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“劇的ロック”を掲げ、新たな楽園=『AVALON』を目指せ!
只今全国ツアー中の摩天楼オペラに、人気ゲームソフト
『ロマンシング サ・ガ』とのコラボも話題のニューアルバムを問う
苑(vo)&Anzi(g)インタビュー&動画コメント

 ロック×シンフォニック×合唱を取り入れた前作『喝采と激情のグロリア』(‘13)から約1年半。バンド最大規模のツアーを成功させた摩天楼オペラが、新たなアルバム『AVALON』を完成させた。バンドの固定観念を捨て、作曲方法からアートワークまでを見直し作り上げた“劇的ロック”の集大成となった今作。「今の自分のリアルな現実を楽園にしようというアルバム」(g・Anzi)は、1曲1曲情景が浮かび上がる壮大なシンフォニック・ロックオペラを響かせている。人気ゲームソフト『ロマンシング サ・ガ』のクリエイター陣とのコラボも話題のこの最新作、そして、2度目の大阪BIGCAT公演をはじめ、初の日比谷野外第音楽堂でファイナルを迎える秋のツアーについて、苑(vo)、Anzi(g)に聞いた。

 
 
振り返るというよりは前を向いて走るしかない時期
 
 
――近年、ライブをする会場が大きくなってきています。どういうところが動員につながっていると思いますか?
 
Anzi(g)「去年のアルバムツアーくらいから、お客さんと一緒にライブを作り上げる感じになったのがそうかなと」
 
――前回の大阪公演では、最後に声が出辛くなった苑(vo)さんの分までお客さんが盛り上げていたのが印象的でした。積み上げてきた手応えは感じていたりしますか?
 
苑(vo)「振り返るには早いですね。まだ7~8年目とかなので。振り返るというよりは前を向いて走るしかない時期だと思います。あまり振り返るのは好きじゃないんですよね。“あのときこうしておけば良かった”って思いたくないので。気にせずやっていく方なので」
 
Anzi「僕もあまり振り返らないですね。全部いい風に捉えてしまう、そういうおめでたい感じなんですけど(笑)。苑よりは慎重派ではあります。そう言えば、スタジオかどこかで“石橋を叩いて渡るのは誰だろう?”っていう話をしたときに、俺は石橋を叩いて渡るけど途中で壊れても結局進む、叩きながら進んで行くタイプで、苑は叩かずに渡るタイプ(笑)。ドラムの悠は石橋に気付かず川沿いをひたすら歩く(笑)。彩雨(key)は確か“石橋を壊して渡る”って言っていた気がする(笑)」
 
「彩雨は斜め上の発想が多い人で自分の価値観を大事に生きているので、石橋があっても壊しちゃって自分の道を行く、みたいな(笑)。燿(b)は一番最後にひねり出していたけど何だったかな…?(笑)」
 
――(笑)。こうやって聞くと、皆さん様々ですね。
 
Anzi「そういう5人だから、うまくバランス取れているのかなと。石橋を叩かずに渡る人間ばかりだったら、とっくにこのバンドは終わっていると思います」
 
 
いろんなことに挑戦していくガツガツ感は必要
 
 
――ニューアルバムについてお話を伺いたいのですが、前作を出した際“今後はどういう方向にいくか分からない”って言っていたと思います。
 
「そのときは、ざっくりしていたんですよ。僕たちが築き上げてきた固定観念を1回捨てて、新しい摩天楼オペラを模索する“劇的ロック”をやりたいって。それによって曲がよりドラマティックになるんじゃないかっていう発想があって、まず形に出来たのがシングルの『Orb』(M-11)だったんですね。そうしたらどんどんやりたいことが出てきて、あの作品を出したからこそ、今回のアルバムにつながった形ですね」
 
――その“劇的ロック”とは?
 
「聴いていて“こうきたか!”と思うような、劇的な展開の曲を作りたい気持ちが僕の中で出てきて、勝手に“劇的ロック”っていう言葉を付けて。言葉に打ち出すとみんなに分かってもらえるじゃないですか? だからそれを考えてから伝えましたね。ただ、みんなでざっくりと決めていたのは、合唱ばかりにならずに広い視野で摩天楼オペラのロックをやっていきたいということでしたね」
 
――そう思ったのはなぜでしょう?
 
