‘14年4月に結成25周年を迎え、1年超えのアニバーサリーイヤーを謳歌する(笑)フラワーカンパニーズは、昨年より続く周年ツアーの第4タームに突入。その旅の供となる2年3ヵ月ぶりのアルバム『Stayin’ Alive』は、盟友・斉藤和義やスキマスイッチの常田真太郎が参加したライブ映えする楽曲群、死も老いも描き出すドン詰まりの世界から、“青春ごっこをこじらせた 手遅れの馬鹿だもの/1000回負けても引っ込まねぇよ しつこさが売りだもの”と歌い上げるThis isフラカンなメッセージまでが見事に機能する1枚だ。思い出は人を強くもし、弱くもする。いまだにもがき続けながらロールする鈴木圭介(vo)とグレートマエカワ(b)の2人が、5月30日(土)大阪城音楽堂でのワンマンを前に、ざっくばらんに45歳のリアルを語るインタビュー。
――とは言え、最新作の『Stayin’ Alive』の詞はすごくダウナーというか。こんなにはっちゃけたジャケットなのに、『short hopes』(M-1)とか『地下室』(M-2)のこのドン詰まり感(笑)。
鈴木「フフフ(笑)」
――まさにこの年齢でしか書けないものというか、ズッシリくるメッセージだなぁって。
鈴木「でも、逆に60とか70の人からは、“何言っちゃってんだよ、お前まだ45だろ? 甘い甘い!”って言われると思いますよ(笑)」
――これは(鈴木)圭介さん自身がダウナーになってたとかではなく? 今こういうことを書いておきたいという発想だったんですかね?
鈴木「いや、曲によりますね。本当にダウナーだったときに作った曲もあるし(笑)」
(一同爆笑)
鈴木「リアルに“もうマジで無理!”みたいなときもあって、それで書いた曲もあります」
――“手首に走る虹の跡”(『short hopes』)とかはすごいですよね。こういう表現をした人を見たことがないと思いましたし、『祭壇』(M-6)とかもそうですけど、やっぱり年齢と共にリアルになってきますよね。
鈴木「“死”がね。そういう感覚もそうだし、老いって徐々に来ると思ってたら…老眼とか突然来ましたから! いきなりですよ、本当に」
――いきなり見えにくくなるんですか?
鈴木「そう! あと、白髪とか。“あれ? こんなに俺、白髪あった?”って」
――他のインタビューでも圭介さんが、朝目が覚めたら、唐突に老いを感じたって(笑)。
鈴木「そうそうそう! 老いはある朝突然来るんですよ。パッて朝起きて鏡を見たら、“うぉ! 俺スゲェ老けてる!!”っていう。ホントそういう感じ」
――制作においては、俗に言う“鈴木待ち”みたいな状態はなかったんですか?
鈴木「ありましたありました! 今回が一番長かったんじゃないかな(笑)」
マエカワ「すげぇ長かった(笑)。1年近くあったんじゃない? 結果的にはほとんど鈴木の曲にはなったけど、この2年は俺や竹安(g)が作る曲もデモとしてたくさん録音してきて。その中にハマりがいいのがあればいいね、みたいな感じだったんだけど、なかなか鈴木も歌詞が書けんくて。まぁリリースは1年先だったから、そんなに焦ってもなくて、その代わりにこっちがドンドン曲を出していくんだけど、あんまり出すとプレッシャーに感じちゃうかな?とも思いながら(笑)、何か突破口が1つでもある方が絶対にいいから。やっぱり鈴木が弾き語りで作ってくるのが中心だと思うし、もうこの10年ぐらいずっとそうではあるんだけど、俺や竹安のアイデアだったり、4人でただ音を鳴らしたときに偶然出たところから、すごくいい曲が生まれる可能性がまだまだあるんだなって思いましたね」
斉藤節と鈴木節が上手く融合してる感じなんですよね
――今作には斉藤和義さんも参加されてましたが、和義さんは先輩なんですね。フラカンにも先輩がいるんだって、ちょっと思いました(笑)。
鈴木「いやいやいや、先輩方はみんな元気がいいからね(笑)。(和義さんは)3つ年上で」
マエカワ「デビューも1~2年早いのかな?」
――元々は同じ事務所でっていうところですよね。
マエカワ「そうですね。だから直系の先輩でもある、斉藤くんは」
鈴木「もう20年ぐらいの仲ですけど、全然変わらないですね。最初から変わらないですし、言ったらステージ上と楽屋の印象も一緒ですから。ずーっと一緒ですね」
――最初に会ったときの印象はどんな感じでした?
