群雄割拠のシーンにジャストな違和感をポップに鳴らす
要注目新人にして正体不明のガールズユニット印象派
謎めいたユニットの成り立ちから1stミニアルバム『Nietzsche』
そして現在に至るまでを紐解く激レアインタビュー!
(2/3)
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この曲? この服? この髪? みたいな。全部が半信半疑(笑)
――“自分の声が嫌い”ってmiuさんは言ってましたけど、曲を書くだけじゃなくて、何だかんだやっぱり歌ってきたわけじゃないですか。
miu「そうですね。前のバンドは大学のときに友達に誘われて、“キャラが面白いし、いいんじゃない、やってみたら?”っていう感じで(笑)。ボーカルも全然やったことがなくて」
――曲も書いてなかった?
miu「昔、エレクトーン教室に通ってて、そこで」
――素養はあって、ということですね。
miu「父親がビートルズとかツェッペリンが好きで、母親がエレクトーンの先生だったので、音楽好きな家族で。今も親が2人でセッションしてたり(笑)」
――ただいま~って帰ったら親がセッションしてる家(笑)。
mica「その動画を見せてもらったんですけど、ダイニングに部下たちを呼んで、それを娘が撮ってるっていう構図がすごいシュール(笑)」
――そら、音楽始めるわ(笑)。でも、大学でバンドに誘われるまで、自ら音楽をやろうとは思わなかったんですね。
miu「そうですね。前のバンドをやるときも、まさかライブをするとも思ってなかったので。あまりにも私が不慣れというか棒立ちなんで、ギターを持った方がいいんじゃないかって、そこからギターを始めて」
――別にそれまで弾けたわけじゃなく? それで今これ? 天才か(笑)。状況が自分に音楽をさせていく感じですね。micaちゃんはそもそも何で音楽を始めたんですか?
mica「私は4~5歳くらいからクラシックピアノをやってて、吹奏楽もやったし、合唱コンクールはいつも伴奏してた。でも歌うことは全然してなくて。大学受験のタイミングで、芸大にポピュラー音楽コースが出来て、ピアノで行ってたら全然ダメやったと思いますけど、ポピュラー音楽コースは歌やったら課題曲だけで受けられるからって、1週間必死に練習して。絶対に落ちるって言われてたんですけど(笑)。そこから歌をやり出したんです」
――もしクラシックで芸大に行けてたら、歌わなかったんやね。
mica「歌わなかったですね。私も歌うことも自分の声も、そんなに好きじゃなかったんで。大学も4回生になるくらいまではめっちゃ劣等生で、発表会をさぼったり、周りはみんな“俺が俺が”みたいな感じやし、人前で歌うのとか絶対に無理って。極めつけは、レッスンのときにイキりの男子が、“ちょっと俺にマイク貸してみろ、こんな感じやで”って歌ってきて愕然として、もう絶対にイヤ!って(笑)。けど、4回生になったら、“声が好きやから、俺が全部曲も書くし、バンド作るから歌ってくれへんか?”っていう子が現れて、それでまたやり始めました。そんなに褒めてくれる人がいなかったので、ちょっと好きになりましたね(笑)。結構今と状況一緒ですね(笑)。結局、卒業で解散になったんですけど、私だけが音楽を続けたくて、曲とか作ったことなかったけど、弾き語りをし出したんです」
――こうやって話を聞いてたら、声に尽きるというか、声から何もかもが始まっているところがありますね、印象派は。楽曲はどうやって作ってるんですか?
miu「曲はmicaちゃんと基本的に家で作ってて。バンドとは系統は違うんですけど、基本的にメロディがハッキリしてるというか、美しいものが好きで。アレンジとかは、サカナクションのあんな感じがカッコイイから入れたいとか、そんな感じ(笑)。感覚的にめっちゃ違うっていう感じは実はなくて、初めに2人で作ったものを携帯で録音して、それをだんだん形にしていく感じですね」
mica「スタジオに入って、レコーディングのメンバーみんなでわいわい言いながら、それが形になったものもあるし、全然違う形になったものもあるし。私たちだけではこんな風に出来なかったかなって」
――じゃあアレンジ自体はチームで作る感覚に近いと。ちなみに印象派として最初に出来た曲って?
