悩める後藤まりこはどこへ行く――?
ヘドウィグ、たべるダケ、ミドリ、関西ゼロ世代、ライブ、
そして、2ndアルバム『m@u』について
内なる想いを語った撮り下ろしインタビュー&動画コメント
’10年にミドリを解散し、’12年には1stアルバム『299792458』を発表、ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』にも出演するなど、ソロアーティストとしての振り幅の広さを見せてくれた後藤まりこ。’13年は音楽に専念するかと思いきや、深夜の連続ドラマ『たべるダケ』に出演するなど、話題に事欠かない。そんな彼女からようやく届いた2ndアルバム『m@u』。“関西ゼロ世代”などと呼ばれたシーンがあった2000年代初頭から、後藤まりこは同じシーンにいた他のバンドマンと何かが違った。ミドリ時代から約8年の付き合いがある身として、その当時も敢えて振り返ってもらうことで、後藤まりこの核に迫れた気がする。後藤まりこは、今後どこへ行くのか…とにかく、読んで頂きたい。
後藤まりこからのキュートな動画コメントはコチラ!
今回はてへぺろしてないと思う
――1stの『299792458』のインタビューをさせてもらったときに、ミドリの頃のピリピリしたストイックな姿勢と比べて、“今は、てへぺろと言えるようになった”とまりこちゃんが笑いながら言っていて。あの言葉は、ソロになったんだなと印象的で。
「うんうん。でも、今回はてへぺろしてないと思う。真面目過ぎたかも。大丈夫かな?って思う」
――確かにてへぺろではないけど、今回のアルバムを聴いてミドリの頃とはまた違ったベクトルで、いい意味でストイックに音楽に向き合っているなと。あと、大根仁さん演出で森山未來くんと共演したミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』や映画『ペタル ダンス』、深夜の連続ドラマ『たべるダケ』と、ここ最近はいわゆる芸能っぽいお仕事が続いて。ずっと応援しているからこそいろんな経験はして欲しいけど、まりこちゃんは馴染めているのかなと勝手に心配もしていたんですよ。
「全部お話をもらったから、やらせてもらったわけで、ボクからは考えもしなかった。特に『たべるダケ』は、スタッフが直接HPにメールで連絡くれたし。まぁ原作の漫画が好きやったというのもあるけど、それでも最初は“騙されてるんかな?”と思った(笑)」
――でも、話が来るというのはいいことよね。
「ありがたいよ。『ヘドウィグ~』も楽しかったしね。未來くんのすごさをちゃんと観れたのはよかった。大根さんもあんまり何も言わずに、見守って放置してくれた。言われても“もっと大きく動いて”くらいかな。だから、無理なく出来たかな。すごい達成感はあったし、終わるときは寂しかった」
――映画も昨年撮り終えて、『ヘドウィグ』も無事終わり、すぐに音楽で動き出すのかと。
「そうそう、最初は何も考えずに音楽をやろうと。曲作りも徐々にしていたし、’12年末の『RADIO CRAZY』ではもう『ふれーみんぐりっぷす』(M-11)をやっていたしね。ほしたら、『たべるダケ』スタッフからメールをもらって。ただ、結果ドラマで使われた『sound of me』(M-8)も出し方をどうしようかと考えていたので、タイミングはよかったかなと。あと、早めにアルバムを出す話もあったけど…大変やった」
――それはドラマが大変やったってこと?
「うん。だって、自分の食べるとこなんて見たことある!? ドラマに関しては、全然違うかった。映画は決められたセリフ中心で即興芝居。でも、ドラマは“こういう女の子やから、こう食べてくれ”とか初めて言われて、難しいし、ドギマギした。おもしろかったけど、その間レコーディングは全く出来へんかったし、ちょっと悶々としたかも。慣れへんことやし、毎日毎日撮影やったから」
――そんな中、よく年内にリリースが間に合ったね。
「ホンマによく間に合ったなと思う。笑ってしまいそうやもん。難産というより真面目過ぎたのかも。まぁ、ふざけるもんじゃないけど、“頑張った感”がこぼれ落ちるのは恥ずかしいから」
今までは音の並びで考えていたけど、ちゃんと歌詞を書いたよ
考えるようになった
――今回は歌詞が今までとはまた違う感じで、よりいいなと。
「今までは音の並びで考えていたけど、ちゃんと歌詞を書いたよ。考えるようになった」
――例えば『4がつ6日』(M-1)の“日本語ロックってなんだっけ?”なんていう歌詞は、今までになかったから。あと、個人的に何か覚えてる曲とかはある?