鈴木「初めて斉藤くんを見たのは事務所のトイレなんですけど(笑)」
マエカワ「その後、ライブを観に来てもらって」
鈴木「パワステ(=日清パワーステーション、’98年に閉館)だね。ウルフルズと一緒のとき」
マエカワ「そんときの印象も、今みたいにほわ~んとする中に鋭いところを持ってる、そういうイメージですよね。今でもメシを食いに行って飲んで喋ったりすると、そういう鋭いところをガツッと言ってくれる人だし、すごくロックな部分と、ほわ~んとした感じで喋るときのイメージと、2つ持ってておもしろいなこの人、っていう」
――過去に斉藤さんの作品にフラカンが参加することもあって。
マエカワ「“フラカンがいいんじゃない?”って、何かと引っ張り出してくれるんだよね(笑)。そういうこともあったから、今回は25周年っていうのもあるからダメ元で呼んでみようかって。そしたら“あ、やるやる”って(笑)。斉藤くんは自分のアルバムでThe Birthdayのチバ(ユウスケ)くんとかとやってたりいろいろコラボしてるから、ちょうどタイミングもよかったのかなと。斉藤くんに“今のフラカンにどういう曲があったらいいと思う?”って事前に聞いたら、“前のアルバムとかもいろいろ聴いてんだけど、やっぱり明るめなフラカンらしいロックンロールがいいと思うな”みたいなことを言われて、“じゃあ5人でスタジオに入りましょうか?”って」
――それこそさっき話していた斉藤さんのロックな部分、ロックンロールにシニカルなメッセージを乗せるスタイルの曲ですよね。この辺りはフラカンだけではやらなかったでしょうし。
鈴木「そうですね。出来ないです、僕では」
マエカワ「斉藤節と鈴木節が上手く融合してる感じなんですよね。“ハエ”をモチーフに使うところも、斉藤くんが1人でやるよりはフラカンとやった方がいい感じがするし(笑)」
――この曲の音のイメージは、モトリー・クルーとかだったんですよね?
鈴木「もあったし、ヴァン・ヘイレンも」
マエカワ「斉藤くんは元々ギタリストですからね」
鈴木「しかもメタルだから」
マエカワ「僕らも漏れなくそういうところは通ってるからね(笑)」
鈴木「にも関わらず、そういう曲がねぇなって。メタルまではいかないけど、ちょっとハードロックな曲です」
マエカワ「(HR/HM専門誌)『BURRN!』に載せて欲しいぐらいの」
――フラカンのディスクレビューが『BURRN!』に載ってたらビックリするな~(笑)。
マエカワ「点数低かったらイヤだな~でも(笑)」
鈴木「でも、昔は編集長の人がライブに来てくれたじゃん。めっちゃ褒めてくれたよね? “フラカンはいいよ! 分かってる!”みたいな(笑)」
――『BURRN!』の編集長も納得させるフラカンの音(笑)。やっぱり男の子は『BURRN!』の点数を気にする時代がありますよね、絶対。
鈴木「アハハ!(笑) ありますあります」
マエカワ「“え~!? これ0点なの?”とかね(笑)」
――逆にスッゲェ点数が高かったら、とりあえず聴こうみたいなところもありましたし。
マエカワ「ありましたねぇ(笑)」
歌ってる内容と曲調のギャップが自分の好きなところ
――話を聞いてると、詞はダウナーなものありつつ、圭介さん自身は『ハッピーエンド』の頃より健康的な感じが。
鈴木「あ、そうですか?」
――痩せてたし、何かもっと“堕ちてる”イメージがありましたね。しんどそうだなぁって。詞はこれほどじゃなかったのに、見た目がもっとダウナーだった記憶があります(笑)。
マエカワ「アハハ!(笑) あぁ~分かります。うんうん、分かります分かります。ダウナーなイメージ(笑)」
――詞の割には“あ、圭介さん元気そうでよかったな”って会って思いました(笑)。フラカンって這いずり回ってでも前進していくイメージがありますけど、圭介さん自身はすごくナイーブな面がありますもんね。
鈴木「ナイーブなんですよねぇ。でもこれ、自分で言うとイヤでしょ? “俺、ナイーブなんですよ”って言うヤツ最悪ですよ(笑)」
(一同爆笑)
――ただ、それを笑い飛ばせるような空気が、今回の作品とか、今の印象ではありますね。
鈴木「やっぱ曲調がすごく明るいし、元々歌ってる内容と曲調のギャップが自分の好きなところでもあるんで」
――なるほど。言わば、そのギミックが最も上手くいったアルバムかもしれないですね。
鈴木「そう! そうなんですよね。究極なレベルまでいったかなっていう」
――それでこのタイトルで、このジャケですから(笑)。今の時代に『Stayin' Alive』という言葉を聞くとはと。このビジュアルは映画『アウトサイダー』(‘83)がモチーフなんですよね。
鈴木「レコード会社の人が、“久しぶりに『アウトサイダー』を観直したら、すげぇおもしろかったんだよ”って。俺もそれを借りて観たら、確かにおもしろいなぁって」
マエカワ「それいいじゃん、みたいな軽い話ですよね(笑)」
鈴木「“リーゼントどう?”、“いーっすね!”って言ってたら俺になっちゃったっていう(笑)。今回は歌詞の内容も内容だから、これぐらい遊んだジャケットの方がバランスが取れるというか。これで俺の顔のアップとかになっちゃうと、いやいやちょっと重いだろう!って」
――まるで遺影のような(笑)。
マエカワ「『祭壇』って曲もあるぐらいだからね(笑)」
メジャーにいようとそうじゃなかろうと、売れていようと売れてなかろうと
いいことをやってればちゃんと応援してくれる土壌がある
――ボーナストラックには『ファンキーヴァイブレーション』(M-11)が入っていて、これはFM802で大阪にまつわるワードを募集したりして出来上がった曲で。
マエカワ「初めっから“フラワーカンパニーズと大阪”っていう企画から作った曲で、地名とか食の名物は大阪のものですけど、結局は“そこにいれば幸せだ”っていうツアーソングなので、本気度が強いんですよね」
――言ったらこれはどの場所にでも当てはまるというか。
鈴木「気持ちは一緒ですよ」
――泉大津は『OTODAMA~音泉魂~』、十三はFandango、南森町はFM802、森ノ宮は大阪城音楽堂と、歌詞に出てくる地名に関して想像が出来たものとそうでないものとがあったんですけど、寝屋川と豊中と吹田は?
