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「ちゃんと辛かったし、ちゃんと傷付いた
 でも、その都度俺たちは乗り越えてきたから」
メンバーの脱退も加入も、メジャーからの離脱も独立も語り尽くす!
THEラブ人間の全て『メケメケ』インタビュー&動画コメント

「本当にね、これが全部、今の全部だよね」。金田康平(歌手)がインタビュー中に漏らしたこの言葉は、この3年間の重さと燃やし続けた情熱を示しているようだった。全身全霊を注いだ前作『SONGS』(‘13)から約3年、THEラブ人間が3rdアルバム『メケメケ』を完成させた。スピードワゴン小沢一敬が出演した『コント』をはじめ、『クリームソーダ』『FUSHIGI DANCE』『じゅんあい』『幸せのゴミ箱』etcと、事前に公開されたMVも話題を呼んできた彼らだが、自らへのカウンターアルバムの如く徹底的に実験と挑戦を繰り返した今作は、元来持っていたポップネスが大爆発! 己の美学と決別し、再び手に入れた生命力溢れるバンドサウンドを、新たにこの恋愛至上主義音楽集団に加わった、坂本遥(ギター)、さとうまりな(ベース)というフレッシュな仲間たちと共にフルドライブさせている。バンドのアイコン的役割を担っていたおかもとえみの脱退、メジャーからの離脱、そして独立…。紆余曲折の3年の間に、THEラブ人間にいったい何が起こったか――? 金田康平と坂本遥が、そのドラマをとことん語ってくれたインタビュー。そう、彼らはいつだって信念を鳴らしてきた。そして、これからも。



このまんま行くと、このバンドは空中分解する
バンドをよくするためにメジャーを辞めたかった
 
 
――この取材の前はインストアだったんよね?
 
金田「そうそう。しかも今回はイオンモールとかでもやって」
 
――マジで!?(笑) そう考えたら前作『SONGS』(‘13)以降ね、まるで動きも違うというか。『SONGS』で言葉の1つ1つに執着して、研げるだけ研いで、メッセージをぶっ刺して。プライベートで死に向き合うこともあって、1つの到達点となるアルバムが出来た。でも、以降えみそん(=おかもとえみ・元ベース)が脱退したり、事務所を離れたりもして…。ブログでも言葉にはしてくれたけど、やっぱり面と向かってちゃんと聞いておきたいなと。
 
金田「そうかもねぇ。きちんと喋ったことなんて、そんなにないかもしれないなぁ…。まぁメジャー辞めた理由はいろいろあるけど…結局『SONGS』って、本当に“曲たち、歌たち”というか。メンバー同士のコミュニケーションも会話の中では生まれなくて、全部音だけで話していた時期というか。1stアルバムの『恋に似ている』(‘12)で初期衝動は使い果たした。で、自分が最もTHEラブ人間だと思う部分を研ぎ澄ませたのが『SONGS』だと思ってて。MCもしない、全部音と歌詞だけで伝える。ってなるとやっぱり、元々メンバーの仲はいいんだけど、本当に音楽でしかコミュニケーションできなくて。俺がまずディスコミュニケーションな感じだったし。でも、THEラブ人間はすごくストイックにシリアスにやってきた部分と、もう一方ではやっぱり“多幸感”があったはずなんですよ。その多幸感をないがしろにしてでも、俺は『SONGS』を作りたかった」
 
――そうしないと作れなかった作品だろうしね。
 
金田「そう。そうしないと、すげぇ中途半端な作品になったと思うんですよ。だから、そのためにと思ってストイックにやってたけど、やった後に思ったのは、“このまんま行くと、このバンドは空中分解する”って。俺はとにかくツネ(・モリサワ)(キーボード)と会話ができなくなるのはイヤだったんですよ。ツネはバンドを作ったメンバーだし、ツネが俺の曲を好きだから、俺はこのバンドをやってるところがあって。ツネはツネでメジャーを辞めたかった理由があったと思うし。詳しくはツネからいつか喋った方がいいと思うから、俺は言わないですけど(笑)」
 
――まあいろいろあるわね(笑)。
 
金田「結局、バンドをよくするためにメジャーを辞めたかったんですよね。(当事所属していた)SPEEDSTAR RECORDSは3rdアルバムを出そうと言ってくれたけど、そうなると半年以内にはリリースしなきゃいけない=締め切りがある。メジャーにいながらバンド内の関係を修復して3rdを作ることもできるけど、それを半年でやるのは無理だと思って。せっかくこんなにいい2ndを作っても、3rdでお飾りのような中途半端なアルバムを作ったら終わりだから。今は締め切りがある状態でレコーディングは出来ないと思ったんだよね。だからメジャーを辞めようって」
 
