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ホーム > インタビュー&レポート > 何故、人は彼の歌に鼓舞され、涙する 運命の日3/9に導かれた“届ける男”千綿偉功(ちわたひでのり)の 6年ぶりのアルバム『サンキュー』インタビュー&動画コメント!


何故、人は彼の歌に鼓舞され、涙する
運命の日3/9に導かれた“届ける男”千綿偉功(ちわたひでのり)の
6年ぶりのアルバム『サンキュー』インタビュー&動画コメント!

 シンガーソングライター、千綿偉功(ちわたひでのり)のキャリアは、‘94年にさかのぼる。ユニットのボーカリストとしてメジャーデビューし、’98年にはソロ活動を開始。’01年には自主レーベルを設立、そして解体…。ソロアーティストとしては異例の活動休止期間を経て、今では楽曲制作やライブはもちろん、レコーディングからプロモーションまでをたった1人で行っている彼が、遂に6年ぶりのアルバム『サンキュー』リリースした。上京後の日々を支えた今は亡き愛犬の命日である3月9日と偶然重なったリリース日をきっかけに、運命に導かれるようにレコーディングへと向かった彼が生みだした新作は、’07年の活動再開後の集大成とも言える、溢れる想いが決壊した濃厚な作品だ。10月8日(日)あべのROCKTOWNでは同作を引っ提げた久々の大阪バンドワンマン、そして来年4月には現状を打破すべく東京・渋谷O-EASTにて大規模ワンマンライブに挑戦する彼が歩んできた、決して長くはない6年の道のり。彼は生き様は不器用で、彼の歌は最先端の音楽ではないかもしれない。ならば何故、人は彼の歌に鼓舞され、涙するのだろう。彼からの1本の電話から実現した今回のインタビュー。熟成し続ける千綿偉功の音楽人生の行方をたぐり寄せる飾らない言葉の数々に、ぜひ耳を傾けて欲しい。

弾き語りもチラリ披露! 千綿偉功からの動画コメント

――お久しぶりではありますけども、まさかそんなに空いてたとはっていう6年半ですよね。振り返るにはあまりにも長い期間ですけど(笑)。

 
「ね(笑)。’06年の夏に活動を休止をし、’07年の春から再開して。その夏に『君色の風~想~』、’08年に『biginning / 道化師のソネット』、’09年に『アイノウタ』(M-7)を出して。もう3曲入りマキシシングルを作るだけで、1年に1枚ペースが限度でしたね」
 
――完全にインディペンデントでやるとなると、音源をリリースすることに対しての労力がスゴいと。
 
「そう! 気持ちの面もひっくるめての労力が」
 
――マキシでそれって言うことは、フルアルバムとなると…(笑)。
 
「たかが3曲1枚を作る大変さを身に染みて感じていたのもあって、なかなかアルバムを作るスイッチを押せなかったんですよね。だからよっぽど“今だー!!”っていうタイミングが来ないと、多分アルバムは作れないなぁとどこかで思いながら…活動していたと思います。ホントは去年ぐらいには出したかったんですけどね」
 
――もうマキシを切り続けるのも違うし、かと言ってフルアルバムを作るほどの、まとまったお金も時間も労力も、そのモチベーションもない。でも時間だけは過ぎていく。
 
「まさにその通りで。あと2011年は、故郷の佐賀でNHKさんのお仕事を頂いて、月に2回ぐらい東京と佐賀を行ったり来たりして。佐賀県の高校が46校ぐらいあって、週に1校紹介していくと、ちょうど1年間で回り切れるぐらいなんですよ。僕が学校を訪ねて高校生たちと触れ合って、イチオシの部活動とか授業とかを紹介して。最後に僕のギターの伴奏で、その学校の校歌を歌って締めるというコーナーがあったんです。でも、コードを取りながら校歌を覚えるのが、もう大変で! そういうのもあって、全然アルバムのスイッチ押せなかった」
 
――そうか、それはあっという間に1年経つ(笑)。
 
「コードで弾くにはメロディを覚えないと弾けないから、移動中にずーっと覚えて。番組のスタッフに“サビのところだけでもいいですよ~”って言われても、“え、校歌のサビってどこ!?”みたいな(笑)。もうホンット覚えるのが大変で、1年を慌ただしく過ごしてましね」
 
