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「今までの10年を好きに壊しちゃってもいいんで」
FRONTIER BACKYARDが、バンアパ、QUATTRO、イルリメ、
Sawagi、Wienners、フルカワユタカら盟友と挑んだ6つの事件
『Backyard Sessions #002』インタビュー&動画コメント

 経験は時に自らを救ってくれる財産だが、表現においては果たしてどうだろう? 昨年、結成10周年のアニバーサリーイヤーを盛大に終えたFRONTIER BACKYARDのメンバーも、次の10年はまた異なる航路をたどることを、たどるべきことを、肌で感じていたことだろう。その新たな航海を導いたのが、eiichi kogrey(the band apart)、Takeshi Iwamoto(QUATTRO)、イルリメ、KOICHI(Sawagi)、玉屋2060%(Wienners)、フルカワユタカという6人の盟友でありプロデューサーだ。’06年にリリースされた実験作『Backyard Sessions』以来となるシリアルナンバー#002が記された最新作は、作詞、作曲、アレンジのみならず、ドラムのフレーズ、音色、ギターアンプ選び、弾き方、声の出し方、歌詞の乗せ方、録音の進め方、その他全てを委ねるという大胆不敵な1枚だ。プロデュースワークもこなすTGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI(vo&key)が、完全にプロデュースされるという舵を切った11年目のFRONTIER BACKYARDの現在地を語ってくれたインタビュー。磨かれると同時に失っていくものがある。失われていくものの中に、なくならないものがある。真剣に遊ぶ大人たちは、今でもこんなに音楽が好きで、人が好きで、我々を喜ばせる――。

 
 
まぁ10年やってれば、予想もつくんですよ
それよりもまず、自分らがアガらなくなるのはイヤだなって
 
 
――去年が10周年で、ブログにも“大祭典の後の喪失感がハンパなく、しばらくはセンチメンタルで、後遺症に悩まされるでしょう…”という予言の元に’14年を終えてましたけど。
 
「フフフ(笑)。予言の元にね、迷走してますよ、今も(笑)」
 
(一同笑)
 
――まぁ逆に言うと、それぐらいアニバーサリーをやり切ったんですね。
 
「そうですね。だから充実してますよ。去年という1年もそうだし、実動10年間も、よくよく考えてみると真面目にやってたなって(笑)。やってる最中は感じないけど、例えば過去のライブのリストとかを見ると、こんなにやってたの!?とか。振り返って、反省したり、自分を褒めたり(笑)、本当にいい年でしたね。10年やって、友達もいっぱい出来て、いろんな活動が出来てよかったなって、本当に思いました。なので11年目となった今、どう壊していって、また10年後ぐらいに飽和状態になれるのか? カッコよく言うならば、“挑戦がまた始まった”という感じ。もちろんワクワクもしてるんですけどね。10年間培ったものを壊しかねなくても、やっていきたいなと思ったんで。今までの延長でダラダラやっていくのもあんまり…ねぇ。やっぱり“FRONTIER BACKYARD”って言うぐらいなんで(笑)」
 
――破壊が目的になったら違うけど、とは言え…っていう。
 
「そうそう。やっぱり僕らぐらいの年代のバンドって、一番難しいと思うんですよ。こういうこと(=『Backyard Sessions #002』)を自分たちで敢えてやって、乗り切っていくというか。ルーティンにならないように、阻止するのが大変ですよね。経験が多い分、例えばライブをどこかで切った瞬間に、もうババババッてある程度見えるんで」
 
――大ゴケしない代わりに、ソツなくやれちゃう自分も見える。
 
「そうなんですよ。まぁ10年やってれば、予想もつくんですよ。それよりもまず、自分らがアガらなくなるのはイヤだなって。なので、いちいち自分たちで事件を起こして(笑)。怖いですけど、それで失敗したらしょうがない」
 