 
どっちか迷いそうになったら、絶対に何が起こるか分からない方を
選んだ方がいいと思ってバンドをやってきた
 
 
――でも、それってある意味、音楽を、バンドを大事にした選択で。その選択が出来ないバンドも、やっぱりいる。
 
金田「だってまずお金がなくなるからね(笑)」
 
――事務所の都合もあるし、メンバーだってそう。みんないろんな帳尻を合わせて生きている。レコード会社が契約終了と言ってきたならまだしも、更新してくれたならやろうかなっていうのが、ほとんどのバンドだと思うし。
 
金田「しかも俺はそもそも(曽我部恵一主宰の)ROSE RECORDSかSPEEDSTAR RECORDSからずっとリリースがしたかったんで。それなのに離れなきゃと思ったぐらいだから、あのときはよっぽどだった。このまんま行くと本当にTHEラブ人間がどうにかなっちゃうから、だったら茨の道を進んだ方がいい。どっちか迷いそうになったら、絶対に何が起こるか分からない方を選んだ方がいいと思ってバンドをやってきたんで。で、えみは…俺が思うにね、えみは結局、歌いたかったんだと思う。自分で曲も書けるし、バンドも並行してやってたし、そういう人って他人の曲を演奏できたとしても、何かしらボーカルの脳みそが働くと思うの。俺だったら、他人の曲は出来ない。どこかのバンドにギターで入っても、ステージで1分も出来ないね(笑)」
 
――根っからのフロントマン気質(笑)。
 
金田「だって、魂込もんないもん。だったら自分が歌いたいと思う気持ちは、俺には想像できる。えみは自分で歌いたいと思っただろうし、脳みその中にある予想図を試すにはいい機会だったと思うし。だからこそ、みんなそれぞれ超寂しかったと思うけど止めなかったし、その日の夜にタニ(=谷崎航大・バイオリン)、(服部)ケンジ(ドラムス)、俺、ツネの男4人で、下北沢の北口のガストに集まってね。みんなね…もう本当にポンッと背中を押したら、“解散しよう”って言い出しそうな雰囲気がしててさ(笑)。だけどツネが、“いや~解散はないでしょ”みたいなことをポロッと言ったんだよね。ツネが作ったバンドだし、ツネが辞めない、解散しないって言うんだったら、俺はやろうと思った。その言葉を誰かが言えたから、みんなスッキリしたんだろうね。“ほんじゃお疲れ!”って帰って(笑)」
 
――自分で決め切れない気持ちもあっただろうし、誰かが“続けよう”と言ってくれるのを待ってたかもしれないね。
 
金田「みんなそれぞれえみといっしょで、人生の設計図と予想図はあるんだよ。THEラブ人間をあのタイミングで辞めてたら…例えば、就職して、結婚しようと思うヤツもいるだろうし、俺もソロ活動をしようとパッと頭をかすめたりもしたけど、ツネがポロッと“解散はしない”と言った瞬間に、そういう予想図がまた一気に“次のTHEラブ人間”に切り替わったんだよね。えみのラストライブのときにはもうメンバーを募集してたし、それまでのツアー中もえみなしで新曲も作ってたし。メンバー募集で来てくれた人とスタジオに入って、あーでもないこーでもないって何人やったかな? 三味線とか(笑)」
 
坂本「フルートとか」
 
金田「あと、ダンサーもいたしね。俺はベースが辞めたからってベースを入れようとは思わなかったんで。別にトロンボーンでもいいし、とにかく可能性は潰さないでおこうと。ジャンル、国籍、年齢、性別、問いません!だったから、結構いろいろと来たんだけど、結局…ピンと来なかったんだよね。俺は“THEラブ人間がめっちゃ好き! 俺がTHEラブ人間をよくしてやる!”って思うヤツとやりたいと思ってたの。そんなときに、(さとう)まりなは“バンドがやりたい女の娘がいるよ”って紹介されたの。で、(坂本)遥は…どうぞ(笑)」
 
坂本「’13年の末、それこそえみそんが辞めて1週間以内だったと思うんですけど、僕もちょうどその時期にバンドが解散して。でも、ギターを弾きたいし、音楽で生きていきたいから、いろいろとツテを探してたんですけど、シンガーソングライターの女の娘のサポートをしてたとき、年末の渋谷LUSHの対バンが金田くんだったんですよ。自分のライブが終わって金田くんのライブを観てて、“うわ、何かよく分かんねぇけどいいなぁ”と思って(笑)話しかけに行ったら、“ちょうど今ギターを探してて、スタジオに入ってみない?”って言われたのがきっかけで」
 
