爪弾くギターの一音で、凛としたその歌声で、時に全てを変えられる人がいる。関取花がリリースした最新作『黄金の海であの子に逢えたなら』には、そんな彼女の1年半の葛藤を超えた音楽家としての開花の証が、瑞々しく散りばめられた作品だ。今作には、10代でその才能を認められてからのシンガーソングライターとしての日々が、前作『いざ行かん』(‘14)以降に陥ったスランプが、1人との女性としての人生が、彼女に変化を求めた先に生まれた珠玉の全8曲を収録。その彼女の変化を後押しするように、ファンファン(くるり)、MC.sirafu(ザ・なつやすみバンド、cero、片想いetc)、田中佑司(bonobos、古川麦トリオ、ex.くるり)、谷口雄(森は生きている etc)、おかもとえみ(科学特奏隊etc、ex.THEラブ人間)、そして、彼女も敬愛する、NHK 朝ドラ『マッサン』のサウンドトラックを手掛けたtricolor の中村大史を擁するjohn john festival らグッドチョイスなミュージシャンが集い、その世界観を彩っている。神戸女子大学のCMソングで知らず知らず耳にしたあの印象的な歌声の持ち主が、めくるめく変化を遂げた自信作から黒歴史までを語った(笑)インタビュー。その会話中にも出てきたが、とあるアーティストに対し彼女が思ったことを、そのまま今の関取花にこそ捧げたい。“この人が歌うからこそ響くことがあるんだなって”。
「今までのアルバムも、もちろん“そのときに出来る最高のものを”とは思ってたんですけど、今回は出来上がったときの愛おしさが尋常じゃなくて。ずっと離したくなくて、家でもトイレまで持って行って盤を見てたり(笑)。スランプのときは曲が全く書けなかったのもあって、もう愛おしくて歌詞カードもまたトイレに持って行って見たり(笑)。冷蔵庫の方に行くにも小脇に抱えてドアを開けながら見る、みたいな。何かそういうグツグツした想いが今までよりバーン!と開けた感じがして、もっと広まればいいなっていうのが率直な感想です。売れろ!(笑)」
――今の話を聞いてたら、ホンマに宝物じゃないけど、音楽人生初の感覚ですよね。何でそこまで愛おしいものが今回は出来たんでしょう?
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「今までとは明らかに違うなぁと思ったのは、基本私は1人でライブをすることも多いので、弾き語りで完成して満足というか、それで何ぼみたいなところがあったんですけど、今回は曲を作る段階から他の楽器が頭の中に浮かんだり、例えば『流れ星』(M-6)の後ろで鳴ってるピアノとかは、自転車を漕ぎながらスタジオに向かう途中に鼻歌を歌ってたら思い付いて、レコーディングの2~3日前に急遽入れることになったり。音楽が自然と湧いてくる感じが、今までにはない感覚でしたね」
――弾き語り以外の音が鳴ってたり、気持ちを素直に吐露出来るようになったのは、やはり書けない時期を越えたからだと思うんですけど、まず何故書けなくなってしまったのか、何故そこを抜けられたのか。
「書けなくなったのはもう、完全に頭でっかちになり過ぎちゃったせいで。今は…ものすごく純粋に音楽が好きだし楽しいし、だからいろんな人に聴いて欲しいから胸を張って“売れろ!”とか叫べるんですけど(笑)、それまではもっとミニマルに考えてて。例えば、CDはショップのどの棚に並ぶんだろう? 試聴機に並んだときにどの人と一緒になるんだろう?とか、この人と、このジャンルの棚に並びたいから、こういう音の方がいいんじゃないかとか、言ったら全然制作者目線じゃないところというか」
――何かスタッフみたいな(笑)。
「じゃあレコーディングするスタジオ、一緒にやる人も見え方に関わってくるなとか、そういうことをめちゃめちゃ考えちゃったりして。でも、そういうのって全部歌詞とかに出ちゃうじゃないですか。それでもちろん煮詰まっちゃって。歌い方も気持ち込めて歌うというよりも、“上手く歌わなきゃ、キレイに歌わなきゃ”とか。まぁそれだけ大事なライブが増えてきた時期だったので気負っちゃったのもあったんですけど。だから、スランプは体調の問題というより、明らかに気持ちの問題で。でも、その自覚がなかったんですよ。“私はこんなに頑張って前向きに考えてるのに!”とか思ってたんですけど、その前向きの方向を間違えてたんですよね。それは忘れもしない…何かめちゃめちゃ曲は書けないし、ライブもないしみたいな感じで、すっごいお酒を呑んでる時期があって…フフフ(笑)」
――完全にヤサグレとるやないか(笑)。