――’09年でマキシは打ち止め、’10年ライブに明け暮れ、’11年にはそのプロジェクトが始まり、それに追われ。
 
「ホントは’11年に作ろうと思っていたものが。でも、ファンの人もいい加減もう待てないぞと」
 
――だって音源としても3年空いてて、アルバムで6年ですから。それはそうですよね。
 
「とは言え、活動再開後にちょくちょく出来てきた曲…『アイノウタ』『遠くまで』(M-8)『ねがい』(M-11)とか『なにもないけど』(M-12)辺りは、絶対にアルバム入れたいっていう想いもあったんで、やっぱり何か意味のあるタイミングがあればって。ただ出しゃいいってモンじゃないなと思うし、たまたま俺が使ってるCDの流通会社の発売日が、月に1回しか設定されてなくて」
 
――発売日を自由に決められないんですね。
 
「そうなんですよ。で、2011年のリリース日をずーっと見ていって、ちなみに来年はどうなってるのかな?と思ったら、3月9日があって。その日は長年飼っていたマルチーズ犬“ムク(夢駆)”の命日で7回忌でもあったので、もうここしかないと。去年の中盤ぐらいからもう、そこに照準を合わせてやってましたね」
 
――それだけ千綿さんにとって特別な日だったってことですよね。でもこのアルバムの作り方は、多分他ではないでしょうね。アルバムを出そう、じゃあいつにしょうじゃなくて、アルバムを出すかどうかが日付から決まってスタートするプロジェクトはなかなかない(笑)。
 
「ですよね(笑)。多分、一生に1回しか出せないタイミングでしょうね。39歳で3月9日で命日。全てのタイミングがそこに」
 
――それに気付いたとき、もはや何としてでも、この日に出さなきゃいかんっていう。
 
「そうなんですよ! あと、いつも僕のアルバムってベスト盤的な感じなるんですよ」
 
――確かに。そんなにしょっちゅう出ないから、その期間のベストみたいな。
 
「そうそう。そのためには中途半端な曲は入れられない。その核となるのが、1曲目に入れた『アイブミ~Love Letter~』で。実は、数年前に沖縄一人旅をしたときに、8小節だけ出来てたんです。それが2010年かな?」
 
――それはもうライブはと全く関係なく行って?
 
「スイッチをオフにする時間が必要だから、1年に1回沖縄に逃亡するんです(笑)。長いときは3週間ぐらいいますね。そういうときに結構曲が生まれて、『アイノウタ』も多分そこだったし、『biginning』(M-4)もそう。で、鳩間島にいたときに、何もしないのが目的なんでただボ~ッとしてるんですよ。人口40人の島で、観光客もほとんどいなくて。そういうときに、突然ブワァ~!!っと曲が降って来て、キター!!みたいな(笑)。それで『アイブミ~Love Letter~』のサビの8小節が生まれて。その続きを1年くらいかけて東京で作ろうと思ってたんですけど、温度差なのか環境なのか全然生まれてこなかったので、もうこれは懸けだと、2011年の11月かな? その8小節が出来た浜に弾丸で行って来たんです(笑)」
 
――マジで(笑)。
 
「もう無理矢理1週間ぐらい空けて。ただその浜に滞在出来るのが、フェリーの関係上1日しかない(笑)。行ったから出来る保証も何もないんだけど、やっぱ行っときゃよかったな…って後悔するよりも行こうと。またそこで1日ボ~ッとしてたら、曲の欠片がバラバラバラ~と降ってきて、キタキタキター!!って(笑)。で、その欠片を東京に持って帰って、核となるこの曲が出来たので、これはいけるぞと。それが去年11月頃ですかね」
 
――え? でも、3月リリースなのに…。
 
「そうなんですよ(笑)」
 
――その時点で他の曲の録りはしてなかってんですか?
 