――その一環がメンバー3人のみのライブだったり、ライブ会場限定音源だったり。
 
「ちょっとずつなんですけど、パートも変えてやってるんですよ。ドラムの(福田"TDC")忠章くんがシンセを弾いたり、ギターのKENZI(MASUBUCHI)がベースを弾いたり、楽器を変えると視点も変わるから、本職のギターやドラムに還元されるものがあるんじゃないの?っていう仮説の元に(笑)。もうちょっと音楽的に長けたいなと思ってるんで、1回その楽器を置いてみるのも1つじゃないかって」
 
――ただ3人でやるだけじゃなくて、もっと血の巡りをよくするじゃないけど。変化に向けて本当にギアを入れてる感じがありますね。それで言うところの、’15年に起こす1つの事件がこの、『Backyard Sessions #002』と(笑)。
 
 
一応、前科アリの人たちですから(笑)
 
 
――今作における、なすがままに完全にプロデュースされるという発想はどこから?
 
「僕自身もプロデュースすることがあるんで、やられてみたいのはあったんですけど、ちゃんと自分たちも確立してないのに、しかもロックバンドが人の曲をやるなんて、“テメェでやりたいことじゃないんなら辞めちまえ!”とか言われたら言い返せないから(笑)。10年間ちゃんとやったらやろうと決めてたんですよ。自分で曲を書かなくなってプロデュースを人に任せるバンドマンは、やっぱりイヤなんです。僕はプロデュース仕事もしますけど、プロデュースするバンドマンにも、“バンドにはプロデューサーはいない方がいいんだよ”っていう話をしてからやるんで。みんなの実践を掻き立てるだけのプロデューサーだと思ってるんで」
 
――となると、この構想は11年目だからのレベルじゃ全然なかったんですね。ちゃんとバンドの歴史に筋を通してから、よっしゃ!と。
 
「そうですね。自分たちもだらしなくなっちゃうのがあるんで…まあ今回でちょっと味もしめましたし(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「すごい楽しかったし、“もう曲作んなくていいんじゃねぇか?”とか半分思ってしまう頭が出てくる(笑)」
 
――プロデュースだけしてもらったんじゃなくて、もう楽曲も何もかもってことですか?
 
「もう全部です。下手するとギターの弾き方、ドラムのフレージングも全て。自分らの手垢を付けちゃうと、また自分らの音になっちゃうんで、敢えてやらないですって最初に言って。その代わり好きに遊んでくださいって。僕らもこの企画は半分フザケてると思うし、楽しんでやってもらうのが一番いいと思うんで」
 
――歌詞も、ですよね。
 
「歌詞もです。日本語か英語かもお任せして。あと、僕の歌い方とか」
 
――もうマグロですね、完全に(笑)。
 
「マグロです(笑)。僕の歌い回しとか自然に出てきちゃうものも変えてもらったり、“それはTAGAMIのいいところだから残しましょう”という指摘を受けたり、他者からはそう見えるんだなとか、勉強になったんでとてもよかったです。我ながらいい企画だったなと(笑)」
 
――聴いてて思ったのが、もう笑っちゃうぐらい各プロデューサーの色が出てるなと。
 
「“今までの10年を好きに壊しちゃってもいいんで”って言ったんで、本当にみんなの得意技のラインを持ち込んでくれたんだなって気はしますね」
 
――この6組のプロデューサーたちの選定の基準は?
 
「とりあえず一番は、知らない人に頼むのはやめようと思ったんですよね。知らない人とはいつでも出来るというか、僕のライブを観たことがあるとか、バンドとして対バンしたことがある人で、ちゃんとコンパイルしてくれるであろう人にお願いした感じですね。一応、前科アリの人たちですから(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) それはある意味10年ならではかもしれないですね。
 
 
お客さんは15人ぐらいしかいなかったですけど
その15人がものすごく踊ってた(笑)
 
 
――まずは1曲目の『can you feel』がフルカワユタカさんですけど、それこそ“らしい”曲ですよね。
 
「デモをもらって、“これ、ドーパン(=DOPING PANDA)の曲じゃねぇの!?”とか言って(笑)。本当にお願いしてすぐ書いてくれたんですよ。自分がベースも弾きますとか、レコーディングスタジオもここでやりたいとか、プランも入念に組んでくれて。彼はエンジニアもやるので、その辺のこだわりもすごかったです」
 
――フルカワさんとの付き合いはどれぐらいですか?
 
