発見と興奮を火種に築き上げたバンドマン・イズム
天職としての音楽を全うするパーティ・アクト
意義と意思ある2年ぶりの新作『fifth』とバンドの現在を語る
FRONTIER BACKYARD、TGMX(vo&key)インタビュー
自他共に1つの到達点と認める前作『sunset,sunrise』(‘11)から2年、6年ぶりとなる『FUJI ROCK FESTIVAL’12』、そして『AIR JAM 2012』の景色を経たFRONTIER BACKYARDからの回答、それが9月にリリースされた5thアルバム『fifth』だ。先日大阪にて行われた『RUSH BALL 15th』でも、初見であろうと必ずブチ上げる盛り上げ請負人の本領発揮のステージで、泉大津フェニックスをダンスフロアへと変貌させた彼らは、前作の流れを汲みつつも、80sなユーロビートからラテンなトリオ・エレクトリコetc新旧入り乱れた全方位サウンドを独自にアップデート。持ち前の貪欲なまでのサウンドの雑食性、度重なるライブで鍛え上げられたライブアクトとしてのフィジカル・パフォーマンス、泣きながら踊るかのような刹那のドリーミーポップ、そして、SCAFULL KINGから続くキャリアと絆…全てのベクトルがぶつかり合った、意義と意思ある1枚を完成させた。そこで、現在は同作を引っ提げ全国ツアー中のFRONTIER BACKYARDの中心メンバーであり、最近ではソロワークスやユニット、DJと多岐にわたる活動で全世代とコネクトしていくTGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI(vo&key)に、40を越えてなお衰えぬ音楽的探究心とオーディエンスへのリスペクト、バンド愛の消えない炎を燃やす新作、そしてFRONTIER BACKYARDの現在を、たっぷりと語ってもらった。なぜかお酒を飲みながら(笑)。パイセン、最高でした。
“自分はバンドマンだった”みたいな
――何となく初めましょうか。自分がちゃんとある内に(笑)。
「飲みながら取材って実はなかなかないんですよね(笑)」
――フロンティアの新譜としては2年ぶりということですけど、今やTAGAMI(=TGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI)さんのアウトプットは、SCAFULL KINGあり、ソロあり、ソロからユニットに派生したりと、溢れる創作意欲がある中で、やっぱりFRONTIER BACKYARDが本体だという意識があるということでしたが、この2年があって、制作に向かった流れをまず聞きたいなと。
「まあ確かにソロって自由なんですけど、あんまり深い楽しみではないんですよね」
――おー意外ですね。
「何て言うんですかね…毎回ソロを出した後に思うんですけど、“自分はバンドマンだった”みたいな。人と制作したりモノを作るのが大前提にある自分をまた思い出して。ソロは自由だから音楽の制限もないし、極論言えばギターを10本重ねてもいい。でも、やっぱりそれとは相反するもんで、ソロを出した後すぐにバンドの曲を作りたいなって」
――流れは自然とフロンティアに。それはスキャフルではなく。
「SCAFULL KINGはたまーに、突発的に始まるだけなんですよね。アルバムも3枚しか出してないし、FRONTIER BACKYARDはもう5枚目なんで。ライブの本数も全然違う」
――そうか。もはやフロンティアが。
「超えちゃってるんですよね、キャリアも。もちろんSCAFULL KINGも自分たちのバンドなんで否定は…昔はすごい否定してましたけど(笑)、そういうのも今は全然なく。うまく自分の中での住み分けて共存してる」
――まあ言っても長い仲じゃないですか。その中で改めてメンバーに対してやっぱいいなと再確認することだったり、新鮮に思うことってあったりしました?