「してなかったです。それもこれもあの、NHKさんの(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) だってそれ、春までは絶対続きますよね?(笑)
 
「そうなんですよ(笑)」
 
――だったら、どこかで絶対にスケジュールをこじ空けなきゃいけない時期が来る。
 
「結局、一番忙しいクリスマスから年を挟んで年始にレコーディングして。ホントに冷や汗モンでしたよ」
 
――逆に言うと、それぐらいこの曲を完成させることが鍵になる予感があったと。8小節しかなかったのに、何なんでしょうね。
 
「降って来たときの曲のパワーというか…すごい鳥肌が立ったんですよ。この“すべてが灰になっても”なんてフレーズ、普段は絶対に出てこない。何かスゴいエネルギーを持った曲なんだなぁと思って。あと、僕は1回活動休止をして、9ヵ月間音楽のない世界を過ごして初めて一人旅に行った。だからこの活動再開後の、人と人とのつながりの中で生まれる感謝の気持ちとかそういうモノが、このアルバムにはフィードバックされてると思いますね」
 
――以前のインタビュー時にも、プロモーションとかも含めて今までスタッフがやってくれてたことを自分でやると、めちゃくちゃ大変だからこそ人と人との距離が縮まったときのつながりを感じるって。
 
「言ってましたね。何かもう自分が“生かされている”ような、感謝の気持ち。音楽をやっていく上で僕はそれを感じてるんですよね」
 
 
ムクが3月9日に旅立ってなかったら
また全然違うアルバムになっていたと思います
 
 
――事の発端になったのは、ムクという飼い犬とのエピソードからということですけど、佐賀から上京してすぐ犬を飼うっていうのも結構不思議だなぁと思いました。だって世話しなきゃいけないし、散歩に行かなきゃいけないし、そもそもアパートで飼っていいのかとかね(笑)。
 
「それねぇ、ホントは飼っちゃいけなかったんです(笑)」
 
――やっぱり(笑)。佐賀から上京したてで夢を追いかける六畳一間のアパートで、ペットを飼ってもいいところってなると、ちょっと家賃が高くなるから、そんな金はないはずだと(笑)。
 
「ですよね(笑)。最初は大家さんに“友達が1ヵ月ぐらい海外旅行に行くんで、預かってって言われてるんです”って嘘をついて。まぁどうせバレるのは分かってたんですけど、そしたら大家さんが“も~ホントは自分で飼っちゃったんでしょ?”って。ホントはダメだったんですけど、許してくれたんです。あと、俺ずっと犬が好きで、実家にいるときは飼えなかったから、一人暮らしをしたら絶対飼いたいって夢もあって」
 
――上京したてでまだ自分のことで精一杯みたいな時期に、ペットとのエピソードってなかなか聞かないと思うんですよ。でもそれだけ、自分の人生にとってかけがえのない存在だったってことですよね。だって、この紙資料のエピソードを読んでからこのジャケットを見ると、犬を飼ったことがある人ならまず泣きそうになりますけどね(笑)。
 
「アハハ(笑)。もう、ジャケットはこれ以外に考えられなかったですね。飼ってた頃ってまだデジカメとかがなかったのでフィルムで撮ってて。ネガを探すところから始め、それをちょっと大き目に焼いて、それをスキャンして取り込んでみたいな」
 
――当時は曲を書くときも傍にいたわけですよね。何か思い出すエピソードはあります?
 
「デモテープを作ってるときに、ワンワン!って吠えてその声が入ってしまったり、あとはギターケースの中で寝てたりとか」
 
――かわいいいな~(笑)。
 
「ギターをまたぐときに、爪が引っかかってジャリーンって鳴ったりとか。ありますね」
 
――亡くなった悲しみはやっぱりちょっとずつ薄れてはいきますけど、その当時じゃなくて、今こうやって作品として蘇るのも珍しいですね。
 
「それがこの『証』(M-6)だったりもするんですけど。“あと何日生きるだろう?”って、ムクが天国に旅立つ数日前に傍で作った歌なんです。でもね、時間が経ってこういうアルバムという形になるって、まさにコイツがくれたキッカケですよね。ムクが3月9日に旅立ってなかったら、また全然違うアルバムになっていたと思います」
 
 
今の僕の中に溢れてる気持ちを、想いを閉じ込める
これを出さないと次にいけない気がしたんです
 
 
――3月9日というちょっとした運命みたいな日付から始まった今回のアルバムですけど、内容的なテーマはあったんですか?
 