金田「想像して欲しいんですけど、ピアノが弾けるシンガーソングライターの女の娘の隣でギターを弾いてるヤツって、だいたいイケ好かないヤツなんですよ(笑)。でも、遥の場合はその女の娘をほぼ喰ってた。別にそんなに上手いことをやってたわけではなかったんだけど、ツネと最初に“バンドをやろう”って思ったときと同じ感覚がして。ツネもめちゃくちゃ下手だったけど、めちゃくちゃいい顔で弾いてたからね(笑)」
 
――あいつはそこはホンマにすごいもんね。全身表現(笑)。
 
金田「ツネに5年前に感じた気持ちを、遥にも何となく感じて。結局、“THEラブ人間が好きで、俺がTHEラブ人間をよくしてやる!”って思ってるヤツじゃ、俺は満足出来なかったってことなんですよ。THEラブ人間なんて全然知らない、俺が想像も付かないヤツじゃないと、やっぱりおもしろくなかったんだなって。バンドをよくしていく作業をやる上で、前情報とかは無駄な知識になっちゃうと思ったんだよね」
 
 
風通しをよくしたら、俺らってこんなに出来るんだ
間違ってなかったんだって
 
 
――結局、解散を回避したときもそうやけど、やっぱり茨の道の方を選んで(笑)。
 
金田「そう(笑)。だって、’13年の12月にえみが辞めて、’14年の1月には6人になって、3月から全国ツアーだから。けど、正直そのツアーで2人の内どっちかが辞めてもしょうがないぐらいの状況で。全然なじんでない状態の全国ツアーで、地獄みたいなスケジュールだったから(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
金田「しかもね、今まで20~30人を前にライブしてた2人が、初日の仙台CLUB JUNK BOXでいきなりKEYTALKと四星球と3マン(笑)。500人パンパン。客電が消えてSEが流れる前に大歓声という状況に放り込んで、さあどうなるかなっていうツアーだったんで。でも、それを乗り越えられるぐらいじゃないと絶対に出来ないから。THEラブ人間って何かさ…剣道部の部活が終わって先生が帰った後に、どっかから出してきたサッカーボールで神棚にシュートかますような、そういうノリなんですよ(笑)。誰にも共有できないようなノリがないと出来ない。そこに結界を張ってるんですよ。ただ、俺らがその結界を開いた瞬間に、全てを巻き込める。だから、どっちかが辞めるのも覚悟でツアーを廻ろうぜって話してたし、それを乗り切ったからね」
 
――新参者の立場で言うと、実際はどうだったの?
 
坂本「僕はもう全部が楽しかったです。やる気に満ち溢れてた。そのツアーの中で、“俺たちはこういうバンドなんだよ”って本当に急ピッチで教えてくれようとしてる空気を感じて、もう乗っかるしかねぇなって。たくさんの人の前でやるのは夢だったし、僕にとって何も悪いことはない、最高! イェーイ!! みたいな(笑)」
 
――さとうまりなとの出会いは紹介でということだったけど、加入に至るということは“こいつ、何かいいな”って思うところがあったわけよね。
 
金田「遥は分かりやすい男だったし、何でも吸収できる男。まりなは…今の今でも何を考えてるのか分かんないなっていうところが魅力(笑)。ホンットに分かんないよ、あいつ」
 
――もう2年ぐらい一緒にいるのに(笑)。
 
坂本「いっつもよく話すんですよ。“俺らってホントに“さとまり”が分かんないよね。2割ぐらいしか分かってないんじゃない?”、“でもそれが案外10割なんじゃない?”とか、諸説あるんですよ、いまだに(笑)」
 
――すごい奥行きを見てるけど、案外全部かもしれない(笑)。
 
金田「まりなはね、プレイとかそういう問題じゃない。あいつはもう“雰囲気”。あとは“ノリ”。話してて、“あ、何かこの娘いいじゃん”っていうやつ。言っちゃえば、遥だってそれぐらい。結局、スタジオに入って“何かいいじゃん”って思ったからツアーを廻った。そしたら“何かいいじゃん”ってなったし(笑)」
 
――年々思うけど、やっぱり直感ってめっちゃ大事よね。パッと会って、いい人は最初からいい。
 
金田「そうなんだよね。だって遥よりも、まりなよりも、“あ、分かってんな”っていう上手いヤツはいたもん。いたけど、ハマらなかった。上手いヤツを入れるんだったら、えみが辞めた後にすぐにでも決まってた。けど、そうじゃないところが…やっぱりあるじゃないですか。ホテルのラウンジのコーヒーが1000円でお代わりし放題より、400円でもすごく丁寧に豆を挽いたコーヒーの方が美味いこともある。見た目でもないし、テクでもない。丁寧かどうかって言うんですかね」
 
