逆境から鳴らせポップミュージック!!
セオリーを越えた心の叫びをタフなサウンドに注入した
最新アルバム『Alternative』、3.11から生まれた感情を語る
5/6(日)心斎橋BIGCAT目前、音速ラインインタビュー!
昨年3月11日に起こった未曾有の災害、東日本大震災。多くのアーティストが被災地に赴き、物資で、そして歌で、支援を続けた2011年…。音速ラインの藤井敬之(vo&g)は、‘05年のメジャーデビュー後も、故郷・福島県郡山在住で音楽活動を続けているアーティストだ。自らの故郷を襲った危機に対し、藤井が発起人となり立ち上げたチャリティ・プロジェクト『ONandON』をはじめ、3.11以降先陣を切って支援にあたっていた彼らが、最新アルバム『Alternative』を完成させた。前作『音速の世界』(傑作!)で見せたより美しくマッシブな楽曲からポップソングのセオリーすらぶっ飛ばし、さらにタフになったバンドサウンドにリアルな感情を注入した今作は、音速ライン史上最も異形にして、最も熱い1枚に仕上がった。同作を携えた全国ツアー後半戦、5月6日(日)心斎橋BIGCATを前に、2人の現在の想いの丈を綴るインタビュー、心して受け止めて欲しい。
服装の季節感がバラバラの2人から(笑)のほほん動画コメント!
――前作『音速の世界』はホントに素晴らしい作品で、当時も話を訊いていてポジティブなエネルギーしかないインタビューだったと思うんですけど、今作『Alternative』は音を聴いても詞を読んでもやはり、震災からは逃れられないアルバムだとは思うんですけど…。
藤井(vo&g)「なんかね…みんなのために書いた曲じゃないというか、まず一番の取っ掛かりとして、自分が救われたくて書いたのがデカくて。結果、同じような気持ちの人に響けばいいなとは思ってますけど、歌詞の世界とかは、やっぱりプライベートな内容になったなって。でもそれがよかった。ホントに何も考えないで、感情を放れたので。僕にとってもなくてはならないアルバムになったというか。ネガティブな言葉は使ってるけど、見てるところはめちゃめちゃ前を向いている。そういう曲が集まってるんで、そこが決定的に今までとは違うんじゃないかな」
――今回の制作に向かった流れをまず教えて頂きたいなと。
藤井「震災から半年ぐらい経っても原発は全然収まんないし、どうも震災前と震災後で、みんながちょっとずつ生きづらくなってんじゃないかっていうのがあって。そのとき、“人生は短いのにそんな生き方もったいないな”って思ったんですよ。出来るなら心のままに生きた方がいいじゃないですか? それをみんなに言いたくて。それで、最初に『心のままに』(M-11)が出来て。それが軸となってアルバムのいろんな曲を呼んできた感じですね」
――そもそもアルバムを作ろう、曲を書こうという感情になれたものだったんですか?
藤井「もうなんかね、“ウワ~!”ってなったときに曲が出来るんで(笑)。だから素直にいろいろ曲が集まってきて。今回はホントに11曲全曲シングルカット出来るように…っていうことぐらいしか決めてなくて」
――じゃあ震災以降も、“もう音楽なんか出来ねぇ”みたいな感情にはならなかったんですね。
藤井「震災が起きたときに前作のツアーをやってて、ホントに途中で中止にしようとも思ったけど、結局そのまま廻ってて。その楽屋でも俺、曲を作ったりしてたんで。逆境になればなるほど曲を作る。だからもう、音楽の意味って何だろう?とかじゃなくて、出来るもんはしょうがないっていうとこですかね」
――去年はいろんなアーティストにインタビューをしていたら、音楽の力を感じることももちろんあるし、逆に無力さを感じることもあり…ってまぁいろんな方がいたと思うんですけど、じゃあそんなことすらもう飛び越えて…。
藤井「そう。曲を作ることで自分が救われてるから。それを聴いて共感してもらえれば、そこでまたみんなが発散出来るし」
――出てくる曲が変わったとか、いつもと違うエネルギーを感じることはありましたか?