「いつもアルバムを作っていてまず楽しいなと思えるのは、みんながデモを持ち寄ってきたとき。FRONTIER BACKYARDは各々に曲を作れるんで、一番最初の“せーのでドン!”みたいな瞬間は、ものすごくワクワクしちゃう。どうなるんだろうな? 誰の曲が強く引っ張るリード曲になるのかな? とか、そういう曲に僕も出会いたいし、みんなも多分同じように思ってる。“TAGAMI、ものスゴい曲作ってこい!”みたいな。メンバーとのやりとりは重要ですね。それがやりたくてずっとバンドをやっているんで。付き合いは長いですが、やっぱり刺激がある人としかモノは作れないとは思う。それがなくなっちゃったらバンドなんて絶対出来ないと思うし、何かしらの刺激を感じられてるから、作品を具現化出来る。いまだに初期衝動に近いものは作れると思ってる」
――でも、その刺激が続くかどうかが、バンドの難しいところであり肝ですよね。
「そうなんですよね。なくならないような日頃の努力って言うと大げさなんですけど、例えば僕は弾き語りとかDJを敢えてバンバンやるようにしてる。俺1人じゃ何にも出来ないからバンドやりたいっていう発想を持ちたくて。そう感じたくて個人活動をスゴくしてる」
――その発想はおもしろいですね(笑)。
「まぁ元々僕らは高校くらいから友達で先輩後輩なんで、そう亀裂が入るようなメンバーではないんで、思い切って振り切った方がいいんじゃないかって。ドラムの忠章くんなんて20何年の仲なんで。最近だとギターのKENJIは木村カエラちゃんのサポートの話とかがあって、“どう思います? 2ヵ月くらいツアーなんですけど…”って言われて、絶対にやった方がいいよって。刺激を自分で作ってバンドに持ち帰ってねっていうわけじゃないんですけど、やっぱり切磋琢磨みたいなところもあるし。そういう刺激がないとマンネリ化しちゃうんで、それはいつも気を付けてるかな。俺も頑張るし、お前らも頑張ってこいみたいには思ってますね」
――まだ取材が始まって8分くらいですけど、めちゃくちゃバンドへの愛を感じますね(笑)。
「うん、愛してますね(笑)。この歳になってもしぶとくバンドやってるって、結構変態ですから(笑)。ずっとそれを繰り返してるから時々分かんなくなっちゃうんですけど、よくよく考えてみると、音楽で食っていこうぜなんて話を1回もしたことがないし、ただ辞めたくないっていうだけで…何かそれだけなんですよね」
――最近よく思わされるんですけど、解散したバンドの復活ライブでも何でもそうなんですけど、まあ40も過ぎたいい大人たちがステージに集まって、やーやー言いながら音楽やって、それ見に来る人がいるって、何かめちゃくちゃ素晴らしい光景だなって。震災以降特にですけど、TAGAMIさんは音楽で人を楽しませることが天職であるというか、その発想がこのアルバムにも、フロンティアの存在にもあるなって。
「そうですね。ホントに喜んでもらえるのが一番なんで。極論ですけど、全部脱げって言われたら脱げるなと(笑)。それでみんなが楽しくなるんだったら全然OK。まぁ一応バンドなんで出したところでしょーもないんですけど(笑)。ヘンな曲作れって言われたら作ってみたいし、お前ヘビメタ知らねーなって言われたら、ちょっと勉強してメタルっぽい曲作るとか(笑)。“楽しませたい”という気持ちが全部につながってる」
――俺の作った音楽を聴いてくれ、とかいうよりは。
「昔はそうだったのかもしれない。でも今は俺らもライブしたいし、お客さんも見に来てくれたならば、もっと楽しむべきだよ、みたいな。何かそれはスゴく思ってる。だからそのためなら何でもするよって感じじゃないですかね」
続けていける原動力は、発見と興奮
――みんながそれぞれの2年を過ごして再び集まって曲出ししていく中で、想定するビジョンはありました?