――そうやって、ようやくリリースされた『メケメケ』はアルバムとしては3年ぶりやけど、そんなに経ってる気もしないのが不思議だね。
 
金田「だって『SONGS』以降の3年間で、ライブ会場限定EP『彼氏と彼女の24時』(‘13)、ライブCD&DVD『お楽しみはこれからだ』(‘14)、シングル『じゅんあい/幸せのゴミ箱』(‘14)、俺のソロアルバム『NATSUMI』(‘14)、ミニアルバム『きっとずっと彼女は友達』(‘15)『恋は全部まぼろし』(‘15)。あと、缶バッジシングル『最高の夜にしようね』('15)もあって、で、今回。メジャー辞めるときに“半年以内は無理だ”って言ってたのが、3年間で8枚(笑)。風通しをよくしたら、俺らってこんなに出来るんだ、間違ってなかったんだって。メンバー以外にも、今はいろんな人が助けてくれてますから。『SONGS』のブックレットにはいろんな人の名前が書いてあるけど、顔を知ってる人なんてほとんどいない。それは俺たちの知らないところで動いてくれていたのもあるけど、今はブックレットを開いて、載ってる全員の顔を知ってる。やっぱりこれってTHEラブ人間では大切で。顔を知ってて、お互いに喋ったことがある人たちと仕事をしてる感じなんで」
 
 
お客さんとバンドの距離は近いよね。近いというかもうほぼ一緒(笑)
俺たちは聴いてもらってる時点でもう、その人たちのことが好きだ、やっぱり
 
 
――THEラブ人間って、ライブに放り込んどいたら何とかなるだろうっていう信頼感は変わらないんだけど、かつて感じたそれとは違う強さが、今はやっぱりあるよね。
 
金田「俺もね、あのときのことは上手く言葉に出来ないなと思ってるんだけど」
 
――こんなに言葉にするのが上手い男が(笑)。
 
金田「(笑)。あのときの感覚って、やっぱり“1人”だった。ライブをしてても、音楽だけで会話するのは孤独でしたね。ひとりぼっちだったんだなって思う。お客さんに対して“俺らの全部を置いていく”っていうのはあったけど、お客さんの言葉は必要としてないというか、メンバーがドンッ!っと魂を置いていくだけのライブ。お客さんとの呼応を断絶してでも、あのライブをやらなきゃいけなかった。それでみんなが圧倒されて、“観たことねぇこんな音楽!” で終わる。あのときはそういうことを求めてたけど、やっぱり今はね、よく“聴いてくれる人がいるからライブが出来る”とか言うけど、俺らの場合はそもそも“聴く人がいたら何倍もよくなる音楽”なのかもと思った。結局、人のことを歌ってるから。人のことを人に対して歌ったら、その人も俺に何か訴えてくるじゃない? 別にコール&レスポンスなんかしなくても、この感情の交換が多くなればなるほど今のTHEラブ人間のライブはよくなるし、俺が『SONGS』のときにどこかに置いてきた多幸感が、今はメインになってる気がする。6人だけでライブしてる感覚もそんなにないし、やっぱりその日いる人全員でライブするっていう。何か普通のことだけど、その普通のことが分かるまでに時間が掛かりましたね」
 
――そして、今作はインディペンデントならではのやり方だと思うけど、制作資金の調達のためにクラウドファンディングも試みて。最近では音楽とクラウドファンディングの関係性も深くなってきて。
 
金田「どういう仕組みなんだろうと思って勉強して、こういうやり方だったら気持ちよく出来るし、全員が得するかなって。言わば“新しい物販”ですよ。俺の書き下ろし漫画プランがあったんだけど、もう世界中に公開したいぐらいいいものを、買ってくれた人のためだけに書きました(笑)。さっき言ったライブの感覚とほぼ一緒。結局、バンドだけで作ってない」
 
坂本「クリスマスプレゼントプランもあったんですけど、僕はその中に手紙を入れたり。応援してくれる人とライブでコミュニケーションを取るのもいいけど、そういうやりとりを直接出来る喜びも、すごい感じましたね」
 
――そう考えたら、時代は本当に変わってきてるな~。活動形態が顕著に。
 
金田「お客さんとバンドの距離は近いよね。昔からうちは近い方だったけど、こういうことをやるとより一層ね。近いというかもうほぼ一緒(笑)。“俺たちの音楽を好きでいてくれるんだったら、もう全員でやろうよ”っていう感じだよね。全員THEラブ人間。俺たちは聴いてもらってる時点でもう、その人たちのことが好きだ、やっぱり」
 
――バンドに対してアクションを起こしてくれてるなんて、愛だもんね。
 
金田「そうそう。それは思ったよね」
 
 
絶対にTHEラブ人間が踏み込んじゃいけない領域まで全てやる
俺たちがやれば全てTHEラブ人間になるという自信と共に
 
 
――そうやって出来た『メケメケ』は、今までで最も恋愛至上主義だし、最も外に開いてるのは何なんだろうね?
 
