“音楽くらいしか楽しいこと無いのにね” ネット世代からJ-POPまで巻き込んで疾走する 新世代のトラックメイカーtofubeatsが語る! 縦横無尽の メジャー1stアルバム『First Album』インタビュー&動画コメント
神戸出身・在住の若きトラックメイカー/DJ、tofubeatsが絶好調だ。森高千里を迎えたメジャーデビューシングル『Don't Stop The Music』、藤井隆を迎えた2ndシングル『ディスコの神様』でネット世代からJ-POPまで巻き込んで大きな話題を集める中、いよいよメジャー1stフルアルバム、その名も『First Album』を“トーフの日”の10月2日にリリース。ゲストアーティストには前述の2人に加えて、BONNIE PINK、PES(RIP SLYME)、の子(神聖かまってちゃん)、新井ひとみ(東京女子流)、okadada、lyrical school、海外から気鋭のレーベル、マッド・ディセント所属の才女・リズまで! という縦横無尽な内容となっている。初回盤は2枚組(オリジナル・アルバム+インスト盤)で計31曲という怒濤さで、クラブミュージックにポップス、インターネットカルチャー、果てはパラパラまで(!)を貫通して、同じ温度感で疾走する90年生まれの年男をキャッチした。
『First Album』って言ってるけど何百曲目やねん!
という揶揄みたいなのも込みでおもしろいかなって
――前回のアルバム『lost decade』(‘13年)をリリース以降にメジャーに移籍、この1年半のあいだにシングルをリリースしたり、数多くのフェスに出演したりとしてきましたが、メジャーフィールドに移ったことで、制作環境や心境の変化はありましたか?
「“それをしないように”、というのはありました。メジャーに行ってシングルを切るということもあって、そのシングルがカロリーの高い曲になったので、反対側のインストは前回よりドープめになってるかなって。メジャーに行ったから変えるというよりは、これまでやってきたことを説明することを頑張る、っていう。だから前回のアルバムと同じくらいのバランスには着地させようとしました」
――アルバムタイトルは『First Album』というド直球さです。“検索に引っかかりやすい”ということに意識的なはずなのに、このタイトルは意外でした。
「このとき(宇多田ヒカルの1stアルバム)『First Love』(‘99)を聴き過ぎてたから、そこへのオマージュもあったんだと思います。あと、『First Album』って言ってるけど何百曲目やねん! という揶揄みたいなのも込みでおもしろいかなって。検索を気にしてるけど、逆に『First Album』っていうアルバム名はそんなにない、っていうのが検索して分かったんですね(笑)。安直というのは時としていいんだなと」
――しかもトーフの日(10月2日)に発売、という安直さで(笑)。
「本来だと10月1日の水曜だったんですけど、それなら10月2日にしましょうよと。値段も安くするんだったら“年男プライス”でってことで2400円。しかも2枚組の初回盤の方が安いんですよね。レーベルの方々が頑張ってくださったおかげです」
――しかもオフィシャルサイトで全曲フル試聴 が出来てしまう。メジャーでこれが出来たのもチャレンジですよね。
「そうなんですよね。チャレンジすることに理解してくださってるなって。ありがたいことですね」
――初回盤は、オリジナルアルバム18曲とインスト盤13曲の計31曲と、かなりのボリューム感です。
「よく言ってることなんですけど、“いっぱい入ってると損が少ない”ということで。僕はどの曲も頑張って作ってますけど、お気に召さないものがあった場合はそれだけ省いてiPhoneに入れても、通常のアルバムくらいの量にはなる、という」
――インターネット的というか、情報量の多さでケムに巻いている感もあるのかなと思ったんですが。
「それはないですね。単純にそのときに出来た曲を早く世に出したい、っていう願望だけ。もしCDに90分入れられるなら、それだけ入れてると思いますし」
インターネットをインフラとして使っていることと
インターネットの中にあるモチーフを使うことは別
――『おしえて検索 feat.の子』(M-6)は、の子(神聖かまってちゃん)を迎えた、“インターネット世代”と呼ばれる2人がタッグを組んだ曲です。
「まだ交流もなかった頃に、神聖かまってちゃんのツアーに呼んでくれたんです。東京公演に僕が呼ばれて、大阪公演には(tofubeatsもリリースしてきたネットレーベルMaltine Records主宰の)tomadが呼ばれて。その打ち上げのときに、の子さんが“ホントにマルチネが好きだから、今回は僕のお願いで出てもらいました”って言ってくれて。よくよく話をしてみると、僕の曲の中でもめちゃくちゃマイナーな、Bandcamp(音楽配信・販売のプラットフォーム)で20人くらいしか買ってないような曲が好きだったらしくて。ちょうどの子さんがソロで作り始めた頃で、その場でパソコンを開いてDTMのやり方を教えたりしたんです。飲み屋のはしっこで、ウーロン茶を飲みながら(笑)。その後にの子さんがソロの曲をアップしたときに、僕がそのときに教えた手法を使っていて。そういう無言のコミュニケーションみたいなのはありましたね」
――曲は、データのやりとりで作っていったんですか?