「もう15年ぐらいじゃないですか。僕が一時期プロデュースしてたんですけど、その前からもちろん知ってたんで」
 
――最初の印象って覚えてるもんですか?
 
「ドーパン自体、最初に聴いたときからすごくよかったんで、仲良くなって“普段何聴いてんの?”って聞いたら、メタルばっかりだったんですよ! メタルがダメってわけじゃなくて、“メタルとかハードロック以外にも音楽はあるから!”って(笑)。家に行ったら本当に全然CDもなくて、まぁクローズドの人だった。それが今ではたくさん音楽を聴いて、それこそ海外でも活動するようにもなったり。変わったなぁって思いますね」
 
――おもしろいですね。そんな人に巡り巡ってプロデュースされるようになるなんて。
 
「たまに“それ、俺がプロデュースしてたときにお前に言ったことじゃねぇか?”っていうのはありましたけど(笑)。当時は何も知らない後輩だと思ってたんですけど、メジャーに行っていろんな経験をして、音楽的な手法も知ったと思いますし、たくましくなったなって。それを僕らに乗せてきてくれたんで、“それってどういう風にやんの?”とか、逆にいろいろ質問しましたね」
 
――次の『夜の改札』(M-2)はバンアパ(=the band apart)のeiichi kogrey(=ds・木暮栄一)さんプロデュースで。それこそソロでやるときは荒井(vo&g)さんと各地を廻ったりとかも。
 
「各自みんな仲良いです。木暮とはDJイベントを一緒にやって音楽の話をすることもすごいあって。彼はDJをやるぐらいだからいろいろ知ってるのもあって、プロデューサー的な立場になってもらいたいなぁって」
 
――あと、『Backyard Sessions #001』(‘06)は荒井さんフィーチャーでしたよね。
 
「あのときはボーカルを立ててやってみようというテーマで。荒井さんみたいなああいう歌い方は僕、出来なかったんで。あれから9年経って、『Backyard Sessions #002』が出て、バンアパも続けててよかったなって(笑)。これはこれでつながってる」
 
――バンアパとの最初の接点って、やっぱり対バンとかですか?
 
「ドーパンのヤツらがデモを持ってたんですよ。聴いてみて“これ誰!?”ってなって、僕らは当時まだSCAFULL KINGでしたけど、みんなで観に行ったんですよ、チケット買って(笑)。そしたらものすごくカッコよくてね。お客さんは15人ぐらいしかいなかったですけど、15人がものすごく踊ってた(笑)。で、話しかけて、無理やり“打ち上げやろうよ!”って、初めて会った日に全員呑みに連れて行って仲良くなった感じ。“電話番号教えてくれ!”って(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 積極的な先輩ですね。
 
「いやぁ~すごく感動しちゃったんで。“俺たちSCAFULL KINGっていうバンドで…”って言ったら“知ってますよ!”とか言ってくれて、嬉しくてね」
 
――そりゃそうだ(笑)。でも、その頃からすでに音楽的好奇心旺盛ですね、TAGAMIさん。
 
「今でもそうですけど、どんどんカッコいい後輩が出てくるともう…年齢は超えられないじゃないですか。この2人は特に昔から、バンドとしての付き合いを含め、仲良くさせてもらってますね」
 
――この曲は本当にスウィートな曲ですね。
 
「そうなんですよ。才能あるメロディメーカーだなって思いました。ぐれさん(=木暮)が仮歌を入れてくれて、ギターも弾いてきて、こいつは本当に何でも出来るんだね、みたいな話になって。でも、実際に歌ってみたらすごく難しくて。今でも良く録れたかどうかは分からない。“この曲、バンアパに持って帰った方がいいんじゃない? 俺は歌えないな…難しい”って、頼んどいでアレだけど(笑)」
 