mica「『ENDLESS SWIMMER[true]』(M-4)」
――この曲が出来たときって、これヤバない? イケんちゃうん? みたいな手応えはなかった?
miu「全然なかったですね。micaちゃん不信感さえあったでしょ?」
mica「アハハハハ!(笑) この曲? この服? この髪? みたいな。全部が半信半疑(笑)」
miu「私はmicaちゃんが一番引き立つのは絶対こういう曲だよ!って。もっと言ったら、今のmicaちゃんのバンドも、ずっと受け入れられなかったんですよ、私は!(笑)」
mica「アハハハハ!(笑) 最初はすごく緊張してたんですよ。私の意志は歌うことでしかなかったから、曲はほとんどmiuに任せてやってたんで。最終的には、ホンマにバンドっていう感じでレコーディング出来て、私たちの意志が入ってるなって思えたので。すごいカッコイイアルバムが出来たなって、初めて印象派売れるんちゃうん!って思いました(笑)」
――それで言うと、どういうところでmicaちゃんの意見が反映されてるんですか?
mica「私が一番歌いやすいキーに変えました(笑)」
――王様やん!(笑)
mica「フフフ(笑)」
自分たちの好きなようにやろうって、より突き進んだ感じがします
――それこそ最初に’11年に『ENDLESS SWIMMER/HIGH VISION』(現在は廃盤)を出したときから、割と反響があったじゃないですか。その辺に関してはどうだったんですか?
mica「“世間ではこういうのがいいって言われるのか~”って(笑)」
――他人事(笑)。去年の『SWAP』でさらにね。
mica「それはちょっとだけありました。『SWAP』で周りの評価をすごく感じられたので、ちゃんと本腰入れてやっていこうっていう結束は、2人でしたような気がします」
――それを受けての『Nietzsche』は、どういった作品にしようっていうビジョンはあったんですか?
miu「今までは別に誰を意識するわけでもなく、自分たちがその時々でいいなと思ったことをやってきて、それをいいと言ってくれる人がいて。micaちゃんも受け入れてくれてるのをだんだん感じてきたので、自分たちの好きなようにやろうって、より突き進んだ感じがします」
mica「さっきから私の声ありきっていう感じになってますけど、私だけが歌ってても全然よくなかったと思うんですよ。miuって赤ちゃんみたいな声じゃないですか。ちょっと萌える、かわいい声。その2人の対比というか」
――AメロBメロでmiuちゃんの柔らかい声でちょっとずつアゲてきて、サビでmicaちゃんの声が乗ったときの破壊力というかハリというか。同じ人物が抑揚を付けるのとは違う楽曲のダイナミクスはありますよね。micaちゃんの声が映えるためにmiuちゃんの声がある。
miu「そうです!」
――キーも合わせてるわけですからね(笑)。
mica「すみません(笑)」
――micaちゃんにちゃんとフィットした歌を歌えるんやったら、miuちゃんもいい歌い手じゃないですか。
miu「本当ですか!?」
――『OUT』(M-6)とか、よく噛まへんなと思って。エディットしてるんかもしれへんけど。
mica「してないんですよ。しかも2人同時に録ったんです。何となくそこに着地するっていう感じを丸々録って」
スタッフ「基本は一発で、しかも終バスまであと15分(笑)。あと2テイクで終わらんかったら、録り終われずに大阪に帰らなあかんところで奇跡を起こしてる。あの緊張感はよかったよね」
miu「次の日が仕事だったんで、スーツを持って東京まで行って。会社には音楽してること言ってないんで(笑)。その後夜行バスで帰って、会社の近くのロッカーに荷物を突っ込んでそのまま行かないといけないくらい時間がなくて。集中しましたね、あれは」
――『OUT』のアイディアはおもしろいよね。時刻表をリーディングするというか。もう何回も聴いて、これはどこに向かってるルートやろ?って調べましたわ。
mica「この曲は歌詞カードがないんですよね」
――やまびこ225号、1時間半でどこに行けるやろう? 東京からだと福島っぽいなとか。
mica「すご~い(笑)。お手数おかけしました
(2013年11月 5日更新)
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