金田「この6人で最初のツアーはすでにある曲をやるしかないけど、それと並行して新しい曲を作りましょうよってなったときに、俺はとにかく思い付いたことを全部実験しようと思ったのね。“THEラブ人間がこれはないわ”とか、“金田康平がこんなことをするのは観たくない”とかを全部解除。要は美学とおさらばというか。『SONGS』は完全に美学のアルバムだから」
 
――確かに! 本当に重厚で、ドーン!っとくるもんね。
 
金田「それでも物足りなくて俺は『NATSUMI』っていうソロアルバムを作ったんだけど。だけど、やっぱり俺はみんなが驚くことをしたい。お客さんが一番驚くこと=その美学を蹴散らしてるようなアルバムを作ろうと(笑)」
 
――あんなにこだわって、あんなにストイックに突き詰めてたのに手放す、みたいな。
 
金田「例えばさ、次の日は歌録りで“ちょっとゴメン、早めに帰ってゆっくり寝るわ”じゃなくて、朝まで遊んだこの気持ちも全部引っ括めて歌えた方がいい(笑)。あとは、『SONGS』までは曲を書いてる段階でだいたい俺がアレンジを決めてたけど、遥とタニも関わるようにしたかった。『SONGS』の頃の俺がもしここに現れたら、“おい止めろ止めろ!”って言うようなことを全部やる(笑)。絶対にTHEラブ人間が踏み込んじゃいけない領域まで全てやる。俺たちがやれば全てTHEラブ人間になるという自信と共にね」
 
坂本「『じゅんあい』(M-4)と『幸せのゴミ箱』(M-7)が最たるものだと思ってて。あの2曲はギタリストじゃないと弾けないリフをまず弾こうっていう単純な話で。僕がTHEラブ人間に対して思い入れみたいなものがなかったからかもしれないけど、別に全部ぶっ壊しちゃっていいじゃんっていう意味では、同じテンションだったのかもしれないですね。“THEラブ人間っぽい”を知らなかったから」
 



――金田くんに以前会ったとき、“『じゅんあい』みたいな曲をメジャーのときに書いたら喜ばれただろうに”って言ったもんね(笑)。めっちゃいいと思うもんこの曲。超ポップ。
 
金田「そうね(笑)。本当に売れたと思うよ。当時は無理してでも実験をどんどん繰り返していってたけど、俺も『じゅんあい』は今は好きだなぁ。『幸せのゴミ箱』もヘンな話、最初は全然好きじゃなかったし、“俺もこういうことをやるんだ…”とかいろいろ考えたけど、最近は『幸せのゴミ箱』をセットリストから外さないからね(笑)」
 



――『SONGS』の頃にはほぼ出来ていたという『こいのおわり duet by 柴田ゆう(sympathy) 』(M-5)も、歌詞の素晴らしさが…こんなに切なさ絞りたての曲ある?(笑)
 
金田「痛いよねぇ~(笑)。『こいのおわり』は、例えば、100年後ぐらいに国語の教科書に載ってて欲しいなと思って書いたんですよ。詞だけで文学作品として完成してるものを歌えたらいいなって」
 
――sympathyの柴田ゆうさんも華があるよね。
 
金田「俺らの前にいた事務所の所属バンドなんですけど、おもしろいですよこの娘。実はツネに“ゆうちゃんどう?”って言われたの。“『MINAMI WHEEL』で俺らの前の出番だよ”って。他のメンバーはよくライブに来てくれてたんですけど、ゆうちゃんは知らなくて、楽屋でステージから漏れてくる歌を聴いてたら、“あ、この娘は部屋でひとりぼっちにさせてぇなぁ~”って(笑)。ツネも一番好きな曲だって。何も弾いてないのに(笑)」
 
(一同爆笑)
 
――『ハレルヤ track make by まつきあゆむ』(M-6)のまつきあゆむは、インディペンデントの先駆者というかね。これはもう、まつき色がしっかりあるバックトラックで。
 