「『4がつ6日』は家でラップしてて、5行目まで出来て。『すばらしい世界。』は、作詞がボクとA×S×E(NATSUMEN)さんで、2人で作詞は珍しいかな。作曲もA×S×Eさんで、何も口出ししていないし。『Hey musicさん!』(M-9)は、HARCOさんとボクとA×S×Eさんでスタジオに入って、ボクがメロディを伝えて。それをHARCOさんがiPhoneで録って、コードを作ってくれた。あとは“ハモってよ”とか、そんな感じ。今回、坂井キヨヲシというクレジットがすごくあると思うねんけど、ホンマはピアノやねんけど何でもやってくれた(笑)。最後なんかヴァイオリンもやってくれたし。キヨヲシは本当に頑張った!」
――1stも素晴らしいんだけど、今回の方がみんながまりこちゃんに寄り添ってる気がして。
「1stのシュンちゃん(渡辺シュンスケ)と千住(宗臣)くんも楽しかったし、優しかった。でも、2人は自分たちの演奏に貪欲だし、曲のイメージより瞬間瞬間の楽しさを爆発させる人やった。今回は、ボクのやりたいことを具現化するために集まってくれた人たちというか。だから、前の方がバンドっぽかったかも」
どうなるんやろ!? わかんない
――去年の10月くらいに一度ツイッターで“アルバムを発売します”みたいに独断と偏見で発表したやんか。スタッフはみんな驚いたと思うけど(笑)、まぁ、まりこちゃんらしいなと。
「いろんなことを考えていて、年内は無理とも思っていたし。でも、言った以上は、そうせなアカンから」
――その負荷のかけ方が、まりこちゃんらしいなと。
「出されへんかもと思っていたから、出せてというか、出来て良かった。まぁでも、いつもやけど(レコーディング中の)記憶はなくなっているけど」
――今後まりこちゃんは、どうなっていくんやろね?
「どうなるんやろ!? わかんない。ぶっちゃけこうなりたいとか、鈴木さん(=筆者)ある?」
――何となくはあっても、具体的に言うのは難しいかも。
「そうやんね。生き方としてはあるよ。ブレずにいきたいとか。自分を使い切りたいとか。緊張しないようにとか。でも、具体的なスケジュールとしては考えられへん人種なんちゃうかな。将来のことを考える余裕がない。(スケジュールとして)来たやつ、来たやつをやる感じ。アカンよね?」
――アカンことはないと思う。ただ、そのスケジュールも今や音楽だけじゃなくなってきてるやんか。だから、いい意味でみんなの前に晒される機会が多くなったと思う。その辺りの世間の評価って、どう?
「他人の評価は、昔より気になるようになったよ。だってさ、ドラマに出してもらってるのに他人の評価を気にしいへんとか厚かましいやんか。まぁ、そりゃ悪く見られるより、エエようには見られたいよ」
――ツイッターでも結構、ファンと果敢に絡むよね(笑)。
「ああいうのおもしろい(笑)」
ミドリのときは初めてのメジャーでさ
いろんなものが新しくて、何も知らなくて
でも今はある程度を知ってしまっているから
――いわゆる大人と呼ばれるスタッフとの関わりも、上手になってきたんじゃないかなと思うんやけど。
「だって、ミドリのときは初めてのメジャーでさ、いろんなものが新しくて、何も知らなくて、でも今はある程度を知ってしまっているから、逆にヘンな感じかな。ボクも大人になってきて、そういう意味で大人が新しいことをすんのって大変やなとは思う、1人になってからは。ミドリのときは、大人を信用するなという感覚はもちろんあったよ。でも、スタッフとは仲良かったし、本当にやりやすかった。もちろん、今もそうやけどね」
――僕はね、まりこちゃんがミドリ時代からちゃんとレコード会社や事務所やイベンターの皆さんとやっているというのがすごくエエなと思っていてね。その昔、“関西ゼロ世代”なんてメディアから呼ばれた時代があったじゃない。実際、あふりらんぽ、ZUINOSIN、オシリペンペンズ、ワッツーシゾンビ、ニーハオ!とかさ、今も誇れるくらいに素敵なバンドが多かった。その中でもミドリは、どこか違ったやんか。どっちが正しいとかではないけど、僕にはミドリの動きや考え方はすごく新鮮だったし、おもしろかった。
「みんなは純粋やったよね。楽しいってことに純粋やった」
――まさに。プラスαで、まりこちゃんには野心や“成り上がってやる感”があったから。僕はそこに胸が躍ったし。
「うんうん。音楽をやるってさ、いろんな意味があるやんか。人によっては宅録して、1人で聴くのも音楽やし。週1月1でサラリーマンの人がやるのもエエしさ。でも、ボクは生業としてやってるし、そこに人の評価も入ってくる。音楽を好きでやっているのか、生業としてやっているのか…わからなくなるときもあって…。前は楽しいからというのもあったよ。でも、何が純粋で純粋じゃないかはわからんくて…」
――“楽しい”を純粋にやっている人たちは本当に素晴らしいし、大好きやねん。でも、生業として、大人たちといろいろ考えながら、悩みもがいているまりこちゃんみたいな人にも、僕はめちゃくちゃ惹かれるのよ。だって、難波ベアーズでワンマンやった後に、お手製のおでんを終演後に紙コップに入れて観客に配っていたバンドがメジャーに行くねんよ(笑)。めちゃくちゃドラマがあるやんか。だから、まだまだドラマが観たい。
「おでん配ったなぁ~うどん入れたやつ(笑)。でも、今後どうなってやろうとかはないよ。いろんな人に観て欲しいという気持ちは、ずっとあるけど」