――アハハハハ! あとこの曲はガッツリ日本語詞なのも。
 
「僕、日本語でレコーディングしたことなかったんで。初めてだったんで、日本語の歌い回しとかも、何度も“ここやり直してください”とか、“この方が聴こえやすいかもしれないです”みたいなことを言ってくれたり」
 
――なるほど。そういう意味では、いずれFRONTIER BACKYARDとして改めてトライする上でも、実験的にそれを経験出来たのはいいですね。
 
「日本語で歌うってこういうことなんだなって思いました。やってみたいなと思ったし、難しいんだなって感じましたね。あと、この曲はバンアパのスタジオを借りて、バンアパのエンジニアさんに落としてもらったんで、完全に“バンアパ仕様”です。ドラムも、木暮のドラムをうちのドラムが叩いてるんで、結構なバンアパ臭を出せてるかなとは思ってるんですけど」
 
――楽器まで自分の楽器じゃないって、本当に今回は徹底してますね。
 
「プロデューサーに選んでもらいましたね。アンプも音色も決めてもらって。もうプロデューサーを信じて、ドラムの音色からチューニングも含め木暮くんがやってくれて」
 
――完全に委ねるんですね。すごいな。
 
「まぁ皆さん大変だったと思いますけどね。“これ、自分でやらないの?”って思ったかもしれない(笑)。でも、それだとテーマが崩れちゃうから」
 
 
音楽を聴いてる人の音楽って、やっぱり理由があるように感じるから
すごくセクシーに感じますね。たまたま出来ちゃったんじゃない気がする
 
 
――次の『EYES』(M-3)がQUATTROのTakeshi(Iwamoto)(=vo&g・岩本岳士)ですが、これももうQUATTROやん!っていう(笑)。
 
「QUATTROです(笑)。レーベルの後輩でもあるし、割と知り尽くしてる方で。彼は英語が喋れるんで、発音には結構うるさかったですね。初めて細かく言ってくれた人というか、しかもボーカリストですから、すごく端的で、いやぁ~よかったです。これは結構上手く歌えた方だと思います」
 
――最初の接点は?
 
「ライブです。僕たちの『NEO CLASSICAL』っていう企画に出てもらったんですよ。当時QUATTROはriddim saunterとかと一緒にやってたと思うんで、何か洋楽っぽいカッコいいバンドがいるなぁと思ってて。そこから話しかけて、仲良くなった感じで」
 
――出た! 話しかける作戦(笑)。
 
「歳を取ってくると話しかけてもらえないんですよね。こっちから行かないと、やっぱり。僕も話しかけてくれる先輩の方が好きなんで。QUATTROももっと一緒にやっていきたいなぁと思って、“一緒にツアーにも行ってみたいんだけど”って話して。やっぱりいろんな音楽を知ってるんで、魅力的ですよね。“これはワザとそうやってるんでしょ?”みたいに、音楽を聴いてる人の音楽って、やっぱり理由があるように感じるから、すごくセクシーに感じますね。たまたま出来ちゃったんじゃない気がする。そういう意味で、音楽の話をするときとかはTakeshiはすごく楽しいですね。教わることもいっぱいあるんで」
 
――今作を聴いた印象としては、1~3曲目がある意味鉄板で、4~6曲目が未体験ゾーンというか。前半3曲があってからの、イルリメの『Again』(M-4)はパンチありますね。
 
「いやぁ~本当にすごかったですよ。デモを送られてきたときから、ヤバイな…って思った。元々イルさん(=イルリメ)の世界観にものすごく興味があったんですよ。僕らが育ってきたようなパンクとかロックとかスカじゃなくて、元々クラブっぽいところから出てきてるので。バンドも弾き語りもしたり、本当にマルチな才能があって、頼んで出来てきた曲は、もう僕らじゃ絶対に思いもつかないものでしたね。ある種、外国人みたいなアーティストだなって思いました。すごく右脳的というか」
 
――手法もマナーも違いますもんね。イルリメさん自体とはどうつながったんですか?
 