大久保(b)「やっぱ言葉の力強さだとか生々しさ…ですかね。一番そこが変わったんじゃないかな。曲の長さもいつも3分台だったのが、5~6分な曲ばっかりで」
――確かにいつもより尺が長い。
大久保「そうなんですよ。だからアルバムを通しても今まで30分台が多かったのが、今回は50分越えてて。やっぱり言いたいことが詰まってるのかなって。それが今までとは違う」
藤井「今回はコンパクトにまとめようとしなかったんだよね。いつもだったら削るんだけど」
――むしろそうやってポップソングとしての精度を高めてね。
藤井「そうですそうです。やっぱりポップソングは3分間で伝えないと」
――そういう意味ではやっぱり、それよりも今言いたいこと伝えたいことをちゃんと書こうと。
藤井「そうなんですよね」
自分で聴いてもやっぱり心動かされるし
このアルバムが出来てよかったなって、めっちゃめちゃ思ってますよ
俺の人生において絶対にね
――チャリティーイベントも相当な本数やってましたけど、実際に人前で音楽をやることで、今までと違う声を感じたりしました?
大久保「お客さんの顔が、みんな笑顔だったのがすごい…印象だった、うん」
藤井「そう、笑顔になってくれりゃいいんですよ。例え音楽じゃなくても、俺らが出て行って、喋るだけでも笑ってくれるから。何かしらやってる意味は絶対あって。何にも考えないでさ、笑ってる瞬間が絶対にあるわけだから」
大久保「俺らもね、そこで発散してもらうのが一番の目的だから」
――普段の生活でも、何もかも忘れてワハハと笑えたりすることって、そんなに多くはないですもんね。そう考えると尚更…。
藤井「発散場所は絶対に必要だから。いろいろと自分で気付かない内にも溜まってたり…それを発散出来るのがライブだったりするんで。特に音速の場合は、MCも含めて“こんなバカみてぇなヤツらが2人でやれてるんだから、まぁ俺も大丈夫だ”って笑って帰ってくれたらいいなと思ってるし」
――そう考えたら志がちょっと今までとは違うアルバムかもしれないですね。僕が個人的に懇意にさせてもらってるアーティストに、坂本サトルさんがいるんですけど…。
藤井「あぁ~JIGGER’S SONの」
――そうですそうです。サトルさんは青森出身で、東北に地盤がある方なんですけど、今自身の活動はさておき現地でめちゃ歌ってるんですよ。だから“何でそこまで動いてるんですか?”って訊いたら、“例えばこの震災が別の場所で起きていたら、自分はここまでやっていたか分からない。でも、やっぱり自分が青森出身で、東北で活動してきたアーティストだから、自分が担当だと思ったんだ”みたいなことを言ってて。音速も藤井さんは福島県在住なので、そういう“俺がやらなきゃ”みたいな気持ちは、他の方より多かったんじゃないですか?
藤井「やっぱり中にいるだけあって、周りの人の気持ちが分かるじゃないですか? だから、それをどうにかしてあげたいと言うよりは、自分もそうだから。みんなも自分と同じことを思ってるはずだと思うと、自分が聴いて楽になれるような言葉とか音楽を放りたくなる=それは自分のためでもあるっていうところなんですけどね」
――アーティストで福島出身の方はいますけど、在住の方って少ないですもんね。それで言うと正真正銘のリアルというか。
藤井「そうですよね。音楽を投げる…役目は多分あるんだろうなって」
――それでしんどくなったりはしなかったんですか?