「そうですね。仮オケに声だけ入れて戻してくれたらよかったんですけど、わざわざギターを入れてくれたりして。“ちょっと変えました”って言ってめっちゃ変えたりしてくるのが(笑)、データでやりとりするときの楽しさだったりするんですよね。インターネットで曲を作り合うのに慣れてる人だったので、おもしろかったですね」
――“インターネット世代”と言われることは、どう感じていますか?
「ちょっと前に言われたのは分かるんですけど、今言われるのもおかしい話やなと。だってみんな使ってるから。インターネットをインフラとして使っていることと、インターネットの中にあるモチーフを使うことは別。そこは切り離してもらった方が語弊が生まれないかなと思います。例えば、今回のアルバムで言ったら、『content ID』(M-12)っていうヘンなビートの曲を“インターネットっぽいね”って言われるのは分かるけど、という」
――ディプロの主宰するレーベル、マッド・ディセントの新鋭シンガーのリズをボーカルに迎えた『CAND\\\LAND feat. LIZ』(M-7)は、パラパラです。この組み合わせの振り幅、すごいですね。
「2年くらい前からパラパラは作りたかったんです。DJをしてるときに、パラパラからトラップにキレイにつながる、ということに気付いて。倍でとったり半分でとったりする今のビート感にめちゃくちゃ合うなって。そういうのをDJでは度々やっていて、それを自分の中で昇華したかった。ずっと試みてたんですけど、ヒップホップを作る力はあったけど、パラパラを作る技術がなかった。パラパラのあの感じって、トランスとかを作ってる人じゃないと難しくて、その辺りが今回ようやく解決したんです」
――リズにパラパラを聴かせたときはどんな反応だったんですか?
「いや、かなりアガってましたよ(笑)」
――じゃあ、天の邪鬼な狙い、とかではなく。
「元々、パラパラがホントに好きで。DJやってるときに気付いたってことは、DJでかけてるってことですから。あと、パラパラってユーロビートではあるけど、日本のものっていう部分もあるし」
メジャーアーティストという仕事をする上で
一番楽しく音楽をするためにどうするか、みたいなものがここにある
――このパラパラにしてもそうですが、80sディスコ~ファンクな『Her Favorite feat. okadada』(M-13)は、エレクトロ・ファンクデュオの“クローメオみたいにカッコよくなりたいんや!”というところから制作されたとのこと。そういったモチーフがあって作ることも多いんですか?
「そうですね。そういうのがモチベーションになって、思いっ切りそこに向かって作っても、自分の手癖がある以上、そういう風にはならない。そもそも僕とオカダダが歌ってクローメオみたいになれるわけがないので。見た目から正せよ、っていう(笑)。でも、カッコつけてる、そのズレを楽しんでる。あと、今回のアルバムには同じようなドラムパターンの曲は入ってないんですね。そこは意識していて。なにか一本槍、みたいなことはしたくない。自分の場合は、何かに寄りかかってないのがいいなと思う」
――1つ1つ違って聴こえても、tofubeatsという統一感がある、ということですか?