「一番はバンドサウンドっぽいこと、人の気が感じられる、忠章くんとKENJIと3人の色を出すことに重きを置いてましたね。前作の『sunset,sunrise』(‘11)が、自分たちの中でも手応えがかなりあったんですよ。また新しいことに挑戦していくことは大切なんですけど、それを全く無視しちゃわないで、どっちかって言うとパート2を作ろうみたいなテーマはありましたね。前作は震災直後だったんで精神的な部分がまるで一緒ではないと思うんですけど」
――それは逆に言うと、超えられない怖さがあるじゃないですか? しかもそれって聴き手だけが決めることじゃなくて、結局は自分たちがそれを…。
「まさしくそうなんですね。そして、それを超えられたのがまずよかったですね。やっぱり何枚も出してると、前作を超えられないとか、自分たちはこういうバンドなんだって勝手に決めちゃったりとか、そういうことに陥りがちなんで。壊したいと思うんですけど、結構壊れなくなってくると思うんですよね」
――それが一方で良さにもなるけど、確実に自分が作ったハードルは高くなっていく。超えていけばいくほどに。
「陶芸家が作った皿を壊しちゃうみたいな(笑)」
――周りから、“先生! その皿全然イケてますよ!”と言われても(笑)。
「王貞治がホームランを30本以上打ってんのに、“もう打てない”って。30本以上打ってんのにですよ?(笑) そういうのは大なり小なりありますね。続けていける原動力は、発見と興奮。それがないと続けられないですよね。ある程度、いろんな経験をさせてもらってきたんで。なので、いつも新しいことを探してて、それが見付かったときに嬉しい。ただ、わざと変化球を投げることは出来るんですよね。新しいことを取り入れてますアピールなんて簡単だから。それじゃあまりおもしろくない。あとは、微々たるものかもしれないですけど聴いてもらってる自覚があるから、また新しいアルバムが提示出来るのかなって」
――制作自体は結構スムーズにいきました?
「今年に入ったぐらいから具体的に曲を並べて、最初の“せーのでドン!”をやって(笑)。そこからレコーディングまでは結構長かったですけど、レコーディングは5日で終わりました」
――早い! じゃあプリプロを結構きっちりやったんですね。
「ものスゴいやりましたね。よく“レコーディング中に化学変化が”なんて言いますけど、それもプリプロの段階で、3人で揉んでる間に起きてるから。ものスゴく練習するというか、とにかくスタジオに集まる時間を設けてる。それは時にはご飯を食べたり話したり音楽聴いたりとかしてるだけなんですけど(笑)。無駄なんだけど、無駄じゃないと思うんですよ。そういう時間を多くとって、レコーディングはサッとやる」
――やっぱ会う時間って大事ですよね。
「そうですね。とは言え、もうそんなに会話はないんですけど(笑)」
(一同笑)
「でもまあどっちかって言うと、仲はいい方なんで。久しぶりだったらいろいろ話すこともあるけど、結構会っちゃってるんで(笑)。ライブが終わって、ちょっとした反省の言葉をお互いに交わして帰る。でも、話すときはみんなでちゃんと話すし、とてもいいスタンスだなと思いますね」
ライブを重ねて、リリースを重ねて、ちゃんと一過性じゃないものを築きたい
――ソロでもそうだったんですけど、やっぱり今回のアルバムにも、歳相応のスタンスがあるなって。
「この年齢になると分かることがあるんですよね。ある程度年配のお客さん、めっちゃ若いお客さん、さらに10代とかいろいろいると思うんですけど、僕とかはヘンな話、20代前半はご飯を食べなくてもいっぱいライブを観に行きたい、いっぱいライブしたいって思ってたクチなんで。その昔は部屋に風呂もなかったですし(笑)。今の若い子がどういう状態でいるのか…俺たちみたいな音楽を聴いてていいのか? もうちょっと若いバンドを聴いた方がいいんじゃないの?って(笑)」
――今の方が、音楽の知識のない一見さんにも聴いてもらいたいって言ってましたもんね。
「どっちかって言うとそっちが気になりますね。どういうスタンスでCDを買って聴いてんの? 今だったらダウンロードしてんの? どのくらいライブに行って、どういうのが楽しいの?とか。俺もそれを共有したいなって思っちゃうんですよね。それは自分の趣味ですけどね、FRONTIER BACKYARDとはあんまり関係のない(笑)。正直もう分かんないんですよね。分かったからって商売につなげるとかじゃなくて、単純に興味として知りたい。10歳上の先輩ミュージシャンと話すより、後輩ミュージシャンにどう思ってんの?て聞く方に興味がある」
――今までの話を聞いていてもそうですけど、歳を重ねていけばいくほど表現の幅=アウトプットも広がる中で、それでも自分がバンドマンであることにTAGAMIさんのアイデンティティがあるというのが意外というか、嬉しい発見みたいなところはあります。
「そうですねー。だからまたいろいろやりたくもなるのかもしれない。バンドの良さもダメなところも分かってるんで。ダメなところもあるんですよ。それぞれが何となく誰かがやるだろうって思ってるところとか(笑)。バンドっていい状態はずっと続かないんです。でも、今のFRONTIER BACKYARDはスゴくいい状態なんで。TAGAMIがこうするなら俺はこうしたいとか、メンバー同士の持ち分がちゃんとある。ダメな状態のときは、結局目標に向かっていないというか、フレッシュじゃないんですよね。ただやってるだけだから」
――今のフロンティアの目標って、まぁそんなに具体的なものじゃないかもしれないですけど、あります?