「ホンットに(笑)。それで朝の3~4時ぐらいまで呑んで、次の日に二日酔いで目が覚めたとき(笑)、“あれ? 何か今日イケる気がするぞ”みたいな日が何故かあったんですよ」
――いつもと違う朝があったんや。
「そうなんです。何か本当に不思議な感覚で。厳密に言うと、その前日か何かに古着のミリタリージャケットを買ったんですけど、二日酔いで起きたときにそれをちょっと羽織ったら、ポッケからめちゃめちゃ古い銃弾みたいなものが出てきたんですよ。確かに買ったとき店員さんに“これは何年代に実際にアメリカの軍人が…”みたいな説明を受けて、“うわ、激アツ!”と思って買ったんですけど(笑)」
――今までの一連の話が女子の会話とは思われへんな(笑)。
「アハハ!(笑) そういう物語性があるのが好きで、銃弾がパッと出てきたときに“あ! めっちゃテンション上がる!”って思ったんですよ。そのときに、何か“あ、いける”って思ったのはすごい覚えてますね。その日に5~6曲ぐらいブワ~ッと出来て」
――それはもう、ミリタリージャケットを買いたいなと思って買い物に行ったわけ?
「というよりは、寒かったんですよ(笑)。だからいつも行く古着屋さんに上着を買いに行ったら…ここ3年ぐらいずっと(ミリタリージャケットを)探してたけどいいのがなかったのが、“お、これかわいい! 寒いしちょうどいいや、ちょっと高いけど”っていう服が見付かって。でもなぁ~高いしなぁ~と思って迷ってたら、さっきの話をされて。東京の古着屋の店員さんって、めっちゃ(無愛想に)“いらっしゃいませ”みたいに言う人とかが多くて。でも、そのお店は1つ1つしつこいぐらい楽しんで説明してくれるところで、何か乗せられて…アツい!と思って買いました(笑)。運がよかったですね、本当に」
――そのとき寒くなかったら、まだスランプだったかもね(笑)。
「かもしれないです! 本当に」
この人が歌うからこそ響くことがあるんだなって
――今回はヘンな話、若さを認めるじゃないけど、年相応に感じたことをちゃんとやろうという発想もあったと 。
「そうですね。アコースティックのシーンとかになると、やっぱり年上の方もすごく多いじゃないですか。そういう人たちのところに食い込みたいと思うと、もう何か…こういうアレンジの方がいいんじゃないかとかいろいろ思ってたんですけど、よくよく考えたら私は元々そういう銃弾で興奮したりとか(笑)、少年漫画が大好きな人間で。当時はMステとか『うたばん』とか『HEY!HEY!HEY!』とか歌番組ばっかり見てて、中学校のときにTSUTAYAのTOP10のレンタルランキングから借りてMDを作ったり…何かそこに抗う必要はなかったなぁって。考え過ぎなんですよ~頭でっかちなんです、本当に。直さなきゃ…(笑)」
――すごく天真爛漫に見えて、それとは相反して思慮深いところがあるね。 ブログにもありましたけど、初めて女の人の書いた歌詞に涙したとか。
「昔マスドレ(=MASS OF THE FERMENTING DREGS)をやってた宮本菜津子(b&vo)さんが今ソロでやってるんですけど、仲良くさせてもらってて。ライブを観に行ったときに、何か違う雰囲気の新曲をやったんですよ。歌詞もすごい分かるし、この人がこの歌を歌うことの美しさというか、強さというか…この人が歌うからこそ響くことがあるんだなって。こういう歌が女の人でも歌えるんだったら、カッコいいし泣けるなって思ってたら、ちょうど煮詰まってた時期だったのもあって、初めて自然にうわぁ~って泣いちゃって」
――女である自分、若さ、あとは同時に大人にもなっていく自分…いろんなものを認めたことによって自由になれたというか、解放された作品だとすごく思いましたね。逆にそこで突っ張ってたこと自体が、若さだったんだろうね。
「そうなんですよ。毎年毎年、変わっていくんで。昔のインタビューとかを見てると、本当におもしろくて。『中くらいの話』(‘12)を出した頃は、音楽で食べていこうっていう意識がほとんどなくて、“1年後に何をしてるか、歌を歌ってるのかも分からない”みたいな感じで終わってて。次のアルバムの『いざ行かん』(’14)では、“とにかく、ただ歌が好きなので、どんな形でもいいからおばあちゃんになるまで歌ってたい”で終わってて。今年は“武道館で歌いたい! 売れたい!”なんで、ドンドン若返っていってるというか(笑)。去年まではとにかく“知ってもらいたい!”っていう感じだったんですけど、今は“おもしろがってもらいたい”じゃないですけど、そういう意識はありますね」
――そもそも、今回のアルバムのイメージみたいなものはあったんですか?