「イルさんはレーベル同士の付き合いから、ライブも観に行ってたりしたんですよ。1人でやるライブがおもしろくて、仲良くなりたいなぁと思って」
 
――出た!(笑)
 
「才能ある方だなぁと思って、また話しかけて(笑)」
 
――このドライバルなビートをエディットしていく感じはすごいですよね。
 
「しかもイルさんが、“そこらの街のスタジオでいいんで”ってマイクを持ってきてその場で録って、ミックスも自分がしたいって言うんで、むしろやってくださいって。ミックスには相当こだわってましたね」
 
 
怖いし、逆にもう勝てないとも思ってる
 
 
――で、次が『姫』(M-5)。姫て!っていうね(笑)。
 
「僕らの曲にはまずないようなタイトルで、日常会話でももちろん言わないです(笑)。これも日本語の曲で、Wiennersの玉屋2060%(vo&g)くんは、“現代版・竹取物語みたいなイメージなんですよ”って言ってて」
 
――でも、まず“現代版・竹取物語みたいなイメージなんですよ”っていう会話自体がなかなかないですよね?(笑) これもオリエンタルなシンセが効いてるいかにも。
 
「Wienners的なね。“現代版・竹取物語”とかいう発想とか、オリエンタルなテイストだったりはWiennersの得意な部分でもあると思いますし、僕も好きなラインだし」
 
――イルリメさんとはまた違う意味で、今作において新鮮に聴こえました。
 
「いやぁ~しかもいい曲なんですよね。才能ある方なんだなぁって思いました、改めて」
 
――このアルバムを語る上ではTAGAMIさんの声の話にもなると思うんですけど、この『姫』が、新しいTAGAMIさんを導き出してる感じが。
 
「歌い方は結構言われましたね。レコーディングが重なって喉が辛かったんですけど、(口調を真似して)“いや、TAGAMIさんなら絶対出来るな”みたいな言い方をされて(笑)。そしたらまぁ、乗ってきちゃうわけですよ(笑)。そうだ、今思えばプロデューサーってこうだったなぁって(笑)。Wiennersは僕が1stをちょっとプロデュースしてるのもあったし、好きなバンドだったんで“対バンしたい”って言って、何回かやらせてもらったり。彼に才能があって結果を出していたのも知ってたんで、“ここは玉屋くんだ”と」
 
――そうですよね。自身のバンド以外のところでも作家として。
 
「プロデュースしてる時代に音楽の話をしたときに、彼はもっとすごくなると思ったんですよ。考えてることがハイレベル過ぎて。すごく期待はしてた人です。そこでまた“やりますよ”って言ってくれたんで」
 
――若い層のアイディアを自分に取り入れつつ、同時に“こんなヤツらがいるのか…”みたいに怖くならないですか?
 
「それはいつも本当に怖いですね。怖いし、逆にもう勝てないとも思ってる。やっぱり若い人の感覚って、しかも現代の人気を得たりちゃんと掴んでる人のセンスって、どう勉強して努力しても、もうなれないと思う」
 
――でも、FRONTIER BACKYARDにはFRONTIER BACKYARDで培ってきたものがあって。きっとどの世代でもみんなそうなっていくんでしょうね。
 
「だと思いますね。僕らも多分、先輩をギャフンと言わせた時期もあったと思うんで。それはずっと変わっていく、輪廻していくものだと思います」
 
――やっぱり20~30代で背中を追い掛けるときはいいですよね。でも、40代になってそれを感じながらどう踏ん張るかも、やっぱり見たいんですよね。
 
「“40から50が辛いよ”って、イベントをやってる方に言われたんだよなぁ…この10年が辛いから頑張ってって」
 
――感じます?
 