鈴木「寝屋川はライブハウスのVINTAGEですね。久しく行けてないんですけどね」
マエカワ「名古屋にまだいた頃、20数年前にやらせていただいて。ちょっとご挨拶に行かなきゃなぁと」
――なるほど。フラカンの初期に訪れたルーツのような場所と。豊中は?
マエカワ「豊中は服部緑地、吹田は万博公園。=ライブをしたことのある土地なんですね」
鈴木「ただ、僕らは名古屋出身なんで、そこをちょっとね、気を付けたというか。“フェイクな大阪弁ですよ、このイントネーションは”っていう(笑)。それを分かった上で聴いてくださいねって(笑)」
――フラカンにとって大阪というエリアに、何か縁は感じます?
鈴木「大阪はやっぱり受け入れてくれるのが早かったんですね。名古屋以外で初めてツアーしたのも大阪だったし」
マエカワ「それがやっぱり継続してますよね。デビューした頃も、東京よりもライブも盛り上がったし、大阪球場とかでもやらせてもらったりしてるし。メジャーから離れてもFM802が会場限定のシングルをかけてくれたり、ライブを収録してそれを流してくれたり…メジャーにいようとそうじゃなかろうと、売れていようと売れてなかろうと、いいことをやってればちゃんと応援してくれる土壌があるというか。それはファンの人たちも含めてね。それがずっと変わらないですね」
ネバーエンディング・ツアーですよね(笑)
――ライブもそれこそ、どこまでが25周年なんだ!っていうツアーが、ずーっと続いてますけど(笑)。
鈴木&マエカワ「そうなんです(笑)」
マエカワ「一応、6月で止めようとは思ってるんだけど(笑)、収拾がつかなくなっちゃって」
鈴木「これ、60歳超えても25周年記念になってる可能性あるね(笑)」
――もうそろそろ30周年も始まりますよね?(笑) 今回の大阪ワンマンは大阪城音楽堂で野外という。野音でのワンマンっていつぶりぐらいです?
マエカワ「4年前にやったときかな?(『真夏の大爆発2011』)」
鈴木「でも、野音が終わったって、ツアーが終わるわけじゃないから。名前が変わって違うツアーになるから(笑)」
――何かもうボブ・ディランみたいになってますね(笑)。
鈴木「ネバーエンディング・ツアーですよね(笑)」
マエカワ「そのつもりでいますから」
――そう考えたら、世界を見渡したらまだまだレジェンドがいますね。
マエカワ「うちは25周年とか言ってますけど、ローリング・ストーンズは50周年超えてますから!(笑)」
――25年後のフラカンってどうなんでしょうね。
マエカワ「70歳ですね(笑)。まだまだ先は長いですよ」
鈴木「ヒヨッコですからね、まだ」
――フラカンからヒヨッコという言葉を聞くとは(笑)。でも、若い人じゃなくて中高年にファンを広げようみたいな発言も聞きましたけど、それも新しい発想ですね。
鈴木「(綾小路)きみまろ的な分野に行くかっていう話ね(笑)」
――若年層はこの先もドンドン人口が少なくなっていく。だから上の層を広げにかかる(笑)。
鈴木「そう! 扇子とか作っちゃって(笑)」
マエカワ「扇子はね、前から作ろうと思ってたんだよ。足袋とか作っちゃう?(笑)」
――あとは杖とかね(笑)。
(一同笑)
鈴木「老眼鏡とかもいいね。フラカン印の白髪染めとか(笑)」
マエカワ「白髪染めなんか開発に金掛かるわ!(笑)」
――今後のフラカンもおもしろくなっていきそうですね。本日はありがとうございました!
鈴木&マエカワ「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史