「単純に僕が作曲をするときに、Aメロ、Bメロ、サビと作るのがつまらなくなってきたり、例えば“サビの後はこのパターンならAメロにいくべきだよね?”とか、そういうおい決まりの空気がバンド内に出来上がっていたのも良くないなって。自由な作曲、編曲にしたいと思ったので」
 
Anzi「進化していく上でその過程は避けては通れないですよね。僕たちは駆け出しの段階なので、いろんなことに挑戦していくガツガツ感は必要かなと。個人的に言えば、ハードロック/メタルで育っているのでマンネリズムもカッコいいと思うんですけど、僕たちは音楽的にいろんなことが出来る、進化出来るバンドだと思っているので、まだまだマンネリになるのは早いのかなって」
 
――作り上げてきたものを一旦壊すのには勇気が要りませんか?
 
「石橋を叩かない方なんで(笑)。いつものアルバム制作より時間はかかりましたけど、楽しい作業でした」
 
Anzi「アレンジをゆっくり固める時間が、プリプロを聴き込んで何回か作り替えられる時間があったので、そういう意味では丁寧に作れたアルバムだと思います」
 
――前作を越えるためのハードルは上がっていましたよね?
 
「そうですね。本当に前作の『喝采と激情のグロリア』は僕の全てをつぎ込んだアルバムだったので、それを越えなきゃいけないっていう想いが今回は特に強かったです。それくらい前作はやりたいこと、今まで好きだった音楽たち全部を詰め込んだので。だからこそ、僕の中で新しい一歩を踏み出さなきゃ越えられなかったんですよね」
 
Anzi「僕はアルバムを出すたびにそのときの全てをつぎ込んでいるがために、“次はどうしよう”っていうアイディアがすぐには思い浮かばないというか。でも、僕はソロアーティストじゃなくてバンドで、5人でいるので、誰かがきっかけの旗振りをしてくれるだろうと。僕には0から1を生み出す能力はないんですよ。ただ自負しているのは、1あったきっかけを100にする力はある。そのきっかけを与えてくれる人物がいれば、僕は輝けるっていう。そこはもう苑におまかせです(笑)」
 
 
『journey to AVALON』『天国の扉』『天国の在る場所』
っていう1つの流れがあるんですよ
 
 
――今作はロックとシンフォニックサウンドがより高い次元で融合されていて、1曲1曲にドラマ性があるというか、映画を見ているかのような印象を受けました。
 
「ありがとうございます。狙い通りですね。1曲1曲の展開にこだわる=1曲1曲にドラマ性が出てくることだと思うので、例えば『Stained Glass』(M-6)とか『Jolly Rogerに杯を』(M-7)だったら、海だったり海賊が乾杯しているところが浮かぶと思うんですけど、聴いた方にそういうビジョンが見えたなら、それは大成功」
 
――ロックとオペラが合わさった作品になった感じですよね。
 
「まさにその通りです。キャンペーンでコメントを録ったりしてるんですけど、同じことを言ってます(笑)」
 
――様々なタイプの楽曲が収録されていますが、キーとなる曲は?
 



「『天国の在る場所』(M-12)ですかね。『journey to AVALON』(M-1)『天国の扉』(M-2)『天国の在る場所』っていう1つの流れがあるんですよ。それが『天国の在る場所』で、しっかりと定まりました。あと、このアルバム自体はコンセプトアルバムじゃなくて、全曲が“AVALON(=楽園、天国に近い場所)”について歌っているわけではなく、主軸となっているこの3曲に、それ以外の曲をはめていった感じです」
 
――それにも関わらず、しっかりとまとまっている、統一感のある感じを受けました。
 
Anzi「同じ方向を見て作っていた同時期の曲を入れているので、大幅にズレたものはないですね」
 
――ちなみに、今作は音のバランスも変えました? 
 
「そこも1つこだわったところで。個々の音が何をやっているのか、何を弾いているのか、且つボーカルがちゃんと聴こえるようにしたくて」
 
Anzi「サウンドで大きく違うのは、燿が今回のレコーディング用に新しいベースをメーカーさんから作っていただいて、それで低音がいい感じに引き締まったのかなっていうのはありますね。うちのバンドはダウンチューニングなので(※半音下げ、一音下げなど)、どうしても弦がユルユルな状態になるんですよ。それでハイフレットの方を弾いたときにあまり音程感が出なかったりとか、ベースならではの悩みがあったみたいで。マニアな方は分かると思うんですけど、ダウンチューニングでも全部キレイに発音される“ファンフレット”っていう斜めにフレットを打ってある特殊な構造のベースを作っていただいて」
 
――今作にかける意気込みが伺えますね。
 
「芯のあるベースになったのがすごい良かったですし、あとでミックスするときにも非常にやりやすかったです」
 
 
新しい風を入れることによって僕たちの考え方も広がりますし
長くこのバンドを続けていく上ではいい一歩になったのかなと
 
 
――今作はゲームミュージックの旗手・伊藤賢治さんと小林智美さんとのコラボもトピックの1つだと思いますが、きっかけは何だったのですか?
 
