「まだまだこの気持ちは終わらないし、終わらせない方がいい」
『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』を手にツアー中!
不安も希望も怒りも喜びも音楽にして、クリープハイプの戦いは続く
尾崎世界観(vo&g)インタビュー&動画コメント
昨年はクリープハイプにとって、そして尾崎世界観(vo&g)にとって、決して忘れられない1年となったことだろう。年明け早々に巻き起こったレーベル移籍に伴う騒動から、初の日本武道館2DAYS、5月に発売されたシングル『寝癖』は過去最高のチャートアクションを記録。一方で、バンドの勢力を拡大するに至った夏フェスには敢えて出演せず、初のホールツアーで自らの存在と音楽をしっかりと各地に刻み続けた彼らが、その現在地として提示したのが、最新アルバム『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』だ。今作に封じ込められた全12曲には、一喜一憂と愛憎の狭間をひたすら行き来した怒涛の1年を走り抜けた彼らが手に入れた1つの回答と、消えない炎に改めて火をくべるような、新たなる決意表明と再出発の証がしっかりと記されている。現在は同作に伴う久々のライブハウスツアーの真っ只中、そして後には再びホールツアーが控える彼ら。不安も希望も怒りも喜びも音楽に装填して、クリープハイプの戦いは続く。尾崎世界観インタビュー。
曲を作ることにすごく集中していたし、意地になっていた
――昨夏のホールツアーも観に行かせてもらったけど、“このチームでツアーを成功させよう”みたいな意識が、メンバーとスタッフはもちろん、お客さんにもあったいいツアーで。よく考えたらロックバンドがステップアップしてホールでライブするっていう光景が、最近は案外少ないなって。音楽が元気な時代の手順をたどれてるのはいいよね。
「そうですよね。でも、逆走もしてますけど、わざわざフェスに出ない選択をしてまでやったことだから。これはもう性格だし、クセだし、そういうバンドだからしょうがないんですけど(苦笑)」
――常にカウンターに行きたくなる?
「そうなんですよ…“オイシイ方を、辛いけど”っていう感覚が何か染み付いてますね(笑)。結構客観的に自分のことを見ていて、“もしこういうアーティストがいたら”みたいなこともよく考えたりするし。まぁでも難しいですね、今はホントに。選んでもどれが正解かはすぐに見えてこないし、細かい答えがいっぱいあるんで。1つの正解を導くために3つぐらい間違えなきゃいけなかったり。そこを我慢しつつ。間違えて終わるパターンもあるし(笑)、答えが出るまで時間も掛かるし、不安なことは多いですけど」
「それがもうドンドンひどくなってきてる状態です(笑)」
――そんな中、今回のアルバムにはどうやって向かっていったんですか?
「もう1曲ずつ曲を作ることにすごく集中していたし、意地になっていたというか。曲でしかやっぱり戦えないし、原点がより見えたというか。いろんなことがあった中で、当たり前だけど曲を作って、それをバンドでアレンジして出すことが全てだし。今回のアルバムも“11~12月ぐらいに出せたらいいな”とは周りから言われてたんですけど、そんなこと言ったって出せるのかどうか分からない状況だったので聞き流しながら(笑)、ちょっと頭の片隅に置いておくぐらいでレコーディングしていきました。ホールツアーが始まる前にレコーディングを1回止めたんですけど、その時点でシングルを含めて10曲ぐらい録ってましたね。アレンジも早かったんで、プリプロ的な感じでついでに録ってみようかっていう曲も、結局これで完成だなってなったりして」
――じゃあ全然順調に。
「出来てたんですよ。ホールツアーが終わった後に、ちょっと感じることがあったので何曲か作りたいっていうのはあったんですけど、結局、僕が書いたのは『社会の窓と同じ構成』(M-10)だけでしたね。カオナシの『のっぺらぼう』(M-8)はその後に録って」