「あります! 古い例えだから読んでくれた人がどう思うか分からないですけど、マノ・ネグラっていうバンドが昔フランスにいて、一見さんが観てもスゴく楽しいんですよ。ステージがどんどんノッてきて、セーフティでピースフルなライブ。いまだにそのボーカルのマヌー・チャオのステージはスゴくいい。そういうことが、バンドとして、ライブで出来たら一番いいなと思っていて。CDを売りたくないわけではないんですけど、ライブの現場をちゃんと出来て、結果CDが売れたりすればいいんじゃねーかな。根付かせたいんですよね、一番は。この歳にもなると、ちょっとうまく仕掛けるとCDが売れることも何となく分かってきちゃった。そういうことよりは、ライブを重ねて、リリースを重ねて、ちゃんと一過性じゃないものを築きたいっていう、漠然とした目標はあります。去年だと『AIR JAM』『FUJI ROCK FESTIVAL』だったり、今年は『RUSH BALL』にも出させてもらいましたけど、“あっフロンティアっぽいね”みたいなね。やり続ける原動力はブレイクすることよりは、オーディエンスの指示を得たいっていうのが一番かもしれない。“あの人たち間違いないよね”って言われる方がね。CDが売れるのもスゴい大切だけど、そのCDを大量に中古に出されても何かね…(笑)。だったら数は少なくても、そのCDをずっと持っててくれてる方を取りますね」
――その人にとって大事なものでありたいと。
「そうそう。大勢のお客さんに観て欲しいですけど、それが次の瞬間にいなくなるくらいなら」
――やっぱりしっかりとした関係を築くというか。
「そうそう! まさに“関係”っていう言葉ですね」
――だって去年出された本もね、『TGMXの音楽関係』。
「それはいつも思ってますね。バンドとお客さんとだけじゃなくて、例えば奥さん(=筆者)みたいなライターの方だったり、イベンターの方だったり、レーベルとかと全部との関係ですね。何かそれが気になりますね。歳をとったからかもしれないですけど、好きで始めた音楽だけど、1人の力で回ってるわけじゃないのはスゴく分かってるんで。友達のバンドも絶対いなきゃダメだし、売れてるバンドはいなくなっちゃえなんて全く思わないですし(笑)。むしろそうなりたかったのに、なれなかったみたいなところもあると思うんで。まずはお客さんとの関係、そしていろんな各関係みたいなことを、ホントに根強くさせたいっていうのが一番なんですよね」
――今はそんなフロンティアの背中を見てるアーティストも多いなって感じますよ。だって普通ね、キャリアを重ねたバンドに夢とか目標ってなかなか聞く流れにならないですから。でも、TAGAMIさんにそれを投げたらちゃんと返ってくるっていうのは、スゴくいいなぁ。
「景気もずっと良くないし、厳密に考えたらどうしようみたいなこともやっぱりいっぱい思うんですよ。でも、そればっかり考えててもダメだと思うんで。やっぱポジティブに考えていかないとね」
――何かそういう意味でも、音楽の機能が変わってきている気がしますね。
「と思います。ホントに音楽の機能の仕方。立ち位置というか」
――とは言え、やっぱり音楽における刺激や感動はもちろんあって欲しいものだし。