「それも今までは逆に考えてて。このテイストにしたいからこういう曲を書こう、とかが何となくあったんですけど、今回はとりあえずいつまた曲が出来なくなるか分からないから、出来るときにやっとけって(笑)。ただ、john john festivalっていうアイリッシュのバンドと一緒にやりたいのは、ずーっとありましたね」
――出会いはどんな感じだったんですか?
「去年のワンマンにゲストで出てもらって。それこそ、“セッション”とかは全然分からなかったんですけど、そこに“john john festivalとかを呼ぶのはどう?”って言われて、やってみたいなって。でも、会ったこともなかったし、1回だけリハをする日があって、あとはもう当日だけで2時間ぐらいしか合わせる時間がなかったんですけど、音を出した瞬間に、もうめちゃめちゃ楽しくて“何だこれは!?”って。何か初めての感覚だったんですよ。それこそ『いざ行かん』を出したときには全く知らなかった感覚があって、ライブもすごく好評で、お客さんも今までにないぐらい楽しそうに観てくれて…それで確信みたいなものが出来て、この人たちと次も絶対に一緒にやりたいって」
――トレーラー映像を見ても楽しそうですもんね。そのレコーディングはちょっと変わった場所でやったそうで。
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「あれは元々タンゴダンスのスタジオで、今は機材倉庫みたいになってて。一室だけレコーディング出来るようになってるんですけど、これぐらいです、広さ(と言って取材中のブースを指す)」
――うわ! 狭!(笑) スペースとしては大人3人が手を伸ばせばいっぱいぐらいやね。
「だってボーカルのレコーディングなんか廊下とかでやって(笑)」
――そう思うと、信頼出来るメンバーと解放された自分の曲があるから、こういうレコーディングなったと。
『北極星』があったから頑張れた、みたいなところが本当にあった
――俺が今作の中で好きなのは『流れ星』と『北極星』(M-8)ですね。
「あ、嬉しい! ありがとうございます。『北極星』だけ、割とずーっと昔からあって」
――歌詞めっちゃいいじゃないですか、この曲。
「この曲があったから頑張れた、みたいなところが本当にあったんですよ。『いざ行かん』をリリースした直後ぐらいに出来て」
――スランプに入る前?
「入り始めたぐらいのときに(笑)。悲しい歌詞を書いてるときは基本悲しいはずなんで、多分もう悲しみに突入してるときなんですけど(苦笑)」
――なるほど。テーマを設定して書こうとしてたくせに、いざ書くときはやっぱりそうじゃないと書けへんねんや。
「そうなのそうなの! 本当にそうで。でも、この曲はお守りのように毎回ライブでやってて、お客さんからもすごく反応が良くて、“この曲はいつCDになるんですか?”ってよく聞かれて。例えば、フェスとか地方のイベントに出たときに、初見のお客さんが“何曲目にやった、あの何とかっていう歌詞があった曲ってどれですか?”って言われるのが一番多いのがこの曲で。=CM曲とかよりも決して派手さはないのに、この曲が印象に残る人がいるんだ!っていう1つの自信になって。この曲をいつかリリースしたいから頑張んなきゃっていうのはずっとありました」
――ヤサグレ期も、この曲がすでに出来ているのに作品には出来ない状態なわけだもんね。歌詞に出てくる“退屈な日々でしたね それでも楽しかったね”って言える相手って、本当に好きだったり、すごく気持ちがないとそうはならない。退屈なのに楽しいって、もうそこにいるだけで成立してることやから。そして、『流れ星』は切なくて儚くて、でもすごく情熱的な曲だなぁと。ちなみに『愛しのローレンス』(M-5)のローレンスに意味はある?