「その3月9日を“サンキューの日”と名付けて、この6年間ずっと過ごして来たんです。毎年ブログにも書いてるんですけど、この日はいろんな人とか物事に対する感謝の気持ちをもう1度確認する日にしようって。で、この日に出すアルバムだから、コンセプトはもうそのままですよね。今回は奇をてらってサウンド的なチャレンジをしたりはとりあえずしないで、どう切っても千綿です、素の僕ですみたいな、どっちかと言うとピュアな部分…まず今の僕の中に溢れてる気持ちを、想いを閉じ込める。これを出さないと次にいけない気がしたんです。でも僕の中にもグロいところとか黒いところ、汚い部分がある。でもそれは、このアルバムには敢えて入れなくていいと思ったんです。それは次だと。このアルバムが出来て、俺はどう化けるんだろう?って」
 
――ある種この6年間の決着も含めて、こういう運命をくれたムクのことも含めて、このアルバムに全てを放り込んどかないと前に進めないっていう感じですね。
 
「そうですね。まさに」
 
――それこそ11月にアルバムの核となる『アイブミ~Love Letter~』が出来て、12月のクリスマス頃から年始までのレコーディングは、結局どれくらいのスパンでやったんですか?
 
「11月に『アイブミ~Love Letter~』が出来て、12月の頭にBluem of Youthの松ヶ下(宏之)に弾き語りのデモを送って。アレンジを2~3度やりとりして、12月下旬からスタジオに入って、1月の上旬にはもうマスタリングまで終わってましたからね。スタジオに入ったのは8日間」
 
――短いですね。
 
「で、実はその8日間の間に『いのちのたね』(M-5)も作ったんですよ。震災もあった1年だったので、何かちょっと軽いタッチというか、心が弾むような曲があったらいいなと思って。歌詞も歌入れのちょっとした休憩中に考えたり。ホントにもう冷や汗モンだったんです」
 
――そうですね。そして、その間に校歌が(笑)。
 
「そう!(爆笑) ホンットによく出来たと思いますね。シングルの『biginning』『アイノウタ』+ボーナストラック以外の、実質10曲は新録なので」
 
――8日間で10曲+マスタリングまで…スゴいなぁ。クレジットを見ても、松ヶ下さんがめっちゃありがたい動きをしてくれてますね。あの方は何でも出来るんですね。
 
「ホントにホントにホントなんですよ(笑)。この人じゃなかったら出来てないですね」
 
――『証』のベースラインがめっちゃカッコいいなぁと思ってクレジット見たら、えっ! ベーシストじゃなくて松ヶ下さんが弾いてるんだって。
 
「ホンットに助かります(笑)」
 
――あと、このアルバムはバンド感がスゴく出てますね。
 
「そうなんですよ。彼はピアノとかクラシックの畑も通ってるんですけど、元々はハードロック好きで、ギター弾く姿がめっちゃカッコいいんですよ。でも、いくら松っちゃんにアレンジを頼んでるとはいえ、レコーディングの空気を作るのはやっぱり僕じゃないですか。だからそこも結構大変でしたね。言いたい放題言えばいいってモンでもないし、松っちゃんもプライド持ってやってるし、あとは時間との戦いでしたね。2回目をやったからってそれが良くなるとも限らないけど…でもそこを何とかみたいな(笑)。すーごい駆け引きが難しかったですね。結構言い合ったりもしましたよ(笑)」
 
――そうなんですね(笑)。『遠くまで』(M-8)が出来たエピソードも興味深いなぁと。ライナーノーツには、“決して大きくはないその会場、決して最高とは言えないステージ環境、決して多いとは言えないお客さんの数。今思い返すと、その頃の自分が置かれている状況に、何かしらのコンプレックスを抱いていたのかもしれません。そんな状態のライブにも関わらず、客席にはファンの方がいてくれて、いつもと変わらず笑顔で聴いてくれていて…”と。
 