藤井「いえ、全然。もう曲を作ることで自分を再生してる感じですよ」
大久保「やっぱりアルバムを作ってる最中は集中してるから、そこに関してはいつもと変わらないかもしれないんですけど、より頭で考えずにやってたのかなって。だから、アレンジもホントに小細工しなくなったというか」
藤井「頭で作ってないんだよね、このアルバムは。俺、一番健全な姿だと思うよ、今回のアルバムが」
――あと、僕は今回のアルバムから“怒り”みたいなものも感じたんですよね。いつもの優しさとか切なさとかだけじゃない、強い感情を感じる。
藤井「確かに俺の中に、怒りであったりイライラは完全にありますからね。だから歌詞にも出てる(笑)」
――それがこうある種の楽曲のタフさにもつながってる。やっぱりキレイごとだけじゃないとは思うんで。
藤井「そうなんですよね。俺ってよく“藤井さんって怒らなさそうですよね”って言われるんだけど、怒るときは普通に怒るし、そこがちゃんと出たというか。感情を隠さずに作ってるんで。あと意識してキレイな言葉を選んだりするのも今回はあんまりないし。生々しいんだよね」
――アルバム内の歌詞に“色褪せてしまった街”が2回出てきたり…そういうのもやっぱり“この言葉は他の曲で使ってるから変えよう”では…。
藤井「ないですね。この曲でもそう思ったんだからそう言う。だから詰める作業は結構早かったですね。“あれ? もう出来ちゃった?”みたいな(笑)」
大久保「やっぱり『心のままに』が先に出来上がってたんでね
藤井「今回言いたいことはやっぱりそこなんで。心のままに生きてりゃ、いろんな感情が出てくる。それがいっぱい散らばってるって感じですよね」
――『心のままに』はホントにスーッと自然に生まれた感じですか?
藤井「もう言いたくて。で、それは“今”言いたいことなんで。2年先とかじゃなくてね」
――だから今出さなきゃ意味がない。
藤井「基本恥ずかしがり屋なんだけど、今回はそのまんま、ありのまま放ることが出来た。『心のままに』もいつもならコーラスワークでキレイに聴かせたりするんだけど、もうそれすら入れずにボーカル1本で歌う。それぐらい生々しくした方が伝わるんじゃないかって。もうホントに伝えたかった。そこは変わったんじゃないですかね」
――聴かせたいっていう言葉は今までのインタビューでも出てきたとは思うんですけど、“伝えたい”って言葉がこんなに出てきたことはなかったことですよね(笑)。
藤井「アハハハハハ!(笑)」
大久保「確かにそうですね~」
藤井「伝えたいんでしょうね、ホントにね」
――アルバムが出来上がったとき、自分たちの中でも何か違う感覚がありましたか?
藤井「俺はもう衝動がホントに詰まってんな~と思ってて。自分で聴いてもやっぱり心動かされるし、時には泣いちゃったりもする。いや~でも、このアルバムが出来てよかったなって、めっちゃめちゃ思ってますよ。俺の人生において絶対にね、うん」
大久保「マスタリングのときに曲を並べてみたら、うわ~攻撃的なのが出来たな~って(笑)」
――音を聴くと、ある意味そうですよね。
大久保「まぁでもそれは自然に出来たものなので。ホントに今回全曲いいんですよ。だからよくやったなと」
藤井「6枚目にしてこのアルバムが出来たのは、音速ライン的にも、ものすごく意味のあることだと思います」
――言ったら“音速ライン節”はもうあるわけだから、ある意味、ひとつの伝統芸としての金太郎飴的やり方もある。それがここに来て1stアルバムばりの衝動(笑)。
藤井「そうそう(笑)。まだ20台とかならまだしも、いろいろ分かった上での初期衝動、もう40手前みたいな(笑)」
(一同笑)
――そう考えたらもう、(神様が)音楽をやれってことかもしれないですね。
藤井「そうなんでしょうね。なんかそれしかないんだと思いますよ」
――『Alternative』というタイトルはどこから来てるんですか?
藤井「“Alternative”って“取って代わる”っていう意味で。震災前の世界に取って代わる世界を、これから作っていかなきゃいけない。現実的にも音速ライン的にもそれを作っていく意志というか。あと、タイトルはずっと日本語でやってきたから…逆にこの方が伝わるかなと」
なんかもう、丸裸でぶつかり合おうって感じですよ
――あと、個人的にちょっと気になったのは、『1980』(M-5)の1980っていったい?