「43なったんで、ちょっとずつ。感覚と肉体はやっぱり衰えてるのは分かるんで。まぁこれはもう、どの業界のどのジャンルの方もだと思うんですけど。悩みながらも楽しくはやってるつもりなんですけどね」
 
 
僕たちの音色、声質、ギターの特徴だったり
隠そうと思ってもやっぱり出ちゃうとは思うんで
でも、本当はそこまでも変えたかったんですけどね(笑)
 
 
――これだけいろんな曲ありながら、個人的に一番好きなのは最後の『cruise』(M-6)だったりするんですけど。これはずっと聴いていられるなぁって。
 
「あ~KOICHI(key・Sawagi)くん。Sawagiみたいに尖った人たちが、こういう優しい、むしろ定番っぽい曲を作って。彼はブラックミュージックがすごい好きでっていう話をミーティングのときにして、そんなビジョンで俺たちのこと見てくれてんだっていうことも含めて、嬉しかったですね、うん」
 
――この心地よさって、TAGAMIさんの声の恩恵もやっぱりあるなと思いましたよ。
 
「これも歌い方はKOICHIくんにしっかりプロデュースしてもらいましたね。ボーカルがいないバンドなのに、何でそんなことまで出来んの?って(笑)。すごい不思議だったんです。多分…バンドにボーカル入れた方がいいんじゃないかな?(笑) 歌心があるんでしょうね。歌のディレクションがすごく上手かったですね」
 
――Sawagiとはどういう接点ですか?
 
「それこそ、大阪でFLAKE RECORDSの店長DAWAのイベントで観たりとか紹介してもらってという感じですね。一緒に呑む機会があって、“今度上京します!”って。こういうのが来ちゃうんだなぁ~来ないでいいよ~ってずっと言ってたんですけどね(笑)。頑張ってますよね、南アフリカまでツアーで行っちゃうぐらいですから(笑)。ワールドワイドな魅力がある、すごく好きなバンドですね」
 
――そう考えたら、ちゃんと好きな人と好きな音楽をやるという、プリミティブな衝動。
 
「そうです! 録って…よかったですね。もっと鍵盤鍵盤してくるのかと思ったらそうでもないし。マルチな才能があるんだなぁって。ドラムの録り方にもすごいこだわってたし」
 
――おもしろい音源になりましたよね。6曲6様のアプローチあるのに通して聴けちゃう。
 
「そういう統一感があるといいなとは思ってたんで。それが僕たちの音色、声質、ギターの特徴だったり、隠そうと思ってもやっぱり出ちゃうとは思うんで。でも、本当はそこまでも変えたかったんですけどね(笑)。このCDがどう受け止められるかはちょっと分からないですけど、楽しい経験をさせてもらったなって。もしかしたら、次のアルバムもこれかもしれない、もう味しめちゃったから(笑)」
 
――アハハ!(笑) これだけ作風が違う中作業して、何か思うことはありました?
 
「まぁ皆さんそうでしょうけど、例えば、ギターがなかなか上手くならないなとか、同じ技ばっかりじゃん!とか、長くなれば長くなるほどあるんですよ。それっていかに壊しにいってもなかなか壊れないと思うんですけど、壊すようには心がけたいと思ってて。“俺の歌を聴け!”みたいなことになっちゃうと、もう僕の思ってるロックとは全然違っちゃうから。ワン&オンリーもすごくいいと思うんですけど、僕らは多分そういうのは出来ない。ある種、いつもアバズレなことをしてますね(笑)」
 
――冒頭で明言したような刺激が、ちゃんとバンドに持ってこれた音源ですね。
 
「もう僕たちにとっては大正解です! やってよかった。僕がプロデュースするときの勉強にもなりましたし。こういう伝え方をするといいんだなとか、録音の仕方も含め、“あ、これは使えるぞ”と(笑)。勉強になりました」
 
――そして、今作は初回限定生産なんですよね。
 
「今回のは“遊び”なんで、長く売るのはちょっと違うかなって。今のこの俺たちのモードを今買ってくれないと、もう意味が分からなくなっちゃう。特に今はCDが売れない時代だと思うし僕らもそれ感じてるから、何かワクワクするものというか、せめておもしろい方がいいんじゃないかとは思ってて。いちバンドの入魂のアルバムもいいんですけど、出来れば僕らは違う方向で行ければなって。乗り出した船なんで、もうドンドン沖に行っちゃおうと(笑)」
 