金田「俺らからしたら下北の先輩ですからね。ファンだったんで、お客さんとしてよくベースメントバーに観に行ってましたから。俺、打ち込みって音楽的には好きでいくらでも聴くけど、THEラブ人間でやったらサブいだろうと思ってたの。だからやろうと(笑)。俺が作ったデモをまつきくんに送ったら、ほとんど変わってないんだけど、めちゃくちゃ違うの。意味分かんなくない?(笑) BPMも、メロディも、キーもほとんど変わってないけど、全然違うんですよ。俺のイメージはホーンテッドマンションというか、アフロビートのちょっと暗めの感じと思って送ったら、エレクトリカルパレードになって返ってきたというか、めっちゃサイケだなって(笑)。これは打ち込みじゃなきゃ出来なかったものを作ってくれましたね」
 
――今回はこういう外部の人間も入りつつ。
 
金田「そう。まず俺は客演が嫌いだったからね。誰かがゲストとかサポートで入ったりするのが」
 
――だから入れると(笑)。常にカウンターやな。THEラブ人間へのカウンターアルバム。
 
金田「そう、全部がカウンター。『メケメケ』は今までのTHEラブ人間へのカウンターアルバムだと思ってます」
 
 
本当にね、これが全部、今の全部だよね
 
 
――あと、この曲順の恋愛における浮き沈みがすごいよね。下がって上がってアルバムの後半まで進んでいく(笑)。
 
金田「そう、最強のメンヘラアルバムですよ(笑)。この曲順はすっげぇ考えたの。ずっと何が起こるか分からないようにフワフワさせたくて」
 
――恋愛のジェットコースターだよね。あんなに落ちて別れてたのに、超ハッピーになってまた落ちる(笑)。あと、『気分を出してもう一度』(M-8)のサビをみんなで歌うのも改めて新鮮な感じがしたなぁ。
 
金田「『東京』(‘11)はTHEラブ人間のアンセムだと思ってるけど、フルアルバムにも入ってない知る人ぞ知る曲なんで、みんなに知ってもらえるミドルテンポのアンセムになる曲をやっぱり作りたくて。今回はね、遥が入ったタイミングぐらいでもう、“全曲シングル曲じゃないと次のアルバムは作れない”って言ってたんで」
 
――『コント』(M-1)のMVには、スピードワゴンの小沢一敬さんが出演されてて、これはTwitterでつながったと。自分たちを嗅ぎ付けてくれてるのは嬉しいよね。
 



金田「ビックリしたよ~。普通のことを言うけど、本当にバンドって1人じゃ出来ないわぁ~と思ってる。それをまざまざと感じて俺たちはメジャー辞めて、地で行ってる感じがする。今では東京に諸々スタッフがいてくれて、こうやって俺らのこと好きっていうだけでMVに出てくれる小沢さんがいて、関西に来たら奥さん(=筆者)たちがいて…いるのよ。再会もあるし、俺たちの音楽を好きでつながってくれる人が、わんさかいることに、改めてちょっとビックリしてて。遥とまりなが入らなかったら、流石に辞めてたとも思うし」
 
――4人のガストの絵が浮かんだときに、ヤベェ未来ないなぁ~って思ったもん(笑)。あと、ブログには“一度出た芽をぶっ潰したのは俺”みたいなことも書いてたけど、それは自責の念かもしれないし、後悔なのかもしれないし、そういう気持ちも何かしらあったんやね。
 
金田「それはね、正直ある。何て言うんだろうな…『SONGS』の頃に俺がお客さんをもっと分かりやすく楽しませて…心だけじゃなくて本当に全部をつなげられるような幸せなライブを出来てたら、俺たちはもうとっくに下北を歩けなくなってたと思う。『SONGS』というアルバムを作って、叩きのめすようなライブをやったことに後悔はしてないけど、分かってるんだよね。あのときああしなかったら多分、流れに乗ってたと思う。当時はもう完璧に持っていけると思ってたから。けど、ねぇ…」
 
――でも、もしそうしてたら、今よりデカい小屋でやってたかもしれないけど、今頃“『SONGS』超えらんないわ”ってずっと悩んでたかもしれない。金田くんだけ楽屋も移動も別でね(笑)。
 
金田「そうかもしれないね(笑)。解散してたかもしれないし、バンドが続いたしても、どうなってたかは分からないよね。あの『SONGS』を作ったときから一貫して、何が起こるか分からない方を選んできて、自責の念はあるけど、誰も後悔はしてないと思う。正直、まだ7年目だから。たったの7年だと思ってる」
 