「何なんでしょうね。フッと“あ、俺はこの人たちに生かされてる、支えられてる”って思ったんです。目の前にいつもいてくれる顔があって、この人たちがいなかったら、もっとめげてたと思うんです。この人たちのために歌おう、目の前の人に届けようって思った瞬間でしたね。だから楽屋に引っ込んだときに、別に悲しいわけじゃないんですけど、何かグワァ~って涙が溢れてきて。そのときに“本当に嬉しい時~♪“って、『遠くまで』が出来たんですよ」
 
――どんな状況でもパワーに変えるじゃないですけど。
 
「そう。メロディ先行でこんな歌は出来ないですね」
 
――今の時代は独立して全部自分でやってるアーティストも多くて。僕らはインタビューでその苦しみも聞くことは出来るけど、昔大きなステージに立ってた人とか、もっといい状況でやれてた人の、そういう本音の本音のところって、やっぱりなかなか本人から言葉にはしないじゃないですか。だからライナーノーツでもそういう想いを知らせてくれたことが、何だかスゴく人間っぽいなぁと思います。
 
「やっとそういうことが素直に言えるようになったんでしょうね。それは、ただライブを観てCDを聴くというだけの関係を越えた、ファンの人への信頼もあると思うんですよ。それが本音でぶつかることなんだろうなって」
 
――今回の取材のためのアポイント取ることもそうですし、1つ1つの作品をちゃんと自分がハンドリングして作ることも含めて、それが千綿さんの歌の説得力をすごく高めている気がしてるんです。もちろん大変なこともあるでしょうけど、アーティストとしては今の千綿さんの方が魅力的だと思うんですよね。あと、今回のアルバムを聴いたときにキッチリ鳥肌が立ったのが、すごいなと思ったし、嬉しかったんです。内容的は別に2012年を切り取った最先端の音楽じゃない。でも、鳥肌が立つっていうことはやっぱり、理屈抜きで歌がいいってことなんで。それがこの6年間やってきた答えだなって。千綿さんが今でも歌い続けられているのは、何なんでしょうね?
 
「あのとき気付いたようにやっぱり、自分は支えられているっていう想いですよね。この前、名古屋でライブをしたときだったかな? 岡山から初めてライブに来た方がいて。『逢えない夜を越えて』('04)をたまたまラジオで聴いて、その頃からずーっと陰ながらCDを集めて聴いてくれていたみたいで。ずーっとCDだけを聴いて8年応援してくれてる人がいた。きっとそういう人が日本全国にいっぱいいるんだろうなぁと思って、これは僕が届けに行かなきゃいけないなって」
 
――その人が意を決してね、8年越しで岡山から名古屋まで足を運んでくれた。逆に千綿さんが岡山でライブをしてくれたら、尚嬉しいというか。
 
「そうそう! そういうことなんですよ。行ったら行ったで必ず出逢いはあるじゃないですか。そこでは形にはならないかもしれないけど、自分がそのとき気付かないだけで、今回みたいなことが絶対にある。ホントに1人になってフットワークが軽くなったと思いますし、人見知りも減ったと思うし(笑)」
 
――そうですね。もう人見知りしてる場合じゃない(笑)。
 
「環境って変えますよね、人間を。だから今後が楽しみですね。1年後にどうなってるかなんて分からない。一生歌っていくとは言っても、どうなってるんだろうなぁ」
 
 
ホント泣きそうなくらい嬉しかった
 
 
――『サンキュー』はブックレットの写真もオモシロいですね~若いなぁ~千綿さん(笑)。こうやって見てると千綿さんの髪型の変遷しかり(笑)、歌ってる場所も思い出しますね。
 
「アハハハハ(笑)。実家から昔の写真を送ってもらったりしてね。写真って、そのとき自分の周りにどんな人がいたか思い出すじゃないですか。あとファンの人はここから知ってる!とかね」
 
――今作が出来上がったときってどう思われました?
 