――いろんなハレーションを受け合って、音楽人生が進んでいきますね。そのワクワクを追い求めていくというか。沖の方まで(笑)。
 
「沖の方で溺れちゃうかもしれないですけどね(笑)」
 
――いやぁ、安定しようと思えば出来るバンドが、そういう風に舵を切るのは素敵です。
 
「安定したら、続かなくなっちゃいますよね。大なり小なりみんなそうだと思うんですけど、予想が出来るライブはしたくないと思いますし、なるべく壊したいなと。壊せないのは分かってるんですけど、壊す努力をしてるかしてないかは、結構デカいかなぁって」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2015年10月 8日更新)


Check

Movie Comment

バンドを代表して丁寧に指南!
TGMX(vo&key)からの動画コメント

Release

6者6様のプロデュースでFBYを調理!
破壊と挑戦の企画盤は初回限定生産

Mini Album
『Backyard Sessions #002』
【初回生産限定】
発売中 2200円(税別)
Niw! Records
NIW108

<収録曲>
01.can you feel
(produced by フルカワユタカ)
02.夜の改札
(produced by eiichi kogrey
from the band apart)
03.EYES
(produced by Takeshi Iwamoto
from QUATTRO)
04.Again
(produced by イルリメ)
05.姫
(produced by 玉屋2060% from Wienners)
06.cruise
(produced by KOICHI from Sawagi)

Profile

フロンティア・バックヤード...写真左より、KENZI MASUBUCHI(g)、TGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI(vo&key)、福田"TDC"忠章(ds)。ライブ時はサポートに、CUBISMO GRAFICOの松田 "CHABE" 岳二、KONCOSのTAICHI FURUKAWA(ex.riddim saunter)らが参加。SCAFULL KINGの活動休止後、'01年に東京で結成。’04年に1stアルバム『FRONTIER BACKYARD』をリリース後、現在までに5枚のアルバムをリリース。自身のイベント『NEO CLASSICAL』を開催し様々なバンドと対バンするなど精力的に活動中。最新作は9月9日にリリースされた『Backyard Sessions #002』。

FRONTIER BACKYARD
オフィシャルサイト

http://www.frontierbackyard.com/

Live

東名阪を巡る企画ライブ!
大阪にはバンアパとフルカワユタカが

 
『NEO CLASSICAL 2015』

【東京公演】
チケット発売中 Pコード270-437
▼10月2日(金)19:00
Shibuya WWW
スタンディング3300円
[共演]QUATTRO
[ゲスト]フルカワユタカ
[DJ]eiichi kogrey
スマッシュ■03(3444)6751

 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード270-423
▼10月9日(金)19:00
Shangri-La
オールスタンディング 3300円
[共演]the band apart
[ゲスト]フルカワユタカ
GREENS■06(6882)1224

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【愛知公演】
チケット発売中 Pコード270-478
▼10月10日(土)18:30
RAD HALL
前売3300円
[共演]the band apart
[ゲスト]フルカワユタカ
ジェイルハウス■052(936)6041

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Column

発見と興奮を火種に築き上げた
バンドマン・イズム、天職としての
音楽を全うするパーティ・アクト
意義と意思ある2年ぶりの新作
『fifth』とバンドの現在を語る
'13年の名言連発インタビュー!

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「2年ぶりのインタビューで思ったのは、文字にならない人生相談を織り交ぜてしまうほど(笑)、パイセンはやっぱり信頼出来るということ。どこか諦めているようで変わらず好奇心旺盛な姿勢は、見事に音源として結実。今作は10年を越えるバンドがまだ“新しい”という感覚を聴き手にもたらせることを証明してしまいました。僕らはまだまだこのバンドの背中を見ていくことが出来そうです」