「“いろんな角度から同じところに向かっていく”みたいな感じが出せたらなって。自分が好きなものをどう好きと思ってもらうか、なので。そこはメジャーに行っても変わってないですね。だからパラパラも、『衣替え feat. BONNIE PINK』(M-16)も、やりたいことは同じだったりする。どっちがだけじゃなく、両方入ってるからいい」
――その『衣替え feat. BONNIE PINK』はBONNIE PINKを迎えたスローバラードです。
「元々、ボニーさんに録ってもらおうと思って作っていた曲だったんですけど、最初はスケジュールが合わなくて、『ディスコの神様』のシングルには僕が歌ったバージョンが入っていたんです。半ば諦めてたんですけど今回やってもらえることになって、オケも全部作り直しました。ボニーさんはこれが1年ぶりのレコーディングだったらしくて、大好きな人の1年ぶりの新曲が自分が作ったもの、という。音楽やっててよかったなと思えました。他の曲もいろんな思い入れはあるんですけど、特に愛情のある曲ですね」
――中学生の頃からのファンだった人との制作ですもんね。
「しかもレコーディングは、ボニーさんの普段使ってるスタジオ、エンジニア、マイクで。ファンからしたら、録った音聴いて“これこれ!”ってなる現場で、嬉しかったですね。スタジオで録って、それを聴きながら帰ったあのときから今まで、最高度が1ミリも下がってない。こういうスローなバラードの曲って“ボニーさんが歌ってそう”ではあるけど、実は過去1曲しかなくて。“こういう曲を歌って欲しいな”っていう提案の意味でも、こういうテンポの曲がしたかった」
――あと印象的だったのが、『#eyezonu』(M-2)で“音楽くらいしか楽しいこと無いのにね”と歌っていたり、ラスト曲の『20140803』(M-18)でも“てゆか毎日 音楽で”と歌って終わっていきます。その音楽愛がいいなあと。
「ずっとそれが言いたくてやってきたんですけど、メジャーデビューして“そうじゃないんじゃないの?”って言われることが増えてきたから、よりそれを言う回数が増えたのかなって自分では思いますね。確かに仕事になっちゃってる自分もいるし、だからこそ“音楽”っていう言葉が引き合いに出る。お金も欲しいですけど、音楽を作って楽しんで暮らす、っていうのが一番上にあるから。そのためなら音楽が仕事じゃなくてもいい」
「そういう意味では、メジャーアーティストという仕事をする上で、一番楽しく音楽をするためにどうするか、みたいなものがここにある気がしますね。今回、シングル曲以外は1~2ヵ月の間に作ったんですけど、短い納期でガッと作ったからこそ本音が出たなっていう感じはします。考えてないから、考えてることが出ちゃう、というか。前回のアルバムはあんまり押し付けがましくならないように、そこを抜くのを自覚的にやったんですよ。だから逆にヌルッとしてるんですけど、今回はそういう意味では一貫してるから、カラッと聴こえるな、とは思いますね」
ホントにやりたいことって言ったら
その都度、影響を受けた音を自分で再現する、っていうことに尽きる
――これからの展望としては、どんなことをしていきたいですか?
「この間、『YANO MUSIC FESTIVAL 2014』で初めて生バンドと一緒にライブをやったんですね。矢野(博康)さんから“トーフくんの曲を生でやりたいから”って言っていただいて、生演奏+オケでやったんですけど、それがおもしろくて。僕にとって生楽器のおもしろさって、知ってる量がまだゼロなんで、ここにはまだまだ伸びしろがあるなって。かと言って、生に移行しようとかではないんですけど。ホントにやりたいことって言ったら、その都度、影響を受けた音を自分で再現する、っていうことに尽きるので。いい曲が作れたら満足。それだけですね」
――10月からリリースツアー『ディスコの神様 ~tofubeats “First Album” release tour~』が始まります。大阪公演は10月19日(日)サンホールで、藤井隆のほかDJにMatsumoto Hisataakaa、okadadaらを迎えての開催です。
「大阪は特に僕にゆかりのあるゲストが出演するということで、いい感じにクロスオーバーしたイベントになると思いますね。tofubeatsを昔から知ってる人はもちろん、最近知った人も、僕が影響を受けてきた音楽や人を知ることが出来るので、楽しめるんじゃないかと。tofubeatsを通して、いろんな曲を好きになってくれたら嬉しいですね」
(2014年10月 8日更新)
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Movie Comment
アルバム&リリースパーティーを解説 tofubeatsからの動画コメント!