「いやもう嬉しさ100倍じゃないですけど、ホント泣きそうなくらい嬉しかったですね」
 
――まぁでも千綿さんはいつでも入魂の1枚ですね。確かにこんなのを毎年作ってたら、すぐスッカラカンになるかもしれない(笑)。
 
「アハハ(笑)。もうホントに、こんなアルバムは二度と作れないと思います」
 
――それを作らせてくれたムクにも感謝ですよね。アーティスト・千綿偉功としても重要な1枚になりましたね。
 
「前作『rule』までのアルバムは夜のイメージなんです。でも『サンキュー』は、ちょっとお日様の差し込む窓を開けながら、掃除しながらでも聴けるような、そういうアルバムがやっと出来たなって。だからこそ次がまた楽しみなんですよ」
 
――活動再開後、初のフルアルバムということですけど、レーベルの品番はもう6905までいってるんですね。
 
「もう最初やるときから品番は“69=ムク”で」
 
――なるほど! そうか。やっぱりそれくらい大事な思い出だったんですね。そうかそうか。
 
「そうなんですよね」
 
――今作に伴うツアーで、久々のバンドワンマンもありますね。大阪は10月8日(月・祝)のあべのROCKTOWNで。僕もバンドでのワンマンを見たことがあるのは1回くらいじゃないかな。
 
「それこそ旧クアトロとかでやったときかな」
 
――それ以来だから、やっぱり弾き語りのイメージが強いですね。
 
「’06年に、活動休止前最後の大阪のワンマンをBIGCATでやったんですけど、それはアコースティックの編成のメンバーを2人を入れただけだったんで。だからフルバンドってなるともう、相当久しぶりですね」
 
――じゃあ6年とかじゃないぐらい前?
 
「前ですね。だから『rule』のツアー以来、7年ぶりくらいですかね。この数年は京都でワンマンをやっていたので、大阪でのワンマン自体も’06年以来で。だから大阪のファンの人から “何で大阪やってくれへんの?”って、いっぱい言われてたんですけど(笑)」
 
――そらそうだ(笑)。
 
「嬉しいんです、やっと大阪で出来るから」
 
――バンドのメンバーは?
 
「アレンジしてくれた松っちゃんがギター&鍵盤で、ベースは東京で出会った若くてイキのいい子がいてね。僕はあんまり人のライブを観て“よかったよ!”とか話しかけたりはしないんですけど、そいつはスッゴイよくて、そのリズムが気持ちよくて。ライブ後に“千綿っていうんですけど…”って話かけたら僕のことを知ってくれてて。西原浩っていうんですけど、自分でもバンドをやってて、いろんなサポートもしてますね。ドラムは元Kaleidoscopeの小島(英雄)くんで。そこはタメなので、もう気心知れた感じですね。あと『アイブミ~Love Letter~』のイントロにも入ってるし、他の曲でもちょっと弦っぽく使えるということで、二胡の里地帰(さとちき)も呼んでます」
 
――ちょっと独特の編成ですね。
 
「その編成で4月6日に東京だけレコ発をやったんでけど、スゴくいい感じだったので。一応、『サンキュー』を引っ提げたワンマンツアーなんですけど、出来たら新曲とか4月にやってない曲ももちろんやりたいし。バンドでツアーに行けるってことだけで、もうテンションが上がりますよ」
 
――楽しいでしょうね。だっていつもは孤独な一人旅で(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) そうなんですよね。バンドでツアーって楽しいだろうなぁ。だっていわゆる普通にバンドで活動してる皆さんは、1年中そうやってるわけですもんね」
 
――そして、そのツアーを終えたら、今後の千綿さんはどうなっていくのでしょう?
 
「来年の4月6日の誕生日に、このアルバム『サンキュー』からの1年間の集大成として、キャパ1300の渋谷O-EASTでワンマンにチャレンジしようと。今年の4月6日にはO-WESTでワンマンをしたんですけど、EASTのキャパは倍はあって…でも、現状維持するだけだと自分の中でも中途半端なんで、ギアをもう1つ入れないと」
 
――ここに来て、アーティストとして帯を締め直すじゃないですけど。
 
「この先また歌い続けていくためにね。この世界、現状維持するだけでも大変じゃないですか? 現状維持だって、普段より何割増しかで前につんのめっておかないと出来ない。でも、今の自分じゃちょっと無理じゃねぇの!?っていうところを目指していかないと、この現状からも抜け出せないなと。もう40じゃないですか。今後体力的なことも含めて何年踏ん張りが利くのか、チャレンジ出来るのかと思うと、やっぱり1年でも前倒しで勝負していかないといけない歳になったなって。ただ、また心がスカスカにならないようにはしなきゃいけない。やっぱり旅をしてこうやって直接いろんな人と話してね」
 