「あと何十年くらいしたら、それに感化された人だけがちゃんと残っていくと思います。僕がスキャフルをやり始めた頃とかは、“楽しけりゃいいでしょ!”みたいな快楽主義というか、政治も分かんなくて全然よかったし、もっとバカみたいなもんが音楽だったりエンタテインメントの世界だったりしましたけど、それはもう全く無理なんだなって思いました。やっぱり社会だから。そういう政治のことも社会のことも考えながら、天職としての音楽をちゃんと全うしたくて。というのを、結構今は思ってますね」
――もしかしたらみんなが、昔より音楽に何かを求めてるかもしれないですね。
「と思うんです。良くなってくんじゃないかと勝手に思ってるんですよ。余計に必要なものになるんじゃないかな」
――そして刺激だけじゃなくて、安らぎも欲しい。
「そうそう。今の音楽は結構それが多いですからね。フロンティアを始めた頃も、どっちかって言うと刺激のある音楽が支持されてたと思うんですよね。今は音楽に安らぎとか落ち着きを求めてんだろうなーって」
たまたま僕は曲を作ってライブを作る“役”というか
――それこそ前作『sunset,sunrise』はライブ仕様のアルバムの1つの到達点みたいなところがあったと思うんですけど、今回の『fifth』はそれを踏まえて、さっき言った安らぎじゃないですけど、高揚感と同時に安堵感だったり、エバーグリーンな部分があるのがやっぱり違いますよね。
「その通りだと思います。高揚感もないとダメなんです。超楽しいみたいなバカみたいな世界と、バカみたいな世界はあるけどやっぱり明日は仕事があるよっていう現実だから。でも、仕事に行っても音楽を聴いて、週末になればまたライブを観たり。別にそれは僕たちのライブじゃなくても全然良くて。カッコいいバンドだったら、そっちに行けって思えるんです。僕自体いろんなバンドが好きですから、それが一番いいんじゃないかなって」
――あと、’11年の前作リリース時は、絶対に震災に対して何かを感じてるし、それに対する回答にもなるけど、そこから2年経って、今じゃあ何を鳴らすべきかっていうのも。
「そこに何となくたどり着けたのもありますね。例えばなんですけど、このビーチのジャケットはデザイナーが持ってきてくれて、当時だったら絶対無理だった。海は怖いし津波のことを想像するから。でも2年経って、どう変わったっていうわけじゃないけど、やっぱり海って元々は楽しいもんじゃないですか? 小さい頃行ってたじゃん、みたいな。そういうのもあって、スゴくいいなと思ったんですね。敢えて海のジャケでいい。そういう意味では、2年前では出来なかったジャケだったり音楽だったりっていうのはありますね」
――タイトルも今までで一番潔いんじゃないですか?
「そうなんですよ。『sunset,sunrise』はそれこそ震災のことをスゴく考えたというか、もうそれしかなかった。今はやれることをバンバンやって、微力ですけど社会の活性化につなげたいと思ってますよ。まぁ僕も何歳まで生きられるか分かんないですけど、せめてそういう想いはないとダメだなーとはちょっと思ってます。楽しいからバンドやって、何となく過ごしてるでは、もういられないな。かと言ってあくまでも音楽は音楽だから、こういうタッチでやりたいだけなんですよ、俺たちのスタンス的には」
――なるほどな~。いやーでもやっぱいいこと言いますね、TAGAMIさん。マジで。
(一同笑)
「ホントに思ってるんですよ。まぁお酒の力で(笑)」
――ロマンチストやわ!