「ベースの燿が個人的な知り合いで、お互い何か仕事で一緒に出来たらいいなと話していたみたいで。今回のアルバムにピッタリじゃないかって、燿が話を持ってきてくれたんですね。そうしたらすぐにOKが出て、こういう形で出すことが出来たんです」
 
――人気ゲームソフト『ロマンシング サ・ガ』でサウンドを手掛ける伊藤さんと、キャラクターデザイン担当の小林さんとのコラボというのは、ロマサガ好きにはたまりません!
 
「テンション上がりますよね! 僕もロマサガをめっちゃやってて、結構最近までずっとやってましたよ(笑)。思い出したように何年かに1回やって、何回クリアしたかもう分からないです(笑)。あと、お2人が一緒に仕事をしたのは、ロマサガ以来らしいです」
 
Anzi「以降、同じ作品に関わることはなかったらしくて、お2人が一緒にやったのは今のところ『ロマンシング サ・ガ』と摩天楼オペラだけだと」
 
――ジャケットから手に取りたくなりますよね。
 
「普通に聴いてみたいと思いますもん。“何だこれは!?”って」
 
――モノトーンが多かった摩天楼オペラとしては、これまでにないアートワークでは?
 
「楽曲を新しい方向にしたいというのはさっき話した通りなんですけど、その流れで去年『Orb』を出した後に、アルバムのアートワークを新しい方で、尚且つ丸投げしてみたいと思ったんですね。今まではアートワークも衣装もある程度僕たちの意見をデザイナーさんと揉んで形にしていたんですけど、敢えて僕たち以外の方の意見を聞いてみたいなと思って、出てきたものを採用した感じです。今回は本当にいろんな面で新しい取り組みをしました。多分、これからはあまりやらないことだと思います。一旦こういう新しい風を入れることによって僕たちの考え方も広がりますし、長くこのバンドを続けていく上ではいい一歩になったのかなと思いますね」
 
――9月17日より遂に全国ツアーも始まりましたね。
 
Anzi「アルバムを聴いてもらえると分かる通り、各楽曲がドラマチックなものになっているんですけど、ライブならではのアレンジも考えていて。おそらくライブで聴く方が楽曲が映えるようアレンジをしているので、盤だけで満足せず、楽しみに観に来て欲しいです」
 
「ライブ会場でもその曲の絵が見えるような演出をしていきたいですし、尚且つロックのライブなので、何も考えずにはちゃめちゃに楽しい空間を、今まで同様にみんなで作っていきたいです」
 
――大阪BIGCATでは2度目ののワンマンライブになりますね。
 
「前回(3月)は花粉と風邪で最後の方は声がガラガラだったんですけど(笑)、今回は元気いっぱいに大阪に来れるといいなと思います!」
 
――ツアーファイナルの東京・日比谷野音でのワンマンは初ですか?
 
「はい。めちゃめちゃ楽しみですよ」
 
Anzi「野音は伝統の場所ですからね。ただの野外とはわけが違い、ロックの伝説的公演が行われてきた場所だと思うので。うちのツアーファイナルもその歴史に残る一夜になったらいいなと思います。雨が降ったりした方がカッコよかったりするんですけどね。伝説のライブって、大荒れの天気が多かったりするじゃないですか。オイシイところで雨が降ってくれると嬉しいみたいな(笑)」
 
「降ったら降ったで良いライブになると思うんですけど、僕はずっと憧れていた夜空と満月の下で歌うっていうのをやりたいです(笑)」
 
――最後に読者にメッセージをお願いします。
 
「こういうアルバムの話をしていくと堅苦しく聞こえるかもしれないですけど、何も考えずにライブ会場に来てくれれば、予備知識なしでも楽しめると思うんです。そういう人たちがすごく楽しかったって笑顔になれるような、心地いいなって思えるようなライブをしていきたいと思います。しかも関西は大阪、神戸、京都と3本あるので、どこか近いところで大丈夫なので、ぜひ一度遊びに来てください!」
 