――そういう意味では、バンドの健康状態としてはいいですね。
「プロデュースも蔦谷(好位置)さんや浅野(いにお)さんにやってもらったり、自分たちでやったりもしましたけど、曲を作ってそれをアレンジすることに関しては、何の迷いもなく出来ました。ホールツアーがあったから、結果的に調子良く録れたのかもしれないです。それがなかったらダラダラしていたかもしれないし。そもそも周りのバンドは打ち合わせも長時間してると聞いたりするんですけど、何を話してるのかすごい気になるんです。うちは話すこと…ないですね(笑)。5~10分とかで終わっちゃうんで。まぁメンバー3人も“どうせ俺らが何か言ったとしても、決めてるんでしょ?”っていう顔はしてますけど(笑)」
――移籍の騒動とかはあったけど、その後のようやく世に出せた今回のアルバムは、ちゃんと作品が勝っていると。
「前は音楽以外にもちょっとやれることがあったんですけど、いろいろとなくなったとき、やっぱり曲しか…もう曲だけだったから。今やっていることが全てだと思うし、後悔することはいっぱいあるけど、それを歌えばいいと思うし。人とのつながりとか…やっぱり人に興味があるし、誰かに頼らなきゃどうしようもないし、1人では生きていけないので。“この人腹立つなぁ、二度と顔も見たくない。もういなくなればいいのにな”っていう存在もすごい大事だし。そう思ってホントにいなくなったら、一言も言えなくなっちゃうんで。やっぱりそれだけ自分の気持ちを動かしてくれるっていうのは…とは言え、実際に会ったら“このヤロー!”って腹が立つんですけど(笑)。そういういろんな要素があって、自分の気持ちが動いて、今もこうやってやれていると思うんで」
このアルバムの中には、自分でもビックリするような言葉がいくつかあって
――現在公開中の映画『百円の恋』主題歌としてシングル『百八円の恋』(M-6)が先に出ましたけど、映画とクリープハイプの関係性というか、ここまで映画に愛されるバンドも少ないなと思うんですけど。
「嬉しいですね。ホントは…ちょっとは怖い部分もあるんですけど。好きなモノをずっと前から観ていたのに、向こう側、裏方に行ってしまうのがもったいないみたいな気持ちもあるんですけど、映画に関われているのはやっぱり嬉しいです。バンド名も『ナイト・オン・ザ・プラネット』(‘91)っていう映画の台詞から“ハイプ”って付けましたし」
――トレーラー映像も観たけど、主演の安藤サクラさん、すごいね。
「すごいですよね。やっぱりあの主演のキャスト2人の名前だけで(安藤サクラ/新井浩文)、俺がずーっと観てきた邦画のあの感じがすごいあって(笑)。これをやれるのかぁと思うと嬉しかったですね」
――曲タイトルにはちゃんと税金も掛かって(笑)。
「はい。国側に回りました(笑)」
――いずれ『百十円の恋』になるかもしれないねぇ(笑)。
「だからもうちょっと待って欲しいです。増税を何とか引き延ばすキャンペーンソングとして。2000円札みたいにならないように気を付けます。後々“108円って何のこと言ってんだ?”って(笑)」
――その次の曲『本当』(M-7)は純ポップスというか、こういう曲が書けてきているのは希望やね。
「これは元々シングル候補でもあったんですけど、こういう曲を今までは書けなかったし、書けたのが嬉しかった。無理もしていないので自然と出来ましたね」
――尾崎くんってスランプはあるの? もう曲が書けねぇ!みたいな。
「曲作りを始めてから今まで、曲が書けないとかはホントにないですね。そこに救われているのかもしれないです」
――『大丈夫』(M-5)にはアルバムタイトルの『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』というフレーズが出てきます。こういう発想が持てるのは成長ですね。
