたいなと思うんですよ。ビッグバンドで歌うというのも特別なことで、私自身が感動して泣きそうになってしまうこともあるんですけど。音楽って本当に大きくて夢のあるものなんだなということが、ビッグバンドではすごく分かりやすく感じることが出来るんですよね」
 
 
大量生産が始まる前に産み出されたモノって
そこに込められたエネルギーや熱量が全然違う気がするんですよ
 
 
――アルバムでも特に、21人編成のGENTLE FOREST JAZZ BANDによる演奏には、効率化された近年の録音作品にはないリッチな豊かさが感じられました。
 
「今回のアルバムの収録曲はどれも自分の好きな曲ばかりなんですけど、特に12曲目の『I've Got You Under My Skin』はフランク・シナトラが録音したアレンジとほぼ同じもので、自分で聴いていても毎回グッときちゃうものがありますね。ビッグバンドで歌うというのはシンガーの醍醐味であるはずなのに、やっぱり今まではマネージメントやスタッフに相談してみても予算的な問題で実現出来なかったんですけど、多分そんなことを言ってたら一生出来ないと思ったので、じゃあヤッちゃえというのが今回のアルバムですね(笑)」
 
――スウィングジャズ、ドゥーワップ、ラテン、ニューオリンズ、ブルースなどと多彩で痛快な音楽面はもちろんのこと、文字フォント選びにも凝った40~50年代の海外のファッション雑誌のようなブックレットや、オリジナル・テキスタイルの生地を使ったワンピースなどで撮影された写真など、イベント同様にこだわり抜かれたCD盤のアートワークも半端ではない徹底ぶりです。
 
「なぜ私が50年代以前の音楽、もっと言うとファッションや家具や車などにも魅かれるかと言えば、やっぱり大量生産が始まる前に産み出されたモノって、そこに込められたエネルギーや熱量が全然違う気がするんですよ」
 
――確かに、手間のかけられ方や細部への凝り方などが、格段に違う気がします。
 
「例えば、ちょっと女の子の話になりますけど、お洒落をするのでも50'sはまだいいんですけど、20年代の髪型を再現するとかになるとすごく面倒なんですよ。髪の毛をピンで留めたものをサザエさんみたいにいっぱい作って、そのまま一晩寝た後に、次の日に出かける前にそれを全部取って…という感じで。そこにかけられている熱量が今とは全然違うんですけど、お洒落ってそれくらいのことだったと思うんです。もちろん今それほどのことをしろと言ってるわけじゃないし、そんなに手間をかける時間もないと思うんですけど、当時それくらい時間をかけて作られたモノの魅力を感じることは、今の時代にとってすごく必要なことだと思うんですよね。ホントの意味でのお洒落とか、ホントの意味での豊かさとかを、ちゃんと考える意味のある時代なんじゃないかなと」
 
――そんな古き良き時代の音楽、ファッション、カルチャーへの敬意がヒップに詰まった『Rockin' Jivin' Swingin'』と共に、4月25日(土)には大所帯のGENTLE FOREST JAZZ BANDを引き連れてのライブが、ビルボードライブ大阪にて行われます!
 
「ホントにバンドは豪華だし、ビッグバンドを生で聴く機会ってそんなにないと思うんですが、一度聴いてもらえば“音って振動なんだ”ということが分かってもらえると思います。それを味わいにきて欲しいし、あとはその人なりのお洒落をしてきてもらって、いつもと少し違う時間の過ごし方を楽しんでもらえればと」
 
 
Text by 吉本秀純



(2015年4月21日更新)


Check

Release

ビッグバンドや女性コーラスを交え
映画音楽のようにスウィング&ジャイヴ

Album
『Rockin' Jivin' Swingin'』
発売中 2200円(税別)
ability muse records
POCS-1309

<収録曲>
01. Come On-A My House
02. I'm Gonna Sit Right Down
And Write Myself A Letter
03. Relax Max
04. What A Little Moonlight Can Do
05. Fools Fall In Love
06. Rum and Coca Cola
07. I'm Walkin'
08. Exactly Like You
09. Blues No.8
10. Sh-Boom
11. Mr.Sandman
12. I've Got You Under My Skin
13. Goody Goody

Profile

アキコ…’01年に名門ジャズレーベルのVerveと初の日本人女性シンガーとして契約を交わしデビュー。これまでに須永辰緒、小西康陽、大貫憲章、福富幸宏、ブッゲ・ヴェッセルトフト、Swing Out Sisterといった面々をプロデューサーやスーパーバイザーに迎えて多彩な作品を発表。その一方で、アパレル・ブランドとのコラボで帽子やワンピースなどのアイテムを展開するなど、ファッション方面でも活躍している。

akiko オフィシャルサイト
http://akiko-jazz.com/


Live

ビッグバンドとの一夜限りの
スペシャルナイトがビルボードで!

 
『「Rockin' Jivin' Swingin'」Release Live
 akiko featuring
 GENTLE FOREST JAZZ BAND』
チケット発売中 Pコード258-694
▼4月25日(土)16:30/19:30
ビルボードライブ大阪
自由席7400円
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※カジュアル エリアは取り扱いなし。未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。

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