ソロ15周年のLOW IQ 01と 結成10周年FRONTIER BACKYARDのTGMX 筋を通してきた男たちの思い出話と今を生きる言葉が飛び交う アニバーサリースペシャル対談&動画コメントが実現!!
今年、ソロ活動15周年を迎えたLOW IQ 01より、オリジナルとしては3年ぶりとなるポップで心弾むニューアルバム『Yes, LOW IQ 01』が届いた。それに呼応するかのように、LOW IQ 01のライブ時にバックを固めるMASTER LOWのバンマスも務める、TGMXことTAGAMI(aka SYUTA-LOW TAGAMI)率いるFRONTIER BACKYARDの10周年を記念する初のベスト盤『BEST SELECTIONS』が間もなく発売。そして、この4月には15周年のLOW IQ 01と10周年のTGMXの2人が、キャリア初のソロ同士によるアコースティックツアーを全国9ヵ所で開催。意外なカバーやデュエットもあり、涙が出るほど笑いが止まらないトークも山盛りな大満足のステージを、大阪でも繰り広げてくれた。90年代初頭に湧き上がったHi-STANDARDを筆頭とするパンク、オルタナティヴ、メロコア界隈の狂騒の中で、2人は共にアンダーグラウンドとオーバーグラウンドを行き来しながら常に音楽シーンに在り続け、それぞれのスタンスで聴き手の心に響くメッセージを発信し続けてきた。先輩・後輩であり盟友でもあり、共にグッドメロディの宝庫でもある2組の、アニバーサリーイヤーにふさわしいスペシャルな対談を楽しんで欲しい。
自分でも、ここまで音楽を続けられていることに感心します(笑)
――イチさん、ソロ活動15周年おめでとうございます!
LOW IQ 01「ありがとうございます! いやぁ15年もよくやってこれたなと思うし、よく続いてきたなと思いますね。僕、どんな物事でも2年続けば長続きだと思う方なんだけど。簡単に言っちゃうと集中力がないんですよ(笑)。でも音楽に関しては一番力を出せたのかなぁ。自分でも、ここまで音楽を続けられていることに感心します(笑)」
――そもそもお2人の出会いというと、いつ頃になりますか?
TGMX「僕は単純に市川くん(=LOW IQ 01)のお客さんでしたね。ACROBAT BUNCH時代を僕は観てないんですけど、その後に市川くんがSUPER STUPIDでHi-STANDARDあたりと一緒にやっていた時代に、僕はSCAFULL KINGをやってたんですが、全く無名で(笑)。ただのLOW IQ 01フォロワーという感じでライブに行ってましたね」
LOW IQ 01「でも、そればっかやってると売れないっていうのは、分かってますから!(笑)売れたいというか、単純に自分の音楽をみんなに聴いて欲しいんだけどね」
――“みんなに聴いて欲しい=売れたい”、ではない?
LOW IQ 01「そこはね、ちょっと違うんですよ。昔はCDが出せただけで嬉しくて、“売れたい”というよりも、評価されたかった。“あいつら売れてるな”って言われるよりも、“あいつらカッコいいな”って言われたかったんだと思う。あと、カッコいいことをやってれば自然と売れていくんだろうって思ってたから。元々は街のあんちゃんぐらいでよかったというか、プロになりたい気持ちはもちろんあったけど、“自分が住んでる街の代表になりたい”ぐらいの気持ちだったから。“プロになる=セルアウト”はしたくないし、自分のやってる音楽がマスなのかコアなのかも分かんないし、とにかく評価が欲しかったのかな」
――その気持ちは徐々に変わっていきました?
LOW IQ 01「ヘンにプロ意識がついてきたのかな?(笑) 15年やってきて、街の兄ちゃんでいいと思っていた人間が、どうも自分たちのコミュニティの代表にしてもらえるっぽい感じになってきて、そこを担うぐらいの多少の責任感は持てるようになったかなって感じですかね」
『AIR JAM '98』に出ていたときもメンバーの内3人は
しばらくは風呂なしのアパートに住んでましたから(笑)
――自分の後に続く後輩ミュージシャンたちの存在も、その変化に作用していますか?