――そこやと思う。自分が楽しいという気持ちを持ちながらも、そこにいろんな人に観て欲しいという気持ちを持ち合わせてるところが、僕は昔から好きなんやと思う。エエもんは、絶対に伝わるし。
「いろんな人に見て欲しい気持ちは、ホンマに昔からあるよ。あとは大きいとこでやれたらエエなって、うん」
ボクにとってライブは、ご飯とか生活の一部なんやけどさ
――ライブも楽しみです。
「ライブは毎回怖いけど、まぁ大丈夫。心配せえへんようにする。考え過ぎたら、わからんくなるし」
――ライブが怖いというのも、昔から言ってるよね。
「お客さんは、手を叩いたりして盛り上がるのが好きやんか。それを悪いとは思わへんよ、もちろん。でも、それだけがライブちゃうやん。ダイブするのもわかるよ。でも、それだけがライブちゃうやんか。ボクにとってライブは、ご飯とか生活の一部なんやけどさ」
――ミドリの、特にメジャー時代から、観客に何かを異様に求められる感じはあったよね。
「ボクがダイブしたりさ、そういうのだけを求められてると…それはそれでわからんくなる。でも、否定はせえへんよ。拳を突き上げたりとかも素晴らしいし、ボクも好きやけど…それだけちゃうやんか。それだけになると、ボクは悩んでしまう…」
――自分が楽しいを最優先にして、中心にしてやる選択肢もある中、まりこちゃんはずっと多くの人に、大きなとこで観て欲しいという気持ちでやってきて。でも、規模が大きくなればなるほど、まりこちゃんの悩みも大きくなる。そこにぶつかりながら、延々とやり続けているまりこちゃんはやっぱエエなと、今日改めて思いました。
「ホンマぁ。ありがとう。うん、頑張る」
Text by 鈴木淳史
Photo by 宮家秀明(フレイム36)
(2014年1月10日更新)
Check
Release
クリエイティブでスリリングでポップ
待望の2ndアルバムが誕生!
Album
『m@u』
発売中 2800円
Defstar Records
DFCL-2036
<収録曲>
01. 4がつ6日
02. m@u
03. す☆ぴか
04. すばらしい世界。
05. だいろーちゃんとまりこちゃん
06. 浮かれちゃって、困っちゃって、
やんややんややん
07. ラブロマンス
08. sound of me
09. Hey musicさん!
10. 大人の夏休み
11. ふれーみんぐりっぷす
12. 世田谷区桜新町2丁目
Profile
ごとう・まりこ…’10年12月に前身バンド、ミドリ解散。’11年12月に自主企画を立ち上げ、ソロとして始動する。’12年7月に1stアルバム『299792458』を発表し、秋からはミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(主演:森山未來、演出:大根仁)で初の舞台に挑む。’13年春公開の映画『ペタル ダンス』(監督:石川寛)で銀幕デビューを果たし、7月には連続ドラマ『たべるダケ』にドラマ初出演ながら、主演として大抜擢された。同月、そのドラマ・エンディングテーマ『sound of me』を1stシングルとして発表。12月4日に2ndアルバム『m@u』を発売。
後藤まりこ オフィシャルサイト
http://www.gotomariko.com/
Live
新春のレコ発大阪ワンマンに
恒例のひな祭りイベント他で関西へ
『後藤まりこ ワンマンライブ』
チケット発売中 Pコード212-520
▼1月11日(土)19:00
Shangri-La
オールスタンディング3500円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。
チケットの購入はコチラ!
『大阪ロックデイ2014』New!
チケット発売中 Pコード218-987
▼1月25日(土)13:00
サンホール
オールスタンディング2800円
[出演]アナル玄藩/ELECTRIC EEL SHOCK/ガンジー石原&糸車/ギャーギャーズ/THE GUAYS/クリトリック・リス/KK manga/後藤まりこ/コロボックルズ/少年ナイフ/<10minutes SHOW CASE>/豊川座敷の雨敷/中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)/バイセーシ/Bugって花井/HAPPY/ピアノガール/B玉/ヒミツノミヤコ/Boiler陸亀/三上 寛/MELT-BANANA/リバーシブル吉岡/RED SNEAKERS/ワッツーシゾンビ
サンホール■06(6213)2954
※公演当日、中学生・高校生の方は学生証提示で1000円返金。
チケットの購入はコチラ!
『爆ひな'14』
一般発売1月26日(日)
Pコード220-589
▼3月2日(日)18:00
心斎橋JANUS
オールスタンディング3300円
[出演]後藤まりこ/ひめキュンフルーツ缶/
ふくろうず
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。
チケットの購入はコチラ!
Column
身も心もアツくなる
音楽の熱湯風呂!
THE BACK HORN、後藤まりこ
アルカラがBIGCATを沸騰させた
『熱闘! OTODAMA'13
~熱湯編~』ライブレポート!!