――人生は選択の連続よね。でも、『メケメケ』を愛してくれる人が、これからはもっと増えそう。
 
金田「そう! 多分『SONGS』の何倍もいると思う。本当にね、これが全部、今の全部だよね。あの『SONGS』のカウンターパンチになるようなアルバムを作ることになるとは思ってなかったから。結局、ストイックだとかシリアスだとかそんなものはさておき、『メケメケ』には全部置いてきた。それだけは変わらない。だって、ちゃんと辛かったもん(笑)。ちゃんと辛かったし、ちゃんと傷付いた。でも、その都度俺たちは乗り越えてきたから。ちゃんと傷付いた分、辛かった分、全部が返ってくるのも分かってるから。このアルバムを出して、インストアをやっててすでに感じたもん。“これこれ!”って」
 
――そんなアルバムタイトルの意味が、“それがどうした?”とか“これさえあれば”って、キレイやな~。この6人で改めて旗を揚げて。いい船出じゃないですか。
 
坂本「それはチームプレイが出来ているからかもしれないですね。信頼関係はすごい出来てますね」
 
金田「でも、このメンバーになって2年でしょ? 2年はまだ仲いいよ(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
金田「この間、Wiennersの玉屋2060%(vo&g)と喋ってて、“今いい感じだよね”って言ったら、“だってまだ1年しか経ってないもん”って(笑)。あの倦怠期は絶対に訪れる。で、お互いそれを乗り越えられたらいいなって。だって、結成して2年なんて、メジャーが決まって『砂男・東京』(‘11)のレコーディングをしてたぐらいだったと思うし」
 
――その後に、これだけいろんなことがあるんだもんね(笑)。
 
金田「いつでもどこでも一緒で、バカみたいに笑って、別に腹も減ってもないのにメシ食って帰ろうって。そんなのはね、もう付き合いたてホヤホヤと一緒ですから2年は(笑)。各々のアイデンティティがもっと生まれてくるだろうし、俺はこれからクソみたいな人間関係になったときに、どう立て直せるかの方が楽しみ(笑)。本気で一緒にやってたら、絶対にそうなるから。そのときにね、乗り越えられたらいいなぁ。うん、船出ですね、このアルバムは」
 
――リリースツアーもあるけど、話を聞いてきて、改めて楽しみになりました。
 
金田「全公演ワンマン。まずは久しぶりの大阪ワンマンだね。バンドを長くやってるもんだなって思うのは、『メケメケ』に関しては多幸感でしかない。けど、1stアルバムの『恋に似ている』も2ndアルバムの『SONGS』もやっぱり俺たちで。全部が全部多幸感で終わらせるようなワンマンにはしないつもりです。もし『SONGS』のあの時期だけが好きな人がいても、満足させられる自信はあるし、東京以外のワンマン公演とツアーファイナルの渋谷のクアトロは、全く別物だと思ってもらって構わない。ワンマンツアーを一緒に廻って、最後の最後にまたクアトロに来ても、絶対に楽しめるワンマンですね。今回に関しては全然違うよ。“あ! この曲やるんだ!”はちゃんと用意してるし、“この曲久々!”もあるからね。えみがいなくなったから出来なくなったあの曲もあったり」
 
――その頃にはまだメンバーですら2割しか全貌が分かってない人も、チューンナップされてるのかな?(笑)
 
金田「ちょっとはマシになりますかね?(笑)」
 
坂本「2割なんじゃないかな? まだ(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 久々のワンマン、楽しみにしてますよ!
 
金田&坂本「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 




(2016年3月 3日更新)


Check

Movie Comment

かりふわ迷走から最後はグッとくる
金田&坂本からの動画コメント!

Release

全曲シングル級の過去最強ポップネス
新体制初、3年ぶりの3rdアルバム!

Album
『メケメケ』
発売中 2160円
喫茶恋愛至上主義
LOVE-1005

<収録曲>
01. コント
02. クリームソーダ
03. GOOD BYE CITY
04. じゅんあい
05. こいのおわり
duet by 柴田ゆう(sympathy)
06. ハレルヤ
track make by まつきあゆむ
07. 幸せのゴミ箱
08. 気分を出してもう一度
09. FUSHIGI DANCE
10. 花嫁の翼