「私は歌詞と景色が割とそのまま頭の中に浮かんでくるんで、意味をそんなに考えてなくて。とにかくそのフレーズは鼻歌の段階からあって、“ローレンスって何なんだろう?”って自分でも思って後から調べたら(笑)、地名も人名もどっちもあるっぽくて」
――じゃあホンマに吐いて出た言葉なんや。(幼少期を過ごした)ドイツ仕込みの(笑)。
「何かあるんですかね? 当時、唯一出来たドイツ人の友達の名前は“グレタ”だったんですけどね(笑)。しかも、その子のお父さんが“グレッター! グレッター!”っていつも呼んでたんで、ずっと“クリエイター”っていう名前だと思ってて(笑)。お母さんに“最近隣の隣の子と仲が良いけど、何て子なの?”って言われて、“クリエイター”って言ったら、“嘘でしょ!?”って(笑)。ドイツを旅立つ寸前に“グレタ”だったことが分かりました(笑)」
――アハハ!(笑) でも、今作では別れを描いた曲も多いけど、何か湿っぽくないというか。例え別れることになったとしても、そこまでの時間が素晴らしいものだったんだなって。
“広瀬すずちゃんがカルピスウォーターのCMをやってる感じで”
って言った気がします(笑)
――ちなみにレコーディングのときは禁酒してたんですか?
「してました! 一応、何か今までとは違う気合をと思って。せめてもの(笑)」
――大好きなものを断つことで(笑)。効果はありました?
「歌録りは割とスムーズでしたね。お陰かは分かんないですけど、後半になるにつれさらにスムーズになって。ラストの方はだいたい1曲30分とかで終わってました」
――あと、john john festival以外の参加メンバーの方たちとの接点は?
「逆指名的なとこも結構あって。MC.sirafu(ザ・なつやすみバンド、cero、片想いetc)さんは、今回はスティール・パンを入れたいなぁとなって、それは何か決めたフレーズというより、雫が落ちる感じとか、そういうイメージだったんですよ。だから感覚的にやれる方ということで、ダメ元で言ってみるかって、知り合いの人に繋いでもらったみたいな。ファンファンちゃんは、普通にプライベートでも仲良くしていただいてて、いつか一緒にやりたいなってずーっと思ってたんですけど、『すずらん行進曲』(M-2)が出来たときに、“あ、これはトランペットだ”って。andymoriの『クラブナイト』(‘12)に参加しているファンファンちゃんのフレーズが大好きで、何かいわゆるジャズっぽいとかそういうのじゃなくて、すごくポップで、まっすぐに空を突き抜けていくような感じがあって。(田中)佑司(bonobos、古川麦トリオ、ex.くるり)さんは、富山のイベントで羊毛とお花さんのバックでパーカッションを叩いてらっしゃったんですけど、次から次へと絵描きみたいな感じで叩く人だなぁと思って、一緒にやりたい!って。そしたら、佑司さんも覚えてくださってて、それからですね」
――その方々に、“雫が落ちるように”とか、“カルピスウォーターの感じ”とか、“キラキラの海からトビウオが”とか、極めて抽象的なオーダーをしていくと(笑)。
「そうです(笑)。“広瀬すずちゃんがカルピスウォーターのCMをやってる感じで”って言った気がします(笑)」
――神戸女子大のテーマソング『彩光』(M-4)は、もう鉄板というか、相変わらずすごい曲ですね、このシリーズは。一見何も描いてないようで、本当にただそこにあるもの。
「看護学部が開設されるにあたって、“私、いのちと生きていく。”というテーマがあるのを先に聞いていて。でも、そのときはヤサグレ期に入ってたんで、“もう無理!”って(笑)」
――ヤサグレと相反するテーマやからね(笑)。
「携帯の電源も切って連絡も取らず、もう3~4日家に引きこもって、カーテンも開けずにベッドにずーっといて、お笑いのDVDばっかり見て、ベッド→トイレ→冷蔵庫しか行き来しない、みたいな(笑)。それで流石に食料も尽きてきて、コンビニに行くか~ってムクッと起きて外に出たら、まぁ天気がいい日で。空が青い、風の匂いがする、花が咲いている、人が歩いてる、コンビニの店員さんが優しい、みたいなことに感動というか(笑)。当たり前のことだけど、“あ、こんなことがあったのか”って本当に気付いたというか。これも、生きていく=もっと命の大切さとかを歌った方がいいのかな?って難しく考えてたんですけど、自分が“生きてる”って実感したのって、そういうことだったんで。だからもう感じたままに書くしかないなぁって」
流行り廃り=自我があるようでないところに何か愚かさもあり