Anzi「ライブ空間が“AVALON”になるようツアーを廻りますし、関西のどこかのライブに来てくれたのならば、ファイナルの野音にも来て、と(笑)。そこは別腹というか、やっぱりライブハウスと野音では、スケール感、見え方も全然違うので。同じツアーでも決して同じじゃなくなると思うんですよね。そこで気持ちいいなと思ってくれたなら、ファイナルは土曜日ですし、近くのコンビニに行く感覚で会いに来てください(笑)。待ってます!」
 
 
Text 金子裕希



(2014年9月22日更新)


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ツアー合間の京都の遊び方を相談!?
苑(vo)とAnzi(g)からの動画コメント

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Release

壮大なシンフォニック・ロックオペラ
で独自の道を突き進む3rdアルバム!

Album
『AVALON』
【初回プレス盤】
発売中 2593円(税別)
キングレコード
KICS-3098
※小林智美氏書き下ろしBOX
※メンバーソロ写真アナザージャケット
 ランダム1種封入
※シングル『隣に座る太陽』&『AVALON』
 2作連動プレゼントキャンペーン応募券封入

<収録曲>
01. journey to AVALON
02. 天国の扉
03. 隣に座る太陽
04. 輝きは閃光のように
05. 3時間
06. Stained Glass
07. Jolly Rogerに杯を
08. クロスカウンターを狙え
09. 蜘蛛の糸
10. 友に捧ぐ鎮魂歌
11. Orb
12. 天国の在る場所

【通常盤】
発売中 2593円(税別)
キングレコード
KICS-3098

Profile

まてんろうオペラ…写真左より、彩雨(key)、Anzi(g)、苑(vo)、悠(ds)、燿(b)。’07年に苑と悠を中心に結成され、同年12月より現メンバーで活動を開始。翌’08年には、日本国内ツアー前にヨーロッパツアーを大成功に収め、ミニアルバム『GILIA』を日本とヨーロッパで同時リリースするなど、大きな飛躍を果たした。その後もコンスタントに作品のリリースとライブ活動を重ね、’10年にリリースされたミニアルバム『Abyss』でメジャーデビュー。作品ごとに様々なサウンドを響かせ、’13年3月に出した2ndフルアルバム『喝采と激情のグロリア』では“合唱”を取り入れた壮大な音世界を構築してみせた。バンド史上最大規模のライブツアーを行うなど着実に動員を増やしている中、今年の9月3日には挑戦に満ちたニューアルバム『AVALON』を発表。その秋のツアーは、初の日比谷野外大音楽堂でツアーファイナルを迎える。10月29日(水)には早くもニューシングル『致命傷』(アニメ『オレん家のフロ事情』オープニングテーマ曲)をリリース予定。

摩天楼オペラ オフィシャルサイト
http://matenrou-opera.jp/

Live

只今リリースツアー真っ最中!
関西は9月末より京阪神に登場へ

 
『AVALON TOUR』
【東京公演】
▼9月17日(水)TSUTAYA O-EAST
【金沢公演】
▼9月19日(金)金沢AZ
【新潟公演】
▼9月20日(土)GOLDEN PIGS RED STAGE

【札幌公演】
▼9月23日(火・祝)KRAPS HALL
【青森公演】
▼9月25日(木)Quarter
【岩手公演】
▼9月27日(土)club change WAVE
【仙台公演】
▼9月28日(日)仙台 darwin

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード235-895
▼9月30日(火)19:00
心斎橋BIGCAT
オールスタンディング4500円
キョードーインフォメーション■06(7732)8888
※3歳以上は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【広島公演】
▼10月2日(木)ナミキジャンクション
【熊本公演】
▼10月4日(土)熊本B.9 V2
【福岡公演】
▼10月5日(日)DRUM Be-1
【松山公演】
▼10月7日(火)松山サロンキティ

Pick Up!!

【神戸/京都公演】

チケット発売中 Pコード235-895
▼10月9日(木)19:00
神戸VARIT.
▼10月11日(土)18:00
京都磔磔
オールスタンディング4500円
キョードーインフォメーション■06(7732)8888
※3歳以上は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【名古屋公演】
▼10月13日(月・祝)ボトムライン

【東京公演】
チケット発売中 Pコード234-381
▼10月18日(土)18:00
日比谷野外大音楽堂
指定席4500円
ディスクガレージ■050(5533)0888
※雨天決行。3歳以上はチケット必要。

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