LOW IQ 01「どうだろう? 昔はいい意味で“楽しい”っていうノリだけでやってたところもあったし、それしか考えてなかった。でもやっていく内にそれだけじゃ何か足りなくなってきて。この人(=TGMX)は逆に年を取れば取るほど無責任になってきてて、その無責任さというか、ユルさがまたいいんですよ(笑)」
TGMX「僕はSCAFULL KING時代に、何かに追われてる気がしちゃったことがあって、それがイヤになってバンドを辞めちゃったんですよね。それから今のFRONTIER BACKYARDになったときに、“今までより地に足をつけて活動しよう”っていうことは初めから言ってましたね。SCAFULL KINGってただの田舎のバンドなんですけど(苦笑)、それが知らない内に人気が出ちゃって、かなり戸惑ったんですよ。だって、『AIR JAM '98』に出ていたときもメンバーの内3人は、しばらくは風呂なしのアパートに住んでましたから(笑)」
――そうだったんですね(笑)。
TGMX「ライブやりながら“こんなに支持されるなんてウソだ!”って思ってましたね(笑)」
LOW IQ 01「TAGAMIはまだ心の準備が出来てない内に人気が出ちゃって、いろんなことが早過ぎたんでしょうね。俺は逆にそうなりたかったというか(笑)、評価されたいと思いつつ、チヤホヤもされたい。チヤホヤされることも決して悪いことじゃないからね」
TGMX「そうそう!」
LOW IQ 01「若い頃ってワーワーキャーキャー言われることが恥ずかしいっていうのもあって“そんなのいらない”ってカッコつけてたんですよね。アイドルになるつもりはなかったし。今43歳なんですけど、この歳になるとワーワーキャーキャー言われるの大歓迎!(笑) 言われたいですね~」
――(笑)。音楽を始める動機も“モテたい”でしたか?
LOW IQ 01「それは違ったんですよ。“モテたい”よりも、楽器=遊び道具を見付けた感覚。だから楽しくてしょうがなくて、中学時代にみんながサッカーを始めるみたいな感覚でベースを弾いたり、音楽をやること自体が単純に楽しかったんですね。あともう1つバンド時代のことを言うと、ライブに来るお客さんは男7割:女3割ぐらいが理想だねってよく言ってて。男がワーワー暴れてるのをキレイな女の人たちが横で見てる、みたいなのがイイとか、若い頃はくだらないことを言ってたんですけど、今は逆で大丈夫です!(笑) 逆というか、男10:女10の200%がいい(笑)」
LOW IQ 01「メリット/デメリットはどっちにもあるからね。ソロはバンドと違って全部、自己責任ですね」
――イチさんの今回のアルバム『Yes、LOW IQ 01』では、ご自身の内面に深く寄った上で明の部分も暗の部分も歌われてて、それをさらにセルフライナーノーツという形でブックレットに文章も書かれていましたね。“不格好でも構わない 魂込めれば”と歌われる『さきがけ』(M-3)をはじめ、曲も言葉もとてもダイレクトに響きました。
LOW IQ 01「15年目にしてついに“本気出しやがったな”って感じ?(笑)。まぁずっと同じことだけを続けているのもどうなのかなぁっていうのもあって。新しい視点で物事を見ることも必要だし、前へ進むためには、慣れた道ばっかり通っててもダメなのかなって。そういうこともあって思い切れたのかな」
――イチさんを音楽に向かわせる原動力になっているものは?
LOW IQ 01「“悔しさ”みたいなものもそうだし、自信もあるけど、不安もある。ただ単に、自信が不安を上回ったから、アルバムが出せるんですよね。不安が勝っちゃったらアルバムは出せてないから。今回のアルバムにはTAGAMIが参加してないんですけど、何でかって言うと、彼にはトランペットで参加して欲しいから呼ぶんですけど、トランペットをイヤがるんですよ(笑)。“僕よりもっと上手いヤツを紹介しますよ”とか言うから、“だったらいいわ”って(笑)」
TGMX「トランペットはあんまり好きじゃないんですよ、疲れるし(笑)」
カッコつけることもミュージシャンの仕事
――TAGAMIさんの場合はプレイヤーであると同時に、LOW IQ 01 & MASTER LOWのバンマスとしても、プロデューサー的な存在としても、イチさんにとってなくてはならない存在ですよね?