「そうですね。このアルバムの中には、自分でもビックリするような言葉がいくつかあって。それを丸くなったと捉える人もいるとは思うんですけど、いろんな出来事を経て自然とその言葉が出てきてるから、自分にとってはすごく説得力がある言葉で。ただ、そのいろんな出来事を知らない人からしたら何でもないと思うかもしれないから、それをどう伝えていくかですよね。前から知ってくれている人は、“尾崎はこんなことを歌ってる。すごいなぁ。変わったなぁって”思ってくれるけど、初めて聴く人からしたら、普通のバンド、普通の歌になってしまう可能性もあるので。その言葉でどう曲をいいと思ってもらうかは、今後考えていきたいところですね」
アルバム全体を見渡してイヤらしく作りましたね、この曲だけ(笑)
――さっき話に出てきた『社会の窓と同じ構成』は、まぁ“らしい”というか(笑)。まぁそのまんまやけど、曲が2ndシングルの『社会の窓』(‘13)と、同じ構成。
「これはちょっとフザけた部分もあるし、すごく気楽に作りましたね。もうずーっと曲と向き合って至近距離で作っていたので、アルバム全体を見渡してイヤらしく作りました、この曲だけ(笑)」
――これはここ2年ぐらい前からあるお得意のシニカル路線というか。
「まさに。それはそれで、もうちょっと遊べるなと思って作ったんです」
――そして、最後にはちゃんと、『二十九、三十』(M-12)っていう次に、未来につながる曲で締められてる。この曲前にフィードバックノイズを入れたのは?
「ホントは入れたい曲があったんですけど、いろいろあって入れられなくなっちゃって…その曲のノイズだけ残して入れました。ホールツアー中もやってたんです」
――あ~! なるほどね。
「だから『社会の窓と同じ構成』があってよかったですね。ちょっとやり過ぎだけどもう一発攻めておこうという気持ちで書いたあの曲がなかったらホントにヤバかった。収録したいっていう気持ちはあったので、せめてノイズだけでも残しておこうと(笑)」
――確かに『社会の窓と同じ構成』がなかったら、ちょっとクリーンなアルバムのイメージがあったかもね。
いろいろあったときもお客さんの前に立つと安心したんで
それをもっと楽しんでいきたいし、楽しませたい
――今回のアルバムを作ってみてどうでした?
「いろんなことに決着をつけられたとは思わないですけど、とりあえず…持ち越しに出来たというか。まだまだこの気持ちは終わらないと思うし、終わらせない方がいいと思うし。去年はホントに我慢してきたし、アルバムを出せて本当によかった」
――でも、全てを音楽に変えていく作家としては、いい年だったんじゃないですか?(笑)
「収穫の年だったなぁ。ちょっと今年はじっくり料理します。去年は収穫に忙しかったんで(笑)」
――そして、“あれ? ちょっと材料足りてないな”って思ったら。
「また自分から何か仕掛けに行きます(笑)」
――ツアーに向けてはどうですか?
「とりあえず、物理的に演奏が難しい曲がいっぱいあるという(笑)。あと、やっぱりいろいろあったときもお客さんの前に立つと安心したんで、それをもっと楽しんでいきたいし、楽しませたいし、しっかり表現したいです。アルバムでも、ライブでも」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2015年2月12日更新)
Check
Movie Comment
アルバムとツアーとオーディエンス
への想いを尾崎世界観(vo&g)が語る!
Release
怒涛の2014年の記憶と音楽への執念を
しっかり刻み込んだ3rdアルバム
Album
『一つになれないなら、
せめて二つだけでいよう』
発売中 2750円(税別)
ユニバーサル・シグマ
UMCK-1498
<収録曲>
01. 2LDK
02. エロ
03. ボーイズENDガールズ
04. そういえば今日から化け物になった
05. 大丈夫
06. 百八円の恋
07. 本当
08. のっぺらぼう
09. 寝癖
10. 社会の窓と同じ構成
11.