Profile

ザ・ラブにんげん…写真左より、ツネ・モリサワ(キーボード)、坂本遥(ギター)、金田康平(歌手)、さとうまりな(ベース)、服部ケンジ(ドラムス)、谷崎航大(バイオリン)。’09年1月、東京世田谷下北沢にて結成された、恋愛至上主義音楽集団。同年4月に自主制作音源『恋街のすたるじい』、’10年1月に『大人と子供-17 才と22 才-』を発売。同年9月にはライブハウス多会場往来自由パーティー『下北沢にて』をオーガナイズし始め、現在までに規模を拡大しながら、毎年時期を問わず開催されている。’11年5月、初の全国流通シングル『砂男・東京』をリリース。8月にはミニアルバム『これはもう青春じゃないか』でメジャーデビュー。11月にはシングル『大人と子供(初夏のテーマ)』を発売。’12年5月には初期衝動を全て詰め込んだ1stアルバム『恋に似ている』を、12月にはシングル『アンカーソング』をリリース。'13年4月には第2期の結晶である2ndアルバム『SONGS』を発売。以降、インディペンデントでの活動をスタートさせ、同年11月にはライブ会場限定EP『彼氏と彼女の24時』を発売。年内をもってベースのおかもとえみが脱退するものの、’14年の結成5周年を迎えると共に、坂本、さとうを加えた新体制へ。3月にライブCD&DVD『お楽しみはこれからだ』、9月にシングル『じゅんあい/幸せのゴミ箱』をリリース。’15年もその勢いは衰えず、5月にミニアルバム『きっとずっと彼女は友達』、9月に缶バッジシングル『最高の夜にしようね』、11月に再びミニアルバム『恋は全部まぼろし』と立て続けにリリース。今年2月3日には3年間の集大成となるアルバム『メケメケ』を発表した。

THEラブ人間 オフィシャルサイト
http://loveningen.jp/

Live

6都市を巡る初のワンマンツアー
大阪公演が間もなく開催へ!

 
『サードアルバム「メケメケ」
 リリースワンマンツアー』

【福岡公演】
チケット発売中 Pコード289-317
▼3月4日(金)19:00
福岡Queblick
スタンディング3000円
キョードー西日本■092(714)0159
※6歳未満入場不可。
 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード287-981
▼3月5日(土)18:00 → 18:30
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング3000円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、
未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【北海道公演】
チケット発売中 Pコード288-482
▼3月19日(土)18:00
COLONY
オールスタンディング3000円
マウントアライブ■011(623)5555

【宮城公演】
チケット発売中 Pコード288-756
▼3月25日(金)19:00
LIVE HOUSE enn 3rd
オールスタンディング3000円
G・I・P■022(222)9999

【愛知公演】
チケット発売中 Pコード287-738
▼3月27日(日)18:00
CLUB ROCK'N'ROLL
前売3000円
ジェイルハウス■052(936)6041

Pick Up!!

【東京公演】

チケット発売中 Pコード284-749
▼4月3日(日)18:00
CLUB QUATTRO
オールスタンディング3000円
ソーゴー東京■03(3405)9999

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Column1

“泣きながら踊れる夜はあるかい?”
生と死と家族とバンドと闘争
THEラブ人間の新章突入を告げる
2ndアルバム『SONGS』
確変の1年間に迫るインタビュー

Column2

1stアルバム『恋に似ている』
とは何だったのか?
THEラブ人間の3年間
そして人間・金田康平の
音楽人生をたどるインタビュー

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「THEラブ人間のライブを初めて観たのは’10年5月、大阪の地下一階というライブハウス。彼らの関東圏外での初ライブを目撃したあの日は、今時珍しくアクの強いバンドだな~(褒め言葉)と思ったもんです。その後、彼らはメジャーデビューし、1stアルバムの『恋に似ている』はインタビューにも出てくるホテルのラウンジで(笑)コーヒーを飲みながら、2ndの『SONGS』は当事所属していたSPEEDSTAR RECORDSの大阪事務所で、人懐っこくて芯のある男・金田康平の言葉にずっと耳を傾けてきました。メジャーから離れた今、改めて彼らの底力と可能性を感じさせてくれた3rdアルバム『メケメケ』は、彼らを知らない人にはまさに入口に、彼らを知る人には惚れ直す“再会”のアルバムになりました。特に『じゅんあい』、ホンマいいわ~甘酸っぱいわ~。今のインディペンデントな活動形態はTHEラブ人間にとって水を得た魚で、バンドに関わる全ての人と勝ちに行く全員野球ならぬ“全員THEラブ人間”のスタンスは(笑)、まだまだこのバンドがおもしろくなっていくことを物語っています。今が最強のTHEラブ人間を、ぜひあなたの街のライブハウスで観てほしいですね。あ、あと、どうやらTHEラブ人間のアルバム全作の取材をしてるのは、俺だけだそうです。じゃあ死ぬまでやるわ(笑)」