TGMX「何者なんでしょうね? いい具合に誰ともからめる芸人、みたいな芸風でやってます(笑)」
LOW IQ 01「いやぁ、そんなことないよー。この人結構、(人に対する)得意不得意はハッキリしてますよ。(TAGAMIに向かって)あの、今から君のことを褒めるからちょっとだけどこかに行っててくれる?」
――アハハハハ!(笑)
LOW IQ 01「“なくてはならない存在”っていうのは確かにそうで、TAGAMIは“ほんわり”してるんですよね(笑)。僕の先輩でもあるアイゴン(=曾田茂一)とタイプ的にちょっと似ていて、ムードメーカーなんですよね。プロデュースをするときも、相手のいいところをどこまで伸ばしてあげるかに重点を置いていて、かつ自分がバンドマンでもあるから、いろんなところにアンテナも張ってる。こういう場ではいろんなことを無責任っぽく言うんですけど、すごく勉強家だし、すごく音楽を知っている。それでいて“ほんわり” してる(笑)。そのバランスが絶妙」
LOW IQ 01「僕の場合は、音楽とファッションはイコールだと思ってるんですね。“音だけカッコよければ着るものなんてどうでもいい”っていう人もいると思うけど、僕が中学の頃、最初に好きになったのはパンクロックで、あのボロボロのガーゼシャツを着てガンガンいくのを観て衝撃を受けたし。モッズだって、ザ・フーが三つボタンのスーツを着ていたり、ロックンロールバンドは革ジャン着て、髪はリーゼントにして、っていうスタイルがあったわけですよね。そういうものに接してきてるから、音楽とファッションは1つのカルチャーで、一緒になったときに成立するっていう考えだったね。中には、“カッコばかり気にしやがって”って言う人もいると思うんですけど、俺は“カッコは大事なんだよ”って言います。カッコつけることもミュージシャンの仕事だと思うしね」
LOW IQ 01「すごく新鮮なツアーでしたね。僕は何でもやりたがるくせに、自分からは仕掛けないんですよ(笑)。今回のツアーも、TAGAMIがバンアパ(=the band apart)の荒井(岳史)(vo&g)とかいろんな人と廻っているのを見て、いい歳した大人がワーキャーやってるのがうらやましいと思ったんですね(笑)。なので誘ってくれたときは、“やるやる!”ってもう2つ返事で。実際にやってみると、これがまたバンドとは違う、不思議な感覚なんですよ。対バンでもないし、バンド同士のバトルでもないし」
TGMX「1つの夜を2人でプロデュースしちゃう感じですかね?」
LOW IQ 01「そうそう。だから相手の歌を聴いちゃうんですよね」
――SUPER STUPID、SCAFULL KING時代には想像も出来ないステージですね。
LOW IQ 01「自分が静かに座って歌を歌うなんてことは考えられなかったし、音が歪んでないとダメだと思っていた人間だから(笑)。でもね、アコースティックは別物だった。大人になったとかじゃなくて、特に僕の曲は、自分で言うのもなんだけどメロディアスだと思っていて、これをじっくり聴かせられないかなって思ったんだよね。オシャレにするとかじゃなくて、ただ歌を聴かせられればって。最初は、ギター1本で自分1人だから、このままお客さんの前で歌っていいのかなって思うぐらい自信もなかったんですけど、いざやってみたら、意外にバンドでやるより緊張しなかった。お客さんとの距離の近さも、“見られてる=緊張する”となるとダメなんだけど、何となく自分の家にいるような感じで出来ればいいなって思ってたら、実際にそうなれたんですよ。そうなったらアコースティックは面白いんですよね。全国各地、“いっちゃんの部屋へようこそ”みたいな雰囲気でやってきましたね」
TGMX「1日1日アップデートされて、よくなっていった感じでしたね、うん」
今はCDが売れないとか音楽が聴かれていないとか言われるけど
そんなことは関係なく自分のやるべきことを諦めちゃいけない
――新作を引っ提げたLOW IQ 01 & MASTER LOWによるツアーの大阪公演は、5月22日(木)BIGCATです。大阪のお客さんはいかがですか?