藤井「80年代って平和だったな~いい時代だったな~と思って。その頃の音楽もやっぱりよくて、でもああいう音像を今やってる人がいないし、もったいないなって。若い子なんか絶対に聴いたことないだろうし、じゃあ振り切ってやってみようと。スタジオでアレンジするときも、頭の中で肩パットのめちゃめちゃデカいジャケット着て(笑)、成り切ってやってみたらこうなったんですけど。あと、あの時代はメロディがやっぱいいんで」
――音楽にパワーがあった時代でしたよね。他にも『ピカソ師匠とダリ先輩』(M-2)という強烈なタイトルが(笑)。
藤井「もういろんなものブチ壊していかなきゃいけないんじゃないかなと思って(笑)」
――そういった意味ではただ思い詰めて作ってるだけじゃない。その中で自分たちも…。
藤井「前を向いて、楽しむところは楽しむっていうね」
――ツアーも今回のアルバムを届けに行くという意味では、またいつもと違う意味でもやり甲斐がありますよね。
藤井「なんかもう、丸裸でぶつかり合おうって感じですよ」
――このツアータイトルが“心のままにチョックイン”。“チェックイン”じゃなくて“チョックイン”ってどゆこと?(笑)
大久保「マネージャーが“ツイッターでチェックしてくださいね”っていうのを“チョックしてくださいね”って間違ったんですよ(笑)」
――アハハハハ!(笑)
藤井「それをイジって遊んでたら、ツイッター上で流行っちゃって(笑)」
大久保「だから“チョックイン”は間違いじゃないことを言っておきたい。よく誤字っぽく見られるんで(笑)」
――勝手に直されちゃうかもしれない(笑)。ツアーを終えて見えてくるものもあるでしょうね。本日はありがとうございました!
藤井&大久保「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2012年5月 2日更新)
Check
Release
飾らない言葉と感情をありのままに
3.11の回答となる激しくも熱い最新作
Album
『Alternative』
発売中 2800円
YOSHIMOTO R and C co.,LTD.
YRCN-95183
<収録曲>
01. Birthday
02. ピカソ師匠とダリ先輩
03. blinday
04. Baby Baby!!!!!
05. 1980
06. 世界の終わり
07. ランドリー
08. i know i know
09. Winter snow
10. ワールドエッジ
11. 心のままに
Profile
おんそくライン…写真左より藤井敬之(vo&g)、大久保剛(b)。’03年結成。’05年にシングル『スワロー』でメジャーデビュー。同年末に菅原健生(ds)が脱退し、現体制に。ソングライティングを手掛ける藤井が福島県郡山市在住のため、他のメンバーが福島まで出向いて曲作りを行うという、切なくも懐かしい珠玉のメロディとドライブ感のあるサウンドが持ち味の“スローライフ主義”遠距離ロックバンド。また、先の東北大震災を受け、藤井が発起人となり被災者の支援を目的とした『ONandON』(=絶え間なく)というプロジェクトがスタート。
音速ライン オフィシャルサイト
http://onso9line.com/
Live
新作ツアーもいよいよクライマックス
GWの最後には大阪公演が開催!
『「心のままにチョックインツアー」2012』
【福島公演】
Thank you, Sold Out!!
▼5月4日(金・祝)18:00
郡山Hip Shot Japan
オールスタンディング3000円
ノースロードミュージック仙台■022(256)1000
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード157-925
▼5月6日(日)18:00
心斎橋BIGCAT
スタンディング3000円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。
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【東京公演】
チケット発売中 Pコード157-943
▼5月11日(金)19:00
SHIBUYA-AX
1Fスタンディング3000円
ソーゴー東京■03(3405)9999
チケットの購入はコチラ!
Column
昨年リリースした傑作アルバム
『音速の世界』のポジティブな
マインドを語るインタビュー