同時にちょっと羨ましさもある
――そして、問題作の『さらばコットンガール』(M-7)ですけど、これは自身の“森ガール”期のことがきっかけになっていると。いわゆる黒歴史(笑)。
「フフフフ(笑)。私が誰よりも森ガールだったあの(笑)。今でもそういうところは全然あると思うんですけど」
――これもある意味、“若さ”よね。突き進めちゃう感じが。だって森ガールだった人たちは、次の年には“山ガール” になってる(笑)。一貫して今でも森ガールだったら筋が通ってるけど、そういう人って変わっていってるもんね。
「私もそうです。次の年にはもう、速攻山ガール(笑)。大学のときは山ガールでした」
――そういうものに対して今ではアンチではないの? ブログの目線とかを見てると、いつこの子に揚げ足を取られるんだろう、とか思うけど(笑)。
「アハハ!(笑) 自分がそうだったからこそ、その愚かさに気付くというか。この前も、ホンット自分ってちっちゃいなと思ったんですけど、当時はディズニーランドに1年に1回友達と行くぐらいで、あとは服ぐらいにしかお金を使わなかったんで、当時のバイト代と照らし合わせて電卓で計算してたんですよ(笑)。そしたら、生成りのレースの紐とかめちゃめちゃ高かったなぁとか、何だかアホらしくなって。もうその愚かさよ…っていう(苦笑)。流行り廃り=自我があるようでないところに何か愚かさもあり、同時にちょっと羨ましさもあるのはあるんですよね」
――その流行を疑わずに没頭出来るピュアさというかね。
「そうなんですよ。そういうLOVE&HATEの歌じゃないですけど、そういう感情はありますね」
――だってフェスとかに行ってもさ、頭に花輪を乗っけてるのを見たら本当に…。
「あ! さっきその話してたんですよ!! これはオフレコですけど(笑)」
――まぁその子たちは間違いなく人生を楽しめてるもんね。まさにLOVE&HATEな感情(笑)。
やりたいことと自分の聴いてきた音楽
自分の歌詞とか雰囲気がバン!っとミックスされた感じはします
――タイトルの『黄金の海であの子に逢えたなら』は作品が出来上がった後に付けたということですが、その“黄金”はビールからインスパイアされたというのがらしいですね(笑)。
「そうなんです。もう何か、やり切った気持ちになっちゃって、呑めると(笑)。何しろ今回は楽しかったんですよ。レコーディング自体あんまり好きじゃなくて、明らかに不得意だったんです。何か気持ちが入らないことも多かったりして。それこそ頭でっかちに考えちゃってたからだと思うんですけど、今回は終始すごく楽しかったんですよね」
――ちなみにこのアーティスト写真は何をしてるんですか? ボールを蹴ってるの?
「これはスキップしてて(笑)。写真がもうホンットに苦手で! 今回はレコーディングも楽しかったし、アー写もそういう人に、空気感が合う人に撮って欲しいなと思って、いつも取材のときとかに写真を撮ってくださって(私を)かわいがってくれている方に頼みました。だけど真顔とかだとやっぱり緊張しちゃったり、キメ顔とかも出来ないし…って思ってたら、“花ちゃんさ、スキップとかしてみたら?”って言われて。スキップなんかもう何年ぶりの…ヘンな話、そんなちょっとアホらしいことをして楽しくなっちゃったのがこれです(笑)」
――いい瞬間を切り取ってもらって(笑)。ジャケットも小説のようでかわいらしいし、誇れるものが出来ましたね。
「はい! 今回は親が特に喜んでますね。“あなたらしいのが一番”っていう人たちなんで。その黒歴史から、積み木崩しの大反抗期からを全部知ってる親が(笑)、写真、ダイジェストムービー、MV、いろんなものを見て“一番あなたらしくていいよ”って言ってくれてるから、何かそれも感慨深いですね」
――これが出て、今後の関取花はどうなって行くんでしょう? ‘15年の後半戦は。
「何だかんだ11月ぐらいまではこのリリースツアーの追加公演とかがありますけど…すぐに新しい曲を作りたいですね。どういう曲が出来るのか、そのタイミングタイミングで分からないので、何だか楽しみです。自分がどうなっていくのか。ただ、前よりも“書かなきゃ”じゃなくて、“もっと曲を書きたい”っていう前向きさがありますね。次はまたガラッと違うアルバムになるかもしれないけど、今回はやりたいことと自分の聴いてきた音楽、自分の歌詞とか雰囲気がバン!っとミックスされた感じはしますね。自分の土台になるものが出来た感じがします」
Text by 奥“ボウイ”昌史