「んーそうですね。そういうところは若干あるかもしれないですね(笑)」
(一同笑)
――でも、なくしたくない部分だと思いますね。
「ミュージシャンはみんな、絶対にそういう部分があると思いますね。それがないと曲を作って聴いてもらうっていう謎の行為は(笑)」
――さらにそれで一喜一憂するっていう謎の行為は(笑)。
「僕は本でも、美術でも、webサイトでも、CDでもライブでも、ゼロからモノを作ってる人がスゴい好きなんですよ。そういう人たちはスゲーなって素直に思えるんで。たまたま僕は曲を作ってライブを作る“役”というか。僕だけじゃなくていろんな各業種の方がそう自覚したら、不景気でやんなっちゃうよねっていうマイナスな意見ばっかじゃなくなると思うんですよね。熱い人は必ずいると思うんで、そういう人たちを盛り上げるしかないですよ。ましてや大人がそれをやんないとダメで。“もう死んじゃうからいいか。後は任せたー!”みたいなことは絶対に言いたくない。まだやるべきことがある。普段はホントにこういう話はしないんですけど」
このバンドが解散することはもうないと思う
――さっき音楽の機能の話をしましたけど、フロンティアの機能も拡がってるというか、変わってきましたよね。
「そうですね。そのニーズを勝手に感じてやってますね。例えば先輩ですけど同世代のハイスタの皆さんとか、年下ですけど同世代のTOSHI-LOW、BRAHMAN。当時からずっとやってる人たちが、俺たちはこうやるんだっていうのを提示して、ちゃんとそれを全うしてるんで。まぁ当時だったらSCAFULL KING、今だとFRONTIER BACKYARDの僕らも、今だからこそめちゃくちゃ楽しいライブを作り上げたいとか、そういうのはやっぱ思いますね。みんなの力になるというか」
――もうこの後、音の話聞かなくていいなーっていうくらい、いいこと言うなー(笑)。
「いやーもう音楽の話はしなくていいんじゃないですか?(笑)」
(一同笑)
――まあでも、ちょいっと聞くとですね(笑)、先行配信された『Let us smile again』(M-8)なんかはユーロビートにインスパイアされて、みたいな話もあったじゃないですか。今そこ触るの!?みたいな。
「新しい音楽はどんどん生まれてきますけど、古い音楽もスゴい好きなんですよね。ただ、僕はスティービー・ワンダーが大好きなんですけど、ずっとスティービー、スティービーって言っててもしょうがない。じゃないと僕らが今いる意味も全くないんで。ですが、ユーロビートを取り入れちゃったのは、サポートしてくれてるCUBISMO GRAFICOのCHABEくんがお正月にDJをしてて、ギャグかどうか分かんないけどユーロビートをかけてたのがスゴいカッコよかったから。今ですらギャグかどうか分かんないんですけど(笑)。同じくサポートしてくれてるKONCOSのTAICHIもDJだし、僕らの周りにはホントに最新鋭の話だったり、古い音楽だったり、とにかく音楽の話をする人がいっぱいて。それでですね、ユーロビートを取り入れたのは。僕はパンクとかスカが好きだったから、当時はああいう打ち込みのユーロビートとかはヤだみたいな(笑)」
――まぁヤワな感じはしますよね(笑)。
「でも、いろんな音楽を取り入れていきたい今のFRONTIER BACKYARDとしては、スゲー必要なことだと思っていて。スゴく新鮮に聴こえたんですよね」
――まあ当然のことながら、ちゃんとフロンティアの音になってますよね。
「そうですよね。他にも何曲かラテンぽい曲があって、それもCHABEくんが、トリオ・エレクトリコっていう新しい音楽があるって教えてくれて、何曲か聴かせてもらったらスゴい良くて。やっぱり僕らにとっての最新鋭な音楽をやりたい。興味があるんですよね。例えばファッションとかでもそうですし、若い子が携帯で話してる会話、そういう若い子のカルチャーが、気になっちゃうんですよね」
――逆に若いバンドの方が、そういう観念はあんまりないかもしれないですね。
「若いバンドの子たちは上は見ないですよね。俺もそうだったんですけど、“ジジイ早くいなくなれ”みたいな(笑)。単純に“知りたい”っていう欲求がある。あと、自分たちの悪いところも実は分かってて」
――それってどこですか?