12. 二十九、三十
Profile
クリープハイプ…写真左より、長谷川カオナシ(b)、尾崎世界観(vo&g)、小川幸慈(g)、小泉拓(ds)。’01年、クリープハイプを結成。3 ピースバンドとして活動を開始。’05年、下北沢を中心にライブ活動を活発化。ライブを観たいろいろな人から「世界観がいいね」と言われることに疑問を感じ、自ら尾崎世界観と名乗るようになる。’08年9月、メンバーが脱退し、尾崎世界観の1人ユニットとなる。’09年11月に小川、長谷川、小泉を正式メンバーに迎え、本格的に活動をスタート。’12 年4月、1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。同年10月に『おやすみ泣き声、さよなら歌姫』、’13年3月に『社会の窓』、5月に資生堂アネッサ2013CMソング『憂、燦々』と3枚のシングルをリリースし、7月に2ndアルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』を発売。’14年4月には初となる日本武道館公演2DAYSを成功させた。翌5月には4thシングル『寝癖』、7月に5thシングル『エロ/二十九、三十』、11月に6thシングル『百八円の恋』を、そして、12月3日に3rdアルバム『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』をリリース。
クリープハイプ オフィシャルサイト
http://www.creephyp.com/
Live
全公演完売のライブハウスツアーに
続いてホールツアーが3月よりスタート
『全国ライブハウスツアー
「一つじゃつまらないから、
せめて二つくらいやろう 前編」』
Thank you, Sold Out!!
【長崎公演】
▼2月13日(金)DRUM Be-7
【高知公演】
▼2月20日(金)高知キャラバンサライ
【広島公演】
▼2月22日(日)BLUE LIVE 広島
【北海道公演】
▼2月27日(金)サッポロファクトリーホール
【青森公演】
▼3月1日(日)Quarter
『全国ホールツアー
「一つじゃつまらないから、
せめて二つくらいやろう 後編」』
【千葉公演】
▼3月21日(土・祝)市川市文化会館 大ホール
【岡山公演】
▼3月28日(土)倉敷市民会館
Pick Up!!
【滋賀公演】
一般発売2月28日(土)
※発売初日はインターネットでは1IDで1公演につき1回のみ購入可。電話予約は同一番号から1公演につき1回のみの予約で「発信者番号」通知の設定が必要。公衆電話・IP電話・一部携帯電話での予約不可。
Pコード248-945
▼3月29日(日)18:00
滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
全席指定4900円
清水音泉■06(6357)3666
※未就学児童は入場不可。
【福岡公演】
▼4月3日(金)福岡サンパレス ホテル&ホール
【静岡公演】
▼4月5日(日)静岡市清水文化会館
(マリナート) 大ホール
【北海道公演】
▼4月10日(金)札幌市民ホール
【宮城公演】
▼4月12日(日)仙台サンプラザホール
Pick Up!!
【大阪公演】
一般発売2月28日(土)
※発売初日はインターネットでは1IDで1公演につき1回のみ購入可。電話予約は同一番号から1公演につき1回のみの予約で「発信者番号」通知の設定が必要。公衆電話・IP電話・一部携帯電話での予約不可。
Pコード248-945
▼4月16日(木)・17日(金)19:00
オリックス劇場
全席指定4900円
清水音泉■06(6357)3666
※未就学児童は入場不可。
【愛知公演】
▼4月19日(日)名古屋国際会議場
センチュリーホール
【愛媛公演】
▼4月24日(金)ひめぎんホール サブホール
【栃木公演】
▼4月28日(火)栃木県総合文化センター
メインホール
【東京公演】
▼5月7日(木)・8日(金)NHKホール
【長野公演】
▼5月10日(日)ホクト文化ホール 中ホール
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Column1
“出来ない”からこそ出来ること
最前線で苦闘するクリープハイプの
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Column2
「違和感に対する責任を取っていく」
クリープハイプの宣戦布告なる
確信と自信の2ndアルバム
『吹き零れる程のI、哀、愛』!
音楽を諦められなかった男
尾崎世界観の12年目の現在地に迫る
初登場撮り下ろしインタビュー