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Release
初回限定盤の方が絶対お得! フルボリュームの才能で贈る1st
Album 『First Album』 【初回完全限定生産盤】 発売中 2400円(税別) ワーナーミュージック・ジャパン WPCL-11990/1 <DISC1収録曲> 01. 20140809 with lyrical school 02. #eyezonu 03. poolside feat.PES(RIP SLYME) 04. Come On Honey! feat.新井ひとみ(東京女子流) & okadada 05. ディスコの神様 feat.藤井隆 06. おしえて検索 feat.の子(神聖かまってちゃん) 07. CAND\\\LAND feat.LIZ 08. 朝が来るまで終わる事の無いダンスを -Album version- 09. Populuxe 10. zero to eight 11. framed moments 12. content ID 13. Her Favorite feat.okadada 14. Don't Stop The Music feat.森高千里 -Album Version- 15. way to yamate 16. 衣替え feat.BONNIE PINK 17. ひとり 18. 20140803 <DISC2(Instrumental)収録曲> 01. #eyezonu 02. poolside feat.PES(RIP SLYME) 03. Come On Honey! feat.新井ひとみ(東京女子流) & okadada 04. ディスコの神様 feat.藤井隆 05. おしえて検索 feat.の子(神聖かまってちゃん) 06. CAND\\\LAND feat.LIZ 07. 朝が来るまで終わる事の無いダンスを -Album version- 08. Her Favorite feat.okadada 09. Don't Stop The Music feat.森高千里 -Album Version- 10. way to yamate 11. 衣替え feat.BONNIE PINK 12. ひとり 13. 20140803
【通常盤】 発売中 3000円(税別) ワーナーミュージック・ジャパン WPCL-11992 <収録曲> 同上(DISC1)
Profile
トーフビーツ…’90年生まれ、神戸で活動を続けるトラックメイカー/DJ。学生時代からインターネットで活動を行い、くるり等 ジャンルを問わず様々なアーティストのリミックスほか、プロデューサーとしてもアイドルをはじめ様々なアーティストに楽曲を提供、CMやWEBサイト等の音源制作も多数手掛ける。ソロアーティストとしてはスマッシュヒットした『水星 feat.オノマトペ大臣』を収録したアルバム『lost decade』を’13年4月にリリース。全曲フル試聴などの施策で話題を呼ぶ。過去の外部仕事をまとめたワークス集2枚も同時発売。同年11月、森高千里らをゲストに迎えたEP『Don't Stop The Music』でメジャーデビュー。これらの一連の流れが評価され、『iTunes Best of 2013』に抜擢。今年4月にはメジャー2nd EP『ディスコの神様 feat.藤井隆』をリリース。なお、制作だけではなくDJとしても活躍中で、高校生時代の『WIRE08』出演を皮切りに、様々なフェスやイベントに出演。7月にはイギリスのラジオ局BBCのプログラム『BBC Radio1Xtra Diplo and Friends』に日本人として初出演。翌8月には森高千里 with tofubeatsとして『SUMMER SONIC 2014』に出演する等、国内外で話題に。10月2日(=トーフの日)に、新井ひとみ(東京女子流)、okadada、の子(神聖かまってちゃん)、藤井隆、PES(RIP SLYME)、BONNIE PINK、森高千里、リズ(マッド・ディセント)、lyrical schoolら豪華ゲストアーティストを招いたメジャー1stフルアルバム『First Album』を発売。tofubeats オフィシャルサイト http://www.tofubeats.com/
Live
【大阪公演】 『BUBBLE×2BLOC』 チケット発売中 Pコード244-783 ▼10月12日(日)21:00 LIVE&BAR 11 オールスタンディング1500円 [出演]ライアン・ヘムズワース/tofubeats/SOU/渕上寛/西村ひよこちゃん/他 LIVE&BAR 11(オンジェム)■06(6243)0089 ※20歳未満は入場不可。要写真付身分証明書。
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【大阪公演】 『tofubeats “First Album” Release Party』 チケット発売中 Pコード243-563 ▼10月19日(日)16:00 サンホール オールスタンディング3000円 [出演]tofubeats/他 [DJ]Matsumoto Hisataakaa/okadada/他 [ゲスト]藤井隆/他 [司会]心斎橋てるお SUN HALL■06(6213)7077
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【神戸公演】 『“PHASE 2” Release Tour』
Thank you, Sold Out!! ▼11月24日(月・休)18:00
神戸VARIT.
オールスタンディング3300円
[出演]Fear,and Loathing in Las Vegas
[ゲスト]tofubeats
キョードーインフォメーション■06(7732)8888
※未就学児童は入場不可。
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