「1つの大切なルーツミュージックをちゃんと掘って、ちゃんとそれを愛して、ちゃんとそれを継承するような行為を全くしてないんで。だから、そのジャンルのパイオニアには申し訳ないなと思っていて。例えばちょっとパンクっぽい曲をやると、あーあの人たちに失礼だっていうのも分かってるんですよ。スカをやるとあの人たちに失礼とか。クラブが好きだなんて言ったら、ちゃんとクラブで活動している人たちに対して失礼なのも」
――それ、全部失礼になっちゃいますね(笑)。
「それを承知でやってるんですね。ワン・アンド・オンリーの方って絶対そうなんですよ。でも、もし逆の立場だったら、僕も“あいつらクソだ”みたいなことを言うと思いますけど(笑)」
(一同笑)
――さっきも言いましたけど、フロンティアって雑食ですけど、それによってもうフロンティアでしかない音が鳴っている。どうやったってこの3人だったらこうなるでしょっていう。
「それをやろうとしてるんですよね! そういう意味では、このバンドが解散することはもうないと思う。長きに渡って見てもらうのが一番いいなと思ってるんで。断片的にヒット曲を作り出すだけがバンドじゃないっていうのは、いつも思ってますね」
――それは、今活動しているいろんなバンドを勇気付ける一言やなぁ。やっぱりヒットがないと続けられないとか、いい歳になったら諦めなければいけないじゃなくて、常に探求してやり続ける意義と意思。
「まかり間違ってたまたまヒットしちゃったとしても、多分そこでは揺らがないと思います。僕らなんて40過ぎてバンドやらせてもらって、やんのは勝手ですけど、それを観に来てくれたり、CDを買ってくれるって、やっぱりなかなか奇跡的なことだなぁと。僕たちもその人の人生の大切な2時間を見てると考えると、ありがたいなーと思います」
ライブってやっぱりほんの一瞬で良くなったり悪くなったりするから
だから続けたいと思うんでしょうね
――それこそツアーも、ちゃんとつながりのあるゲストを呼ぶ日も、ワンマンもあって。ライブ自体もどんどん良くなってる確信があるみたいですね。
「そうですね。ライブに関してホントに真剣に考えてるから良くはなってると思うんですけど、ライブってやっぱりほんの一瞬で良くなったり悪くなったりするから、だから続けたいと思うんでしょうね。CDを作り込むのとライブを作るのとでは全く違うので」
――ゲストもCOMEBACK MY DAUGHTERSとか、つながりが見えるバンドばかりで。
「やっぱり友達のバンドを誘ってやりたいんですよね。地方にライブに行ったときに、僕はお酒が好きだから、美味しいご飯を食べに行って、地方のことも話して、対バンのことも話して、音楽のことを“今どんな感じなの?”みたいに確認したり。後輩も先輩も同世代のバンドとも、そういう相対的な立ち位置でいたいんで。自分たちだけいればいいっていうシーンは良くないから。なので、好きな人たちだけです。政治的というか、あのバンド、今誘っといた方がいいかなーみたいなのは全くないです」
――大阪はワンマンということで。『RUSH BALL 15th』でかき回した後の宴ですね。
「前回『RUSH BALL』に出させてもらったときは、ものスゴく悔しくてね。こんなことはあんまないんですけど、ステージで涙が出た。あるトラブルがあって」
――マジですか!?
「機材をどんどんハケてステージをまっさらにしていくっていうのをやったんですけど、最後の最後に僕がサンプラーのボタンを押せなかったんですよね。体力が足りなくて、5cmくらい届かなくて、何となくズズズって終わっちゃって。ステージ上を這いつくばって、“あー…”ってそのまま涙がポロポロって(苦笑)。最後にオチを作れなかったんです。それがもうまさかのまさかで。ステージで悔しくて泣くとかあんまりないんですけど、あのときは初めてくらい自分にガッカリしましたよね。ホントに今でも思い出すだけでも自分に腹立つ(笑)」
(一同笑)
――今年は無事そのリベンジを果たした『RUSH BALL』があってのワンマンです(笑)。
「大阪ってアクセスしやすいからか、お客さんの定番化があんまりないんですよ。前はあんなに人いたのになんで今回いねーんだとか(笑)、逆になんで急にこんなに人がいるんだとか、曲知らないのに楽しそうだなとか(笑)、結構不思議。やっぱり人が行き来する街なんだなって。そういう意味では、今回のShangri-Laもいい方向になればいいなと思ってますね。急にいないとかはやめてね(笑)」
(一同笑)
――いい風景が見られることを期待しつつ(笑)。あと、いいお酒をね。
「もちろん。いつもありがとうございます!」
――今日はいい話がいっぱい聞けました。ありがとうございました!
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2013年10月22日更新)
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