LOW IQ 01「だからその分、俺が120%でやらなきゃいけないじゃん!(笑) でもね、彼はMASTER LOWの中でもムードメーカーなんだよね。まとめ役をやってくれてるし、バンドを回していくのが本当に上手い。TAGAMIとのソロツアーは自分にとってすごくいい経験になったし、根性がついたというか。何でも物事を上手く見せようとしちゃダメで、いい具合に開き直ることを彼に教わったんですね。そうした方が逆に自分の力が出せるんだなって分かりました。これはバンドのツアーにも活かされると思いますね」
LOW IQ 01「前は、“カッコ悪いから絶対にミスしちゃいけない”って思ったりして、それがプレッシャーだったんですよね。お笑い芸人さんでも“今が大事なときだから”とか“今、テレビに出ていくときだから”とか言ったりするけど、そうじゃないと思うんだよね。今だけじゃなくて常にチャンスじゃなきゃいけないし、今までが常に大事な瞬間だったからこそ、ここまで来れたんでしょって思う。この15年で、その辺りを勘違いしなくなってきたのかな」
LOW IQ 01「ちょっと真面目な話になるけど、俺らがやっているのは流行りの音楽じゃなくて、聴いていて本当に“いいな”と思える音楽なわけで、自分たちはそういう音楽を世に出していかなきゃいけない世代でもあるんですよね。“LOW IQ 01知ってる? アルバムすごくカッコよかったよ!”みたいに、誰かの会話の中に広がっていくことが大事で、それこそが音楽本来の広がり方なんですよね。今はCDが売れないとか音楽が聴かれていないとか言われるけど、そんなことは関係なく自分のやるべきことを諦めちゃいけない。これから先も20周年、30周年とやっていきたいし、ちゃんと気合を入れながらも肩に力が入ることなく、自分の持ってる力が出せればいいかなと思っています。だいたい常に、120%でね(笑)」
Album 『Yes,LOW IQ 01』 発売中 2916円 cutting edge CTCR-14825
<収録曲> 01. Hangover Weekend 02. Day to Day 03. さきがけ 04. Switch 05. a room with a view 06. Mirror, Mirror 07. A.K.F. 08. And... 09. All I Ever Need 10. Night of the Sleepless 11. Shed Your Skin 12. King of Fools 13. Out Out Out
FRONTIER BACKYARD初のベスト盤 はレア曲も含むフルボリュームの22曲!
Best Album 『BEST SELECTIONS』 6月4日(水)発売 2484円 NIW! Records NIW-97 ※24P豪華ブックレット付
<収録曲> 01. everybody say[introduction](※) 02. hope 03. Wonderful World 04. WHITE WORLD 05. City lights 06. TWO 07. Putting on BGMs 08. cool down clam down 09. TRACE NONE 10. missing piece 11. picture of the sun 12. tic tic 13. MUSIC IS A BASIS 15. wish featuring TAKESHI ARAI from the band apart 16. pairyland 17. Flower of shanidar 18. every(※) 19. Waste of Time 20. Days of "R&S" 21. Parties and our music echoes. 22. Flash ※未発売音源
Profile
LOW IQ 01
ロウ・アイキュウ・イチ…10代の頃から様々なバンドでvo&bとして活動し、20歳でアポロスにsaxで参加。その後、曾田茂一(FOE/Honesty)とACROBAT BUNCHを結成し、’94年にSUPER STUPIDを結成。’99年よりソロ活動を開始し、KEN YOKOYAMAやTOSHI-LOW(BRAHMAN)、TAKA(BACK DROP BOMB)らが参加した『MASTER LOW』(’99)を皮切りに、現在までオリジナルアルバム5枚、ミニアルバム、ライブDVDや自身のルーツをたどるカバー盤や、10-FEETやTHE BAWDIESや多彩な面々が参加したトリビュート盤も発売されている。4月23日にリリースされた最新作『Yes,LOW IQ 01』では、ジャケットデザインとリード曲『Shed Your Skin』のミュージックビデオで、快速東京の一ノ瀬雄太(g)、福田哲丸(vo)とコラボレート。6月11日(水)にリリースされるBACK DROP BOMBのトリビュート盤『The Broccasion-music inspired by BACK DROP BOMB-』にも参加し、約20年ぶりにアイゴンとの共演で『TURN ON THE LIGHT』を披露している。