――その出会いを背負って、それを積み重ねて、ここからまた進んで行ければいいですよね。作品も含めて、千綿さんのこれからがどうなっていくかが楽しみですね。
 
「来年4月のライブは1つの区切りでしょうね。その先…どうなるんだろうなぁ?(笑)」
 
――でもようやく区切りが付けられましたね。だってずっと続くじゃないですか。この6年がっていう話が、7年にも8年にもなり得る。どこかで自分が線を引いて向かうことで、新しい何かが起きるだろうと。
 
「そうですね。多分僕が1番新しいことを欲してるんだと思うんですよ。それに向かうために、1回ここで空にしないと何も入って来ない。ここで燃え尽きて、EASTに向かって全部出し切らないといけないなって」
 
――なるほど。そのロードをまた見守らせてもらいますよ。本日はありがとうございました!
 
「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 



(2012年10月 6日更新)


Check

Release

今は亡き愛犬をきっかけに生まれた
6年ぶり渾身のフルアルバム!

Album
『サンキュー』
発売中 3000円
Free Soul Company
MUKU-6905

<収録曲>
1. アイブミ~Love Letter~
2. この声が聞こえますか
3. モザイク
4. beginning
5. いのちのたね
6. 証
7. アイノウタ
8. 遠くまで
9. Dear“愛する君へ”
10. キミが教えてくれたこと
11. ねがい
12. なにもないけど

13. ありがとう“知覧よりの手紙”[LIVE]
※Bonus Track

Profile

ちわた・ひでのり…‘72年生まれ、佐賀県出身。中学三年生の時、友達のバンドにボーカルとして誘われたのをきっかけに、本格的に音楽活動を開始。卒業と同時に上京し、ユニット・CHASEを結成。’94年にメジャーデビュー。その後、’98年にはソロデビューを果たし、翌’99年の夏から本格的に弾き語りライブを始める。’01年、自身のレーベルcocoro recordsを設立。日本テレビ系ニュース番組『きょうの出来事』のエンディングテーマ『祈り』ほか、シングル、アルバムのリリースを重ねるとともに、全国各地で精力的にライブ活動を展開。’06年には活動の母体であったcocoro recordsを発展的解消。その秋、長澤雅彦監督・映画『夜のピクニック』で、『逢えない夜を越えて』(‘04年発売)が挿入歌として使われる。その後、数ヵ月の充電期間を経て、’07年春より本名の“千綿偉功”と戻し活動を再開。夏にはシングル『君色の風 ~想(おもい)~』を、’08年には、さだまさしの名曲『道化師のソネット』に胸を打たれ、初のカバーに挑戦した両A面マキシシングル『beginning/道化師のソネット』を、’09年にはシングル『アイノウタ』をリリース。現在も全国各地でライブ活動を展開中のシンガーソングライターである。

千綿偉功 オフィシャルサイト
http://www.chiwata.net/


Live

レコ発ワンマンツアーも後半戦に
7年ぶりのバンドスタイルで大阪で!

Pick Up!!

【大阪公演】

『千綿偉功ワンマンツアー2012
「サンキュー」』
チケット発売中 Pコード171-520
▼10月8日(月・祝)17:00
ROCKTOWN
スタンディング4000円
ROCKTOWN■06(6632)6900

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【福岡公演】
チケット発売中 Pコード172-900
▼10月20日(土)18:00
ROOMS
全席自由4000円
ROOMS■092(751)0075

【佐賀公演】
チケット発売中 Pコード597-430
▼10月21日(日)16:30
佐賀GEILS
全自由4000円
サウンドスピリッツ■0952(33)3711

この1年の総決算となる挑戦!
来年4月に大規模ワンマンを開催

【東京公演】
チケット発売中 Pコード180-999
▼2013年4月6日(土)18:00
Shibuya O-EAST
全自由4000円
Shibuya O-EAST■03(5458)4681
※未就学児童は無料。小学生以上はチケット必要。

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Column

'09年にリリースされた
感動のシングル『アイノウタ』
秘話ロングインタビュー!